顔認証で入退室が可能になる「Safie Entrance」を導入! “レガシー”な保育業界を変えていくために必要なこと。東京児童協会 経営戦略室室長 菊地元樹 × セーフィーCEO 佐渡島隆平 対談
東京都内で認可保育園18園、認定こども園3園を運営するONEROOF ALLIANCE グループ社会福祉法人東京児童協会。今回はセーフィーCEOの佐渡島隆平とともに、Safie対応カメラの具体的な活用方法から、これからの保育業界におけるクラウド録画サービスの可能性について伺いました。
ONEROOF ALLIANCE グループ
社会福祉法人東京児童協会 経営戦略室室長 菊地元樹
(取材2020年8月)
導入の決め手
- 映像が綺麗で録画の確認も簡単
- カメラの形状が可愛らしく、職員や保護者からも好印象
導入目的
- 職員の業務時間の管理
- 防犯
- 保護者の入退園の確認、ドアの解錠
導入した結果
- 保護者とのトラブルの抑止につながった
- 園内で起きる人的トラブルを未然に防ぐことも
- 児童の送り迎えのたびに、保護者を確認して門をあけるために職員が一日拘束されていたがSafie Entranceの顔認証で保護者を判断、ドアの施錠を自動で対応することで負担を大幅に軽減。
INDEX
ONEROOF ALLIANCEグループ 社会福祉法人東京児童協会は、90年の歴史を持ち、都内に21箇所の保育施設を展開・運営する都内最大級の社会福祉法人です。それぞれの園ごとに特徴的なコンセプトが設定されている園舎デザインや、VR床面のある園などが業界内外で話題を集めています。
保育施設の運営にあたり職員は子どもから目を離さずに複雑な業務を行う必要があります。そんな現場の負担を軽減するために導入されたのがSafieのカメラでした。菊地さんにSafie導入の経緯について伺いました。
菊地さん:最初は職員の業務時間の管理をするために事務所に1台だけ導入していたのですが、映像も綺麗で録画の確認もしやすい。そのため、現在では防犯対策や業務管理などの目的で全21園に導入しています。
菊地さんは、簡単に設置できて防犯施策のアピールにもつながっているので、保護者の方からも評判がいいと話します。また、カメラの形状も可愛らしいので職員や保護者からの印象が良いそうです。
カメラが設置されたことで、職員の事務所内の振る舞いが改善されて職場の雰囲気もよくなったとのことで、防犯以外の場面でもカメラが役立っていると言います。
菊地さん:園内では、過去に備品が壊れてしまうトラブルがあったので、園の入り口から事務所までを確認できるようにしました。Safieのカメラのおかげで同じようなトラブルがなく改善されたので、職員の心労が減りましたね。
大勢の子ども、大人が出入りする保育園では大小、様々なトラブルがつきものです。トラブル解決の際、重要になるポイントが正確な記録です。職員や子供の状態をしっかり記録しておくことで、トラブルの解決だけではなく、問題を未然に防ぐことにも役立っています。
現状は事務所やエントランスなどに2〜3台の導入をしていますが、いずれ園内いたるところにカメラを設置していきたいですね。
顔認証で入退室が可能になる「Safie Entrance(セーフィー エントランス)」を導入
東京児童協会では、ハンズフリーの顔認証で入退室を行える管理システム「Safie Entrance」も導入いただいています。
菊地さん:保育園には、保護者の入退園を確認して門を開ける「ピンポン番」という役割がありました。人が出入りするたびに応答する必要があり、職員1人がその確認のためだけに朝から晩までにつきっきりになることがあったのでとても大変でした。
佐渡島さんにご相談したところSafie Entranceを提案していただき、2019年6月に開園した「目黒三田保育園キミトミライト」に導入しました。顔認証だけで保護者が通れるようになったので、とても楽になりましたね。その後の新規開園の2園にも導入しています。
「職員や親御さんの反応としても、面倒くさくなくていいのでポジティブな反応が多いです」と話す菊地さん。セーフィーでは導入いただいている企業の相談からサービス・製品開発に繋がることが多くありますが、この「ピンポン番」のエピソードは、入退場のログを映像で残すだけではなく鍵の開閉までできるサービスにしようと決めたきっかけでした。
佐渡島:ご相談をいただいた時点では「Safie Entrance」のサービスはまだ存在しませんでした。それ以前から社内では顔認証での入退出を実証していましたが、お客さんに提供する環境がなかったので試行錯誤しながら導入させていただきました。保育園は人に配慮し続けなくてはならない現場です。少しでも現状を変えていかないといけないと思いましたね。
デジタルから遠い業界にこそ、可能性がある
菊地さん曰く、「保育業界のデジタル化は進んでいないのが現状です」とのこと。東京児童協会では、管理アプリの導入など積極的なデジタル施策の導入に取り組んでおり、職員が保育業務に集中できるような環境整備を行っています。保育業務のデジタル化について佐渡島はこう話します。
佐渡島さん:使い手にデジタル化を意識させずに業務をサポートできればと思っています。使い手にテクニックが求められるテクノロジーは快く思われないので、環境に溶け込んで、気づいたら効果が出ているテクノロジーのほうが可能性があると思います。
保育業界は「人が直接やるもの」という前提があったため、デジタルが必要とされてきませんでした。セーフィーはITやデジタルを得意とする業界の方よりも、むしろ得意ではないデジタルから遠い世界の人が抱える問題を解決していくことが、わたしたちの目指すひとつの方向性ですね。
保育士のノウハウをいかすテクノロジーの可能性
セーフィーとの連携をより強めたいと語る菊地さん。テクノロジーを活用することで、保育園が持つノウハウも外部に発信していきたいと話します。
菊地さん:我々には家庭にはないレベルの乳児・幼児教育のノウハウがたくさんあります。首が座ったあとに寝返りをうつようになったり、はいはいを覚えたあとにつかまり立ちを覚えたりと、発育の順番には基本的に連続性があります。それはAIでも判別できることなので、保育士が持つ乳児・幼児の発育に対する知識、技術、判断などのノウハウを共有して、一般の家庭での子育てに役立つように社会に還元していきたいですね。
保育業界は慢性的に人手不足で、保育士が全く足りていない状況にあります。その障壁になっているのは保育士の専門性です。個々人の経験や知識・技術の差を埋めるようなテクノロジーの活用が求められますね。
他業界でも専門的な暗黙知を職員教育に活用されている事例があると佐渡島は続けます。
佐渡島:建設業界には応用事例が多いです。配電位置や部材設置箇所、施工手順をタイムラプスで共有の動画にするなど、基本的な工程は映像を通して教育できます。
以前教育現場の方から、アクティブ・ラーニングの重要性を伺うことがありました。先生は一方的に教える役割から、インタラクティブな場をつくる役割に変わり始めています。アクティブラーニングのためのテクニックはまだ共有できていないので、ノウハウを共有できるようなデータベースなどは必要かもしれません。
子どもの安全と自由な発育のために
保育園は保育以前に人の命を預かる仕事。常に子どもに目を配り続けなくてはなりません。菊地さんも職員の人手をもっと分散できるような状況にしていきたいと語ります。そして、今後求められるシステムについて次のように語ります。
菊地さん:まずは園内のどこに子どもがいるのかを確認・管理できるシステムが必要だと考えています。園児同士の喧嘩や事故、脱園など人の目がないと未然に防ぐことが厳しい場面がいくつもあります。ただ、全員を細かく見ていくことはとても難しいので、園児の行動記録をして職員の配置に役立てたいですね。
また、いま教育に求められているのは全員を前ならえで従わせることではなく、個人が自主的に活動できる場をつくることです。園児それぞれの特徴や興味関心を伸ばしてあげられるような目的で、映像を活用できるとうれしいですね。
菊地さんは「先生が一括管理せずとも子どもたちが主体的に動ける場をつくることは、1人の先生では限りなく不可能です。ここを突破できれば日本の教育全体も変わっていくと思います」と続けます。
Safieのカメラは小売店での行動解析にも活用されています。「要素技術的にはすでにあるため、Safieを組み合わせることで実現可能かもしれません」と、佐渡島は応答します。
佐渡島:人の生命に関わるような危険エリアへの侵入や脱園防止などをAIで感知できるように、映像を活かせると良いですよね。映像技術以外にも、園内の環境音から園児同士が喧嘩している状況を見極めるといった目的にも活用できそうな「音声解析技術」の技術は世の中にありますが、つながったサービスになっていないのが課題としてあります。今後セーフィーではAPIを公開することで様々な技術が融合したアプリケーションがうまれると考えています。
喧嘩の発生が確認でき次第、先生に通知が届くシステムも実現不可能ではありません。
現場で重荷を背負っている人の問題を解決していきたい
「各業界の方と話していくなかで、それぞれの業界が抱える課題点に気づけることがたくさんある」と佐渡島は言います。なかでも保育業界では、0歳児のうつ伏せによる窒息やSIDS(乳幼児突然死症候群。乳児が事故や窒息ではなく、眠っている間に突然死亡してしまう病気)を事前に防ぎたいとの相談は多いと話します。
菊地さん:SIDS予防のために、うつぶせ寝防止、禁煙の徹底、母乳育児が推奨されています。保育園ではうつぶせ寝になっていないかどうかを職員が5分ごとにチェックするため、とても大変なんです。AIでうつぶせを確実に防げるとなると、保育現場の労働環境は変わっていくと思います。
佐渡島:セーフィーのAI開発のテーマに真偽判定があります。例えば、うつむいている人がいるかどうかを判定して、それが一人でもいた場合は通知が行くようなシステムの開発に取り組んでいます。もちろん、完全に判別しきることは難しいため、AIの判定がすべてとは思わないでほしいですが人の命に関わることなので、品質を上げつつチャレンジしていきたいですね。
佐渡島の回答を受けて、菊地さんは「ある程度のアラートだけでも業務が大幅に楽になります。子どもが危ないエリアに立ち入ったときに通知がくるようなヒヤリハット対策にも使えたらいいですね」と期待を語りました。
最後に佐渡島が今後の保育業界でのセーフィーの取り組みについて話しました。
佐渡島:近い将来、セーフィーでAPIサービスを展開していく予定ですので、うつぶせ判定や物体検出と音声検出を組み合わせた園児の管理システムが実装できれば良いですね。課題によって解決できることとできないことはありますが、保育業界の不の側面を少しでも軽減できれば社会解決にも貢献できると思います。
セーフィーでは業界の不を見つけて、現場で重荷を背負っている人の問題を解決していきたいと考えています。先生の負担を減らし園児の教育に集中できる環境を実現して、最適な園の運営を実現するツールに発展していければいいですね。
※本記事に掲載している企業情報、所属及びインタビュー内容は、2020年8月公開当時のものです。