工場の省人化とは少ない人員で生産性を高めるための取り組みであり、さまざまな観点から業務改善をおこなう必要があります。今回の記事では、工場の省人化をおこなう必要性やその効果、具体的な方法、進めるポイントについて解説します。
目次
工場の省人化とは?
少子高齢化の進行により、多くの業界が労働人口不足の課題を抱えています。工場でも同様に人手不足が問題となっており、少ない労働人口で生産性を向上させる取り組みが必要とされています。そして、工場の生産性を向上させるひとつの手段が「省人化」です。ここでは、省人化について解説します。
省人化とは、人員を削減する取り組みのこと
省人化とは、製造工程などの業務プロセスにおいて効率化を図り、人員を減少させる取り組みのことです。生産工程に機械を導入したり無駄な工程を見直したりすることで、余分な人員を省いて少ない人員でも行えるように考えます。省人化を図り、これまで3人で行っていた作業を2人でまかなえれば、生産性の向上とコスト削減につながります。
省人化の歴史は古く1950年代に鉄鋼業界などで意識されるようになったとされています。製造工程に機械が導入されて自動化によって大量生産が可能となり、多くの産業において生産性を大きく向上できるようになりました。さらに1960年には産業ロボットの誕生や、1970年以降は機器のデジタル化が進み徐々に発展しています。近年では機械のIoT化やAIの活用などでさらに高度化しており、とくにクラウドカメラやAIカメラといったカメラ映像の活用は、省人化を進めるために有効な方法のひとつです。
企業はIoTやAIなどのデジタル技術を活用し、DX(デジタルトランスフォーメーション)にも取り組まなければなりません。DXとはビジネスの仕組みそのものを変革して競争力を高める取り組みであり、デジタル競争に優位に立ち、ビジネス環境の変化に対応するために重要です。省人化を進める過程でデジタル化が進んだりデータの解析ができたりすれば、新製品の開発やビジネスモデルの創出にもつながるため、DXの実現へと近づくでしょう。
省力化との違い
「省人化」に対して、「省力化」とは作業者の負担を軽減するための取り組みです。作業者の負担を軽減することで離職防止の効果も期待でき、品質や安全性の向上につながるといったメリットもあります。しかし、人員を減少させられるわけではないため、確実なコスト削減にはなりません。
業務改善による効率化を図る点は共通していますが、省人化は工数ではなく人員を減少することに焦点を当てています。確実に人員を減少できるかどうかが、省人化と省力化の大きな違いです。
工場の省人化が必要とされる理由と効果
工場での省人化への取り組みが必要となる理由や、省人化による効果について解説します。
人手不足の深刻化
少子高齢化による労働人口の減少は、どういった企業でも問題となっています。製造業でも多くの働き手が不足しており、今後もさらにこの課題は深刻化していきます。しかし、企業が存続するためには生産量を減らすわけにはいかず、少ない人員で生産性を補う必要があるため一人当たりの労働負担が増えてしまいます。
このように人手に頼っているだけでは、企業経営が難しくなる恐れがあります。そのため、少ない人員でも生産性を向上できるように、省人化に取り組む必要があります。
従業員の負担軽減
人手不足による深刻化は、従業員一人当たりの業務に大きく負担をかけることにつながります。従業員の負担が大きくなると労働力が低下し、ミスや不良品発生につながることも考えられます。
また、従業員に負荷がかかりすぎると、モチベーションの低下や離職率が増える要因となります。これらの悪循環を断ち切るためにも、省人化の取り組みを推進し、従業員の負担軽減へとつなげる必要があります。
生産性の向上
省人化は、業務プロセスに対して人員を減少する取り組みです。そのため、実現すれば結果的に生産性も向上します。詳しく後述しますが、省人化を進めるうえで産業ロボットやカメラの導入といったIT技術や、膨大なデータの収集や解析ができるAI技術の活用は必要不可欠です。
これらの新たなデジタル機器を導入することで、工場全体の生産性は飛躍的に向上し、さらにはDXにもつながります。人員に頼らざるを得ない状況を改善することで、人材採用や教育の負担も低減でき、正確な生産計画も立てやすくなります。また顧客や社会のニーズや環境の変化にも対応できるため、生産性だけなく他社との競争力も向上できるでしょう。
余分な人件費の削減
省人化の取り組みが実現できれば、人件費のコストを抑えられます。省人化は人手不足の解消と生産性の向上が期待できる取り組みであるため、売上につながり資金調達も可能です。経営資金を産業ロボットやカメラなどの導入コストに当てられ、より省人化の取り組みを発展させることが可能になります。
働き方改革の推進
企業は働き方改革への対応も求められており、長時間労働の是正や働きやすい環境の整備などに対応しなければなりません。省人化を見据えたDXの取り組みで機器設備のデジタル化が進めば、危険作業や重労働の業務を低減でき、体力に自信のない方や高年齢の方でも勤務を続けやすくなります。また、残業や休日出勤などの削減でワークライフバランスも整い、有給休暇や育児休暇の取得率の上昇も見込めるため、働きやすい職場環境を実現できます。
工場の省人化を進める際のポイント
工場の省人化を効率よく進めて成功させるために、以下のポイントに注意しましょう。
目的を明確にする
まず、省人化の目的を明確にすることがポイントです。省人化によって解決したい課題や実現したい内容などを踏まえて明確にします。
また、企業内で目的を共有することも大切です。それぞれの組織が省人化の目的に適した目標や実行計画を立て、推進や効果検証などを進めていく必要があります。
製造工程を細かく洗い出す
製造工程を細かく洗い出すことが大切です。洗い出した製造工程はどれくらいの業務負荷がかかっているかを把握し可視化します。
普段当たり前と思ってやっている作業もすべての製造工程を洗い出すことで、無駄や不要な作業を発見できるようになり作業の見直しにつながります。また、人の負担になっている作業や単純な作業は、機械の導入やシステム化による自動化の検討対象となります。デジタル技術でさらに効率化を図れるものはないか、という観点で製造工程を見直すとよいでしょう。
製造工程の標準化をする
製造工程を分析して無駄な作業を省いたうえで、製造工程の標準化を図ります。作業者によって作業工程が異なるケースや、一人しか作業を把握していない属人化をなくし、どの作業者が対応しても同じように作業が行えるようにしなければなりません。工程を標準化してマニュアルやガイドラインを作成することで、どの作業員でも柔軟に対応できるようになり品質も安定します。
製造工程の標準化が整ったら、定着できるような体制を構築します。そのために、「製造工程のデータ収集・分析」、「課題に対する改善策の立案」、「改善策の実行・効果検証」のサイクルを繰り返しおこなうことも大切です。
DX人材の育成と管理者を配置する
工場の省人化を実現するために、DX人材の育成と管理者の配置が必要です。DX推進は単にデジタル技術を導入するだけではなく、ビジネスモデルの変革や他社との競争力を伸ばすことも目的のひとつです。各企業でも省人化のためDX推進も図られており、専門的な知識を持った人材の確保が難しくなっています。
そのため、自社内で教育したり人材を確保したりするための時間などを見越さなければなりません。省人化の計画ではDX人材についても検討し、自社内での確保や育成が難しい場合は、外部の専門家を活用することも視野に入れて進めていく必要があります。
工場の省人化を実現する具体的な方法
工場の省人化において、効果のある具体的な方法を紹介します。
不要な製造工程の改善
工場の省人化は、不要な製造工程を省いていくことが基本的な方法です。省人化を進める最初のステップで製造工程を細かく洗い出した際に、無駄になっている箇所がないか、改善できる内容はないかを探して対応策を検討します。不要な製造工程は、以下のような内容が挙げられます。
【不要な製造工程の一例】
- 製造しすぎて大量な在庫を抱えていないか
- 製造工程で二重の作業が発生していないか
- 不良品が大量に発生するような不備がないか など
とくに昔からの流れのまま習慣的に作業を行っている場合は、省ける作業が含まれている可能性が高いです。製造工程では資材の在庫や製品の品質チェック、運搬に至るまであらゆる過程があり、製造現場以外でも関連する作業を含めると非常に多くの工程が発生しています。手順を改めて見直し、不要と判断できる作業工程の廃止や改善を実施します。
ロボットなどの自動化設備を導入
工場の省人化では、産業ロボットの活用をはじめ自動化設備の導入が効果的です。人が担っていた作業を機械が代わりに行ってくれることで、作業者は製造工程の監視や点検作業をするだけで済み、省人化を実現できます。
すべての製造工程を自動化することが困難な場合は、人の作業では時間や負担がかかる作業やミスの多い作業から優先的に自動化することから検討しましょう。
AI、IoT導入など業務のデジタル化をおこなう
工場での製造工程では、現場作業だけではなくさまざまな業務も関連しています。それらの業務に、AIやIoTなどの技術を導入しデジタル化を図る方法も有効です。
【デジタル化できる業務の一例】
- 生産管理をシステム化し、在庫管理などのExcel入力作業を廃止
- 2D/3Dデータ図面作成ツールを導入し、製品開発図面をペーパーレス化
- 正確なデータを取得できるように機器設備をIoT化し、工程内容や機器データの目視チェックを廃止
- システム化された製造機器にさらにAIを活用、膨大な情報からデータ解析作業を実現
業務のデジタル化は製造業界に限らず、企業として必要な取り組みであるDX推進の観点からも必要な取り組みです。省人化を進めるうえで業務をデジタル化すれば、大きく生産性の向上が見込めます。生産性向上だけでなくデータの蓄積や解析が可能になり、新製品の開発やビジネスモデルの創出にも期待が高まります。
クラウドカメラやAIカメラの導入
製造工程でロボットや設備機器のデジタル技術はさらに進化しており、近年ではカメラ映像の活用が省人化を進めるうえで欠かせないものとなっています。
工場でロボットを活用し機械を自動化しても「現場で監視する」、または「何度も目視で確認する必要がある」場合は、そのための人件費や移動時間が無駄になります。クラウドカメラやAIカメラであれば、遠隔からでも製造工程の監視や点検を可能にし、異常があった場合もカメラが知らせてくれるので大幅に作業の効率を向上できます。
クラウドカメラは、ネットワークを介して遠隔地からカメラの操作や確認ができるカメラのことです。クラウドカメラで撮影した映像はクラウド上に保管され、スマホやタブレット、PCなど、さまざまなデバイスからリアルタイムで映像を確認できます。クラウドカメラを工場内に設置して製造工程や機器を監視することで、事務所にいてもカメラ映像をチェックできるようになり、日常業務の時間とコスト削減につながります。
また、AIカメラは映像から製品や人物の識別が可能であり、自動的にデータの収集や解析を行ってくれます。製造工程においてAIが異常と判定した場合に、管理者に通知して知らせる機能もあります。そのため、作業者がほかの業務に集中していてもトラブルや異常に迅速に気づけます。
クラウドカメラやAIカメラは、現場にいなくても監視でき、異常を検知するなどさまざまな働きをしてくれます。そのため、省人化の実現に有効な方法のひとつです。
最後に
工場の省人化は、業務の見直しから始め不要な業務を省くことと、人の作業を機械に任せる自動化が基本です。デジタル技術は進化しているため、AIやIoT技術が搭載されたシステムやツールの導入は欠かせない取り組みといえます。とくに具体的な方法で紹介したクラウドカメラやAIカメラの活用は、工場の省人化を飛躍的に進めてくれる方法です。
セーフィーでは、クラウドカメラや映像ソリューションを提供。工場での製造工程におけるさまざまな課題を映像活用で解決いたします。省人化に有効な方法であるクラウドカメラや、AIカメラの導入について検討される際はぜひご相談ください。
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