建設業における墜落・転落災害の約8割は、屋根、斜面などの足場以外の高所作業において発生しています。危険の伴う高所作業について、起こりうる事故やそれらを未然に防ぐためにどのような安全対策が取れるのか紹介します。
目次
高所作業の安全対策の必要性
高所作業は、2m以上の高さで行われる作業のことを指し、労働安全衛生法により安全措置が義務付けられています。
平成24年度における「建設業における事故の型別死亡災害発生状況」によると、墜落・転落事故は116人と、全体の約50%を占めており、建設業における事故の中で最も大きな割合です(※1)。
高所作業での安全対策は、優先して講じられるべき事項であり、労働者の安全を確保し、高所作業における災害を未然に防ぐために重要です。
※1 出典:“令和4年労働災害発生状況の分析等”.厚生労働省 労働基準局.2023-5-23(参照 2024-4-26)
労働安全衛生法における高所作業の2mはどこから?
作業時の高さは、地表または作業床から支点となる部分までを指し、それが2mを超えると高所作業となります。(作業床の端や開口部などの例外あり)
脚立を例に取り上げると、脚立を設置した部分から足場までの使用最大高さが2mを超えると高所作業となり、ヘルメットに加え安全帯の着用が必要です。210cm以下の脚立では足場までの高さが2mを超えることがないため、高所作業とはなりません。
高所作業で発生しやすい事故
高い場所で資材や工具を用いて工事を行うため、建設業における高所作業には、さまざまな事故のリスクがあります。具体的に高所作業でどのような事故が起きるのか、発生しやすい事故について紹介します。
作業員が高所から落下してしまう
高所からの落下事故には、足場および法面、脚立などからの墜落があり、死亡にもつながる大変危険な事故です。
令和4年度における労働災害および公衆災害事故の約10%を占め、そのうち足場からの墜落は12件、法面からの墜落は8件、その他墜落事故は22件となっています(※2)。足場からの墜落事故のうち、安全帯を装着したが未使用であった割合が56%であり、安全帯を正しく使用していれば防止できた事故が多いです。
その他の原因としては、足場が不安定であったことや表面が滑りやすかったことなどが挙げられます。
※2 出典:”安全啓発リーフレット(令和5年度版)” .国土交通省 大臣官房技術調査課 令和5年9月(参照 2024-4-26)
部品や工具を高所から落としてしまう
高所での作業中に作業員が持っている資材や工具を落としてしまう事故も発生しています。落下したものが地上にいる人に飛来し、死傷させてしまう可能性があり、大変危険な事故です。
工具の不適切な保管や取り扱いなどの人的要因に加えて、強風などの外的要因によっても引き起こされます。
高所作業車や足場が崩落・転倒してしまう
高所作業には、高所作業車や足場が必要ですが、ルールを守らなかったり、設置に不備があったりすると、事故を引き起こす可能性があります。
高所作業車は、作業床をしっかり下げた状態で移動させないと、移動中に転倒する可能性があります。また、足場が崩落する原因として、不適切な組み立て方、重量オーバー、地面の不均一などが挙げられます。
高所作業における安全対策の例
高所作業を未然に防ぐためには、安全対策を徹底する必要があります。高所作業における具体的な安全対策のポイントと、実際に企業が取り入れている安全対策の実例を紹介します。
作業前に器具などの点検を行う
ヘルメットや安全靴、安全帯などの個人保護具から、足場やはしご、作業台など作業に使用する機材まで、すべてが正しく機能しているかを確認する必要があります。
例えば、ヘルメットは頭を保護するための安全装備ですが、破損や亀裂がないかを定期的にチェックし、必要に応じて交換することが大切です。また、エアバッグなどの落下時の衝撃を緩和する装置なども正しく作動するか確認することが大切です。
器具に劣化や不備があると、事故を防ぐことができなくなってしまうため、必ず作業前に点検しましょう。
墜落防止の保護措置をとる
スカイリトラやスカイロックなど、高所作業現場の昇降に使う墜落防止装置の使用が推奨されています。これらの装置は、作業者が高所からの落下時に自動的に制動し、墜落を防ぐ仕組みを備えており、ヒューマンエラーによる作業員の墜落事故を防ぐためのものです。
適切に墜落防止装置を選定し、使用すれば、万が一の時に作業者の命を守ることができるため、高所での作業時には必ず活用しましょう。
フルハーネスを着用するようにする
高所での作業の安全を守る重要な装備品として、2022年1月より労働安全衛生法が改正され、フルハーネスの着用が義務化されています。
それ以前は、腰部をサポートする胴ベルト型ハーネスが広く用いられていましたが、これでは転落事故が発生した際に腹部への衝撃が集中し、致命的なダメージにつながる恐れがあります。また、転落により逆さ吊りの状態になった場合、頭が下向きになることがあり、長時間の状態維持は生命の危険もあることが問題視されていました。
このような理由から、落下時の衝撃を体全体に分散させ、転落時にも足が下向きを保つことができるフルハーネスの使用が義務付けられました。
2022年1月以前に製造・販売されたフルハーネスは、新しい安全基準に適合していない可能性があるため、義務化に完全に対応しているとは限りません(※3)。必ず新しい安全基準に対応しているかを確認しましょう。
※3 出典:”安全帯が「墜落制止用器具」に変わります!” .厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署(参照 2024-4-26)
作業指揮者を設置する
高所作業には、作業の進行を監督し、安全管理を担当する作業指揮者の設置が必要です。作業指揮者は、作業の計画から完了までの全過程を作成・管理し、安全対策の徹底を図ります。
計画が完成したら、当日にはその計画を作業に従事する全員に伝達し、その後従業員が安全措置を適切に講じているか、点検を遂行しているかを確認し、必要に応じて指導を行います。その際、安全措置に不備がある場合は、それが解消されるまで作業を停止します。また、緊急時の対応計画も策定し、万一の事故発生時に迅速に対応できるよう準備します。
リスクアセスメントや危険予知を記入する
工事が始まる前に、その工事で行う作業のリスクアセスメントや危険予知の記入を行うことで、事前に潜在的な危険を特定し、対策を講じることができます。
例えば、作業中に使用する足場の安定性や、高所作業車の操作中の落下リスク、電気設備作業時の感電リスクなどが挙げられます。これらのリスクを事前に特定し、足場の追加固定や高所作業車の使用時の安全ベルト着用、電気設備作業時の遮断措置など、具体的な対策を講じることが重要です。
防犯カメラ映像による現場の見守り
一方、危険予知活動では、作業員自身が危険を予見し、それを回避するための意識を高めます。作業員が日々の業務を行う中で「何が危険を引き起こす可能性があるか」「その危険をどのように回避するか」を考え、共有し、対策を行います。
防犯カメラの映像を使用し、高所作業の安全対策を講じることもできます。ここでは、クラウド録画サービスの「Safie(セーフィー)」を活用して高所作業の安全対策をしている企業の実例を紹介します。
Safieを導入し遠隔管理と安全管理を強化
幅広い建築物の建設を手がける「戸田建設」では、安全管理と遠隔管理の強化のため、全国の建設現場にクラウド録画サービス「Safie」を導入しています。
主に、屋外対応の定点カメラ「Safie GO(セーフィー ゴー)」とウェアラブルカメラ「Safie Pocket2(セーフィー ポケット ツー)」を活用し、建設現場での安全管理や業務効率の向上を実現しています。
不安全行動が検出された際には、即座に通知が行われ、現場監督者が迅速に対応し、事故のリスクを低減しています。これにより、遠隔地からでも建設現場の品質や工程の管理が可能で、業務効率化につながっています。
広大な現場をカメラで網羅し安全管理を徹底
建設業界におけるDX先進企業の「清水建設」は、クラウドカメラの「Safie」を利用して広大な建設現場を網羅し、安全管理を徹底しています。特に高所作業が多い建設現場では、落下物や作業員の転落などのリスクが常にあります。
「Safie」を導入してから、広大な現場でも遠隔操作で必要な箇所を確認でき、施工現場の安全管理の質と速度が向上していると言います。また、Safieの映像とビジネスチャットの併用で情報共有がスムーズになり、現場への反映、行動是正などが迅速化されたそうです。
クラウドカメラで高所の安全管理を
高所作業や広大な施工現場では、安全対策が特に重要ですが、管理者の確認が限界に達することがあります。この問題を解決するため、ウェアラブルクラウドカメラなどの高画質で遠隔操作可能なIoTデバイスを活用することが有効です。現場の安全管理の質が向上し、管理者が直接現場にいなくてもリアルタイムでの撮影・確認や迅速な対応が可能になります。
クラウドカメラは、高画質で遠隔確認ができるため、このようなIoTデバイスを活用することでより安全管理の質が向上します。
セーフィーでは、多機能な映像ソリューションを提供しており、導入実績も多数ございます。導入を検討している人は、ぜひセーフィーまでご相談ください。
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