建築・土木がワンチームとなり映像活用を推進
VR空間にライブ映像がリンクする高度なデジタルツインに挑む

建設業界のDX先進企業として知られる「清水建設株式会社」。同社ではSafieの屋外向け固定カメラを標準ツールに採用。最先端のデジタルツイン活用を推進し、さらなる高度化と生産性向上を目指し、360度画像共有システムとSafieの連携にもご協力くださっています。

(取材:2023年10月)

導入の決め手

  • 電源をさせばすぐに使えるシンプルな操作性
  • 一括管理、グループ管理など複数のカメラをフレキシブルに管理可能
  • 360度画像共有システムに現場のライブ映像を組み込むため(PoC)

導入目的

  • 施工現場の防犯・安全管理
  • 遠隔からの作業支援ツールとして
  • 画像共有システムとの連携によるデジタルツインの高度化(PoC)

導入した結果

  • リアルタイムで現場の様子がわかり、移動負担が軽減
  • オートスナップショットで記録写真撮影の手間を省略
  • クラウド録画映像×モーション検知で夜間工事の管理が効率化
  • スピーカーオプションで遠隔からの注意喚起が可能に
  • 発注者にも映像を共有することで、円滑な協議や合意形成を実現

時代をリードする建築や重要な公共施設・インフラを多数生み出しているスーパーゼネコン「清水建設株式会社」。同社はDXの先進性も高く評価されており、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」に、2021年から3年連続で選定されました。「DX銘柄」はDX推進の仕組みを社内に有し、かつ、優秀なデジタル活用の実績を残している東証上場企業を選定するもので、建設業界において唯一、3年連続で選ばれています。

「デジタルゼネコン」として躍進する同社は、Safieを含む多様なICTツールを施工管理に活用中デジタルツイン活用でも豊富な実績を持ち、千葉県内の施工現場では、Safieと施工管理ツールを連携させてデジタルツインの高度化を図る実証実験(PoC)にご協力くださっています。

そこで今回はSafieの活用法や使用感とともに、実践中のPoCについてもインタビューさせていただきました。応じてくださったのは建築総本部の大垣 博さん、小田 英二さん、土木総本部の小野澤 龍介さん、吉浦 伸明さん、土木技術本部の古木 弘さんです。また、PoCにご協力くださっている清水建設外環京葉Gランプ作業所の浦島 理さんと石﨑 裕大さんにもお話を伺いました。

※お話を伺った方の所属、役職は取材当時のものです。

Safieを標準ツールに採用し、820台以上が稼働。
さらに、デジタルツインの高度化へ向けてワンチームで取り組む

左から、建築総本部の小田さん、大垣さん、土木総本部の小野澤さん、吉浦さん、土木技術本部の古木さん

──はじめに、御社全体のデジタルツイン活用や、Safieの活用状況について伺いたいと思います。まずは、みなさまのお仕事についてお教えいただけますでしょうか。

小田さん:施工現場で役立つツール、システムを全社展開する業務を担当しています。当社で初めてSafieを導入したときも私が担当させていただきました。

大垣さん:超大型現場の合理化施工に資するDX、ICTの技術開発を担当しており、Safieをはじめとするカメラ映像を用いた現場管理ソリューションの開発、展開も行っています。

小野澤さん:土木東京支店内のICT推進部に所属しています。全国への水平展開も視野に入れながら、関東エリアの施工現場でICTの実装を推進しています。

吉浦さん:土木領域で橋梁に関する技術開発などを行っています。橋梁工事におけるカメラ活用を推進しています。

古木さん:土木の技術開発を推進する部署に所属しています。現在は山岳トンネル関連の開発、推進管理をメイン業務とし、映像関連の技術開発にも携わっています。

──デジタルツイン活用における御社の取り組みについてお教えください。

小野澤さん:当社の施工現場では、BIM/CIMで地形や構造物の3次元モデルを構築し、施工管理の高度化や生産性向上を図るデジタルツイン活用を実践しています。活用シーンは進捗管理や発注者との協議など幅広く、VR、ARにも展開して社員教育に利用したりもしています。当社はこれらの取り組みを、現場・現物・現実を重視する「三現主義」が進化した「新(シン)三現主義」と位置づけ、建築、土木ともに施工管理のスタンダードとして積極的に推進しています。

──2020年より、Safieのカメラを利活用いただいています。現在のご活用状況をお教えください。

小田さん:当社では、現場で役立つと判断したICTツール100点ほどをリスト化すると同時に、必ず導入する標準ツールも定めています。Safieの屋外向け固定カメラ「Safie GO(セーフィー ゴー)」はその標準ツールの1つで、遠隔からの施工参加、防犯、災害時の現場確認などを目的に、当社が手がける全ての現場に設置しています。任意導入のツールとしてリストに入れているウェアラブルクラウドカメラの「Safie Pocket(セーフィー ポケット)シリーズ」も合わせると、現在は全社で計820台以上のSafieが稼働しています。

「Safie GO」を標準ツールに採用し各現場で活用

小野澤さん:さらに、現在はセーフィーさんと当社の建築チーム・土木チームが一体となり、デジタルツインの高度化への取り組みを開始。例えば、OpenSpace社(Open Space Labs, Inc.)の360度画像共有システム「OpenSpace Capture」とSafieのシステム連携を目指した「東京外環自動車道 京葉ジャンクション Gランプ工事(以降、外環京葉Gランプ)」でのPoCなど具体的なプロジェクトも進めています。

地下工事で環境の難度も高く、
とりわけ慎重な施工が求められる「外環京葉Gランプ」

外環京葉Gランプ作業所 現場代理人(取材当時)の浦島さん

──次に、千葉県内の施工現場である「外環京葉Gランプ」についてお話を伺わせてください。まずは、浦島さんと石﨑さんのお仕事についてお教えいただけますでしょうか。

浦島さん:外環京葉Gランプの作業所長を務めています。約20人のメンバーを束ね、工事の計画から行政を含む関係者との協議、調整、工事のスケジュールおよび品質管理などをトータルにマネジメントしています。

石﨑さん:私は浦島のもとで工務、ICT推進というポジションに就いています。工務担当としては施工の前段階の協議や調整などを行います。ICT推進担当としてはSafieを含む各種ツールについて、生産性で成果を出せる運用を追求しつつ、活用推進に当たっています。

──外環京葉Gランプで行っている施工の概要をお聞かせください。

浦島さん:官民一体でプロジェクトが進められている東京外環自動車道(以下、外環道)と京葉道路が交差する京葉ジャンクションは、ランプ(相互連結する道路)が8本つくられる計画で、現在は6本のランプが開通している状態です。私たちが施工を進めているGランプは未開通の2本のうちの1本で地下に建設されており、完成すれば東京と千葉を結ぶ自動車道の選択肢が増え、周辺地域の渋滞の緩和や利便性の向上が見込まれています。

──Gランプは地下道とのことですが、施工現場としてはどのような特徴があるのでしょうか?

浦島さん:地下への掘削深度が最大26mと、かなり深いことが挙げられます。また、地下水位が高く、地上には道路や歩道橋、地下近隣には開通済みの地下ランプ、通信ケーブルなどの重要な埋設インフラが存在し、とりわけ慎重な施工が求められる現場です。地上の道路は交通量が多く交通規制による交通流動への影響が大きいため、規制を伴う作業は基本的に夜間工事で進める点も特徴の1つです。

仮想空間上でもライブ映像を確認できる。
清水建設×セーフィーが挑む、もっと便利で高度なデジタルツイン

外環京葉Gランプ作業所でICTツールの活用・推進を担当する石﨑さん

──外環京葉Gランプで実施していらっしゃる、360度画像共有システムを用いたデジタルツイン活用についてお教えください。

石﨑さん:当現場ではBIM/CIM の3次元モデルで現場を見える化し、生産性向上を図っていますが、その一環で活用している施工管理ツールが360度画像共有システム「OpenSpace Capture」です。これは360度カメラで現場の動画を撮影すると、AIが平面図に360度静止画像を自動マッピングしてくれるシステムで、現場のストリートビューのようなものをつくることができます。定期撮影すれば、360度画像がシステム上で時系列順に自動整理保存されるので、異なる日付の画像や3次元設計モデルと比較して、進捗確認や相違確認などを行えます。さらに、当現場では発注者と共有し受発注者間のコミュニケーションの効率化につなげています。

──現在、Safie版360度カメラを用いて、Safieと「OpenSpace Capture」を連携させるPoCにご協力いただいています。両者の連携を目指すことになった背景をお聞かせください。

浦島さん:以前は、現場情報の記録は写真を撮って平面図に張りつけつるのが定番でしたが、「OpenSpace Capture」によってずいぶん省力化されました。とはいえ、現在も定期的な動画撮影は必要で、昼夜それぞれ週に1回の撮影を行っています。それが、常時撮影しているSafieのライブ映像で自動的に記録できたらもっと効率的だと思い、PoCに協力させていただきました。

──Safieとの連携が実装されると、どのようなメリットが期待できるのでしょうか? 

石﨑さん:撮影の手間がなくなることもメリットですが、私としては相乗効果を期待しています。Safieはリアルタイム性が魅力で、「OpenSpace Capture」は360度画角の情報詳細度が魅力です。これらの魅力が融合し、1つの画面でライブ映像にアクセスできれば遠隔で得られる情報精度が格段に上がり、発注者とのコミュニケーションもより充実すると思います。

浦島さん:現状は週に1回の定期撮影から次の撮影までの期間は「OpenSpace Capture」上の画像情報が更新されませんが、Safieと連携できれば、いつでも現在の状態を確認できます。デジタルツインにおける情報の鮮度も密度も飛躍的にアップし、施工管理の大きな進化が期待できると考えています。

発注者もSafieの映像を活用。
情報共有が強化され、協議もスムーズに

地下の掘削が進められている外環京葉Gランプ作業所

──外環京葉Gランプの施工現場では、PoC以外でもSafieをお使いいただいています。カメラの活用方法をお教えください。

石﨑さん:現場には屋外向けの固定カメラ「Safie GO 180」と「Safie GO PTZ」を、合わせて5台設置しています。主な用途は遠隔からの施工参加と防犯です。また、ビデオ会議ツールを使って行う発注者との遠隔立ち会いにも利用します。Safieの映像も組み合わせることで、遠隔立ち会い実施要件の1つである「広域な視点」を満たすことができています。

ウェアラブルクラウドカメラの「Safie Pocketシリーズ」も導入しており、こちらは公道での地中連続壁の構築時に使用しています。掘削中の孔壁は安定液を満たして孔壁が崩れないように管理します。昼間は施工箇所に覆工板で蓋をして道路を供用するため、安定液が逸水していないか水位を監視するために「Safie Pocket2」を使用しています。

──Safieの映像はどなたがご覧になっているのでしょうか?

浦島さん:現場および営業サイドの社内関係者は手元のデバイスでいつでも映像視聴できる設定ですし、現場事務所にある大画面モニターにも全カメラの映像を映し出しています。そして当現場では、発注者とカメラ映像を共有し、円滑な情報共有を実現していることが大きな特徴だと思います。発注者も手元のスマホ、タブレット、PCなどを使い、いつでもリアルタイムで現場の状況をご覧になれますし、クラウド録画映像も自由にご確認いただけます。

現場事務所の大型モニターで常に施工現場の映像を確認できる

Safieは受発注者双方の生産性向上に寄与。
ライブ映像を生かした高度なデジタルツインの実現に期待

──Safieの使用感、および活用効果について感想をお聞かせください。

小田さん:Safieは、電源をさせばすぐに使えて操作も容易、さらに、映像の一括管理やグループ管理もしやすい点が好印象で導入しましたが、ほかにも多くの機能があり、活用させていただいています。

例えばヒトやモノの動きを検知する「モーション検知」は、担当者に通知が行くように設定することができ、夜間の遠隔管理などを効率的に行えます。オプション機能も豊富で、指定した曜日や時間帯にスナップショットを自動撮影する「オートスナップショット」は記録写真ストックや資料作成に、カメラを介して現場に声かけができるスピーカーオプションは不安全行動の注意喚起などに利用しています。ほか、完成までのプロセスを短い動画にできるタイムラプス機能は発注者に大好評で、竣工時に欲しいとのご依頼をよくいただきます。

大垣さん:Safieがあることで若手が現場に急行するケースが減り、業務効率化に効果が出ていると感じます。使い勝手では、停電時の復旧スピードが速くて素晴らしいと思いました。施工現場は停電が起きがちなので、すごくありがたいですね。また、「Safie Pocket2」はコンパクトで持ち運びしやすく、固定カメラで撮りにくい構造物内部などにも目が届いて助かります。

石﨑さん:出先でも、作業所事務所でデスクワークをしているときも、リアルタイムで現場を確認できることがうれしいです。安心感がありますし、現場にしょっちゅう足を運んだり、電話をしたりしていた手間が省けて、生産性向上につながっています。先ほどお話しした覆工板内の安定液の水位確認についても、カメラ設置のおかげで定期巡回が不要になりました。

浦島さん:外環京葉Gランプでは、発注者に映像を展開している効果も大きいです。映像は電話やメールよりも齟齬が少ないですから情報共有の精度が上がり、スムーズな協議や合意形成に役立っています。それに、当現場のように夜間工事が多いと、発注者もいつも以上に安全を気にかけてくださるので、前日夜間の様子をクラウド録画映像で手軽に確認できることも好評です。ライブ映像も好きなときにご覧になれますから、現場にいらしていただく発注者の負担は軽減していると思います。

──最後に、今後、Safieに期待することをお聞かせください。

小田さん:定点撮影もできて汎用性の高い「Safie Pocketシリーズ」の今後に期待しています。ますます進化し、多様なICTツールとデータ連携がしやすくなったらうれしいです。

大垣さん:「Safie Pocketシリーズ」はウェアラブルで通話もでき、スイッチ1つで誰でもすぐに使えますから、遠隔の事務所にいながら現場と共働する取り組みの要になると期待しています。安全と品質の観点では、固定カメラ、ウェアラブルクラウドカメラのいずれも、安全帯の不使用や施工手順の相違の検知・通知といったソリューションが加わるとありがたいです。

古木さん:遠隔にいる熟練者が現場のカメラ映像を読み解き、その情報をデジタルツインに反映すれば、非常に高品質な施工管理が実現すると思います。そのためにもセーフィーさんと協力し合って映像活用の最適化に向けたPDCAを速く的確に回し、映像の可能性を探っていきたいと思います。

吉浦さん:「OpenSpace Capture」との連携をめぐるPoCは、非常に先進的で貴重な取り組みだと思います。セーフィーさんはそういったチャレンジにも迅速柔軟に対応してくださり、心強いです。引き続き、受発注者双方にメリットのある実装化を一緒に目指していきたいです。

小野澤さん:現場から熟練者が減り、人出不足が続く建設業界において、映像も駆使したリアルタイムなデジタルツインは業界を伸展させる多くの可能性を秘めています。あらゆる角度からデジタルツインが高度化すれば、自宅のPC前にいる高齢の熟練者がARで現場に現れ、若手をフォローするような世界も現実味を帯びてくるのではないでしょうか。今後もセーフィーさんの力をお借りしつつ、最先端の建設サービスを追求していきたいと思います。

※本記事に掲載している企業情報、所属、役職及びインタビュー内容は取材当時のものです。

お話を伺った方

清水建設株式会社


土木総本部 土木東京支店
ICT推進部 主査
小野澤 龍介さん


土木総本部 土木技術本部
橋梁統括部 主査
吉浦 伸明さん


建築総本部 生産技術本部 生産技術開発センター
デジタルマネジメントグループ 主査
大垣 博さん


建築総本部 建築企画室 技術企画部
情報化推進グループ 主査
小田 英二さん


土木技術本部 イノベーション推進部
開発推進グループ
古木 弘さん


土木東京支店 千葉土木営業所
外環京葉Gランプ作業所 現場代理人
浦島 理さん


土木東京支店 千葉土木営業所
外環京葉Gランプ作業所 工務主任
石﨑 裕大さん


※所属、役職は取材当時