若手が自ら考えて新たな人材教育方法にチャレンジ
ベテランの遠隔サポートで現場スキルのベースアップを実現

2020年に「株式会社竹中工務店広島支店」の若手スタッフが結成した「セーフィーズ」。セーフィーのクラウドカメラを活用し、業務効率化に挑んだQCサークルです。取り組みの内容や成果について、メンバーのみなさんにお話を伺いました。

(取材:2023年3月)

導入の決め手

  • 高画質で拡大しても鮮明
  • 録画映像がクラウドに自動保存される
  • コンパクトでフレキシブルに使える(Safie Pocket2)
  • 単体で撮影も通話もできる(Safie Pocket2)

導入目的

  • 移動時間減による業務効率化
  • 現場の安全確保、事故防止
  • 遠隔からカメラ映像を確認することで管理密度を上げる
  • 熟練者の遠隔指導による若手教育の充実

導入した結果

  • 管理密度が上がり、品質確保に寄与
  • 熟練者の暗黙知を伝承でき、若手の成長がスピードアップ
  • カメラによる死角のカバー、安全意識向上で事故が減少

ここ数年、2024年問題を見据えた現場DXは、スーパーゼネコンをはじめとする建設各社で精力的に推進されてきました。そんな中、セーフィーのクラウドカメラによる業務効率向上に挑み、2022年度全竹中開発改善大会(全国大会)で金賞を受賞するなど脚光を浴びているのが、株式会社竹中工務店広島支店の若手スタッフで結成された「セーフィーズ」です。

作業所では施工管理を担うセーフィーズの活動内容や成果について、メンバーの中谷さん、亀田さん、河本さん、桒田さん、また、通称「甲野カメラ」でセーフィーズの遠隔サポートにあたった甲野さんにお話を伺いました。

「現地滞在時間が長いから、時間外労働が増える」
若手の課題を整理し、カメラ映像活用による対策を立案

セーフィーズのメンバーが活躍する宮島口の作業所の内部

──はじめに、セーフィーズのみなさんが仕事で感じていた課題についてお教えください。

中谷さん:私たちが務める「工事担当」の主な仕事は作業所の施工管理ですが、若手ほど、時間外労働が多いことに課題を感じていました。また、若手の間で手戻りが頻発し、工程に影響を与えることも課題であると考えていました。

そこで2020年7月、セーフィーのクラウドカメラで課題解決に挑もうと立ち上げたQCサークルがセーフィーズです。工事担当の若手メンバー12名で構成され、平均年齢は29歳。現在、メンバーがいる作業所は計5か所で、4代目リーダーの私は宮島口の作業所で工事担当をしています。

──「セーフィーズ」では、どのようなことから着手されたのでしょうか?

河本さん:まず自分たちの問題点について目線合わせを行い、「時間外労働が多く、特に現場に出ている時間が長い」「現地での確認ポイントが曖昧で、再確認ための時間が発生」といった課題を確認しました。その上で、「現地滞在時間を短縮することによって、時間外労働を削減しよう」というテーマを設定しました。

桒田さん:さらに、現地滞在時間が長くなる要因についても深掘りし、「作業内容を理解していない」「確認忘れ(手戻り)」「作業員の問い合わせに即時対応できない(上長確認の手間発生)」の3点を重要因3項目として置き、対策立案を行いました。

──対策の内容をお聞かせください。 

亀田さん:作業所にクラウドカメラを設置し、見える化することを大前提としました。そして「カメラ中継で検査、確認を行い、作業所に行く人数を減らす」「重点管理エリア(人が近寄りにくく、死角になりやすい=事故が起きやすい場所)へのカメラ設置」「現地巡回のライブ映像を事務所で投影・情報共有」などの対策を実施することにしました。

Safie Pocket2の用途は遠隔での検査、見守りなど無限。
ベテラン社員からの遠隔指導でも大活躍

作業所内でSafie Pocket2を装着しているセーフィーズの桒田さん

──Safieカメラの活用状況をお教えください。

中谷さん:据え置きタイプの屋外向けクラウドカメラのうち、俯瞰したい場所には広角撮影できる「Safie GO 180(セーフィーゴーワンエイティ)」、ズームや画角調整をしたい場所には「Safie GO PTZ(セーフィーゴーピーティーゼット)」を設置しました。

また、ウェアラブルの「Safie Pocket2(セーフィーポケットツー)」は、コンパクトで電源確保も不要なので、目的や撮影環境に合わせてフレキシブルに使っています。映像は複数のカメラを一度に見られるマルチビューアーで事務所の大型モニターに映し出し、用途によっては個人のPCやタブレットでも視聴します。

──ウェアラブルクラウドカメラのSafie Pocket2の活用方法について、詳しくお聞かせください。

中谷さん:活用方法の1つ目は、鉄骨などの製品検査の遠隔臨場です。工場にいる若手がSafie Pocket2をネックマウントやクリップなどで装着して検査の様子を撮影し、事務所にいる上長やほかのメンバーがリアルタイム視聴します。撮影のために1名現地に行くだけで、複数名が検査に参加できることがメリットです。

2つ目は重点管理エリアや解体現場の見守りです。重点管理エリアのエレベーターのシャフト上部やカゴ内、クレーンのフック付近にSafie Pocket2を固定して撮影し、異常や不安全行動がないか確認します。また解体重機では、オペレーター席付近にカメラを設置して安全管理や進捗管理に役立てます。いずれも通常は人が行けない、かつ、一般的な固定カメラを設置できない場所ですが、事故リスクが高いスポットでもあるので、映像を利用して人の目が行き届くことに大きな効果があると思っています。

クレーンフック付近に固定されたSafie Pocket2

3つ目は廃棄物運搬車の追跡です。ダッシュボードにSafie Pocket2を固定した車で廃棄物運搬車を追跡しながら撮影し、事務所にいるスタッフはマップビューアー機能(地図上にカメラの位置情報が表示される機能)で目的地へ正しく運ばれていることを確認します。これについては、いずれは実際の追跡をなくし、運搬車へのカメラ搭載だけでOKな運用を目指しています。

4つ目は情報共有とコミュニケーションです。朝礼の様子を撮影して作業員休憩所のモニターにライブ配信するほか、職長からの問い合わせの際にSafie Pocket2で現場を見せてもらい遠隔から指示するなどしています。映像があると状況がひと目でわかり、とても助かります。

カメラによるコミュニケーションは教育面での効果も大きいです。私たちがSafie Pocket2を持って現場に臨み、長年、当支店で作業所長に携わっていた甲野にライブ映像を見てもらい、安全や品質について遠隔指導を受けるのです。

甲野は私たち若手からすると雲の上のような存在で、直接会ったことも話したこともないメンバーがほとんどでした。ですが今はカメラを使って定期的に甲野の指導を受けており、距離も縮まって「甲野カメラ」という愛称まで生まれました。デジタルの力で、現場を知り尽くすベテランから直接アドバイスをもらう機会を得られ、現場の技能が身につくスピードが速まったように思います。

Safieカメラの映像はリアルに近い。
だから、「現場に行かない」が成立する

セーフィーズメンバーの河本さん、中谷さん、亀田さん、桒田さん(左から)。2022年度全竹中開発改善大会の表彰状とともに

──「セーフィーズ」の活動で得られた成果についてお教えください。

中谷さん:現地滞在時間が減ってはいるものの、時間外労働削減については、残念ながら設定した目標数字には届きませんでした。しかし、それ以上に、人が見えない部分を撮影・確認できることによる管理密度向上、遠隔指導による品質向上や事故リスクの回避など多くのメリットがありました。

私たち若手のスキルアップや、施工の知見蓄積、共有における成果も多いです。特殊な工法などは、タイムラプスでムービーを残すと今後の若手教育にも重宝します。これらの活動が評価され、QCサークル金賞をいただけたことも励みになりました。

──「甲野カメラ」で「セーフィーズ」のみなさんを指導なさった甲野さんの感想もお聞かせください。

遠隔指導で若手の教育に力を入れる甲野さん

甲野さん:私は現地現物が一番との考えを持っており、はじめはカメラ活用には懐疑的でした。けれどSafieの映像はリアルで見る3次元の世界に非常に近く、一緒に現場にいるかのように指導することができます。私たちがすべての作業所に行かずとも、現時現認が可能なカメラというソリューションによって、長年の経験で得た暗黙知を多くの若手に伝承できるのは素晴らしいことだと思います。

──「セーフィーズ」のみなさんが、今後、カメラ活用で取り組んでいきたいことをお聞かせください。

中谷さん:知識・経験をベースとした迅速・的確な判断力が時間外労働の削減につながると思うので、「甲野カメラ」によるスキルアップに今後も注力したいです。またSafieの映像を使った若手同士の研修もブラッシュアップし、水平展開したいと思います。ほかにもカメラと施工管理アプリを連携させるなど、映像の活用方法はまだまだあると思います。今後も創意工夫して有効活用し、1日も早く、先輩方のような頼れる工事担当者になりたいです。

お話を伺った方

株式会社竹中工務店


広島支店
支店長付
甲野 裕之さん


工事担当
中谷 安雲さん


工事担当
亀田 崚介さん


工事担当
河本 心歩さん


工事・施工図担当
桒田 紗希さん