近年、鳥獣被害は農村だけでなく都市近郊でも増えてきています。農村での鳥獣被害は、シカやイノシシ、サルによるものです。一方、都市近郊では、カラスやハト、ハクビシン、アライグマなどが代表的な害獣といえます。これらの害獣による被害を減らすには、効果的な対策が必要です。
本記事では、鳥獣被害の現状から被害が減らない理由、導入できる対策などを解説します。鳥獣被害に悩む方は、ぜひ参考にしてください。
目次
鳥獣被害の現状
近年、地方だけでなく都市近郊でも鳥獣被害が多く発生しています。地方ではイノシシやシカ、都市近郊でもカラスやハト、ハクビシンなどの被害が見られるのが特徴です。2024年6月に農林水産省が公表したデータによると、2022年度の野生鳥獣による農産物の被害額は156億円にのぼります(※1)。
※1 出典:“野生鳥獣による農林水産被害の概要” .農林水産省 農村振興局.2024-6(参照 2024-6-27)
都心部での鳥獣被害というと、カラスのゴミ捨て場荒らしを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。ほかにも、ハクビシンやアライグマの増加が目立ち、注意が必要です。都民から寄せられた相談件数は、区部、多摩地域共に年々増加しており、2022年度には3500件以上にのぼります(※2)。
※2 出典:“東京都のアライグマ・ハクビシンの被害及び対策の状況について 相談件数の推移” .東京都 環境局.2024-4-11(参照 2024-6-27)
特にハクビシンは雑食性で適応力に優れているため、ちょっとした隙間があると、家の屋根裏や空き家に侵入し住みついてしまいます。
高層マンションであっても、気付かないうちに繁殖していることもあり、見かけたらすぐに駆除しなければなりません。地方と都市近郊で見られる鳥獣は異なるため、それぞれの鳥獣に適した対策が必要です。
被害を及ぼす鳥獣の種類
地方における農村の被害の7割は、シカやイノシシ、サルによるものといわれています。ほかにも、ノネズミやクマ、カモシカ、ノウサギなども被害の要因です。各地の里山で、シカやイノシシ対策が施されていますが、それでも近年の被害数は横ばいにとどまっています(※1)。
一方、都市近郊での鳥獣被害の要因は、カラスやハト、ハクビシン、アライグマ、イタチ、テン、ネズミなどです。家屋に侵入し、柱や天井などの建材を壊したり、排泄物により家の中を汚したりします。
また害獣が家に侵入すると、動物の身体についたダニやノミが増殖し、皮膚病やアレルギーなど健康を損なう原因にもなりえるため、害獣には十分に気をつけなければなりません。
鳥獣被害が減少しない3つの理由
ここでは、なぜ鳥獣被害が減少しないのか、その理由を説明します。主な理由は、次の3つです。
- 鳥獣個体数の増加
- 鳥獣を捕獲する人手が減少している
- 里山の管理不足
それぞれの理由を詳しく解説しましょう。
鳥獣個体数の増加
鳥獣被害が減少しない理由のひとつは、鳥獣の個体数が増えていることです。山林開発が進むことで、鳥獣の住む場所が減り、比例して鳥獣が減った地域は数多くあります。しかし逆に、鳥獣が増加している地域も少なくありません。特に、天敵のオオカミが絶滅したことにより、野生のシカは一気に増加しました。
都市近郊でも、ムクドリやカラス、ハトなどの鳥やハクビシンなどが増加しています。なぜなら都市部では、安全に巣を作れる場所や休憩場所、餌場などが多いためです。
鳥獣を捕獲する人手が減少している
鳥獣を捕獲する人手が減少していることも、鳥獣被害が減少しない理由のひとつです。近年、猟師の減少や高齢化により、鳥獣の捕獲が進んでいない現状があります。
また地方においては、人口の減少により、治山事業の担い手が減っているのも鳥獣が増えている要因です。
里山の管理不足
鳥獣被害が減らないのは、里山の管理が不十分なことも理由でしょう。ひと昔前は、鳥獣の住処と人との生活圏は、里山に暮らす人々によって区切られ管理されていました。しかし、里山の人口が減ることで、鳥獣が容易に人の生活圏に侵入しやすくなっています。
また、かつては田畑であった土地が、放棄されっぱなしになっていることも理由のひとつでしょう。野生鳥獣は、こうした耕作放棄地に身を隠し、人の生活圏近くで繁殖しているのです。
鳥獣被害を減らす効果的な5つ対策
ここでは、鳥獣被害を減らす効果的な対策をご紹介します。主な対策は、次の5つです。
- クラウドカメラによる実態の把握
- 個体数のコントロール
- 電気柵や箱罠などの設置
- 生息環境の管理
- 鳥獣の餌となるものの撤去
ただし鳥獣の捕獲には、原則として狩猟免許が必要です。一般の方が、許可なく鳥獣を捕獲することはできないため、生息地域の管理などできることに着手し、捕獲については専門家に任せましょう。
クラウドカメラによる実態の把握
鳥獣被害を減らすために、まずは実態の把握が先決です。効果的な対策を練る前に、被害を及ぼしている鳥獣の種類や個体数、活動時間、おおよその生息場所を知る必要があります。
実態の把握におすすめなのが、クラウドカメラによる管理です。昨今のクラウドカメラは機能的で、簡単に導入できるクラウドカメラが多く出回っています。24時間、いつでもどこからでも、スマホやパソコンから映像の確認が可能です。
畑や田んぼなど、電気もインターネット回線もない場所でも導入できるクラウドカメラもあります。暗闇に強いクラウドカメラもあり、鳥獣が活発に動く夜間の利用でも問題ありません。鳥獣被害の対策に、クラウドカメラの導入を検討してみるとよいでしょう。
個体数のコントロール
鳥獣被害の対策には、個体数のコントロールも重要です。たとえば、畑を荒らすイノシシがいれば、個体数や密度を考えて、適切な個体数を目標に捕獲を考えなければなりません。個体数をコントロールすることは、その地域の生態系も管理することにつながります。個体数をコントロールしながら、農地を荒らす有害な害獣だけを駆除することで、被害を抑えることが可能です。
電気柵や箱罠などの設置
鳥獣被害を減らす効果的な対策は、電気柵や箱罠などの設置です。野生動物を捕獲するためには、それぞれの動物にあった罠が欠かせません。
里山でのシカやイノシシの捕獲には、柵や箱罠の設置がよいでしょう。シカに対しては柵や囲い罠の設置が、イノシシに対しては箱罠や狩猟が効果的です。都市近郊でよく目にするハクビシンやアライグマなどは、罠をしかけることで捕獲できます。
生息環境の管理
生息環境の管理は、誰にでもできる効果的な対策です。農地脇の草木をこまめに手入れしたり、農耕地を荒れたままにせず管理したりすることで、鳥獣が身を隠せる場所を減らせます。鳥獣が警戒するようになれば、容易に人の生活圏に近づかなくなるでしょう。
都市近郊の鳥獣被害についても、考え方は同じです。アライグマやハクビシンが、住処としやすい空き家や廃屋を作らないよう生息環境の管理が重要です。
またカラスやハトなどの鳥は、フンが残っていると、再びやってくる可能性が高くなります。フンで汚れた場所だけでなく、周辺全体を継続的にきれいな状態に維持することで被害を減らすことが可能です。
鳥獣の餌となるものの撤去
鳥獣の餌となるものの撤去は、すぐにでも始められる対策です。農地の周辺に作物を放置しておくと、鳥獣は餌と認識し、農地周辺にどんどん侵入してきます。これらの行動は、野生の鳥獣に餌付けすることになるため、作物などもこまめに片付けることが大切です。
都市近郊における鳥獣被害の対策としても、餌の撤去は効果的だといえます。特にゴミを荒らすカラスは餌の多い場所に住みついて繁殖し、人が出すゴミを餌としているため、ゴミの管理は必須でしょう。また、庭の果樹を食べさせないといった対策も効果的です。
アライグマやハクビシンに対しても、生ゴミや野菜クズを外に置かない、またペットの食べ残しもそのまま放置しないといった対策を心がけましょう。
鳥獣被害の対策にクラウドカメラを導入してみよう
地方でも都市近郊でも、鳥獣による被害は大きな問題です。シカやイノシシ、場合によってはクマなど、人の生命に関わる被害も生じています。また都市近郊においても、アライグマやハクビシンによる被害や、カラスやハトなどの鳥によるゴミ荒らしは増加中です。
どのような鳥獣が被害を及ぼしているのか、まずは実態を把握することから始めましょう。夜行性の動物を管理するのに効果的なのが、クラウドカメラです。昼間だけでなく、暗い夜間でも鮮明な映像で記録を残せるため、実態を詳しく把握するのに役立ちます。
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