Safieカメラ×AIで交通量調査を実施。
従来比1/3のコスト圧縮、利便性に効果を実感

土木・建築・環境分野における高度な技術力で知られる「株式会社奥村組」。同社が大阪市内で手がける大規模工事現場で、AIを活用した交通量調査のPoCにご協力いただきました。従来の目視による調査との違いなど、AIを活用した交通量調査の手応えについてお話を伺いました。

(取材:2023年4月)

導入目的

  • 交通量調査のコスト圧縮

導入した結果

  • 調査コストが、概算で従来の目視による調査の約1/3に圧縮された
  • 天候に影響されず、録画映像を使用するため過去日の調査も可能に
  • 低コストのため調査頻度を増やすことができ、データの精度を高められる

「人と自然を大切にし、未来づくりに貢献するヒューマン・コンストラクター」を目指し、大型建造物から社会インフラまで、幅広い分野で確かな実績を築いている「株式会社奥村組」。土木・建築・環境、それぞれの分野において高い技術力を誇る。トンネルや免震の独自開発技術も有し、その技術力は業界でも一目置かれている。

今回、同社が手がける大阪市内の大規模工事現場で、セーフィーがテスト販売しているAIによる画像解析を活用した交通量調査「Safie Traffic Survey」(※)のPoCにご協力いただきました。ご協力の背景や感じた手応えについて、ICT統括センター主任・増田 貴之さん、導入現場の監理技術者・津田 晃宏さんにお話を伺いました。

※サービス名称については今後変更の可能性があります

現場は、1日6万4000台が通行する交差点。
交通規制の影響を最小限にするために、交通量調査が不可欠

Safieカメラの全社導入も進めていただいたICT統括センターの増田さん

──はじめに、増田さんが在籍されている御社のICT統括センターについてお教えください。

増田さん:建設業は全産業の中でも、労働人口の減少が著しく、労働災害も少ないとは言えません。そのため、より生産性を高め、かつ安全に工事を進められるようにすることが喫緊の課題となっています。この課題を解決するにはデジタルの力が必須であると考えており、私が所属するICT統括センターが工事所の支援を行っています。積極的に関与することで「現場DX」を推進して、生産性向上および安全施工に繋げたいと思います。

──今回の交通量調査の目的をお聞かせください。

津田さん:私たちゼネコンは通行車両の台数、進行方向といった交通量調査のデータを踏まえて工事にともなう交通規制のプランニングをします。私が監理技術者を務める「大阪駅前地下道東広場リニューアル工事」でも、交通規制のための交通量調査が必須で、調査データは、着工前だけではなく着工後に警察や自治体と工事計画について協議する際の参考データとしても必要となります。

交通量調査を実施した交差点Safieカメラが設置されている交差点

──今回の工事は、どのような特徴があるのでしょうか? 

津田さん:リニューアル工事を行う東広場と呼ばれる地下道は1日約40万人が利用し、その直上に位置する「阪神前交差点」の車両交通量は、1日約6万4000台にのぼります。これらの動線を止めれば大きな混乱が生じますので、工事対象のエリアを細かく分割したうえで、最小限の範囲で夜間に交通規制を行い、既設躯体の撤去と新設躯体の構築を繰り返すことで、いずれの動線も止めることのないよう計画しています。

撮影サポートのないAI解析サービスはツライ。
セーフィーはカメラ設置~撮影~解析まで丁寧なコンサルが心強い

交差点に設置されているSafieカメラ

──今回の工事で、セーフィーのAIを活用した交通量調査のPoCにご協力くださった背景をお教えください。

津田さん:交通量調査は調査員が道路脇に座って目視で行うことが基本で、それを専門の調査会社に依頼するのが常でした。目視による調査で一定の精度を確保するためには多くの時間と費用を要します。費用は調査日数に比例するので、コストを抑えるために日数を絞るのですが、日数が少な過ぎると調査結果の精度に問題が生じるのです。そのため、いずれは交通量調査にもICTを活用し、精度を担保しつつコスト圧縮を図りたいと考えていました

津田さん:実際、交通量調査のAI解析サービスを試そうと思い、とある会社に相談したことがあります。ところが解析システムは提供してもらえるものの、解析用の映像撮影に関するサポートがありませんでした。AI解析に適したカメラ設置や画角は当社でチューニングしなければならず、時間と手間が予想以上にかかることがわかり、困ってしまいまして……。そんなときにタイミングよくセーフィーさんがお声がけくださり、「よかった!」と思いました(笑)
増田さん:当社では、工事所への事前アンケートで操作性などについて評判がよかったセーフィーさんのクラウドカメラを2021年4月より全国の工事所に一括導入しており、今では当社の現場DXに欠かせない存在となっています。そのセーフィーさんが新たに今回のサービスを開発すると伺い、まさに当社のニーズとマッチしたものであることもPoCに協力させていただく大きな要因となりました。

奥村組では遠隔確認用としてSafieカメラを全国の現場に一括導入

──セーフィーでの交通量調査は、スムーズに進められましたでしょうか? 

津田さん:まず、対象の交差点にもともと設置していた2台のSafieカメラの映像でAI解析を行いました。するとセーフィーさんから「精度を上げるためにもう1台増やしたい」とのお話があり、2回目の調査は3台のカメラで実施したところ、データの精度が格段に上がりました。画角の異なる映像がAI解析のクオリティに大きく影響することを実感するとともに、セーフィーさんの的確なご提案に驚きました

増田さん:セーフィーさんは、現場への視察やヒアリングも重ねて、カメラの台数、設置場所、画角などを丁寧にシミュレーションしてくださいました。2回目の調査では見事にその成果が現れ、セーフィーさんのコンサルティングはさすがだと思いました。

AI画像解析による交通量調査のイメージ画像

調査コストは約1/3、過去の映像で調査できるなど利便性もアップ。

──セーフィーの交通量調査をご利用いただいた感想をお聞かせください。

増田さん:カメラ設置からAI解析までワンストップで相談できること、コストを抑えつつ1日のうち比較的長時間のデータを複数日分取れることが大きなメリットだと思いました。

津田さん:コストについては、単純比較は難しいものの、目視による調査の1/3程度で必要なデータを取れると感じました。

また、カウントの精度も高く、夜間撮影で車両種類の混在や規制車線の変更があったときも正確。クラウド録画映像をさかのぼって解析できるので、調査の日程調整が不要なところも良い点です。天候や平日・休日などの条件も選ぶことができ、「せっかく調査したかったのに、雨だから延期せざるを得ない」ということもありません。

そのほかには、交通量調査の頻度を高めることで、全体工期の圧縮も期待できます。交通量の少ない時間帯は交通規制をかけることができるので、交通量が減少するタイミングを正確に把握できれば1日の作業時間を増やすといったことに繋がるからです。

大阪駅前地下東広場JV工事所監理技術者・副所長の津田さん

──今回の結果を受け、今後、セーフィーに期待することをお聞かせください。

津田さん:ライブ映像でリアルタイムに交通量をカウントする機能があったらいいなと思います。また交通規制のプランには滞留長(信号が赤から青に変わる瞬間の、停止線から最後尾車両までの距離)をはじめとした他の情報も必要なので、そのデータも取れればとても助かります。

増田さん:警察や自治体との事前協議では、交通規制でどのような影響が考えられるかという「交通影響検討」が行われます。交通量調査から、このようなAIによる影響予測までをワンパッケージにしたサービスがあればすごくうれしいですし、画期的なサービスであると思います。交通影響検討はかなり高度な解析になると思いますが、ニーズも高い領域です。さまざまなテストケースをもとにサービスをブラッシュアップしていただけることを期待しています。

お話を伺った方

株式会社奥村組
ICT統括センター
イノベーション部
戦略課
主任
増田 貴之さん


大阪駅前地下東広場JV工事所
監理技術者
副所長
津田 晃宏さん