工場でのデジタル技術の活用は進化しており、サイバー攻撃に対するセキュリティ対策は必要不可欠です。一方で、人の侵入や盗難といった物理的な対策も、従業員の安全確保とセキュリティ面においては欠かせません。
この記事では、工場のセキュリティ対策を強化する方法や手順について解説します。セキュリティ対策を実施するうえで重視したいカメラの機能も解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
工場のセキュリティ対策の重要性

昨今の工場では、IoTやAIなどの活用が進んでいます。設備の監視やトラブル発生時の遠隔での保守作業など、ネットワークの構築が欠かせません。
セキュリティ対策を万全にしておくべき理由は、以下の3点が挙げられます。
- 従業員の安全と個人情報を守るため
- サイバー攻撃を受けたときの影響が深刻なため
- 製品の提供が滞ることで社会全体に影響を与えるため
それぞれ詳しく解説します。
従業員の安全と個人情報を守るため
工場では多くの従業員が働いており、その安全確保は企業の最重要責務です。不審者の侵入防止や、危険エリアへの立ち入り制限など、物理的なセキュリティ対策は従業員の生命と安全を守るために不可欠です。
また、従業員の個人情報や勤務情報なども適切に保護する必要があります。
サイバー攻撃を受けたときの影響が深刻なため
製造工場がサイバー攻撃を受けると、データ漏えい、復旧費用の発生、信頼失墜など多方面にわたって深刻なダメージを受けます。特に、従業員や取引先の個人情報が漏えいした場合、その影響は計り知れません。
現代の工場では、IoTやAIなどのシステムを活用することが多く、一箇所への攻撃が工場全体の機能停止につながるリスクを孕んでいます。サイバー攻撃は巧妙化しており、復旧まで数日から数週間を要するケースも多く存在します。
実際に2022年、国内の自動車メーカーの部品サプライヤーがサイバー攻撃を受け、関連する工場が一時的に操業停止する事態となりました。企業規模にかかわらず、サイバー攻撃による影響は甚大になるケースがあるため、工場全般においてセキュリティ対策が欠かせません。
製品の提供が滞ることで社会全体に影響を与えるため
製造業では、1つの製品を製造するために多数の部品が必要になることもあり、サイバー攻撃によって生産停止や生産効率低下などの被害に遭うと、製品製造や出荷に大きな影響を及ぼします。
現代の製造業はネットワーク化されたサプライチェーンの一部であり、1社の問題が取引先や最終の顧客まで連鎖的に影響するため、社会的責任としての対策が必要です。
先述した国内の事例では、サプライヤーが1日操業を停止しただけで、数万台分の生産遅延につながっています。同業の他メーカーや他工場にも波及するような連鎖的影響を防ぎ、社会的責任を果たすため、工場のセキュリティ構築は重要です。
工場のセキュリティ対策が必要な箇所とは?

セキュリティ対策は、サイバー空間と物理的空間に分けて対策の検討を進めると効率的です。いずれの対策においても、従業員のプライバシーと人権を尊重しながら実施することが重要です。
サイバー空間と物理的空間それぞれについて、主に対策が必要な箇所は、以下の通りです。

それぞれの対策方法や注意点を解説します。
サイバー空間でのセキュリティ対策箇所
サイバー空間とは、ネットワークやコンピューターによって構築された仮想的な空間で、インターネット環境が代表例です。サイバー空間を守るための具体的な対策箇所として、以下が挙げられます。
- ファイアウォールの設置
- ウイルス対策ソフトの導入
- VPN接続の活用
現代の工場では、生産管理や機械の制御などのシステムが相互に連携しているため、一箇所への攻撃が全体へのダメージへとつながるリスクがあります。
ネットワークやIT(情報技術)関係を対策することだけでなく、OT(運用技術)と呼ばれる設備の運用面も含めた、両面を対策することが重要です。
クラウド型サービスをセキュリティ対策に利用することで、初期投資を抑えつつ、専門的な知識がなくても高度なセキュリティ対策を実現できます。
物理的なセキュリティ対策箇所
工場の物理的セキュリティ対策とは、主に外部からの不正な侵入の防止と、従業員の安全確保を指します。
一般的に工場は敷地面積が広いため、侵入経路が多いというリスクがあります。また、業種によっては機密性の高い情報を保持しており、情報を適切に保護する必要があります。
物理的なセキュリティ対策として検討すべき点は、以下のとおりです。
- 外部からの不正侵入を防ぐ仕組み
- 入退室記録システム(安全管理目的に限定)
- 緊急時の安全確認システム
人の動きや出入りを映像で管理し、万が一のときに確認しやすいシステムを構築することが重要です。
セーフィーの担当者は、工場特有のセキュリティリスクとして、「不審者の侵入」を挙げています。
工場のセキュリティ対策を実現させる手順
工場セキュリティ対策を段階的に導入するための、具体的な手順を紹介します。重要なのは、従業員の理解と協力を得ながら進めることです。この手順で全体的な方針を決定した後、次章で紹介する具体的な対策方法を実施するようにしてみてください。
- STEP1:現状のセキュリティ環境を把握する
- STEP2:セキュリティリスクを分析する
- STEP3:運用可能なルールを決定する
- STEP4:実際に運用を開始する
それぞれのステップをチェックしていきましょう。
STEP1:現状のセキュリティ環境を把握する
工場のセキュリティ対策における第一歩は、現状のセキュリティルールを把握し、従業員の意見を聞きながら改善すべき箇所を明確にすることです。
現状のセキュリティを確認すると、工場のIT系システム(業務アプリケーションやデータサーバーなど)と、OT系システム(制御装置やIoT機器など)が適切に連携されておらず、それぞれ別々にセキュリティ対策がなされているケースがあります。近年のサイバー攻撃は高度化しているため、ITと制御・運用の技術を連携して強固なセキュリティを構築する必要があります。
また、従業員のプライバシーが適切に保護されているか、現場の作業者が感じている課題や不安はないか、などの点も重視します。
セキュリティ対策に関連する法令要件や、取引先からの要請を確認し、必要な要件を整理しましょう。
STEP2:セキュリティリスクを分析する
現状把握を踏まえ、サイバー・物理両面のリスクを分析します。以下の観点から総合的に評価します。
- セキュリティ上のリスクレベル
- 従業員のプライバシーへの影響
- 労働環境への影響
- 導入・運用コスト
すべてにおいて高度なセキュリティ対策をするのが理想ですが、従業員の負担やプライバシーとのバランスを考慮し、適切なレベルを見極めることが重要です。
STEP3:運用可能なルールを決定する
リスク分析結果を踏まえ、従業員との協議を通じて実効性のあるセキュリティルールを策定します。主なポイントは以下です。
- 従業員の意見を積極的に受け入れる
- プライバシー保護措置を明文化する
- データの利用目的と保存期間を明確にする
優れたセキュリティ対策がある場合も、実際に現場に浸透し運用が継続できるかどうかが重要なポイントです。現場の作業者が無理のないように、運用できるルールや仕組みを構築する必要があります。
STEP4:実際に運用を開始する
セキュリティルールに基づき、運用実施を開始します。従業員への十分な説明と研修を行い、なぜこの対策が必要なのか理解を得たうえで実施してください。
実施後は、運用に関する問題点を吸い上げられるような体制の構築も求められます。特に従業員のプライバシーに関する懸念には優先的に対応し、問題点があれば改善し、セキュリティルールや体制を常にアップデートさせましょう。
工場のセキュリティ対策を強化する方法

工場のセキュリティレベルを向上させるための、具体的な対策方法は以下の4点です。
- 入退室管理システムを導入する
- サイバーセキュリティシステムを導入する
- セキュリティ教育を実施する
- 防犯カメラを導入する
それぞれ詳しく解説します。
入退室管理システムを導入する
入退室管理システムは、工場内への不正侵入を防止し、従業員の安全を確保するための効果的なセキュリティ対策です。
工場では製造エリアや制御室、データセンターなどさまざまな区画が存在し、それぞれに適切な権限を分けて入退室できる仕組みづくりが必要です。ただし、システム導入にあたっては従業員のプライバシーに配慮し、必要最小限の情報収集に留めることが重要です。
ICカード認証や顔認証などのシステムを活用する場合も、収集データの利用目的を明確にし、目的外利用を禁止する運用ルールの策定が必須です。
サイバーセキュリティシステムを導入する
高度化するサイバー攻撃を阻止するためにも、最新の技術を採用したセキュリティシステムの導入が有効です。近年ネットワークへの不正なアクセスや、ランサムウェアやマルウェアの攻撃が巧妙になっており、対策するためには多層的な防御システムが必要です。
基本的な対策として、ファイアウォールによる不正通信の遮断、ウイルス対策ソフトによるマルウェア検知が挙げられます。さらに高度な対策強化の方法として、EDR(※1)によるセキュリティ脅威の検知、SIEM(※2)によるログ統合分析などもあります。
サイバーセキュリティシステムには、自社サーバーを設置・管理する「オンプレミス型」と、外部データセンターを利用する「クラウド型」があります。オンプレミス型はカスタマイズ性が高いものの初期費用が高くなりやすく、クラウド型は初期費用を抑えられる反面、インターネット接続に依存します。自社の環境に合わせた選択が重要です。
近年はバックアップデータも攻撃の対象になっているケースがあるため、どちらの形態でも高いセキュリティ性を持つシステムの選定が推奨されています。
※1 EDR・・・Endpoint Detection and Responseの略。サイバー攻撃による不審な挙動を検知して対応を支援する仕組み
※2 SIEM・・・セキュリティ情報イベント管理(Security Information and Event Management)の略。IT環境全体から出力されるログを収集・分析してサイバー攻撃やマルウェア感染を検知するシステム
セキュリティ教育を実施する
企業側は強固なセキュリティの構築とともに、従業員と協力してセキュリティの必要性や情報の取り扱い方を共に学ぶことが重要です。
セキュリティシステムを導入しても、適切な運用がなされなければ効果は限定的です。USBメモリの取り扱いルール、パスワード管理など、従業員の意見を聞きながら実効性のあるルールを定めましょう。
定期的にセキュリティ研修を行い、最新の攻撃手法や事例を紹介し、具体的な対策法を従業員と一緒に検討してみてください。なぜセキュリティ対策が必要なのかを相互に理解することで、効果的なセキュリティ対策が実現できます。
防犯カメラを導入する
工場のセキュリティ対策強化として、安全確保が必要なエリアや出入口などに防犯カメラを設置するのも有効です。外部からの不正侵入の抑止や、万が一の事故発生時の状況確認など、従業員の安全確保に役立ちます。
ただし、防犯カメラの導入にあたっては、以下の点への配慮が不可欠です。
- 設置目的を防犯・安全確保に限定する
- 従業員への事前説明と理解を得る
- プライバシーに配慮した運用ルールを策定する
- 録画データの適切な管理と目的外利用の禁止
防犯カメラとプライバシーの関係については、以下の記事をご確認ください。
次章では、工場に防犯カメラを設置する際に重視したい具体的な機能・性能について解説します。
工場のセキュリティ対策|重視したい機能・性能5選

防犯カメラは設置するだけでも一定の防犯効果がありますが、防犯性やセキュリティ対策に優れたものを選べば、一層効果は高まります。
工場における防犯カメラ導入時に、重視すべき機能と選定ポイントは以下の5点です。
- Day & Night機能
- 映像をリアルタイム確認できる機能
- 遠隔操作機能
- 検知通知機能
- 工場特有の環境に対応した機能
それぞれ解説します。
Day & Night機能

夜間などの工場が稼働していない時間帯は、外部からの不法侵入のリスクが高まるため、暗所を撮影しやすいDay & Night機能が搭載された防犯カメラを選ぶのがおすすめです。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
映像をリアルタイム確認できる機能
カメラの映像は、セキュリティ担当者がどこからでもリアルタイムで確認できる「クラウド型」がおすすめです。
従来、録画映像の保存はHDDレコーダーで行い、自社で保管するオンプレミス型が主流でした。クラウド型であれば、スマートフォンやタブレットから映像をリアルタイムで確認できます。
カメラをリアルタイム確認する重要性は、以下でも解説しています。
遠隔操作機能
カメラを遠隔地から操作できれば、現場にいなくても安全確認と防犯対応が可能になります。PTZ(パン・チルト・ズーム)機能が備わっているカメラであれば、確認したいエリアに照準を合わせ、カメラの画角やズームを遠隔から調整することができます。
PTZカメラの特徴は、以下の記事で詳しくご紹介しています。
検知通知機能

検知通知は、人や物の動き、不可解な音を検知した際に管理者へ通知を送る機能です。通知は主に、動体検知(モーション検知)と音声検知の2種類があります。
最近はAI技術を活用し、動いている人だけを検知する人検知機能も登場し、活用が進んでいます。

動体検知(モーション検知)、音声検知について詳しくは、それぞれ以下の記事をご確認ください。
工場特有の環境に対応した機能
工場特有の環境から機能と設置条件も考える必要があります。
実際に製造業のお客様からよくご相談いただく、工場特有の環境課題として以下が挙げられます。
・水蒸気が発生する環境(湿度が高い環境)
・粉塵が舞う環境
・高温多湿環境
・振動の激しい環境
これらのご相談を踏まえた対応として、水蒸気や粉塵が発生している環境は、屋内であっても防水防塵性能の高い屋外用のカメラが推奨されます。高温または寒冷な環境にカメラを設置したい場合は、カメラの動作温度を確認することも重要です。
振動の激しい場所は、粉塵や水蒸気、温度にかかわらず撮影しにくく、カメラが故障する可能性も高いため、基本的に固定設置型のカメラはおすすめできません。このような特殊な環境ではウェアラブル型カメラの活用も選択肢の1つです。
詳しくは、以下の記事も参考にしてみてください。
その他の機能については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
まとめ:工場の安全とセキュリティ対策の実現に向けて
工場では、セキュリティ性を高めるために、物理的空間とサイバー空間の両面から対策を講じる必要があります。工場のセキュリティ対策への取り組みとして、防犯カメラの設置は外部からの侵入防止や緊急時の安全確認に有効な手段です。
当社が提供するクラウドカメラ「Safie(セーフィー)」は、高いセキュリティ性を保ちながら、必要な映像を適切に管理できるのが特長です。「どのカメラを選べばよいかわからない」と悩んでいるご担当者の方は、お問い合わせフォームからのご相談も可能です。
詳細な使い方や企業の導入事例については、ぜひ以下の資料をご確認ください。
- 製造業界向けクラウドカメラ活用ガイド
- 製造業界におけるクラウドカメラの活用方法と導入事例をご紹介しています。
※顧客や従業員、その他の生活者など人が写り込む画角での防犯カメラの設置・運用開始には、個人情報保護法等の関係法令の遵守に加え、写り込む人々、写り込む可能性のある人々のプライバシーへの配慮が求められます。防犯カメラとプライバシーの関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶「防犯カメラとプライバシーの関係。事業者が注意すべき設置のポイント」
※カメラの設置に際しては、利用目的の通知を適切に行うとともに、映像の目的外利用を決して行わないことが求められます。適切なデータの取り扱いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶「カメラ画像の取り扱いについて」
※ セーフィーは「セーフィー データ憲章」に基づき、カメラの利用目的別通知の必要性から、設置事業者への依頼や運用整備を逐次行っております。
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