WDR(ワイド・ダイナミック・レンジ)技術は、逆光や強い光の環境下でも鮮明な映像をとらえる先進的な機能です。明るい部分と暗い部分のコントラストがはっきりしている被写体の撮影に重要な役割をはたします。この記事ではWDRの基礎知識と種類、実際の防犯カメラ活用シーンについて詳しく解説します。
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目次
WDRとは
WDRの特性や機能、各種補正の違いについてかんたんに解説します。
WDRは逆光でも撮影できるカメラ
WDRは、明暗に大きな差がある映像でも、被写体を鮮明に映しだす能力を意味します。たとえば、窓から直射日光が差し込む室内や、蛍光灯の影になり薄暗くなったエリアなど、通常のカメラでは白とび・黒つぶれする状況でも高品質な映像を提供します。
WDRの機能
デジタルカメラやビデオカメラでは、明るさを識別できる最小値と最大値を「ダイナミック・レンジ」という数値(dB)であらわします。この数値が広い(ワイドである)ほどくっきりとした画像を映しだすことが可能です。
ただし、WDRには明確な定義がない点に注意しなければなりません。True WDRやD-DWR(HDR)など、WDRには様々な種類があります。ハードウェアの性能を高めたものからソフトウェアで画像を合成したものまでまとめてWDRと表現することがあります。
ハードウェア補正とソフトウェア補正の違い
ハードウェアでWDRを実現したものを「True WDR」、ソフトウェアを使用してWDRを実現したものを「D-WDR」または「HDR」といいます。
ハードウェア補正は、カメラのセンサー自体のダイナミック・レンジをワイドにしたものであり、ソフトウェア補正に比べて高品質な画像を提供します。
一方でソフトウェア補正は、撮影後の画像処理によりレンジを調整する方法です。γ(ガンマ)補正によるレタッチや画像合成による補正などの様々な種類があります。スマートフォンに搭載されることもあり、白とびや黒つぶれの少ない機種が増えたのもソフトウェアでWDRを実現しているためです。
一般的にハードウェア補正のWDRが高画質になりますが、低コストで導入できるのはソフトウェア補正のWDRです。
WDRの種類
True WDR、D-WDR、HDRなど、WDRには様々な種類があります。それぞれの特徴とWDRを実現する仕組みについて解説します。
WDR
WDRに明確な定義はありません。「ダイナミック・レンジが広い」という意味で広く使われているため、「True WDR」「D-WDR」「HDR」のいずれもWDRに含まれます。
ただし、一般的には「画像合成によりWDRを実現する手法」を意味することがあります。具体的には、明るい画像と暗い画像をほぼ同時に撮影し、白とびや黒つぶれが起きている部分をそれぞれの画像で補うことでダイナミック・レンジを広げる手法です。
2枚の写真を合成することで、ダイナミック・レンジを広げられるため、処理能力の低いカメラにも導入でき、防犯カメラやドライブレコーダーなどに広く普及しています。
True WDR
イメージセンサーでWDRを実現したもので、高級なカメラに使われる本格的なWDRです。ソフトウェア補正ではなく、ハードウェア補正でWDRを実現するため、被写体の明るさを自然に表現でき、美しく繊細な映像を映し出せるのが特徴です。
D-WDR(デジタルWDR)
ソフトウェア補正により画像のダイナミックレンジを広げた撮影方法です。HDRもD-WDRの一種であるため明確な定義はないのですが、補正する仕組みはやや異なる点があります。
D-WDRは一般的に「γ(ガンマ)補正により明暗のある画像をレタッチする手法」を意味します。カメラ本体の機能ではなく、撮影した映像や画像をあとからでも修正できるのが特徴です。
ただし、画像合成を用いたWDRやHDRに比べると補正する能力は劣る傾向にあります。
HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)
HDRも明確な定義はありませんが、一般的に「3枚以上の画像合成によりWDRを実現する手法」を意味します。具体的には、明るい画像と暗い画像のほかに中間の明るさの画像も合成することにより、写真としての美しさを表現できるのが特徴です。
スマートフォンやデジタルカメラの写真撮影の機能として搭載することが多いのですが、高い処理能力を必要とするため、防犯カメラやドライブレコーダーに搭載する機種は少ない傾向にあります。
なお、HDRの語源はカメラの機能をあらわすものではありません。元々はテレビやディスプレイ表示のダイナミック・レンジが広いという意味で使われていました。まるでHDRのように美しい写真が撮影できるという意味で、広くHDRと呼ばれるようになったようです。
WDRの活用シーン
WDRはスマートフォンやドライブレコーダーなどのカメラに広く活用されています。防犯カメラにWDRを搭載した機種も多いため、その活用方法について紹介します。
スマートフォン・デジタルカメラ
スマートフォンやデジタルカメラなどの写真撮影ではHDR技術を活用しています。逆光や薄暗いなかでの写真撮影に利用できるため、撮影者が意識しなくても自然な明るさの写真撮影を実現します。ただし、自然光の繊細な美しさの表現は苦手であるため、あえてHDR機能をオフにして写真撮影する方も多くいます。
ドライブレコーダー
運転中の映像撮影は、逆光やトンネルの暗闇など複雑な光条件での撮影が求められます。トンネルを抜けた瞬間の白とびなど、SDR(通常のダイナミック・レンジ)では撮影環境の変化に対応できないため、WDR機能を搭載した機種が一般的になっています。
店舗入り口の撮影
店舗の入り口やウィンドウ越しの撮影において、明るい部分と暗い部分で明暗差がくっきりとあらわれます。影になる部分の死角や来訪者の顔などが識別できない可能性が高いため、WDR技術により明暗差の少ない鮮明な映像撮影を可能にします。
薄暗い店内やガレージの撮影
暗い環境下でもWDR技術を搭載したカメラは明るい部分と暗い部分を鮮明にとらえます。赤外線カメラや高感度カメラなどのナイト・ビジョンの性能には劣りますが、照明の陰影をつけた店内や窓のついたガレージなどの薄暗い場所でもWDR機能で撮影可能です。
バース(荷下ろし場)や卸売市場
バースや卸売市場など、太陽の位置で撮影環境が変わりやすい場所では、WDRにより均一な映像を撮影しやすくなります。朝焼けや夕焼けなどでうまく撮影できない場合は、WDR機能を搭載したカメラで撮影することにより、セキュリティ強化や作業進捗の確認に役立ちます。
WDRはあらゆる光の環境下で撮影できるカメラ性能
この記事で紹介したようにWDRには様々な種類がありますが、共通しているのは逆光や薄暗いなかでの撮影を実現することにあります。WDR機能によって白とびや黒つぶれが起きていた環境下であっても写真や動画を鮮明に撮影することが可能です。
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