物流業界では倉庫管理のコストがかかり、いかに削減するかが生産性向上のための課題となっています。倉庫管理における物流コストを可視化し、課題を見極めてコスト削減の対策を立てなければなりません。今回は、倉庫管理のコストが増える原因や、削減するためのポイントを紹介します。
目次
倉庫管理のコストを削減する必要性
運送業や製造業など、モノを扱う事業で課題となるのが、倉庫管理のコスト削減です。商品の保管には倉庫が不可欠であり、その管理には人件費や保管費、荷役費など、多くのコストがかかります。倉庫管理のコスト削減には、コストの可視化が重要です。どこにどれだけのコストがかかっているかを把握することで、コストの適切な配分や見直しが可能です。
コストの見直しで業務を効率化し、全体的な収益の増加が期待できます。生産性の向上や業績アップにもつながるでしょう。
倉庫管理にかかる物流コストとは
倉庫管理における物流コストは、大きく「荷役費」「保管費」「管理費」「人件費」4つに分類できます。
それぞれの内容をみていきましょう。
荷役費
荷役費とは、荷物や貨物の入庫・出庫作業にかかるコストのことです。商品の入出庫や梱包に伴う費用、シールの貼り付け・タグ付けなどにかかる費用が該当します。
これらの作業を行うスタッフに支払う人件費が荷役費の多くを占めるため、作業量が多く、時間がかかるほどコストが増加する傾向にあります。削減のためには、従業員の作業量・作業効率の見直しが必要です。
保管費
保管費とは、商品を倉庫で保管する際に発生するコストのことです。倉庫の賃貸料や、自社で倉庫を保有している場合の維持費などがこれにあたります。また、火災保険などの保険料も保管費に含まれるコストです。
保管費の削減には、荷物の量に合ったスペースの倉庫に借り換える、光熱費を削減する、保管する拠点を統合するといった方法があげられます。倉庫管理コストの中で大きな比率を占めるため、保管費を見直すことで効率のよいコスト削減が可能です。
管理費
管理費は、倉庫管理システム(WMS)や受発注システムなどを導入する際の初期費用、および運営・維持にかかるコストのことです。
倉庫管理システム(WMS)とは在庫管理に関わる情報や業務を一元管理できるシステムで、商品の入出庫や保管など、倉庫内の業務を効率化して管理を行います。
システムの導入には高額な初期投資が必要になり、導入から運用まで、計画的に検討すべきコストです。
人件費
人件費とは、物流業務に従事する従業員の給与などで構成されます。システムの導入で作業を効率化することで、削減が可能な項目です。
物流業務では繁忙期と閑散期の仕事量に差があることも多く、繁忙期には正規従業員のほかに臨時スタッフを確保する必要があります。調整が難しい場面もあり、適切な管理が求められるでしょう。
物流コストが増える原因
倉庫管理のコスト削減には、コストが増える原因の把握が必要です。ここでは、物流コストが増える主な原因をみていきましょう。
人為的ミスで余分な手間と時間がかかる
物流コストが増える原因には、入出庫やピッキング、仕分けといった作業で人為的ミスが発生することがあげられます。ミスの処理で余分な手間や時間がかかり、コストも増加します。
人材不足により1人にかかる作業負担が大きくなれば、人為的ミスが起こるケースも多くなるでしょう。システムの導入などで作業を効率化することが、ミスの軽減とコスト削減につながります。
業務の効率化ができていない
倉庫業務作業に「ムリ・ムダ・ムラ」が生まれて業務の効率化ができていないことも、コストが増える原因になります。
「ムリ」とは作業量が許容量を超え、能力を上回る負荷が起きている状態です。「ムダ」とは、反対に負荷が能力を下回っている状況を指します。「ムラ」は、ムリとムダが交互に起こる不安定な状態です。
作業量と能力のバランスを整えることで業務を効率化でき、コストの削減につながります。効率化により作業速度が向上し、人為ミスを抑えながら必要人員を最小限に抑えられるでしょう。
顧客の要望が多様化している
物流に関する顧客の要望は多様化しており、さまざまな要望に対して柔軟に対応するために、多くのコストがかかります。品揃えだけでなく、在庫を切らさないこと、迅速に出荷できることなど、物流倉庫に求められる内容も増えている状況です。
このようなニーズに応え、顧客満足度を高めるために、よりコストが必要となるという実情があります。
倉庫管理のコストを削減するポイント
倉庫管理のコストを削減するには、倉庫内の整理整頓や在庫量の適正化など、いくつかのポイントがあります。
詳しくみていきましょう。
倉庫内を整理整頓する
手軽に倉庫管理のコストを削減できるのが、倉庫内の整理整頓です。適切に整理されていない倉庫内は、目的のものを探すために歩き回ることになるでしょう。整理整頓により作業がしやすくなり、働きやすい環境になります。
整理整頓されることで倉庫内のスペースを有効活用でき、入庫や出庫作業もしやすくなります。作業効率が上がることで、人件費の削減も可能です。働きやすくなることで、従業員のモチベーションも高まります。生産性の向上にもつながるでしょう。
在庫量を適正に保つ
倉庫管理のコスト削減には、在庫量を適正に保つことが大切です。在庫量が多すぎると保管スペースの確保が必要になり、仕分け作業も増えてコストが増加します。
一方、適切な在庫量が確保できていない場合、突然の注文や需要の増加などに対応できなくなり、販売の機会損失につながります。欠品を補うために追加業務が発生し、人的コストもかかるでしょう。
需要・供給のバランスを考え、在庫量を慎重に決めなければなりません。
スペースを有効活用する
整理整頓にも関連することですが、保管スペースの有効活用も倉庫管理コストの削減につながります。商品のサイズや種類ごとに適切なスペースに収納することが作業の効率化になるため、扱う商品に合ったラックを配置したり、フリーロケーションの運用をしたりするとよいでしょう。
さまざまな商品に対応できる積層ラックや出し入れの少ない商品の収納に適した移動ラックなど、商品に合ったラックを選ぶことで、スペースの有効活用ができます。
フリーロケーションとは、棚の空いている場所に商品を保管する管理方法です。空いている棚を優先的に利用できるため、置き場所のルールを覚える必要がなく、作業効率が高まります。
ただし、フリーロケーションの運用には、どの商品がどこにあるかを常に管理しなければならず、在庫管理システムの構築が不可欠です。
倉庫内作業のルールを作る
倉庫管理コストの削減には、マニュアル作成や禁止・注意事項の制定など、作業ルールの構築が必要です。入庫・荷役・出荷など倉庫内作業の手順を統一すれば、作業者ごとに手順が異なることで発生しやすいミスを防止できます。
マニュアル作成で作業の手順が統一化することは、作業の効率化にもつながり、コスト削減を実現します。また、マニュアルがあれば、新人教育時にかかる時間も短縮できるでしょう。
専門業者にアウトソーシングする
アウトソーシングの利用により、コストを削減することも可能です。専門業者に業務を委託すれば人件費を削減して効率的な倉庫管理ができ、倉庫の賃料も節約できます。倉庫業務の負担がなくなることで、従業員は他の重要業務に集中できるでしょう。外部委託により物流コストが委託費として可視化でき、コストの見直しも容易になります。繁忙期・閑散期の調整ができるのもメリットです。
倉庫管理システム(WMS)で自動化する
倉庫管理システム(WMS)を導入して作業を自動化し、在庫と物流プロセスを効率的に管理するという方法もあります。
倉庫管理システムは、入出庫の管理や在庫の追跡、受注処理、ピッキング・パッキングの計画と実行など、物流業務におけるさまざまな機能を搭載しています。倉庫管理システムの活用により倉庫内の業務が可視化され、作業効率と精度を高められるでしょう。
システム化によりアナログ管理を排除し、手作業で起こりやすいミスの軽減にもつながります。業務の標準化・自動化により、少人数の従業員で倉庫内作業ができるようになり、人件費の削減も可能です。
クラウドカメラを活用する
倉庫管理コストの削減には、クラウドカメラの導入もおすすめです。ネットワークカメラからの映像をクラウドで録画・視聴できるサービスを利用することで、人的ミスの防止や業務効率化に役立ちます。
広い倉庫内では、用途に応じてカメラを使い分けることが効率化のポイントです。常に確認したい場所には定点カメラを設置し、物品が正しく搬送されているかを確認できます。これまでひとの目では行き届かなかった場所を常時撮影することで、万が一トラブルが発生したときの原因究明もできるでしょう。
また、荷物の滞留が発生しやすい場所に設置して、異常を早期に発見して対処することも可能です。立ち入りにくい箇所や巡回のサポートには、身体に装着して周囲を撮影できるウェアラブルカメラが活躍します。現場で問題が起きたときはカメラ映像を事務所で確認でき、現場との行き来が減って業務の効率化やコスト削減ができます。
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作業を効率化して倉庫管理のコストを削減しよう
倉庫管理のコストが増えるのは、業務の効率化ができていない、人為ミスが多いなど、さまざまな原因があります。コスト削減には倉庫内の整理整頓や在庫量の適正化、作業のルール化などを行い、作業効率を高めることが必要です。
アウトソーシングや倉庫管理システム(WMS)の導入、クラウドカメラの導入も、コスト削減に役立つ選択肢となります。自社の課題に合わせて対策を考え、倉庫内作業の効率化・コスト削減を図りましょう。
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