遠隔点検は、現場に行かずに離れた場所から機械や設備などを点検することをいいます。現場までの移動時間を削減できる点が大きなメリットですが、ほかにも活用方法は多数あります。この記事では遠隔点検の導入メリットや活用事例を紹介します。
遠隔点検とは?
遠隔点検(リモートメンテナンス)とは、建設現場や工場での作業に必要となる機器設備やシステムを遠隔地から点検することです。ICT技術を用いることで離れた場所から機器の操作やデータ収集ができるようになり、遠隔点検を可能にします。
従来は現場にスタッフが赴いて点検作業を行っていましたが、インターネットを介した遠隔点検が可能なシステムを導入することで、離れた場所にいながらの点検作業を実現できます。
遠隔点検が普及されつつある背景
遠隔点検のニーズは高まっており、多くの企業から必要とされています。遠隔点検が普及している背景には、以下の3つの理由が大きく影響しています。
新型コロナウィルスによるリモートワークの拡大
遠隔点検が普及した背景に、新型コロナウィルス感染防止のためのリモートワーク拡大があります。企業のテレワーク推奨の働きによって、点検業務にもリモートワークを導入することが注目され始めました。現場で顧客との接触を防げるため、感染症リスクを防止できる有効な手段として取り入れられるようになったのです。
またICT技術は急激に発展しており、あらゆるビジネスシーンで活用できるようになっていることも遠隔点検の普及を後押ししています。
人手不足の深刻化によるもの
近年、少子高齢化に伴う人手不足による影響はさまざまな業界で深刻化しており、建設業界や製造業界など人員確保に悩む企業が増えています。
遠隔点検が実現できれば、現地まで移動する必要がなくなり移動時間の削減ができます。そのほか、機械や設備の稼働状況を監視する、機械の起動や停止操作、障害が発生した場合のトラブル対応なども遠隔化できれば省人化が可能となり、人手不足の解消につながります。遠隔点検システムの導入は人手不足の深刻化を解決するための手段でもあり、将来的にさらに必要とされるでしょう。
時間外労働の削減
時間外労働の削減は、労使双方にメリットのある取り組みです。残業や休日出勤を削減できれば、社員のプライベートの時間を増やし幸福度や働きがいなどにもつながります。企業にとっては残業代を削減でき、社員に過重労働を強いることも必要なくなるでしょう。
働き方改革によって企業は残業時間の上限を設けるなど、長時間労働に対する改善が必要とされています。時間外労働を削減するため、作業の効率化などの対策が急務となっており、その一つの方法として遠隔点検が重要視されています。
遠隔点検を導入するメリット
遠隔点検を導入することのメリットについて解説します。
点検業務の作業効率向上につながる
遠隔点検が可能になれば、1拠点から複数の現場の点検作業ができるようになるため、大幅に作業効率が向上します。点検が必要な現場が遠方にある場合や複数箇所を巡回する必要がある場合も移動が発生しない点は大きなメリットになるでしょう。
また、機器にトラブルが発生した場合も遠隔地からトラブル状況が把握できれば、迅速な対応が可能になります。
現場スタッフの負担を軽減
遠隔点検を導入すると、現場スタッフの負担を軽減できます。常に現場でだれかが機械を監視する必要がある、複数の現場を移動しなければならないケースではスタッフの負担も大きくなります。現地での点検作業を必要とする場合は、危険作業を伴うこともあるため、ケガや事故につながるリスクもあります。
遠隔点検を導入することでオフィスや自宅からの点検作業を行えるため、スタッフの負担やケガなどのリスクを軽減できます。結果的に企業は従業員を守ることにつながり、従業員の働きがいの向上や離職率の低減といったメリットも期待できます。
人件費などのコストが削減する
遠隔点検の導入により、人件費などのコストを削減できる点もメリットです。移動を必要とする点検作業は、人件費以外にもさまざまなコストがかかります。複数の現場を回るために社用車を抱える企業もあり、遠方の現場や夜中の作業が発生した場合は宿泊費なども発生するでしょう。遠隔点検を導入すれば人件費や車の維持費、交通費、宿泊費など多くのコストを低減できます。
人材配置の最適化につながる
遠隔点検を導入すると複数の機器やエリアを一括で監視できるため、現場ごとに担当者を配置する必要はありません。現地までの往来時間や現場を巡回して点検にかけていた時間を、別の業務に充てられるようになります。人手不足の解消だけではなく、人材育成や能力開発に時間をかけられる、適切な部署に人員を配置できるなど、人材を活用した組織の強化・活性化も目指せます。
遠隔点検を導入するデメリット
遠隔点検を導入するために、課題となるのは以下の2点です。
ネットワークシステムの構築が必要になる
遠隔点検を実現するために機器設備やシステムにICT技術を導入し、点検業務を一括で行う拠点とそれぞれの現場をつなぐネットワークシステムの環境を整えなければなりません。これらのシステムを構築するためには、専門的な知識を持った人材の採用や育成が必要です。システム機器や通信環境を整備するための導入コストもかかるため、遠隔点検が実現するまでのハードルの高さが懸念点となるでしょう。
しかし、遠隔点検の導入コスト以上に低減できるコストも大きいはずです。導入費をどれだけかけるか、長期的な目線での比較と検討が必要です。
セキュリティ対策が必要不可欠
遠隔点検のシステムはネットワーク接続が必須であるため、セキュリティ対策は万全なものにしなければなりません。不正アクセスやサイバー攻撃などにより、情報インフラのトラブルや情報漏洩が発生すれば顧客からの信頼を失い、企業の損失につながる事態になりかねません。
そのため遠隔点検のシステムを導入する際は、セキュリティ対策の面でも専門的な知識のある人材採用や育成が必要となります。また、セキュリティ対策が十分にとられている製品やサービスを導入することも対策につながります。
上述したように、業務効率化や人件費の軽減など得られるメリットも大きいため、費用対効果をみながら検討しましょう。
遠隔点検の活用事例・導入効果
遠隔点検システムの一つであるカメラシステムを導入した企業の事例を紹介します。
稼働状況の監視 – カメラで計器のリモート読み取り
「AGC株式会社」はカメラを現場に設置し、不具合が懸念される設備のモニタリングに活用されています。独自のシステムにカメラで自動撮影した計器の画像を送信。画像処理によって計器データを自動で読み取り、不具合の防止や品質向上につながっています。
障害発生時の調査 – カメラで設備やインシデントの調査
「日世株式会社」は、既存のカメラの死角となる部分にクラウドカメラを設置し、製造ラインのあらゆる工程の撮影に活用されています。お客様から指摘があった場合や製造ラインでなにかトラブルがあった場合に、原因究明のため映像をチェックして調査を実施しています。正確かつ迅速な事実確認が可能となっています。
現場作業員のサポート – カメラで遠隔臨場
「熊本県玉名市役所」はウェアラブルカメラを使用し、橋梁の遠隔臨場を可能にしています。劣化状況の確認、メンテナンスの作業、作業後の経過観察といったさまざまなシーンでカメラが活用されています。カメラで記録したものを社内に共有することで現場の作業を大幅にカットできるため、現場作業員のサポートに役立っています。
現場の安全パトロール – カメラ映像で現場の安全管理
「東北電力株式会社」はポータブルカメラを作業現場に設置し、安全パトロールに役立てています。不安全行為や気づきがあれば映像の共有とその後の対策を行っており、安全強化を図ることに成功しています。遠隔でも確認できるため、より多くの作業現場の安全を守ることにつながっています。
移動時間の削減 – カメラがベテラン社員の眼の代わり
「新日本空調株式会社」は、若手社員の技術的なサポートとしてウェアラブルカメラを導入しています。各現場の若手社員の作業内容を撮影し、その様子を遠隔からベテラン社員や上司がチェックすることで、進捗管理や若手社員へのサポートを行っています。ベテラン社員や上司が複数の拠点に行かずにすむため、「約400時間/月」の移動時間の削減に成功しています。
まとめ
人材不足の深刻化や働き方改革による労働時間の見直しは、多くの企業が抱える課題です。遠隔点検はさまざまな現場における課題の解決策となり、今後ますます需要が高まり活用の場も広がっていきます。遠隔点検システムの導入時はネットワークシステムの構築やセキュリティ対策は欠かせませんが、より多くのメリットを期待できます。
カメラを活用した遠隔点検の事例をご紹介したように、稼働状況の監視や障害発生時の調査、安全パトロール、移動時間の削減など得られる効果が多いため、遠隔点検システムの導入をおすすめします。
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