チョコ停の原因を突き止めろ!
巨大物流施設におけるポータブルクラウドカメラ活用術
設備のトラブルなどにより、一時的に設備が停止してしまう「チョコ停」。絶えずモノが流れ続ける巨大物流施設において、チョコ停は稼働率を下げる大きなマイナス要因となります。
モノタロウ笠間ディストリビューションセンターでは、チョコ停の原因追求のため、Safie Pocket2を導入いただいています。
(2021年5月取材)
導入の決め手
- 通信機能付きでバッテリー式なので持ち運びしやすい
- コンパクトなので設置しやすい
- 画質が鮮明
- 既存設備に影響を与えない
導入目的
- 物流センターで発生するチョコ停の原因特定のため
導入した結果
- チョコ停の発生を映像で捉えることができ、原因追求に役立った
- 映像を設備メーカーとも共有することでスムーズなやりとりが可能になった
- 停止中の人件費のみで少なくとも約80万円のコスト削減効果があった
(ライン停止頻度の減少を考慮するとそれ以上の効果)
製造業や工事業で使用する、消耗品や部品、工具といった間接資材1800万点を取り扱うECサイト「monotaro.com」を運営する、株式会社MonotaRO。同社の主要物流拠点の1つ、笠間ディストリビューションセンターでは、開設当初から施設内の定点監視やラインの稼働状況の定点監視に据え付け型のSafieカメラを活用。また、それとは別にチョコ停の原因を探るためポータブル型の「Safie Pocket2」をご導入いただいています。今回は、Safie Pocket2の活用方法と効果について、設備管理グループの齋藤さんと橋本さんにお話を伺いました。
わずか数分の停止も、大きな影響を及ぼすチョコ停
──まずは、笠間ディストリビューションセンターの役割とおふたりのお仕事について教えてください。
齋藤さん: 笠間ディストリビューションセンター(笠間DC)は、2017年に稼働を開始した物流施設です。広さは90,400㎡、建物は、延床面積が約56,200㎡、一番長い距離だと約400mにもなり、東日本における同社の物流拠点としては最大級。約32万点の在庫を抱え、1日の実績として平均約4万件、最高94,500行の出荷があります。
※補足:出荷行数について、2021年度の計画値は100,000行。
我々は商品が流れる総延長約12㎞のコンベアや、「Racrew(ラックル)」という無人搬送ロボットなどの設備管理を担当しています。
設備が正常に稼働するように定期的なメンテナンスを行ったり、チョコ停を含めた突発的なトラブルへの対応を行い、出荷への影響を最小限に抑えることを仕事としています。
──こちらのセンターでは、「チョコ停」の原因追求にSafie Pocket2を活用されていると伺っています。チョコ停とはどのようなトラブルなのでしょうか?
齋藤さん: チョコ停は一時的に設備が停止するトラブルで、多いのはコンベアの異常停止トラブルです。
一例を挙げると、商品はコンテナに納められコンベアで運ばれていくのですが、重心が悪かったり偏っていたりするとコンテナが傾いてしまうことがあります。その異常をセンサーが感知して、ラインが停まるというものです。その場合、傾いたコンテナを元に戻すなどすれば、比較的短時間で復旧することができます。
機械の故障やシステムがダウンしてしまって数時間動かないといった大きな停止ではなく、数分の停止をチョコ停と呼んでいます。
橋本さん: チョコ停は、1日のうちに何度か発生することもありますし、発生しないこともあります。出荷量が多いから起こるといったわけでもなく、トラブルが起こる場所もまちまちという厄介な存在です。
1つひとつのチョコ停は、小さなものだったとしても、コンテナは絶えず流れているので他の工程に影響を与えてしまい、滞留すると出荷に大きな影響を与えることもあり、物流の効率性を阻害する大きな要因となってしまいます。
チョコ停発生箇所に設置。再発時に映像を撮影し原因特定
──こういったチョコ停に対して、Safie Pocket2を活用されているとのことですが、活用のされ方とSafie Pocket2をお選びいただいた理由について教えてください。
齋藤さん: チョコ停にはさまざまな停止があり、発生時間も場所もバラバラです。それを人が絶えず見守ることは不可能です。そこで、カメラを設置し設備の稼働を見守るという方法もあるのですが、このセンターは何より広いので、全て網羅できるほどカメラを設置するとなると膨大な数になってしまいます。ですので、現在は、ラインの合流点などの重要箇所や人が入って確認しにくい箇所などに絞って定点カメラを導入しています。
一方Safie Pocket2は、設備の稼働状況を見守るというよりは、チョコ停の発生原因を探るために活用しています。持ち運びができるコンパクトさ、画質の良さ、バッテリー内蔵で電源も不要なので、どこにでも簡単に設置が可能ということから導入を決めました。現在は2台活用しています。
橋本さん: 我々の仕事の使命はラインを「止めない」「すぐに復旧させる」「次に同じことを起こさない」です。チョコ停が発生した場合も、できるだけ早く復旧させねばならず、原因追求のためにラインを止めたままにはできません。実はチョコ停を起こすようなトラブルは、再び同じ事象が発生することが多いのです。そこで、トラブルが起きた箇所にSafie Pocket2を設置し、次に発生した際に映像に捉えることによって、原因を探ることができます。
Safie Pocket2は、特別な設備も必要ありませんし、ラインに影響を与えることもなく、撮りたいところを撮影できるので重宝しています。
──Safie Pocket2でトラブルの原因を突き止めた事例としてはどのようなものがあるのでしょうか?
橋本さん: ある時、装置のエレベーターにコンテナが流れず、自動停止するといったトラブルがありました。起こり続けるわけではないが、時々発生する。でも原因がつかめない。そこで定点カメラの映像を基に該当箇所にSafie Pocket2を設置。しばらくして同じ現象が発生し、その瞬間を映像に収めることに成功しました。この映像を装置のメーカーにも見てもらい検証を重ねた結果、原因は冬の寒さで装置の金属やゴムが僅かに縮み装置にズレが生じ、センサーが異常を感知したというものでした。
トラブルの原因は、モノの流れ方が悪かった、装置そのものに不具合があった、さらにはプログラム上の問題など多岐にわたり、トラブルが起こった後では特定しにくいことがあります。Safie Pocket2の設置後はトラブルが起きたときの一部始終が映像でしっかりと記録できるようになりました。これまでは、原因の特定も「恐らくこうだろう」という予測で行っていたものが、しっかりと証拠をもって行えるようになり、メーカーとのやりとりもスムーズになりました。今では、Safie Pocket2はトラブルの原因追求に欠かせないツールとなっています。
2台のSafiePocket2が、約80万円の効果を生んだ
──Safie Pocket2を導入されたことで、チョコ停の原因の特定に役立っているとのことですが、定量的にはどのような効果があったとお考えでしょうか?
齋藤さん: チョコ停に限りませんが、Safie Pocket2によって原因が突き止められたトラブルとしては、20件ほどあります。それを金額換算すると、あくまで試算ではありますがこれまでに80万円程の効果があったと考えています。再発を防ぐことができたトラブルでラインが止まっていた時間の作業ロスを、影響を受けた従業員の人件費に換算した数値です。原因が突き止められなかった場合は、さらに作業ロスが発生してしまいますし、効果はもっと大きなものであると思っています。
──現在は、2台のSafie Pocket2を、トラブルの原因特定にご活用されていらっしゃいますが、今後カメラの映像をどのように活用していきたいとお考えでしょうか?
齋藤さん: Safie Pocket2は、使い勝手もよくツールとしてとても役立っています。費用対効果も高かったと感じています。
Safie Pocket2に限らず、Safieカメラで状況を監視しトラブルが起きた際の原因を探るという使い方でいえば、労働災害など安全面での活用もできるのではないかと考えています。当センターでは、ここで働く方を対象に「安全道場」という研修を行い労働災害の防止に努めています。実際に起きた事故の映像などを、生の教材として使うことができれば、より安全な作業への教育につながりますし、他の拠点へも事例を共有することで、より高い安全意識を保つことができるようになると考えています。
橋本さん: 以前、地震が発生したときに、センターに設置されている定点カメラの映像を自宅で確認したことがあります。そのときに感じたのですが、リアルタイムな映像をリモートで確認することで、現場に行かずともトラブルを把握でき、指示をだせるのではないかと思いました。このセンターは夜中も稼働しており、私達の出勤していないときにトラブルが起こることもあります。その際、リモートで確認ができれば、センターに駆けつける頻度も減らせ、タイムリーな対応が取れるように改善できると感じています。
※本記事に掲載している企業情報、所属及びインタビュー内容は、2021年5月公開当時のものです。
お話を伺った方
笠間ディストリビューションセンター 物流部門 設備管理グループ
グループ長 齋藤 数人 さん
橋本 正美 さん