24時間体制で、より多くの動物を救う。
クラウドカメラ設置で円滑な動物病院の運営に。
日本動物医療センターは常に最先端の動物医療を追い続けている、日本初の総合動物病院です。
「想いをもって常に安心を提供する」という理念のもと、24時間診療、24時間看護を受け付けています。
(取材:2017年1月)
導入の決め手
- 必要かつ十分な機能を安価で利用できるから
- 過去に設置した従来のアナログカメラと比較して解像度が高く、映像が綺麗だったから
- フランチャイズ展開する際に、防犯とオペレーションチェックの面から利便性を感じたから
導入目的
- 複数階にわたる病院施設内を一括で確認。誰がどこにいるかすぐ確認するため
- 待合室での動物同士のトラブル防止のため
導入した結果
- 各フロアを回らずとも、人を探せるようになり、業務効率化に繋がった。
- 待合室の飼い主さん・動物同士のトラブル防止になった。
- 部品や器具の紛失防止、手術中の記録に。
- 若い医師の説明が正しいか、コミュニケーションが上手に取れているか確認し、フィードバックできるようになった。
INDEX
「それぞれが得意分野を持ち寄り、どんな動物の病気にも対応できるように」
日本動物医療センターは1969年に開業した、50年近くの歴史を持つ動物病院です。地下二階から地上四階まである大型病院で、スタッフ数は全体で約55名。その中で約20名以上の獣医師の先生が活躍されています。
最近になって、病院を全面リニューアル。病院の受付、待合室、診察室、隔離室などの各場所にセーフィー対応カメラを約40台設置されました。
日本動物医療センターのリニューアル後のコンセプトは、「動物がストレスなく過ごせる病院」。
犬、猫、そしてうさぎが入院するフロアを分けることで、動物が他の動物に与えてしまうストレスを減らすことを目指しました。
その取り組みが評価され、「キャット・フレンドリー・クリニック」のゴールドレベルを認定。同認定は、猫にやさしい動物病院を、設備や動物の扱い方という評価基準で選ぶ国際基準です。
新しい医療のあり方を追求している日本動物医療センターですが、動物病院の中でもこのように大規模の病院は珍しいそうです。チームで動物医療に取り組む背景を、上野先生は次のように語ってくれました。
上野院長:20世紀は、獣医師ひとりでほとんどの動物の治療ができてしまう時代でした。でも今は動物医療が発展し、その専門性は高くなっています。自分の専門分野を伸ばしていくと、どうしても他の領域が手薄になってしまうんですね。それぞれが得意分野を持ち寄るチームを作れば、病院としてどんな病気にも対応できるようになると考えたんです。
上野院長はチームで取り組むメリットのひとつに、「24時間365日病院を開けられること」を挙げます。
上野院長:病気は待ってくれないので、24時間365日病院を開ける必要があると考えています。そのためには、ひとりの獣医師ではなく、チームで取り組むことが不可欠です。チームで獣医療に取り組むことで、24時間365日どんな病気にも対応し、より多くの動物を救えるようにしたいんです。
大型動物病院のICT(情報通信技術)活用方法とは?
大人数のチームで獣医療に取り組む際には、チームのコミュニケーションコストをいかに下げるかが重要になります。日本動物医療センターではICT活用に力を入れ、チームでコミュニケーションを図るためのグループウェアとして「サイボウズ」を導入しています。
上野院長:50人を超える人間が勤める大型病院では、グループ間で情報の断絶が起きやすいんです。グループウェアを導入することで、部署間のコミュニケーションを促進しています。グループチャットを活用すれば、その会話の中に入らなくても関係者がやり取りを確認できるので、情報共有がスムーズになりました。
デジタル上でのコミュニケーションの重要性を指摘しつつも、上野先生が重視するのは、対面でのコミュニケーション。その2つを組み合わせることで、より効率的な働き方を実現しています。
コミュニケーションツール以外にも、新しいハードウェアを導入しています。とりわけ病院の効率化に貢献しているのは、電子カルテとセーフィー対応カメラだと語ってくれました。
まず電子カルテを導入したことで、今まで手書きだった診断書が全て電子化され、集約的に管理できるようになり、スタッフ間での引き継ぎが容易になりました。また、クラウド利用のメリットとして、有藤副院長は写真共有のスムーズさを挙げました。
有藤副院長:ICT化を進めたことで、動物の写真を撮ることが増えました。動物の治療にあたる際に、どうしても言葉では表現しにくい症状もあるんです。動物の状態を写真に撮ってクラウド上に保存しておくことで、次に別の獣医師が担当する時でも、治療の進行具合がわかりやすくなりました。
クラウド化を進める中で病院全体にWi-Fiを設置。そのWi-Fiを活用することで、セーフィー対応カメラをクラウドに接続しています。
続いて、セーフィー対応カメラを導入した理由を伺いました。
上野院長:地下二階から地上四階まである大型病院では、各階にいるスタッフ間の連携や情報共有が難しいんです。他の階で行われていることが瞬時に共有できれば、業務が効率化できると考え、インカムを導入した経験がありました。しかし、勝手に音声が耳に入ってくるので、飼い主様とのお話に全力で向き合えないことや、動物を診察している際に外れてしまったりする欠点があり、結局諦めてしまいました。
そこで見つけたのが、セーフィー対応カメラです。カメラであれば、現場を邪魔することなく、適切なタイミングでコミュニケーションが取れます。カメラを導入することで、二階のスタッフロビーのモニターで全フロアを見渡し、各階のどこからでも人を探せるようになりました。
動物病院の地下二階から地上四階までを一括確認! セーフィー対応カメラ活用方法とは?
導入のきっかけは各フロアの情報共有でしたが、それ以外の目的でもセーフィー対応カメラは利用されています。実際に病院内を案内してもらいながら、その活用方法について伺っていきました。
まず、一階の受付頭上に設置されたカメラ。釣り銭の受け渡しのミスがないかの確認と、防犯・セキュリティの目的で使用しています。裏口にも病院の防犯・セキュリティの目的でセーフィー対応カメラを設置しています。
病院の二階は、スタッフロビーになっています。ここに設置してあるパソコンから全フロアの様子を確認することができます。ある先生宛に電話があった場合に、このパソコンからその先生を探したりと、各フロアを回らずとも人を探せることで、業務の効率化に貢献しています。
二階には、手術室もあります。この手術室にセーフィー対応カメラが設置されていたことで、思わぬメリットがあったのだとか。
有藤副院長:使用した機器の部品が見つからずに探していたんです。片付けの時にないことが発覚し、セーフィー対応カメラで録画されたデータを追っていくと、タオルにくるまれて別のところにしまった様子がきちんと記録されていました。細かな動きまで記録されているので、とても助かりました。
三階から上には診察室と、動物が入院している部屋があります。犬用のエリア、ネコ用のエリア、そして、うさぎ用のエリアに分けることで、動物がストレスなく快適に過ごせる環境になっています。
待合室には、飼い主さんが必要としているお手伝いをコンシェルジュが実施できるように、また動物同士のトラブルが起きてしまった場合に備えて、セーフィー対応カメラが設置されています。
診察室にも、セーフィーのカメラを設置。獣医師と飼い主のコミュニケーションの可視化に繋がっています。
感染病にかかってしまった動物用の隔離室にも、セーフィー対応カメラが設置してあります。このカメラから動物の様子を確認できるようになり、隔離室に入らずとも様子が確認できるようになり、適切なタイミングで動物の状態がわかるようになったと、有藤先生は語ってくれました。
病院内のコミュニケーションを可視化し、その質を改善していく
先ほど紹介した、診察室におけるセーフィー対応カメラの活用について、より詳細に話を伺っていきます。
診察室は動物の飼い主と獣医師のみの密室空間になりやすく、その後のトラブルに繋がりやすいそうです。とりわけ、動物の生死に関わる手術を行う場合のインフォームドコンセントはとても重要な問題です。有藤さんはセーフィー対応カメラの導入前と後の変化を次のように語ってくれました。
有藤副院長:事前に治療や手術の内容を飼い主の方にきちんと説明したつもりでも、認識の齟齬(そご)が起きてしまうことがありました。しかし、セーフィー対応カメラを導入した後は、「きちんと伝えたのか」「どのように伝えたのか」という客観的なデータが残るので、飼い主の方との話し合いを進めやすくなりました。
また、診察中に他の人が診察の内容を映像を通じて確認できるので、若い獣医師がきちんと話せているかを確認することができるようになりました。
上野院長:今後は、獣医師の伝え方の指導を徹底していきたいですね。録画された映像を使えば、話している時の身体の向きや目の位置も確認することができます。「重要な話を飼い主さんに伝える時に、PCに向かっていないか」と、録画された映像を見直して、獣医師へのフィードバックにも活用していきたいです。
上野院長は、患者とのコミュニケーションを重視する理由についても教えてくれました。2000年代は医療技術の進歩によって、動物を治療することが重要であったことに対し、2010年代以降の医療はより変化しつつあるそう。
上野院長:今では動物を治療できることは当たり前になっています。医療がコモディティ化し、獣医師の持つ知識のレベルが均一化した時に、飼い主さんとのコミュニケーションの質をあげることが求められるのではないかと考えているんです。セーフィー対応カメラを活用することで、これまでブラックボックスだった診察室での獣医師と飼い主さんのコミュニケーションを可視化し、そこの質を改善していけるのではないかと思っています。
医師として、経営者として、新しい獣医療のビジネスモデルを発明していく
医療のホスピタリティをあげるもうひとつの理由として、上野先生は獣医療のビジネスモデルの問題点を指摘します。
上野院長:従来の獣医療では、診察料が多くは1000円程度で、無料の病院も多いんです。診察は無料で、その後の検査、治療、入院、そして手術といった部分でお金がかかる仕組みになっています。つまり、動物に医療行為を行わないことが最も望ましい姿なはずなのに、医療行為をしなければお金を稼げないビジネスモデルになっています。収益を上げるために、本当は必要なかった医療行為をしてしまう獣医師がいるかもしれません。これでは医療がねじ曲がってしまいます。
上野院長は、日本動物医療センターでの取り組みを引き合いに出しつつ、解決策を次のように語ります。
上野院長:日本動物医療センターでは、診察時間に対して、相談料をいただく仕組みをスタートさせています。これは弁護士や税理士などのビジネスモデルと近く、カウンセリングやコンサルティングにも近い仕事だと思っています。飼い主さんに相談してもらい、獣医師は情報を整理して伝える。飼い主さんが安心して動物と向き合えることが大切なんです。医療行為を必ずしも行う必要はないんです。
上野院長に話を伺っていく中で、獣医師よりも経営者に近い印象を受けました。率直に、その印象について伝えてみると、上野先生は「チームで働く重要性」を指摘しつつ、次のように答えてくださいました。
上野院長:ずっと動物医療の理想の姿を考えてきたんです。自分ひとりがどんなに頑張っても、救える動物の数には限界があります。でも、自分の分身が10人いたらどうでしょう? より多くの動物を救えるはずです。チームをつくり、24時間体制で病院を経営していくことで、より多くの動物を救いたいと思っています。それが、ひとりの医師として、経営者としての自分がやらなければいけないことなんです。
※本記事に掲載している企業情報、所属及びインタビュー内容は、2017年5月公開当時のものです。