入退室管理システムの導入に、セキュリティの高さと同時に初期費用、保守にかかるランニングコストが予算に合うかは重要なポイント。指紋、静脈、虹彩、顔認証などの生体認証(バイオメトリクス)からICカードやテンキー、スマートロックまでの7種類を比較します。
認証方法や入室ログの管理方法によって機器代や月額が異なるので、種類別の相場と特徴をまとめました。多拠点も低コストで導入できるSafieの顔認証システムもご紹介します。
入退室管理システムとは
企業で万が一個人情報などの機密情報が流出したり、監査が行われたりした場合、オフィスで適切に情報の管理が行われていたことを証明するためにも、誰がいつオフィスに出入りしたかを記録しておく必要があります。
関係者以外の無断の立ち入りを防いだり、誰が入室したか記録を残したりする目的で行われる入退室管理は、手作業でするのではなく、システム化したほうが効率的です。
こうした、入退室を管理するシステムのことを、入退室管理システムと言います。入退室管理システムには、ICカード方式や、テンキー認証、顔認証、指紋認証などの生体認証を使ったものなど、さまざまな方法があります。
個人情報の漏えいや機密データの流出は、企業の信頼を大きく損ないます。こうした事態を防ぐためにも、オフィスのセキュリティを強化したいと考える企業が増えています。プライバシーマークやISMS認証など情報セキュリティ保護が適切になされていることを示す認証の取得を目指す企業もあります。
入退室管理システムの種類と特徴
ICカード
集合エントランスや各部屋の前に設置されたICリーダーに、ICチップが入ったカードや社員証をかざすことで、入り口が解錠される認証方法です。
ICカード方式は、物理的な鍵と手書きの入退室記録で入退室管理をするよりも効率的な方法です。また、システムが建物側に設置されていれば、導入コストが抑えられます。一方で、カードの紛失・盗難・貸借りのリスクがあるため、セキュリティレベルはそう高くありません。
テンキー認証
出入り口に設置されたテンキーで暗証番号を入力することで解錠する入退室システムです。
物理的な鍵を持たなくて良いため、鍵の紛失を防ぐことができます。一方で、部外者に番号を知られてしまった場合、不正侵入される可能性があります。
指紋認証
あらかじめ個人の指紋を登録しておき、入り口のリーダーで指紋を読み取らせる解錠方法です。
個人の指紋を使うので、確実に本人を特定することができます。また、鍵の紛失や盗難の心配がありません。一方で、リーダーに直接触れるため、ウイルスなどの感染の可能性は否定できません。また、冬場は手指が乾燥することにより認証がされにくくなることがあります。
静脈認証
指や手のひらに赤外線センサーを照射し、静脈形状パターンを読み込んで、データと照合して解錠する方法です。
確実に本人を特定できるため、セキュリティ面で信頼性が高いというメリットがあります。一方で、指や手のひらの置き方によっては読み取り精度が落ちたり、本人の血流が悪くなると認証されにくくなってしまいます。
虹彩認証
瞳の周りにある瞳孔以外の部分を虹彩といい、虹彩認証ではこの虹彩を読み取ることで扉を解錠します。
虹彩は経年変化による影響が少ない部位です。また、双子であっても違いが判別できる、精度の高い方法です。一方で、認証できる距離が機器から数十cm以内と近いため、ウォークスルーのようなスムーズな動作が苦手です。
スマートロック
扉のサムターン部分に端末を貼り付け、スマートフォンやカードをかざすことで解錠する方式です。
大きな工事が発生しないため導入が容易ですが、内蔵の電池で稼働するため、電池切れの際稼働しなくなる恐れがあります。
顔認証
あらかじめ個人の顔をシステムに登録しておき、そのデータをもとに、入り口に設置されたカメラや端末で個人を特定し、解錠する方法です。
鍵の紛失・盗難の心配がなく、確実に本人を特定することができるため、なりすましの恐れがありません。また、センサーに触れる必要がないため、コロナ禍でも安心して利用できます。
顔認証には、オンプレミス型(※1)・クラウド型(※2)があります。オンプレミス型は、拠点Aに顔を登録した場合、Aの扉しか解錠することができません。一方、クラウド型の顔認証を選べば、A拠点・B拠点・C拠点など、多拠点に設置された認証システムを本社で一括管理することができます。拠点間の出張などが生じた場合に、いちいち別拠点への登録をする必要がなく、便利です。
※1オンプレミス型……自社内にサーバーを設置し、システムを構築する形態。運用も自社で行う。
※2クラウド型……インターネットを介してオンライン上のサーバーにアクセスし、システムやサービスを利用する形態。
入退室管理システムにかかる費用の内訳
入退室管理システムを導入するには、導入の初期費用と、システムを運用していくためのランニングコストがかかります。それぞれの内訳は、次のようになっています。
導入の初期費用
入退室管理システムを導入する際、初期費用として必要となるのは、主に次の3つです。
- 端末やコントローラーなど機器費用
- サーバー費用
- 工事費用
端末とは、ICカード方式ではICカードリーダー、顔認証システムではタブレットなどの顔認証端末、指紋認証や静脈認証ではセンサーのことを指します。コントローラーとは、端末を集中管理し、電気錠に解錠信号を送る装置です。ICカード方式の場合、端末のほかにICカードを用意する必要があるため、1枚あたりの費用が加わります。
オンプレミス型の入退室管理システムを導入する場合にはサーバーを購入する必要があるため、サーバー代金が初期費用として発生します。クラウド型の場合、サーバーの設置は必要ないため、初期費用としてのサーバー代金は不要です。
工事費用は、端末など各種機器の設置などにかかる費用です。
運用にかかるランニングコスト
運用にかかる費用は、以下が挙げられます。
- サーバーの保守費用(オンプレミス型のみ)
- サービスの月額利用料
オンプレミス型の入退室管理システムを導入した場合、サーバーの保守費用が必要です。また、バージョンアップをする場合は別途費用が必要となります。クラウド型の場合は、サービス提供側で保守・メンテナンスの対応をするため、サーバーの保守費用は不要です。
ランニングコストとしては、サーバーの保守費用のほか、サービスの月額利用料が発生する場合があります。
複数の扉に入退室システムを設置する場合、これらの費用は扉ごとに発生する場合があります。
入退室管理システムの費用相場
認証方法 | 費用相場 |
---|---|
ICカード | 40〜100万円 |
テンキー | 2〜10万円 |
指紋認証 | 30〜70万円 |
静脈認証 | 50〜100万円 |
虹彩認証 | 50〜120万円 |
スマートロック | 2〜9万円 |
顔認証 | 20〜150万円 |
各認証方法の全体費用の相場を表にまとめました。
どこに費用がかかるのか、内訳を次に解説します。
ICカード方式
ICカード方式の場合、以下の費用がかかります。
- 端末費用(ICカードリーダー):4-6万円/台
- コントローラー費用:20-40万円
- サーバー費用:20-50万円
- ICカード費用:一枚あたり数千円程度
- 保守・サポート費用
※必要に応じてサーバー代がかかります。
規模にもよりますが、全体で40〜100万円ほどです。ICカードは1枚数千円ほどで、紛失した場合に再発行手数料が発生します。
テンキー認証
テンキー認証は、以下の費用がかかります。
- 端末費用(テンキー):2-10万円/台
- 保守、サポート費用
端末2-10万円ほどと、ほかの入退室管理システムに比べコストが抑えられます。
指紋認証
指紋認証は、以下の費用がかかります。
- 端末費用(認証機器):10万-20円/台
- サーバー費用:20-50万円
- 保守、サポート費用
全体で30万円-70万円ほどです。
静脈認証
静脈認証は、以下の費用がかかります。
- 端末費用(認証機器):30万円-50万円/台
- サーバー費用:20-50万円/台
- 保守・サポート費
全体で50〜100万円ほどと、同じ生体認証の指紋認証と比べてやや費用が高くなります。
虹彩認証
虹彩認証は、以下の費用がかかります。
- 端末費用(認証機器):40万円-70万円/台
- サーバー費用:20-50万円/台
- 保守・サポート費
全体で60〜120万円ほどで、ほかと比べて費用が高額になります。
スマートロック
スマートロックは、以下の費用がかかります。
- 端末費用(認証機器):1万円-6万円/台
- 月額サービス利用料:1万円-3万円/台
- 保守・サポート費
- ICカード費用:一枚あたり数千円程度 ※ICカード利用の場合
全体で2〜9万円ほどと比較的安価です。初期費用が無料のケースもありますが、その場合月額サービス利用料が高くなりやすい傾向があります。
顔認証
顔認証システムは、オンプレミス型とクラウド型で費用が大きく異なります。
オンプレミス型は導入時にサーバーを購入する必要があるため、サーバー代だけで数百万円の初期費用がかかることがあります。また、ランニングコストとして、サーバーの保守費用やシステムバージョンアップをした際の費用が必要となります。自社にサーバーを設置するため、電気代も発生します。
一方のクラウド型は、サーバーを購入する必要がないため、初期費用は端末代と工事代のみ。一般的に、サーバーの保守やシステムバージョンアップの費用はクラウドサービスの提供者側が行うため、保守費用もかかりません。クラウド型の場合、システムを利用するためのサービス料が発生します。
このように、サーバーのタイプや規模によって、費用は20〜150万と大きく開きがあります。
※各費用は、セーフィーによる独自調査の結果となります。
まとめ
オフィスのセキュリティを向上することで、企業の信頼性を高めようという動きは、情報化社会の中で今後ますます広がっていくでしょう。そうした背景から、新オフィスへの引っ越しを機に入退室管理システムを見直したり、上場前後の企業がオフィスのセキュリティ強化のためにシステムを導入したりすることが増えています。
入退室管理システムは、認証方法ごとに導入費用が異なります。それぞれの特徴や導入費用を比較して、自社のオフィスにあった入退室管理システムを選びましょう。