隔離病棟を遠隔で見守り続ける。
感染拡大期のコロナ医療を支えたSafieカメラ
大分県佐伯市の「佐伯中央病院」では、新型コロナの入院病棟でSafieの屋内向けクラウドカメラを活用いただいています。隔離が必要な感染症の医療において、カメラ映像はどのように役立ったのでしょうか。「カメラがなければ乗り越えられなかった」とおっしゃる同院のスタッフの方々にお話を伺いました。
(取材:2022年10月)
導入の決め手
- 設置が簡単でスタッフでも対応可能
- 高セキュリティ
- 画質の鮮明さ
- ビューアーの操作がシンプルで使いやすい
導入目的
- 医療安全の確保に向けた実証実験のため
- 入院したコロナ患者の様子をモニタリングするため
導入した結果
- 隔離が必要なコロナ病棟での医療提供を、限られた人数で効率的に行えた
- 認知症患者の徘徊・転倒などの経緯を映像で確認し再発防止に活用
1975年に大分県佐伯市で開院以来、患者様や時代のニーズに寄り添い、充実した地域医療を提供し続けている「佐伯中央病院」。
同院では新型コロナの入院病棟で、Safieの屋内向けクラウドカメラ「QBiC CLOUD CC-2L(キュービック クラウド シーシーツーエル)」を活用。何かと神経を使う隔離病棟におけるクラウドカメラや映像の役割を、高く評価してくださっています。
医療現場のDXの可能性に手応えを感じられたという、今回の映像活用についてお話を伺いました。
医療安全からコロナ患者の対応へ、映像活用を拡大
──はじめに、みなさまの業務内容について教えてください。
西村さん:私は総務、財務、人事労務などを統括する事務部の事務長として、当院のバックオフィス業務に幅広く携わっています。
緒方さん:私は急患の受け入れや手術対応を行う急性期病棟の看護師長を務めています。
川野さん:私は地域包括ケア病棟の看護師長をしています。地域包括ケア病棟は一般内科全般の患者様を受け入れており、急性期病棟で治療が終わった方の退院支援なども行っています。
──現在、セーフィーの屋内向けクラウドカメラ「QBiC CLOUD CC-2L」をご利用いただいています。カメラ導入のきっかけを教えてください。
西村さん:導入のきっかけは、セーフィーさんからクラウドカメラの実証実験への参加をご提案いただいたことです。
ちょうど当院も、スタッフが患者様と向き合う時間をしっかり確保するために、ICTツールによる業務効率化をもっと推進したいと考えていた時期でした。
それに、Safieカメラは設置が容易でコストが適切、高セキュリティ、高画質、操作がシンプルなど魅力的なスペックを備えており、実績も持っています。実証実験で学べることも多いと考え、2021年の12月に22台を導入させていただきました。
──導入後は、カメラ映像をどのように活用されていたのでしょうか?
西村さん:当初は院内の医療安全、防犯対策のツールとして、看護師が常駐するサービスステーション付近に設置しました。
ただ、インシデント発生時の状況確認という意味合いが濃かったので、病棟内で何か起きたときに映像を確認するといった利用にとどまってました。
──その後、新型コロナの患者を受け入れる際に、映像の活用方法を大きく方針転換されたと伺いました。その経緯をお聞かせください。
西村さん:カメラを設置して間もなかった2022年2月に、当法人の関連介護施設で新型コロナの感染が発生し、当院でも初めて新型コロナの患者様を受け入れることになりました。当時は感染拡大期で、専用病棟を設定している地域の指定医療機関のキャパシティがなかったためです。
受け入れにあたり、まずは地域包括ケア病棟の1フロアをコロナ病棟とすることを決め、急いで体制を整えました。
とはいえ、隔離が必要な患者様の入院対応は業務量が非常に多く、人員が不足しかねません。限られたスタッフ数で十分な医療を提供するには、映像による遠隔モニタリングが有効と考え、安全目的で設置していたSafieカメラをコロナ病棟に移設することにしたのです。
防護服を着なくても患者の様子がわかる。
「Safieがなければ乗り切れなかった」
──コロナ病棟では、カメラをどのように使っていたのでしょうか?
川野さん:Safieカメラは軽量で、置いて使うこともできるタイプでしたので、病室の患者様のベッド上部に養生テーブで固定しました。呼吸状態を見るために、画角は患者様のお顔から胸元までが入るようにし、落下が心配な患者様は足元や通路も入るように調整しました。
川野さん:映像は、看護師が常駐するサービスステーションのパソコンのビューアーに映し出し、常にスタッフの誰かがリアルタイムで映像をチェックできる体制にしました。ビューアーの1画面に表示する映像を増やし過ぎず、2~4名様までにすると、それぞれの患者様の小さな変化も気づけます
そして、苦しそうなお顔をしている、胸の動きがおかしいなどの異変に気づいたら、看護師が病室に駆け付けて処置を行っていました。
──Safie導入で、どのようなメリットがありましたでしょうか?
川野さん:まず、カメラのおかげで、全ての患者様を24時間見守ることができました。
新型コロナで入院するのは、基礎疾患をお持ちなど、急変リスクのある患者様がほとんどです。私たち看護師も、いつ何が起こるかわからないという相当な緊張感がありますから、映像で常に患者様の状態をモニタリングできるのは安心でした。
川野さん:また、病室への駆け付けの要・不要を的確に判断できたこともメリットの1つです。
ベッドには患者様が起き上がると発報する離床センサーがセットされていますが、センサーが反応しても患者様は少し体勢を変えただけで、看護師のサポートが不要なことは多々あります。特に、認知症の患者様の場合はコールの通話だけだと状況判断が難しく、サポートが要るかどうかは病室に行ってみないとわかりません。
けれどコロナ病棟の場合、患者様がいらっしゃるのは、防護服をはじめとする厳重な装備が必要なレッドゾーンの病室です。感染拡大期でスタッフが足りない中、センサーが発報するたびに病室に行くのはかなりの負担になってしまいます。
でもカメラがあれば、体勢を変えただけだからサポート不要、といったことが映像で判断でき、病室への駆け付けが必要なタイミングを見極めるのに有効でした。
そしてもう1つ、QBiC CLOUD CC-2Lは音声も録音しており、ビューアーのトークバック機能を使えば声がけもできるので、看護師同士の業務連絡のコミュニケーションにも役立ちました。
病棟に向かった看護師がレッドゾーンの物資の不足に気づいたら、カメラに向かって呼びかける、あるいはカメラに向かってその物資を見せるだけで、モニター越しの看護師に届けてもらうことができます。
行き来が大変なゾーンだからこそ、非接触でリアルタイムに様子がわかり、コミュニケーションもできるSafieカメラは本当に役立ちました。現場からは「Safieがなければ乗り切れなかった」との声が上がっています。
カメラ映像は、認知症患者の見守りにも有効
──コロナ病棟以外での、カメラの活用事例がありましたらお聞かせください。
緒方さん:認知症をお持ちの患者様に関わるインシデントが発生した際は、クラウド録画映像を振り返り視聴して事実確認しています。
例えば徘徊があったとき、認知症の患者様は経緯を正確に説明できないことが多いので、映像という客観的な記録が頼りになります。映像で徘徊のルートがわかれば、再発防止にも活かせます。
また、同じく認知症の患者様で抑制が必要な方の場合、ご家族からカメラでのモニタリングを同意いただければ、拘束することなく患者様の安全をお守りできるケースもあります。
──最後に、カメラ活用における今後の展望をお聞かせください。
川野さん:離床センサーなどと組み合わせた転倒の未然防止、夜間の徘徊検知など、認知症の患者様の見守りに活用できないか検証を重ねていきたいと思います。
緒方さん:認知症の患者様の見守りへの活用のほか、映像からスタッフの動きを分析し、動線や人員体制などの業務効率化に生かすことも考えてみたいです。
西村さん:今回のSafieカメラ導入で、誰でも、いつでも、どこでも、簡単に使えるシンプルなツールは、医療現場の生産性向上に大きく寄与する可能性を秘めていると実感しました。
人員不足が続く中で医療の質を向上させていくには、ICTツールの活用に加え、組織や業務の仕組みを見直す意識も欠かせないと思います。今後もSafieカメラのようなツール活用と組織変革の両輪で、専門職がより専門性の高い業務に特化して能力を発揮できる環境づくりに取り組んでいきたいと思います。
お話を伺った方
社会医療法人 小寺会 佐伯中央病院
事務部 事務長 西村 博企 さん
看護局 看護師長 緒方 やよい さん
看護局 看護師長 川野 真貴 さん