2022年4月よりスタートした遠隔点呼制度。対面点呼に代わる新しい運行管理制度として、自動車運送事業者さまに注目されました。しかし、乗務後自動点呼との違いや、道路運送法施行規則等の一部の改正が2023年4月1日より施行されることにより、「遠隔点呼制度がよくわからない」というお声があがることも。
今回のWebセミナーの第一部では、行政書士法人シグマの阪本さまをお招きし、遠隔点呼制度の始め方についてわかりやすく解説いただきます。
また、第二部では、遠隔点呼を実現するサービスとして、総合クラウド点呼システム「IT点呼キーパー」や、クラウド録画サービス「Safie」の活用事例をご紹介していきます。
(※2023年7月12日の行政書士法人シグマさま、テレニシ株式会社さまおよびセーフィーで共催した【今更聞けない! 遠隔点呼の始め方と活用術】と題したセッションより、内容と資料を抜粋しています。遠隔点呼についての最新の情報は国土交通省の公式HPでご確認ください)
教えて!遠隔点呼制度
話してくれる人
行政書士法人シグマ 代表行政書士
阪本浩毅(Sakamoto Hiroki)氏
一般社団法人運輸安全総研トラバス 代表理事
一般社団法人日本事故防止推進機構 事故防止アドバイザー
都内の司法書士法人・行政書士法人にて企業法務に従事。行政書士として独立後は、運輸業専門として数多くの一般貨物自動車運送事業・貨物利用運送事業・倉庫業に関する許認可法務に関与。現在は行政書士法人の経営を行いながら、運輸業の許認可法務の実務家として活動中。
遠隔点呼とは
遠隔点呼とは、自動車運送事業者が、実施要領で定める要件を満たす機器・システムを用いて遠隔拠点間で行う点呼のことです。遠隔点呼をした場合、運転者が所属する営業所の運行管理又は補助者による対面での点呼が行われたものとして取り扱われます。
運転者の確保が大変なこのご時世に、運行管理者・運行管理補助者の確保までするのはかなり大変という実情があり、国が「遠隔点呼」という制度をつくりました。
「遠隔点呼」とは、国土交通省の告示で下記のように定義されています。
旅客自動車運送事業運輸規則及び貨物自動車運送事業輸送安全規則の規定に基づき、事業者が、機器を用いて、遠隔の営業所又は車庫にいる運転者に対して行う点呼をいう
対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示 第2条(用語)第1号
遠隔点呼とは別の制度「業務後自動点呼」
混ざってしまいがちですが、遠隔点呼と「業務後自動点呼」は別の制度です。
「業務後自動点呼」とは、下記のように定義されています。
旅客自動車運送事業運輸規則および貨物自動車運送事業運輸安全規則の規定に基づき、事業者が、機器を用いて、事業者自動車の運行の業務を終了した運転手に対して行う点呼をいう
対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示 第2条(用語)第2号
遠隔点呼が実施できる2地点間
遠隔点呼ができる2拠点間がどこかということは、先述の告示の中で定められています。
- 1.自社営業所と当該営業所内の車庫との間
- 2.自社営業所の車庫と当該営業所内の他の車庫との間
- 3.自社営業所と他の自社営業所との間
- 4.自社営業所と他の自社営業所内の車庫との間
- 5.自社営業所内の車庫と他の自社営業所内の車庫との間
ここまでは自社内の話ですが、遠隔点呼はグループ会社、親会社と子会社であったり、子会社同士でもできるという制度です。
- 6.自社営業所と完全子会社等の営業所との間
- 7.自社営業所と完全子会社等の営業所内の車庫との間
- 8.自社営業所内の車庫と完全子会社等の営業所内の車庫との間
ただ、こちらの場合も厳密にできる範囲が告示で定められており、親会社が子会社の議決権の全部を保有している必要があります。
遠隔点呼制度のルール変更
2023年4月1日より、遠隔点呼制度のルールが変更されています。
遠隔点呼を実施するメリット
移動時間の削減
営業所と車庫が離れている場合など、運転者や点呼執行者が点呼のために行ったり来たりする時間を削減できるというのがあります。2024年問題が控えていることもありますし、労働時間を削減していかなければいけないということもありますので、無駄な移動時間をカットできるというメリットがあります。
点呼執行者をシェアできる
どうしてもある拠点にだけ点呼できる人が集まってしまうケースがあると思います。そういう時に営業所間、親会社と子会社、子会社同士で点呼執行者をシェアできるメリットがあります。
点呼の「質」を標準化できる
遠隔点呼を運用する上では、統一されたルールを作る必要がありますので、点呼執行の「質」を自社内やグループ内で標準化できるという副産物もあります。
遠隔点呼を取り入れる際の課題
遠隔点呼はとても便利な制度ではありますが、導入に際して課題もあります。
システムの導入
遠隔点呼の要件に対応した機器やシステムを導入しなければならない、というハードルです。
要件の遵守
遠隔点呼を実施するにあたっては、要件を遵守して継続しなければいけません。
代替措置
機器やシステムの不具合等で遠隔点呼が実施できない場合には、対面点呼の実施などの代替措置を講じる必要があります。遠隔点呼をするからといって運行会社さんの専任義務がなくなるわけではないので、対面点呼などに切り替えて対応する必要があるということです。
対面指導の機会減少
点呼の場で、運転者とコミュニケーションを取っている運送会社さんが多いと思います。遠隔点呼を取り入れることによって、対面での指導教育の場が減ってしまうのではということがあるので、別の場でコミュニケーションを取る必要があると思います。
遠隔点呼の始め方
遠隔点呼は、営業所を管轄する運輸支局へ実施届出を提出することにより導入することができます。そこで、提出する届出書を見ていただくとわかる通り、宣誓事項というものにチェックをしなければなりません。
宣誓事項には、「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示(令和5年国土交通省告示第266号)に規定されている要件を遵守します。」とありますが、ここでいう要件とは何でしょうか。
遠隔点呼の実施にあたって満たすべき要件をこれからくわしく説明していきます。
要件とは?
対面による点呼と同等の効果を有するもの、というのが遠隔点呼の本質である、と先ほどお話ししました。この本質を見失わないように、遠隔点呼を実施するために満たすべき要件を見ていききましょう。要件は大きく分けて3つの項目があります。
●機器・システム要件
●施設・環境要件
●運用上の遵守事項
機器・システム要件の詳細
まずは、スライドを参照ください。
ポイントに絞って解説していきたいと思います。
まずは、1番目です。機器やシステムが、映像と音声の送受信により通話できる方法によって、随時明瞭に確認できる機能を有することが必要になります。
2番目はアルコール検知器の設置です。3番目はなりすまし防止をする必要があるということです。これは運転者だけでなく、運行管理者側の双方に生体認証機能が必要になってきます。
5番目は、運転者の健康状態のチェックをする上で、血圧計を連動させるケースが多いです。
さらに、6番、日常点検の結果がわかるように、日常点検の記録を目の前のカメラに示して、点検できていますよというチェックを行うということですね。
あとは、8番目。遠隔点呼をしたことの記録すべき事項が定められています。ほぼほぼ対面点呼と変わりませんが、ポイントになってくるのは点呼執行時のアルコール検知機能使用時の動画など。これらの記録を1年間保存する機能が必要と定められています。
9番目以降が遠隔点呼特有の項目になっていて、遠隔点呼機器が故障した場合に、故障発生日時と故障内容を電磁的方法によって記録し、さらにその記録を1年間保存する必要があります。
10番目、これは記録されている項目が修正もしくは消去できない機能を有することを定めています。そして、11番目、遠隔点呼の保存された情報がCSV形式で吐き出せることが求められています。ここまでが機器・システムの要件となります。
テレニシ株式会社さまの「IT点呼キーパー」を使用した場合、上記の要件を満たした機器・システムの見かけはこのようになります。点呼執行者側は比較的シンプルですが、運転者側はアルコール検知器や血圧計などがあり、機器が多くなります。
施設・環境要件
こちらの項目の中のポイントは、2項目のなりすまし防止です。実施場所の天井などに防犯カメラを設置して、確認ができるようにしておかなければいけないということです。
「天井じゃないとだめ?」という質問をいただくことが多いのですが、天井でなければいけないというよりも、死角があることが問題になるので、その観点からいくと天井に防犯カメラを設置するのが理想だと思われます。
天井等に設置する防犯カメラ映像の保存期間は定められていないのですが、遠隔点呼の記録関係の保存期間が1年間保存となっているので、監査対応の観点からすると1年間保存しておくほうが良いでしょう。
天井へのカメラ設置例を参考までに添付します。
運用上の遵守事項
運行上の遵守事項は、以下のスライドを参照ください。
遠隔点呼を実施するまでの流れ
遠隔点呼を実施するまでの流れは、上記で解説した「25項目の要件の確認」、それから「環境整備」、「届出書の提出」、「遠隔点呼の実施」の4ステップになります。
届出書の提出
「遠隔点呼の実施に係る届出書」の提出先は、遠隔点呼を実施側及び非実施側双方の営業所を管轄する運輸支局保安部門です。
遠隔点呼の実施を予定している日の原則10日前までに提出しましょう。また、提出部数は2部(正本1部、事業者控え1部)です。
添付書面
●「機器・システム要件」「施設・環境要件」が確認できるパンフレット等
実際に導入する機器やシステムのパンフレットであったり、すでに設置が終わっている場合は写真などを添付し提出するのが良いでしょう。
●子会社等との間で遠隔点呼を行う場合は株主構成がわかる書類
自社内だけではなく、完全子会社等との間で遠隔点呼を実施する場合は、事業概況報告書や株主名簿など、株主構成がわかる書類を添付しましょう。
遠隔点呼の導入・運行に関して
遠隔点呼に関する情報は、国土交通省の「運行管理高度化検討会」ホームページに記載がありますのでご参照ください。また、こちらのページに要件のチェックリストがありますので、こちらもご活用ください。
事前相談は不要ですが、法令重視の観点から導入や運用に際して不安があれば、運輸支局の保安部門に相談しながら実施を行いましょう。
IT点呼キーパーとクラウドカメラを用いた遠隔点呼の活用事例
実際に遠隔点呼を導入する場合に必要な遠隔点呼システムとカメラについて紹介いたします。
話してくれる人
テレニシ株式会社 ソリューション営業二部
武藤一紀 氏
総合クラウド点呼システム「IT点呼キーパー」
テレニシ株式会社の提供する「IT点呼キーパー」は、対面点呼、電話点呼、IT点呼、スマホ点呼、遠隔点呼、全ての点呼の記録をクラウド上で管理ができるシステムです。
※1 IT点呼の実施には原則Gマークの取得が必要です。
※2 「遠隔点呼に使用する機器・システム要件」に一部対応しています。IT点呼キーパーアプリケーション単体では遠隔点呼としては認められていません。
IT点呼キーパーの特徴①
IT点呼キーパーの特徴のひとつに、画面操作が簡単で使いやすいことが挙げられます。
画面の操作案内に従い、操作を行いアルコールチェックを吹くだけで、たったの1分程度で点呼を完了させることができます。
IT点呼キーパーの特徴②
IT点呼キーパーには、点呼方法を効率化するさまざまな機能が備わっています。
例えば、点呼時にアルコール検出がされた場合には、管理者さまに通知が飛ぶ機能がついています。アラートメールの送付先は営業所ごとに決めていただくことが可能です。
また、画面操作に従い点呼を実施することができますので、各営業所ごとに点呼方法を統一できるというメリットもあります。
IT点呼キーパーの特徴③
監査の際に提出が必要となる点呼簿もクラウド管理となることで、必要な時にすぐに印刷することができます。
また、パソコンとインターネット環境が整えばすぐにご利用開始いただけるため、導入のハードルが低いことも大きな特徴です。
クラウド録画サービス「Safie(セーフィー)」
Safieでは、インターネットに繋ぐだけで、Safie対応カメラにて撮影された映像がクラウドプラットフォームを通じ、お手元にあるPCやスマートフォン、タブレットなどのデバイスから閲覧できるようになります。
遠隔点呼を実施するために満たすべき要件として、改めてにはなりますが、「施設・環境要件」があります。遠隔点呼を実施する場所の天井等に防犯カメラを設置し、遠隔点呼を実施している方の全身及び使用時の状況が確認できる環境を作る必要があるのです。
この遠隔点呼を実施する場所が満たすべき要件というところで、Safieを活用できるポイントがございます。
Safieの特徴①点呼場所の全体像が把握できる
Safieの特徴②複数拠点の映像を一括管理できる
Safieの特徴③シェア機能で事業者間の点呼もかんたんに
Safieの特徴④安価かつ手軽に導入できる
最後に
遠隔点呼制度について、確認するべき要件や導入のステップをご説明しました。また、遠隔点呼を始めるにあたって必要となる点呼システムや防犯カメラの部分で、「IT点呼キーパー」や、「Safie」をご紹介させていただきました。みなさまのご参考になれば幸いです。
※2023年7月12日共催のウェビナー【今更聞けない! 遠隔点呼の始め方と活用術】の内容を書き起こしたものとなります。遠隔点呼制度についての最新の情報は国土交通省の公式HP等にてご確認ください。
(製品情報)
・総合クラウド点呼システム「IT点呼キーパー」
・クラウド録画サービス「Safie」