防犯カメラには「オートゲインコントロール(AGC)」という機能が搭載された機種があります。AGCにより夜間でも鮮明な映像を撮れるようになるのですが、いったいどのような機能なのか具体的に知りたい方も多いでしょう。
この記事を読むことで、AGCの機能や役割、カメラの明るさを決める要素について知ることができます。
目次
オートゲインコントロール(AGC)とは
防犯カメラのカタログに記載される「オートゲインコントロール(AGC)」とは、カメラの明るさを自動的に調整する機能です。ゲインとは「増幅率」を表す言葉であり、ゲインを高めるほどイメージセンサーで受光したカメラの映像を明るくすることができます。
AGCの機能
オートゲインコントロールは、入力信号を一定のレベルに保つ電子回路です。入力信号が弱い場合に信号を増幅し、入力信号が強い場合に信号を減衰させることで、安定した出力を実現します。たとえば、ラジオ電波の受信強度調整、Web会議の音声レベル制御、カメラの露出自動補正など、さまざまなシーンで信号の感度を安定させるために使われています。
防犯カメラでは、イメージセンサーで受光した電気信号のゲインを自動調整して、映像の感度を最適に保ちます。AGCを用いて映像の明るさを一定に保つことで、昼夜を問わず最適な明るさの映像を見ることが可能です。
AGCが必要な理由
防犯カメラの映像は、昼夜を問わずさまざまな照度の環境下で録画されます。AGCがなければ、日中は太陽光により白とびの映像になってしまい、夜間は光量が足りずに黒つぶれの映像になってしまう危険性が高くなります。
特に防犯カメラは、24時間365日どのような環境でも鮮明な映像が求められるため、AGCによる画像補正は欠かせません。
アナログゲインとデジタルゲイン
ゲインにはカメラ本体で調整する「アナログゲイン」、ソフトウェアで補正する「デジタルゲイン」の大きく2つに大別できます。前者はカメラのイメージセンサーで明るさを調整でき、後者はデジタルデータ化した映像をソフトウェア演算で調整するものです。
アナログゲインは、イメージセンサーで受光した電気信号を増幅させるため、生の画像データに対して繊細な補正を加えられます。
一方のデジタルゲインは、受光した電気信号をデジタルデータに変換したあとで補正する機能です。カメラ本体での補正だけでなく、編集ソフトでも明るさを変えられます。
一般的に、生のデータに近いアナログゲインでは繊細な調整が可能であり、出力データに近いデジタルゲインになるほど画像の劣化やノイズが発生しやすくなります。
映像の明るさを決定する3つの要素
ここまでオートゲインコントロール(AGC)について解説しましたが、防犯カメラの明るさを決める機能はゲインだけではありません。映像の明るさを決める3つの要素について理解することで、最適な映像を撮影することに役立てられます。
防犯カメラの映像の明るさは、次の要素で決まります。
- シャッタースピード:露光する時間をあわせる要素
- 絞り(アイリス):光量の調整にレンズを開くか閉じるか決める要素
- ISO感度(ゲイン):信号を増幅することで明るさを高める要素
これらの要素は撮影後のデジタル補正で加えられないものもあり、カメラ本体で適切な設定にしなければなりません。防犯カメラによって自動で最適化される機能ばかりですが、撮影環境によってはマニュアルで調整しなければならないケースもあります。
特に絞りの明るさは、防犯カメラのレンズ性能に左右されるため、防犯カメラ導入時点でF値が低い(明るい)レンズを選ぶ必要があります。
※F値:取り込める光量を数値化したレンズ性能。F値が低いほど明るくなるが高価になる。
オートゲインコントロール(AGC)の活用シーン
オートゲインコントロール(AGC)は、昼夜問わず撮影を続ける防犯カメラの必須機能です。特に、次のような場面に効果的です。
シャッタースピードに制約がある場面
シャッタースピードとは、1枚の画像を撮影するシャッター時間の長さです。シャッタースピードが高速になるほど、被写体の残像やブレが少なくなり、くっきりとした映像が撮影できるようになります。スポーツの撮影では一般的にシャッタースピードを短くします。
しかし、高速すぎるシャッタースピードでは光量が足りなくなることがあり、写真全体が暗くなってしまいます。そのため、暗い撮影環境ではシャッタースピードを長くすることで映像を明るくすることも可能です。
ただし、防犯カメラに使われる映像は、1秒間に30枚の写真をつなげた30fps程度のフレームレートが一般的です。その場合、シャッタースピードは1/30秒以下に設定しなければ30fpsの動画を撮影することはできません。
絞りを最大限に開いても画像が暗くなる場合、ゲインを自動的に増幅させるAGCの機能があることにより、映像の明るさを保つことが可能です。
絞りの調整では限界がある
絞りは、レンズに入る光の量を調整する機能です。絞りを開放するとより多くの光がイメージセンサーに届くため、映像は明るくなります。逆に、絞りを閉じると、光の量が減ってしまい、撮影した映像は全体的に暗くなってしまいます。
明るいレンズを使えば、暗い場所で撮影することは可能ですが、テレビ局で使われるランクの明るいレンズは数百万円することも珍しくなく、防犯カメラに使うのは一般的ではありません。
そこで、手ごろな価格帯で明るい映像に増幅できるAGCが役立ちます。特にゲイン性能を高めた高感度カメラ(暗視カメラ)になれば、夜間でもカラー撮影ができるほどの明るさにすることも可能です。
高感度カメラによる夜間撮影
AGCは夜間撮影にも利用され、うす暗い環境でもカラー映像を撮影できる機種を「高感度カメラ(暗視カメラ)」と呼びます。ほかにも夜間撮影の機能には、赤外線カメラがあり、高感度カメラでなくても夜間撮影することは可能です。
オートゲインコントロール(AGC)の注意点
オートゲインコントロール(AGC)は、安価に明るい映像を得るために重要な機能であることはご理解いただけたのではないでしょうか。ただし、AGCはメリットばかりではありません。注意点についても正しく理解しておく必要があります。
高感度ノイズの発生
AGCの唯一の弱点とも言えるのが、不要なノイズについても増幅してしまう点です。ノイズは特に夜間撮影で目立ちやすく、ツブツブした白い点が画面全体に発生してしまいます。
これは高感度カメラであっても発生するため、ノイズを改善するためには明るいレンズの使用やノイズ対策などを施さなければなりません。また、夜間撮影ではモノクロの赤外線カメラを利用することもありますが、赤外線カメラには高感度のAGCが必要ありません。
まとめ
オートゲインコントロール(AGC)は、防犯カメラの映像品質を左右する重要な機能です。カメラの感度を自動的に調整することで、昼夜を問わず最適な映像を得ることができます。
防犯カメラの設置を検討する際は、AGCの特性を理解して、シャッタースピードや絞りなど、明るさを決める要素のバランスを考えることで最適な防犯カメラを見つけられるでしょう。
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