AIカメラによる属性分析の仕組みとは？活用シーンや注意点も解説

AIカメラの導入が、近年ではさまざまな業界で進んでいます。たとえば、工場ラインの稼働状況チェック、顔認証によるオフィスでの勤怠管理など、従来の防犯カメラとは異なる目的で設置されることも増えてきました。

なかでも注目されるのが、小売店での顧客の属性分析にAIカメラを用いたマーケティング活用です。本記事を読むことで、AIカメラを用いた属性分析の仕組みや活用シーン、注意点について理解できるでしょう。

AIカメラによる属性分析とは？

防犯カメラをマーケティング分析に用いるには、「AIカメラ」と「属性分析」が必要です。まずは、それぞれの概要について簡単に把握しましょう。

AIカメラとは

AIカメラとは、人工知能（AI）技術を搭載したカメラシステムを指します。従来の監視カメラや防犯カメラとは異なり、AIアルゴリズムを用いて映像内の人物や物体を自動的に検出・識別することが可能です。

たとえば、スマホの顔認証システム、自動運転システムのカメラセンサなど、身近な機能から最新のシステムにもAIカメラは導入されています。

属性分析とは

属性分析とは、AIカメラや会員情報などから取得した顧客の性別や年齢層といった人口統計学的データから、ターゲット層のセグメントを把握するために分析することです。たとえば、小売店の会員証から購入した商品の趣向を収集して、マーケティング分析に用いることができます。

近年では、AIカメラを店舗に設置することで、商品を購入せずに退店してしまう見込み客の傾向まで把握する取り組みも行われています。今までスタッフの肌感覚で読み取っていた見込み客の動向についても、属性分析によって具体的な数値として把握することが可能です。

AIカメラを用いた属性分析の仕組み

AIカメラによる属性分析は、ディープラーニング（深層学習）と呼ばれる人工知能の技術が重要な役割を果たしています。かつての機械学習モデルとは異なり、人の手で正しい答えに導くことなく、機械が自ら試行錯誤して正解にたどり着くように進化しました。

人間の脳神経回路を模倣したニューラルネットワークを用いて、大量の映像データを機械自らが判断できるようになったのです。

顧客の年齢層や性別などの判定モデルについて、大規模なデータセットから学習することが可能です。これにより、ディープラーニングによる判断精度は、まるで人の目で見ているかのように繊細な情報まで判別できるようになりました。

属性分析で得られる属性情報の種類

顧客の属性情報の種類は、AIカメラでなくても得られる「静的属性」、AIカメラでないと得られない「動的属性」によって大きく分けられます。それぞれで得られる属性の種類について把握しましょう。

静的属性

静的属性とは、顧客の「性別」や「年齢」など、その場で変化することが少ない属性を指します。たとえば、次のような属性が挙げられ、なかにはAIカメラでなくても得られる情報が含まれます。

• 性別：男性・女性
• 年齢：子ども・若者・中年層・高齢者など
• 髪型：ロングヘア・ショートヘア・丸刈りなど
• 服装：カジュアル・フォーマル・ビジネスなど

これらの静的属性のうち、性別や年齢といった情報は、会員情報などから把握することが可能です。一方で、髪型や服装といったファッショナブルな情報は、会員情報から把握することが難しく、AIカメラもしくはスタッフの手作業でなければ収集できません。

高度なAIシステムでなくても取得しやすく、マーケティングに活用しやすい属性情報が静的属性です。

動的属性

動的属性とは、人間の表情や動作など、その場その場で変化の大きな属性情報を指します。たとえば、次のような属性情報が挙げられ、高機能なAIカメラでなければ得られない情報ばかりです。

• 表情：喜び・悲しみ・怒り・驚きなど
• 姿勢・動作：歩く・走る・座る・手を振るなど
• 視線：カメラ目線・特定の商品エリアなど
• 滞在時間：特定のエリアにどの程度滞在していたか

動的属性は、静的属性に比べてはるかに判定が難しい属性情報です。AIカメラの高精度化によって、現在ではかなり詳細な分析が可能になってきました。たとえば、万引き犯の特徴的な動作を繊細に検知し、犯行前に管理者へ通知するといったAIカメラもあるほどです。

ただし、映像データから膨大な情報を取得する必要があり、動的属性の収集には高度な処理性能とデータ通信量が求められます。そのため、AIカメラは一般的に高価になりやすい点は注意しなければなりません。

AIカメラを用いた属性分析の活用シーン

AIカメラを用いた実際の活用シーンを理解することで、属性分析のイメージもつきやすくなります。セーフィーのAIカメラを用いた活用事例についてもあわせて紹介します。

小売店での活用事例

小売業界では、「広告の効果測定」や「店舗ごとの商品レイアウトの最適化」に、AIカメラによる属性分析が適しています。たとえば、イタリア製の洗練されたデザインの手帳やバッグで人気の「モレスキンジャパン」では、入店数カウントや顧客分析にAIカメラを導入しました。

特にAIカメラ「Safie One（セーフィー ワン）」のオプション機能の「立ち入り検知」で、販売注力商品の売り場前の映像解析に利用しています。この機能を用いることで顧客が商品前に立ち入ったことをサムネイルで一覧化でき、顧客の属性モニタリングとして活用しています。

これによりPOSデータでは収集できない、見込み客の属性情報の収集、顧客の興味を引いた商品の把握ができるようになり、マーケティング分析の参考データの幅が広がりました。

属性分析のほかにも店舗レイアウト変更の効果測定など、モレスキンジャパンのAIカメラ活用事例についてはこちらもご確認ください。

属性分析の注意点

AIカメラ利用者にとって、属性分析は素晴らしい成果をもたらします。ただし、カメラの管理者としての責任も同時に発生するため、必要な情報についても正しく把握しておきましょう。

個人情報の保護が求められる

カメラで撮影した顧客の映像は個人情報に含まれるため、映像閲覧者の制限やセキュリティ対策など取り扱いに注意しなければなりません。そのため、映像を保管する場合は、データの暗号化やプライベートネットワークの活用など、セキュリティ管理の徹底が求められます。

プライバシーの配慮が求められる

AIカメラによるプライバシーの侵害は避けなければならない重要事項です。特に設置場所については、地域自治体にて定められた防犯カメラのガイドラインに準拠しなければなりません。たとえば、トイレや入浴施設などにAIカメラの設置はほとんど認められないでしょう。

また、第三者の私有地が映像内に含まれる場合、カメラ設置の許諾やプライバシーマスク（映像を加工して一部分のみ閲覧できない機能）の設定などの配慮が求められます。

個人情報やプライバシーへの配慮についての詳細はこちらをご覧ください。

利用目的と保管期間の掲示が必要

防犯目的でのカメラ設置では義務になりませんが、マーケティングなどの営業活動でカメラを設置する場合、その利用目的を掲示することが義務付けられています。利用目的の通知方法については、経済産業省のガイドラインにも参考例が掲載されていますので、こちらも参考にしてください。

また、各地方自治体よりカメラ設置のガイドラインが公表されているため、その内容にそった対応も求められます。

映像データの保管期間の目安はこちらをご覧ください。

AIカメラを用いた属性分析の将来性

今後のマーケティング分野では、データドリブンな意思決定がますます重要になってきます。顧客の属性にあわせたデジタルサイネージの最適化、実際の計測データを用いた正確な収支予測など、属性分析は販売戦略に欠かせないデジタルツールになるでしょう。

また、属性分析の精度を高めるために、画像データだけでなく、音声や行動履歴などの複数のデジタルソースを組み合わせたマルチモーダル分析も期待されています。小売店ではPOSデータと連動したマーケティング活用なども今後ますます発展することでしょう。

＼POSデータと連動したAIカメラ活用はこちら／

さらに属性分析は、商用利用だけでなく、医療や教育での活用、スマートシティの実現など、あらゆる分野に影響を与えることが予想されています。

たとえば、超高齢化社会における、見守りシステムとしての普及もすでに始まっていると言えるでしょう。社会のさまざまな課題解決に向けて、AIカメラによる属性分析が貢献することが期待されています。

まとめ

AIカメラの属性分析は、カメラで撮影した映像から人物の性別や年齢、感情などの属性情報を機械が自動で判別する技術です。この技術は、ディープラーニングと呼ばれるAI技術の発展により、高い精度で実現するようになりました。

属性分析は、小売業界をはじめとした多くの分野で活用が進んでいます。マーケティングの高度化や店舗運営の最適解、セキュリティ向上など、幅広い分野で役立てられています。

セーフィーは、このようなAIカメラやウェアラブルカメラを用いた映像ソリューション企業です。小売店や工場が抱える悩みについて、映像技術を用いた課題解決を提案させていただきます。

セーフィーではAIカメラの導入実績が多数ありますので、スマートファクトリーやスマートストアなどを検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。