PoE(Power over Ethernet)は、LANケーブルを使って電力供給ができる利便性の高い技術です。しかし、PoE規格はすべて同じものであると思っている方も多いのではないでしょうか。実は、PoE規格は2003年にIEEEより発表されてから何度かアップデートされています。それぞれ「PoE」「PoE+」「PoE++」のように名称も異なりますので、PoE規格の違いについて正しく理解しましょう。
目次
PoEとは?
PoEとは、イーサネットのLANケーブルを使って、ネットワーク機器に電力を供給する技術です。機器設置の際に電源工事の必要がなく、コンセントのない屋外でもかんたんに設置できるメリットがあります。
「PoEスイッチ」「PoEインジェクター」「PoEパススルー」などのPoE技術を搭載した製品の種類があります。
PoEの規格について
PoEには、IEEE(米国電気電子学会)が定めた複数の規格、それを拡張したシスコシステムズ社の規格やHDBaseTアライアンスの規格などがあります。時代とともにアップデートされており、規格の種類によって最大電力や対応ケーブルなどが異なります。
主なPoE規格の一覧
通称 | 規格名 | 供給電力 | 対応ケーブル | 特徴 |
---|---|---|---|---|
PoE | IEEE 802.3af | 最大15.4W | カテゴリ3以上 | 2003年に発表された初期の規格 |
PoE+ | IEEE 802.3at | 最大30W | カテゴリ5以上 | 2009年に発表された、PoEの拡張版 |
PoE++ | IEEE 802.3bt | 最大100W(Type4)/最大60W(Type3) | カテゴリ5以上 | 2018年に発表された最新規格 |
UPoE | – | 最大60W | カテゴリ5以上 | 2011年に発表されたシスコシステムズ社がPoE+を拡張した独自規格 |
PoH | – | 最大100W | カテゴリ5e以上 | HDBaseT アライアンスがPoE+を拡張した規格 |
LTPoE++ | – | 最大123W( UltraPWRモード)/ 最大90W | カテゴリ5e以上 | リニアテクノロジー社(現:アナログ・デバイセズ社)が2014年に発表し、2017年には最大123WのUltraPWRモードも登場した |
PoE(IEEE 802.3af)
PoE(IEEE 802.3af)は、2003年にIEEEから発表された初期のPoE規格です。最大15.4Wの電力供給が可能で、主にIPカメラや認証装置などの用途で使用されてきました。
4対のツイストペアケーブルのうち2本をデータ通信用に用いて、残りの2本を電力供給用として利用します。
PoE+(IEEE 802.3at)
PoE+(IEEE 802.3at)は、2009年にIEEEから発表されたPoEの上位互換規格です。最大30Wに増加し、高機能なIPカメラやIP電話にも利用範囲が拡大されました。
PoE++(IEEE 802.3bt)
PoE++(IEEE 802.3bt)は、2018年にIEEEから発表された最新のPoE規格です。Type3とType4の2種類があり、最大100Wの大電力供給を実現しています。パソコンや4KネットワークカメラなどにもPoEで給電が可能になりました。
4対のツイストペアケーブルすべてで通信と電力供給が可能になり、飛躍的に電力供給能力が向上しました。
Cisco UPOE
UPOEは、2011年にシスコシステムズ社から発表されたPoE+を拡張した独自規格です。主にシスコシステムズ製のネットワーク機器に採用されており、PoE++(Tyep3)相当の60Wの電力供給が可能になりました。
PoH(Power over HDBaseT)
PoHは、HDBaseTアライアンスから発表されたPoE+を拡張した規格で、PoE++(Type4)相当の100Wの電力供給を実現しました。「HDBaseT」とも呼ばれ、初期仕様のHDBaseT 1.0から2013年にHDBaseT 2.0 、2019年に最新のHDBaseT 3.0 を発表しています。
HDBaseTアライアンスとは、 LG エレクトロニクス、サムスン エレクトロニクス、ソニー ピクチャーズ エンタテインメント、ヴァレンスによって2010 年に設立された団体です。
LTPoE++
LTPoE++は、2014年にリニア・テクノロジー社(現:アナログ・デバイセズ社)から発表された最大90Wの規格で、2017年には最大123WのUltraPWRモードを搭載した製品も発売されました。
PoEの種類
PoEで給電するには、ネットワーク機器がPoE対応であるだけでなく、PoEスイッチやPoEインジェクターなどの専用機器が必要です。ここでは、代表的なPoEの機器の種類について解説します。
PoEスイッチ
PoEスイッチは、PoEで給電できるスイッチングハブです。PoE対応のIPカメラやモニターなどをLANケーブル1本で接続するだけで使えるようになります。スイッチングハブがPoE機能を搭載しているため、もっともシンプルでスマートな配線が可能です。
PoEスイッチについては別記事で解説していますので、詳しくはこちらをご覧ください。
PoEインジェクター
PoEインジェクターは、既存のネットワークに外付けでPoE機能を搭載する機器です。PoE機能を搭載しないスイッチングハブなどと接続することで、PoEを利用できるようになります。
ただし、スイッチングハブにPoE機能を搭載できるわけではなく、PoEインジェクターに接続した機器だけに電力供給する点には注意が必要です。またポート数があまり多くない点も考慮しなければなりません。
PoEインジェクターについては別記事で解説していますので、詳しくはこちらをご覧ください。
PoEパススルー
PoEパススルーは、PoEスイッチのケーブル長(最大100m)をさらに延長する中継装置です。PoEの延長は一般的なハブでは実現できず、PoEパススルーを用いて延長しなければなりません。
PoEで防犯カメラを接続する方法
PoEを使った防犯カメラシステムは、PoEスイッチまたはPoEインジェクターを導入することによって実現できます。基本的な接続手順は次のとおりです。
- PoEスイッチ/PoEインジェクターをコンセントに接続
- PoEインジェクターは、スイッチングハブとLANケーブル接続
- 防犯カメラを設置位置に取り付け
- 防犯カメラとPoEスイッチ/PoEインジェクターをLANケーブルで接続
これだけの手順で、基本的なPoEスイッチの給電を実現できます。ただし、ネットワーク機器として使用するためには、別途IPアドレスなどのネットワーク設定が必要です。設定方法は機種によって異なるため、製品マニュアルを参照しながら適切に行ってください。
まとめ
PoE規格の違いによる給電能力の違いやPoEの種類、防犯カメラでの活用方法について解説しました。PoEは規格によって最大供給電力やケーブル対応が異なるので、目的に合わせた規格選びが重要です。また、PoEスイッチやPoEインジェクターを状況に応じて使い分けることで、効率的なPoEシステムを構築できるでしょう。
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