持続可能な「食」の未来をつくる
陸上養殖プラントの立ち上げにクラウドカメラを活用
関西電力×IMTエンジニアリングが設立した「海幸ゆきのや」は、食のサステナビリティを目指し、国内でエビの陸上養殖を手がける会社です。同社では養殖プラントの建設現場にクラウド録画カメラ「Safie GO」を導入。その背景や効果、今後のカメラ活用について伺いました。
(取材:2022年11月)
導入の決め手
- 活用範囲が広く、複数の課題を解決できるツールだったから
- カメラの性能が高く、可用性や操作性も優れていたから
導入目的
- 陸上養殖の効率的なノウハウ蓄積、共有
- 商談・PR用の映像撮影
- プラント建設現場の遠隔サポート
導入した結果
- 映像による遠隔サポートでスムーズに施工管理ができた
- 映像により、プラント建設のノウハウを効率的に蓄積、共有できた
- 映像によるノウハウ共有で施工会社とのコミュニケーションが円滑になった
- PR用の素材をストックできた
- DXに対する現場の主体性が高まった
INDEX
エネルギー分野にとどまらない価値を顧客と社会に届けるべく、先端テクノロジーを取り入れて次代の産業創造に取り組む「関西電力株式会社」。
その一環として同社がチャレンジしている新規事業が、国産エビの陸上養殖です。
同事業では新潟県妙高市に本社を置く陸上養殖事業者「IMTエンジニアリング(以下、IMTE)」と共同出資し、2020年10月に「海幸(かいこう)ゆきのや合同会社(以下、海幸ゆきのや)」を設立。静岡県磐田市に、日本最大級のエビの陸上養殖プラントを建設しました。
2022年7月に竣工した同プラントでは、施設の施工時にクラウド録画カメラ「Safie GO(セーフィー ゴー)」を活用。施工期間中の活用方法や導入メリット、今後の陸上養殖事業におけるカメラ活用について、関西電力経営企画室の津田 慧さんにお話を伺いました。
陸上養殖の国産エビで市場参入。サステナブルな食料自給の水平展開を目指す
──はじめに、「海幸ゆきのや」の事業内容についてお聞かせください。
津田さん:私が所属する関西電力の経営企画室イノベーションラボでは、エネルギー分野の周辺領域でイノベーティブな新規事業を開発・推進しています。
関西電力には、「『あたりまえ』を守り、創る」という経営理念がありますが、社会情勢の変化とともに「あたりまえ」も変化します。その変化をいち早くキャッチし、暮らしや社会に価値をお届けするのが私たちのミッションで、現在取り組んでいる領域の1つに食領域があります。
「海幸ゆきのや」は、この食領域で約95%を輸入に頼るエビ市場に参入すべく立ち上げた、バナメイエビの陸上養殖を行う会社です。
2022年7月には静岡県磐田市に陸上養殖プラントが竣工し、「幸(ゆき)えび」のブランド名で生産・加工・販売事業を本格的にスタートさせました。
──「幸えび」はクルマエビにも匹敵するおいしさだと評判ですね。
津田さん:ありがとうございます。共同出資会社であるIMTEは、陸上養殖のすぐれた知見を持っています。「幸えび」はその技術を生かし、抗生物質、保存料を一切使わずクリーンな環境で育てており、味、品質ともに自信があります。
ですが、「海幸ゆきのや」はエビの生産・販売事業者にとどまるつもりはありません。
陸上養殖は、海洋汚染などの環境負荷、高まる魚介類需要、漁獲規制強化の解決策として、SDGsの観点からも意義ある事業といえます。
ですから、ゆくゆくは陸上養殖プラントの建設から運用まで、私たちが蓄積したノウハウを水産業界に水平展開し、地球環境と人々の生活に寄与していく。そうしたサステナブルな食料自給のスキームづくりが、「海幸ゆきのや」の真のミッションと捉えています。
PR、ノウハウ蓄積、遠隔管理、中期課題から足元の課題まで、Safieカメラで解決
──静岡県にある陸上養殖プラントの建設現場では、Safie GOを導入いただきました。カメラ導入にはどのような背景があったのでしょうか?
津田さん:今回のプラント建設は2021年2月に着工し、基礎工事が始まる同年5月にSafieカメラを導入しました。
事業スタートにあたっては、中期的に2つの課題感がありました。1つは、私たちは新規参入者であるため、効率よくノウハウ蓄積する必要があったこと。もう1つは、現状では陸上養殖の認知度が低く、産業化にはPRの必要があったことです。
加えて、当面の課題としてあったのが、プラント建設における現場との距離と施工管理体制です。
今回は、協力いただく複数の施工会社をまたいだ施工管理を海幸ゆきのやが担っていました。しかし、関西電力出身のメンバーは大阪、IMTE出身の担当者は新潟にいて、建設現場は静岡県です。陸上養殖のプラント建設は独自の知見を要するので、本来ならつきっきりでサポートしたいところですが、私たちが現場に行けるのは週に1~2回という状況でした。
そこで、「遠隔から施工管理する」「効率的にノウハウ蓄積・共有を行う」「PR素材を得る」という、中期課題と足元の課題解決を3つとも果たせる方法を探していました。
そんなときに社内でSafieカメラを紹介され、「これなら1つのツールで複数課題を解決できそうだ」と思い、導入を決めたのです。
──プラント建設現場では、カメラをどのように活用していらしたのですか?
津田さん:ノウハウ蓄積および遠隔管理用のカメラは、進捗状況に合わせて画角や設置場所を変え、作業の様子をスポット撮影していました。
Safieカメラは移動が容易で、パン・チルト・ズームも管理画面でコントロール可能です。画像も鮮明ですし、PCでもスマホでも視聴できるので非常に便利でした。
またPR用には、現場を俯瞰するところに設置したカメラでタイムラプス映像を撮影しました。
──カメラで、当初期待されていた効果は得られましたでしょうか?
津田さん:はい、とても満足しています。
ノウハウ蓄積は、クラウド型の業務アプリを使いテキストや写真でも蓄積・共有していますが、映像があるとわかりやすさが格段に上がります。
難度の高い設備設置工事などでは、次回以降の参考になる貴重な映像をストックできました。それに、施工会社に映像を見てもらえば工事内容のミスコミュニケーションを防げますし、見積もりも出しやすくなります。
PR面ではPR動画の素材としてだけでなく、商談の場でも映像を使っています。クライアントにお見せすると「事業が動いている」という実感を持ってくださり、商談がスムーズになるんです。
もちろん、工事の遠隔管理にも役立ちました。計画通りに進んでいるか映像で随時確認しながらコミュニケーションを取り、現場に行けないときも円滑に進めることができました。
カメラをフル活用してDX化に拍車をかけ、一次産業を盛り上げたい
──当初の目的以外で、Safie導入によって生まれた変化はありましたか?
津田さん:現場から「こんな使い方をしてみたい」という声が上がるようになりました。
その一例が、今後の養殖作業の効率化です。エビを育てる作業員の動線を映像で分析し、生産性の高いオペレーション構築に生かすことを考えているのですが、これは現場の社員から出てきたアイデアなんです。
実際にカメラを使って性能や使い勝手のよさがわかり、積極的に活用しよう、ひいてはDX化に拍車をかけようという意識が高まったのは大きなメリットだと思います。
──最後に、映像を活用した今後の展望をお聞かせください。
津田さん:今申し上げた、映像を生かした最適なオペレーション構築が1つ。ほか、無人の時間帯に使うオートメーション設備に不具合が起きた場合、原因特定の資料として映像を使うことも考えています。
今回Safieを導入してみて、映像は一次産業を盛り上げていくのに非常に有益だと感じました。カメラの有効活用で生産性を追求し、高品質でサステナブルな日本の食料自給を実現するのが、今、私が考える理想です。
「映像で解決できそうなことはセーフィーさんに相談」と思っていますので、ぜひ、開発中のサービスのトライアルなどにも参加させていただきたいですね。そして、目指す理想の実現に向かって一緒に進んでいけたらと思っています。
お話を伺った方
関西電力株式会社
経営企画室 イノベーションラボ
津田 慧さん