費用対効果をシミュレーションして導入へ
安全パトロールにカメラを活用。発電所をあげて労災ゼロに取り組む
「東北電力株式会社」の原町火力発電所では、安全パトロールにセーフィーのウェアラブルクラウドカメラ「Safie Pocket2」をご利用いただいています。関係会社、協力会社を巻き込みながらICTツールの活用をどのように推進したのか、導入背景や効果とともに伺いました。
(取材:2023年4月)
導入の決め手
- ウェアラブルのほか、固定カメラとして定点撮影もできる
- 設置や移設が容易で安価
- 電源のないところや狭所でも撮影できる
- クラウド録画映像の振り返り視聴、共有が手軽にできる
導入目的
- 火力発電所構内の遠隔安全パトロール
導入した結果
- 遠隔臨場と振り返り視聴の両輪で、安全が強化された
- 安全以外の活用範囲も広く、業務の高度化、生産性アップに寄与
- クラウド録画映像が特殊点検などの教育、ノウハウ継承に役立つ
INDEX
東北6県および新潟県を中心とした電力小売、発電事業等を行う「東北電力株式会社」。福島県南相馬市に位置する同社の原町火力発電所は、社員約100名の方々が働く石炭火力発電所です。2011年3月の東日本大震災では津波により壊滅的な被害を受け発電停止しましたが、懸命な復旧工事を経て2013年に営業運転を再開しました。
「発電所O&MのDX化」を計画・推進している同発電所では、セーフィーのウェアラブルクラウドカメラ「Safie Pocket2(セーフィーポケットツー)」をご利用いただいています。多くの関係者と協働する中、ICTツールをどのように利活用いただいているのか、運営企画グループ副長の真坂 孝行さん、主任の藤田 智治さんにお話を伺いました。
カメラが役立つ業務を洗い出し、費用対効果をシミュレーション。
定量的メリットを整理し、導入へ
──はじめに、おふたりが所属されている運営企画グループについてお教えください。
真坂さん:運営企画グループは、当社の火力発電所それぞれに置かれています。火力発電所の運営ビジョンを描いて中長期的な計画を立て、現場とともに推進する役割を担っており、発電原価や熱効率の管理、設備の運用性向上や業務の効率化・高度化の検討なども行っています。
藤田さん:運営企画においては、構内企業との連携強化も重要テーマの一つです。構内企業とは、発電所構内の施設や設備のメンテなどを担ってくださっている方々です。ここ原町火力発電所では、関係会社・協力会社30社ほど、約570名が構内に常駐し、私たちと一緒に日々の業務に当たっています。
──こちらの原町火力発電所では、ウェアラブルクラウドカメラ「Safie Pocket2」を導入いただいています。導入のきっかけをお教えください。
真坂さん:当所の中期計画ではさまざまな課題を取り上げており、中でも優先順位の高いテーマが「労災ゼロ」です。そこで、以前から実施している管理職中心の定期的に現場を巡視する安全パトロールに加え、担当者も含めたより多くの目で日常的かつ効率的な安全パトロールを実現するため、Safie Pocket2を導入しました。
藤田さん:Safie Pocket2は社内の他部署で活用実績がありましたし、セーフィーさんのHPで仕様や導入事例を拝見し、私たちの課題にアプローチできるツールだと直感しました。とくに魅力に感じたのは、「設置、移設が容易でイニシャルコストが安価」「クラウド管理でどこからでも見られる」「録画映像が残り、情報共有しやすい」といった点です。設備監視用に使用している既設の固定カメラには、「設置コストが高く、ローカル管理で視聴も録画も不便」という不満があったのですが、Safie Pocket2はそれらがすべて解消されるツールでした。
──導入の社内承認に向けて、工夫されたことなどはありますか?
真坂さん:安全管理強化など、カメラ導入による定性的なメリットは明白でしたが、社内承認を得るには定量的なメリットを提示する必要もありました。そこでカメラ映像を活用できる業務を一つひとつ洗い出し、課題や対策アプローチ、費用対効果などをシミュレーションした資料をつくり、上層部に提案しました。
藤田さん:クラウドカメラによる遠隔からの安全パトロールだけですと、これまで実施していなかったことなので単純にコストや工数が増えますが、費用対効果のシミュレーションでは、カメラを使った設備監視や現場立会いによる移動時間の削減効果など、安全以外の活用メリットも含めて試算しました。また、それらの積み上げに加え、クラウドカメラ以外のツールの導入効果も含めて、明らかにコスト削減効果があるという根拠を示し、社内承認を得ました。
構内企業一丸となって取り組むことでDXの効果を最大化。
運用ルールの周知で、カメラによる安全パトロールが浸透
──安全パトロールにおけるSafie Pocket2の活用状況をお聞かせください。
真坂さん:当所では課題解決に向け、「発電所O&MのDX化」を計画・推進していますが、これは構内企業を含む発電所全体の取り組みと位置づけています。日々の業務では構内企業との協働が非常に多く、一丸となって効率化しないとDXの効果が薄まってしまうからです。カメラによる安全パトロールも同様の考え方で、構内企業と連携して取り組んでいます。
藤田さん:具体的には、現場管理者が三脚やクリップで柱や手すりに留めるなどの方法でカメラを固定設置し、構内企業のみなさんが作業している様子を撮影。私たち東北電力の社員はPC、タブレットなどで事務所から映像をリアルタイムや録画で視聴し、安全チェックを行います。なお、映像は当社社員に加え、構内企業のみなさんも視聴できる設定としています。
──カメラによる安全パトロールをスムーズに行うために、工夫なさっていることはありますか?
藤田さん:運用ルールをつくり、周知しました。基本的には安全に作業しているので、見守るためのカメラとなりますが、たとえば不安全行為や気づきがあった場合は、当所の安全業務を担当する安全主査に該当行為のムービークリップをメールで送って報告します。受け取った安全主査は、当社や関係会社の管理職などの関係者にメールで一斉に報告・注意喚起し、その後の作業の是正につなげてもらいます。
真坂さん:映像確認の運用ルールを明確にし周知することは、新たなツールの浸透や有効活用につながります。いつ誰が何をするか明示することで運用が確実になり、導入効果を最大化できると考えています。
さまざまな業務で「映像がクラウドに残る」ことの価値を実感。
今後は安全パトロールのAI活用も研究
──おふたりが感じている、カメラの導入メリットをお聞かせください。
藤田さん:遠隔臨場によって私たち東北電力の社員がより多くの作業現場を確認でき、安全パトロールを実施する機会が増えたことで、安全管理面の技術力や安全意識の向上、安全コミュニケーションの活性化につながっており、最優先事項である安全を強化できたことだと思っています。
真坂さん:Safie Pocket2による安全パトロールでは、「映像がクラウドに残る」ことの大きな価値を実感しています。映像視聴にせよ、現場にせよ、リアルタイムで人間が目視できている範囲は意外と狭いんです。けれども映像が残っていれば、いつでも何回でもさかのぼれるので見落としを防げます。加えて、ムービークリップやスナップショットも簡単ですから、関係者への情報共有もしやすい。安全に関する知見を水平展開し、改善に活かす上で、これまでとまったく異なるアプローチが可能になりました。これはカメラ導入の素晴らしいメリットです。
藤田さん:Safie Pocket2は使い方の汎用性が高いので、安全パトロール以外にも活用しています。たとえば、固定カメラがない場所での突発的な設備不具合の監視に用いたり、薬品受入れ時の現場立会いに使ったり、特殊な点検の様子をクリップして教育に活かしたり…。これまでは費用対効果の面で実現できていなかったことが、このカメラのおかげでできるようになりました。
──映像を活用し、今後、取り組んでみたいことはありますか?
真坂さん:安全パトロールを進化させ、不安全行為をAIによる画像解析で検知・通報する研究を実施していく予定です。このほか、現場の職人の技術継承に向けた映像版マニュアルの作成も計画しています。DXによる高度化、効率化を追及して安全な業務環境を整えながら、電気を最適なコストで安定供給できるよう尽力したいと思っています。
お話を伺った方
東北電力株式会社
原町火力発電所
運営企画グループ
副長
真坂 孝行さん
主任
藤田 智治さん