PoEインジェクターはスイッチと違うの？メリットや接続方法を解説

PoEインジェクターの導入を考えている方は、「PoEスイッチとの違い」や「防犯カメラとの接続方法」などで迷われる方も多いのではないでしょうか？そんな時はぜひ本ページを読んで、PoEインジェクターについての理解を深めてみてください。

そもそもPoEとは？

PoE（Power over Ethernet）は、LANケーブルを介してネットワーク機器にデータ通信と電力供給を同時に行う技術です。接続機器にコンセントが必要なくなるため、新たに電源設置が必要なく、LANケーブル1本でシンプルな接続が可能になります。

PoEインジェクターとは

PoEインジェクターは、PoE機能を搭載した装置です。既存のスイッチングハブなどにPoEインジェクターを接続することで、PoE機能を後付けで構築できます。ただし、PoEスイッチに比べるとポート数が少ない傾向にあるため、小規模なネットワークに適しています。

PoEインジェクターとPoEスイッチとの違い

PoEスイッチは、PoE機能を搭載したスイッチングハブのことを指します。スイッチングハブからPoEで給電できるため、LANケーブル1本でネットワーク機器のデータ通信と電力供給を実現します。

一方のPoEインジェクターは、既存のネットワークにPoE機能を後付けする装置です。PoE機能を搭載する点ではPoEスイッチと共通点があります。しかし、PoEインジェクターにスイッチングハブの機能はなく、2ポート、4ポート程度しか接続できる機器数もありません。

スイッチングハブとして使うにはPoEスイッチを導入し、少数の機器にPoE機能を搭載したいだけであれば、PoEインジェクターを導入するのが適しています。

PoEスイッチについては別記事で解説していますので、詳しくはこちらをご覧ください。

PoEインジェクターの規格と仕組み

PoEスイッチには、IEEE802.3af（PoE）、IEEE802.3at（PoE+）、PoHなどの規格があり、それぞれ供給できる最大電力やサポートするLANケーブルの種類が異なります。

通称	規格名	供給電力	対応ケーブル	特徴
PoE	IEEE 802.3af	最大15.4W	カテゴリ3以上	2003年に発表された初期の規格
PoE+	IEEE 802.3at	最大30W	カテゴリ5以上	2009年に発表された、PoEの拡張版
PoE++	IEEE 802.3bt	最大100W（Type4）/最大60W（Type3）	カテゴリ5以上	2018年に発表された最新規格
UPoE	–	最大60W	カテゴリ5以上	2011年に発表されたシスコシステムズ社がPoE+を拡張した独自規格
PoH	–	最大100W	カテゴリ5e以上	非営利団体HDBaseT アライアンスがPoE+を拡張した規格
LTPoE++	–	最大123W（ UltraPWRモード）/ 最大90W	カテゴリ5e以上	リニアテクノロジー社（現：アナログ・デバイセズ社）が2014年に発表し、2017年には最大123WのUltraPWRモードも登場した

2003年初期のPoE規格では、4対のツイストペアケーブルのうち2対を電力供給用、残り2対をデータ通信用に使用していました。一方、最新のPoE++やPoHでは、4対すべてを電力供給とデータ通信を行うことができ、供給電力の大幅な向上を実現しています。

別記事でPoE規格について解説していますので、詳しくはこちらをご覧ください。

PoEインジェクターのメリット

PoEインジェクターは後付けでPoE機能を導入できるため、次のようなメリットがあります。

シンプルな機器接続

PoEスイッチを使えば、ネットワーク機器に電源ケーブルが必要なくなり、LANケーブル1本で接続が完了します。配線がすっきりとまとまり、電源ケーブルにかかるコストの削減も可能です。

UPSを一元化できる

スイッチングハブとPoEインジェクターにUPS（無停電電源装置）を接続しておけば、停電時もネットワーク機器への電力供給が可能です。PoEインジェクターに接続したネットワーク機器にUPSは必要ありません。

ただし、UPSの一元化にはPoEインジェクターよりもPoEスイッチが適しています。PoEインジェクターは、接続機器に電力供給はできますが、ネットワーク全体にPoE機能を搭載できないためです。

電源工事が必要ない

ネットワーク機器の設置で課題となるのが、コンセントの増設工事です。新たにコンセントを増設するには電気工事士の資格が必要になります。基本的にPoEスイッチを使えば、費用のかかる電源工事をせずにネットワーク機器を設置できます。

PoEスイッチより価格が安い

PoEインジェクターのメリットは、機能性が低いことによりPoEスイッチよりも価格帯が安いことにあります。たとえば、PoE機能を搭載したいネットワーク機器が1台程度であれば、PoEインジェクターを導入することでコスト性に優れています。

PoEインジェクターのデメリット

PoEインジェクターは利便性が高く、特筆すべきデメリットはありません。ただし、PoEスイッチに比べると機能性が低い点ではデメリットもあります。

大規模ネットワークには向かない

PoEインジェクターのポート数は2ポートや4ポート程度であり、あまり多くのネットワーク機器は接続できません。そのため、小規模なネットワークに適しており、業務用のネットワークには適していないと言えるでしょう。

PoEインジェクターに複数のネットワーク機器を接続する予定がある場合は、PoEスイッチを選ぶようにしましょう。

接続機器もPoE規格に準ずる必要がある

PoEスイッチを導入することですべての機器でPoEが利用できるわけではありません。接続機器もPoE規格に準拠する必要があるため、場合によってはすべてのネットワーク機器を刷新する必要もあります。

PoEインジェクターと防犯カメラの接続方法

実際にPoEインジェクターを導入する基本的な手順は、非常にシンプルです。

1. PoEインジェクターをコンセントに接続
2. スイッチングハブとPoEインジェクターをLANケーブルで接続
3. 防犯カメラ（PoE対応製品）を設置
4. LANケーブルでPoEインジェクターと防犯カメラを接続

これだけの手順で、基本的なPoEインジェクターの給電機能を実現できます。ただし、ネットワーク機器として使用するためには、別途IPアドレスなどのネットワーク設定が必要です。設定方法は機種によって異なるため、製品マニュアルを参照しながら適切に行ってください。

CCAケーブルは使用できるか？

CCAケーブルは、アルミ線に銅メッキを施した低コストのケーブルですが、PoEでの使用は基本的に避けましょう。CCAケーブルは、純銅線のケーブルよりも電力損失が大きく発熱しやすい構造をしています。

また、経年劣化で銅メッキが剥がれると断線のリスクが懸念されます。そのため、PoEシステムには、安定した電力供給が期待できる純銅線のLANケーブルがおすすめです。

PoEインジェクターをスイッチングハブとして使えますか？

PoEインジェクターには、基本的にはスイッチングハブの機能はありません。スイッチングハブにPoEインジェクターを接続できますが、電力供給するのはPoEインジェクターに繋いだネットワーク機器だけです。スイッチングハブにPoE機能を搭載できるわけではありません。

スイッチングハブにPoE機能を搭載するには、PoEスイッチを使うようにしましょう。

防犯カメラ設置はセーフィーまでご相談ください

PoEインジェクターを導入すれば、コストのかかる電源工事なしで防犯カメラなどのネットワーク機器をかんたんに設置できます。ただし、あくまでも小規模なネットワークにPoE機能を搭載できる製品であるため、業務用のネットワークにはPoEスイッチを導入するようにしましょう。

セーフィーは防犯カメラをはじめとする映像ソリューションを活用して、企業の抱える課題解決をサポートしています。多数の導入実績がありますので、設置環境に応じて最適な防犯カメラシステムをご提案させていただきます。

PoE機能を用いた防犯カメラの設定に不安がある方、プロに相談して設置したい方は、セーフィーまでお気軽にご相談ください。