映像のAI解析で交通量調査を実施
人力で困難な調査が可能になり、コスト圧縮、負担軽減も

神奈川県藤沢市が行った駅周辺の交通量調査において、カメラ映像のAI解析でデータ集計を行う「Safie Survey」をご利用いただきました。人力では困難だった調査が可能になり、業務の負担も軽減されたという活用効果についてお話を伺いました。

(取材:2025年4月)

導入の決め手

  • 複雑な要件設定のデータ取得が可能
  • 中長期間の調査を人力よりも低コストで行える
  • AI解析×人の目でデータを完成させるハイブリッドな精度管理
  • ニーズに合わせた柔軟な対応、サービス

導入目的

  • 市政における街づくりの検討材料としての交通量調査

導入した結果

  • 人による調査よりも低コストで1ヶ月の調査を実施
  • 職員の負担を軽減
  • 複数の車いすなど用具の使用有無を調査できた
  • 車の通行、停車数を同時にカウント
  • 悪天候時や深夜帯のデータも得られた
  • 期間、条件共に十分な調査ができ、政策の検討に使えるデータが取れた

江の島などの観光名所で知られ、住宅地としても人気の神奈川県藤沢市。現在、市の中心部である藤沢駅の駅前は老朽化などを背景に、ビル、通路、広場等の再整備が進められています。

同市では、再整備の計画検討に向けた交通量調査で、セーフィーが提供する映像×AIの調査サポートサービス「Safie Survey(セーフィー サーベイ)」をご利用くださいました。人力による調査のハードルを越えられたという「Safie(セーフィー)」の活用メリットについて、藤沢市職員の小野 広士郎さん、大山 健太朗さんにお話を伺いました。

コストが高く、天候や時間帯の差異もつかみにくい……。
人力による交通量調査の限界

市長室 / 共創推進課 主査 小野 広士郎さん

──はじめに、お2人のご紹介をお願いいたします。

小野さん:少子高齢化・人口減少によって全国的に人手不足が進む中、藤沢市では安定的な行政運営で市民サービスの質を確保するために、都市のデジタル化・スマートシティの実現に取り組んでいます。私は主にスマートシティの政策に携わる共創推進課で各種の実証事業を支援しております。

大山さん:都市整備部の藤沢駅周辺地区整備担当として、藤沢駅前を中心としたリニューアル・再整備の計画検討などに当たっており、「Safie Survey」を活用した交通量調査も担当しました。

──映像×AIの調査サポートサービス「Safie Survey」をご利用いただいた、今回の交通量調査についてお教えください。

大山さん:「Safie Survey」を活用させていただいたのは藤沢駅前の交通量調査で、カメラを設置してデータを取ったスポットは2カ所です。

都市整備部 藤沢駅周辺地区整備担当 主任 大山 健太朗さん

1カ所目は藤沢駅舎の改良で新たな公衆用通路ができるのに伴い、取り壊しを予定している南口の外周デッキです。取り壊し後の交通環境を検討するに当たり、現在、このデッキを利用する方々の中にベビーカーや車いす、杖などの利用者がどの程度いるのかを把握するため、交通量調査を行いました

もう1カ所は同じく南口にある地上の一般車乗降場です。南口の再整備は「賑わいの創出」がテーマの1つになっており、広場中央にある一般車乗降場を広場に接続する道路に移設することで生まれた空間を活用して、市民の方々の憩いのスペースを設ける計画を検討中です。検討材料として乗降場の利用状況を示すデータが欲しかったので、こちらも交通量調査を行うことにしました。

藤沢駅南口の外周デッキと一般車乗降場のあるロータリーの様子

──なぜ、デジタルで交通量調査を行おうと考えられたのでしょうか?

小野さん:大きな背景としては市政のデジタル化・スマートシティの実現の一環、という文脈があります。しかしそれだけでなく、これまでの人力による交通量調査に限界を感じていたことも要因となっています。

大山さん:例えば外周デッキに関するこれまでの調査は、単なる通行者数のカウントにとどまっていました。しかし今回必要だったのは、バリアフリーのニーズを把握するため、車いす、杖、ベビーカーといった用具別の利用者を抽出したデータでした。一般車乗降場においても、時間帯・天候による通行台数の違いや滞留時間などの詳細な情報が必要でした。こうした複雑な要件の調査について、人力での調査は困難であり、AI解析のほうが適しているのではないかと思いました
また、人力による調査にはデータ量とコストバランスの難しさもありました。人が行う場合は朝~夜の日中に行うのが一般的で、基本的に深夜帯のデータが取れません。さらに、予算を考えると最大2日くらいの調査が現実的で、天候などの諸条件による差異がつかみにくい状況でした。今回も、一定期間以上のデータを取りたかったのですが、従来の方法だとコストがかなりかさみます。その点、デジタルなら人力よりも低コストで長期調査を行えますし、時間帯も問わないので、挑戦してみようと考えました。

外周デッキにおける車いすなどの用具別利用者数を調査するために設置されたカメラ

車いすなどの用具使用の有無、車の通行&停車台数etc.
複雑な要件設定でも、労力をかけずに調査できる

──調査サポートサービスの中で「Safie Survey」を選んでくださった決め手をお聞かせください。

小野さん:デジタルの交通量調査はチャレンジの要素が多分にありました。そのため、「今回は単なるパッケージ売りのサービスではなく、一緒に取り組んでいただけるパートナー的な事業者さんにお願いしたい」と思っていました。それでいうと、セーフィーさんは今回の取り組みの実証実験的な性質をよく理解してくださり、期間や調査内容についてもニーズに合わせた柔軟な対応で好感を持ちました。

中でも大きな決め手になったのは、AIの解析データが実態に即しているか、人の目で一緒に検証してくださるハイブリッドなサービスでした。私たちは、得られるデータが今後の市政に生かせる精度を備えているか非常に重視していましたので、精度検証を共に行ってくださるスタンスはとても心強かったです。

──「Safie Survey」を利用した交通量調査の実施方法をお教えください。

大山さん:調査は昨年秋に約1ヶ月行いました。解析用の映像を撮影したカメラは、セーフィーさんからお借りしたウェアラブルクラウドカメラの「Safie Pocket2 Plus」です。屋外OKでコンパクトなので柱などにテープで固定し、適宜バッテリーも用いながら給電環境を整えて指定期間中の撮影を行いました。撮影終了後は抽出したいデータを当市で選定し、統計情報の結果はレポート形式でいただきました。

──調査結果はいかがでしたか?

大山さん:外周デッキの調査では、ベビーカーや車いす、杖などの用具を利用して通行される方が一定数みられるといったデータを取得できました。一般車乗降場でも「夕方はロータリーで長時間停車する車が多い」など、私たちが肌感覚で感じていたことが数字で可視化・実証できています。これらのデータは今後の政策の方向性を決める上で頼れるエビデンスになります。

ロータリーの通行台数および停車時間を調査するために設置されたカメラ

──「Safie Survey」による調査は、どのようなメリットがありましたでしょうか? 

小野さん:1ヶ月もの期間の調査ができたことです。人力の調査に比べると大幅なコスト圧縮になっていますし、行政の場合は職員が調査を行うケースも多いので、職員の負担軽減にもなっています。もちろん、期間が長い分、データの精度も高まりました。

大山さん:難度の高い要件設定で調査できたこともSafieを利用したメリットだと思います。今回、外周デッキではベビーカーや車いす、杖などの用具を利用する通行者数、一般車乗降場では停車台数・通過レーンの通行台数・車の停車時間のデータを取りました。これらの調査を目視で正確に行うのは難しく、映像×AIを使わなかったらできなかったのではないかと思っています。

手軽に調査を行えて、調査内容も充実
「Safie Survey」を積極活用して良質な政策を

──映像×AIによる調査の利活用について、今後の展望をお聞かせください。

大山さん:今回の活用で、「Safieを使えば調査の幅が広がる」という期待を持ちました。内容的に人力の限界を上回ることができますし、手軽さも魅力です。行政が定期的に行う大規模な交通量調査も、現状だとスパンが長いのでデータが古くなりがちですが、Safieならもっと頻繁に実施できるのではないでしょうか。常に最新データに基づく検討ができたら、より良い街づくりが可能になると思います。

小野さん:新しいものを採り入れるときは、本当に役立つのか、コストに見合うのかといった懸念やハードルが付き物です。それだけに、今回の取り組みが庁内のファーストペンギンになったらいいなと思っています。成果をさまざまな事業に水平展開し、よりいっそう政策を充実させていきたいです。

※本記事に掲載している企業情報、所属及びインタビュー内容はページ公開当時のものです。
※カメラを通じて取得する映像は管理者および、映像閲覧が必要な担当者のみで閲覧しています。法令に基づく場合を除き、第三者提供は致しません。また、映像の活用は事前に特定した利用目的に必要な範囲で行い、被撮影者個人を追跡することは行いません。

お話を伺った方

藤沢市役所


市長室
共創推進課
主査
小野 広士郎さん


都市整備部
藤沢駅周辺地区整備担当
主任
大山 健太朗さん