衆議院議員小林史明氏、マネーフォワード辻庸介氏鼎談「グローバルとローカルで経済の好循環をどう実現するか?」:後編

「見える」未来を対談する

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Writer:御代貴子

2026/02/06

衆議院議員小林史明氏、マネーフォワード辻庸介氏鼎談「グローバルとローカルで経済の好循環をどう実現するか?」:後編

2025年11月17日(月)、セーフィーをご利用いただいている企業様、パートナー企業様など、現場DXを推進されているリーダーやご担当者様をお招きして鼎談イベントを開催しました。

本イベントに登壇したのは、前環境副大臣 自由民主党 衆議院議員の小林史明氏、株式会社マネーフォワード 代表取締役社長 グループCEOの辻庸介氏、そしてセーフィー代表取締役社長CEOの佐渡島隆平の3名。イベントレポート前編では、日本の経済成長を加速させるために、スタートアップと大企業、そして政府がどう連携すべきかに関するディスカッションの様子をお届けしました。

後編の内容は、官民が共同で産業の海外展開をどう進めるのか。そして、地方創生にどう向き合うべきか。グローバルとローカル、双方の観点でどのようなビジネスエコシステムを構築し、日本経済を成長させるべきか。多様な視点でのディスカッションが行われました。

<前編記事はこちら

官民におけるグローバル化の現在地と未来像

——日本経済の発展を考える際に欠かせないのが、グローバル戦略です。政府と民間の立場から、皆さまがそれぞれ掲げる海外戦略についてお聞かせください。

小林
日本のAI戦略について議論したいです。急速に発展するAIの観点で世界の動きを見ると、アメリカはグローバル全体で勝てる投資に集中し、ローカライズはしない方針を掲げています。中国はオープンソースを主張するものの、いつサービスを止めるか予測不能です。
日本は政府として経産資源を一定量確保し、民間企業の研究開発に提供しています。経産資源を確保できていないASEANやグローバルサウス、さらには高度なIT人材を育成しているインドなどと経産資源を共有し、一緒にAI開発を進める、世界の第三極をとる戦略を考えています。

官民で連携していきたいと考えていますが、いかがですか?

佐渡島
セーフィーはタイとベトナムに拠点を設けています。映像は、法律や言語に依存しないという特徴があります。これを活かして基礎研究を進め、プラットフォームを構築し、AIも開発することでグローバル展開を進める考えです。
海外では、各国でローカライズした戦略を立てています。日本でお付き合いのある製造業のお客様も、海外では日本とは異なる課題を抱えているため、現地に特化したソリューションを作り込んでいるのです。その一方、映像プラットフォームは世界共通のものを構築する方針です。グローバルで使えるプラットフォームを土台にしながら、ソリューションはローカルに貢献できる提案活動を徹底しています。

現地の状況をひとつ挙げると、ASEANの中でもタイはすでに労働力人口が不足しつつあります。たとえば、生産性を上げるために、小売店では店頭の陳列状況や客層、購買行動をリアルタイムに把握することでデータを収集・分析し、仕入れや在庫管理、価格設定サプライチェーンの最適化を構築するという、日本のコンビニエンスストアでも実装できていない技術を中国企業が広めています。既存のビジネスモデルやバリューチェーンを飛び越えて最新技術を導入させる「リープ・フロッグ(leapfrog)」が起きているのです。
当社もリープ・フロッグの考え方を参考に戦略を立て、企業や社会に貢献できるプロダクトやソリューションを開発し、浸透させていこうとしています。

スタートアップ育成とグローバル展開

——政府によるスタートアップ育成の文脈で、グローバル展開を加速させる政策についても教えてください。

小林
2022年に「スタートアップ育成5か年計画」を立案し、SOに関する制度整備や日本版QSBSなど、スタートアップへの投資を促す制度も整え、環境はできてきたと考えています。次に着手するのは、高さへの挑戦、各社の規模を拡大することです。東証グロース市場の改革も、上場しても100〜300億規模を超えていかないと機関投資家から投資が得られず、停滞してしまうという課題を解消するためのものでした。
やはりスタートアップの成長には売上が必要です。その後押しとして、初期需要をつくるために政府が率先して調達する、もしくは官民双方が投資計画を作る仕組みを作りたいと考えています。まずは実績を作り、その信用をもとに海外で売りやすくすることが狙いです。

佐渡島
国がユーザーとなり、その後で各国政府にも導入してもらう政策は、GAFAMもやっていることです。近代の日本はフラットに競争する傾向がありますが、かつての自動車や鉄鋼は、国家産業として成長させるために政府がかなり注力していました。その流れが再度訪れているように感じます。

小林
そうですね。背景には、米中の政府が産業政策に力を入れていること、そして経済安全保障の課題が生じてきたことがあります。
近年は、コストが低い国で製造すればビジネスはうまく回り、それぞれの国が繁栄できると考えられてきました。そこに起きたのが、新型コロナウイルス感染症の流行です。国民の命を守るマスクすら日本国内で作れない状況に陥り、政府として「自国で生産能力を持たなければならない」と考えるようになったのです。米中が先に変化を起こし、日本国内の環境も変わる中で今回の政策を打ち出した形です。

佐渡島
売上規模を出すとなると、国内市場だけでは難しい。海外にも目を向ける必要がありますね。

小林
その通りです。政府が初期需要を作りながら、最終的には民間企業自らがグローバル市場で戦えることが重要です。一例として、ロボティクスやドローンは防災や防衛分野と密接に関わるので、消防庁や国土交通省、防衛省が初期ユーザーになれると考えています。
自国が必要とするものを生産し続けるためには、グローバルなサプライチェーンとの接続も考えなければなりません。そのサプライチェーンは、価値観を共にする同盟国でしっかり作るべきだと考えています。

人材育成&税制優遇で国富を増やす

——生産性向上と同時に、賃金も上げることも重要です。国富が増える好循環をどう生み出していくべきでしょうか?

小林
現在考えているのは、高卒人材の実践力向上です。ドイツは大卒者比率が3〜4割であるにもかかわらず、輸出額は日本の2倍あります。これはマイスター制度が寄与していると考えています。
そこで日本でも、教育機関と企業が連携し、企業が求める人材を育成する学部・学科である「契約学科」制度を来春からスタートする予定です。大学院から始め、将来的には高校にも適用させたいと考えています。AIスキルなどの専門性をもつ高卒人材が増え、エッセンシャルワークの現場で活躍することを目指します。

佐渡島
実践力のある人材が増えることに賛成です。製造業の他、たとえば日本の強みであるアニメ産業などにも展開できるといいのではないでしょうか。

小林
そうですね。芸術大学にIPのビジネスコースや音楽大学にもゲーム音楽コースの設置を進めるなど、コンテンツビジネスで収益を生み出せる人材を育てる戦略を進めています。



実践力のある人材が活躍して労働生産性がアップすれば、賃金も上がるはずです。スタートアップでは、事業が順調に成長すれば賃金が右肩上がりになることが多いですし、上場企業でも投資家が一人あたりの労働生産性に着目していることを受け、コミットメントを示す企業も増えています。賃金アップを実現している企業を公表すると、優秀な人材がそこに集まり、さらに業績が上がるサイクルを作れると思います。

佐渡島
ストックオプション制度にも注目したいですね。株価がこれだけ急上昇すると、以前からストックオプションを設けている企業は、社員に大きなメリットがもたらされているはず。ところが、制度そのものを導入している企業が少ないのが現状です。税制優遇策を設け、より多くの社員が自社の株価を上げることに向き合えるといいと思います。

小林
株式報酬にまつわる課題は、政府でも認識しています。たとえばRSU(※)は取締役には無償交付できるものの、一般社員の場合は無償になりません。この制度も改定し、一般社員でも無償交付できるようにする予定です。

※RSU:譲渡制限付株式ユニットの略。企業が従業員に一定期間の勤務継続などの条件を満たした場合に、自社株式を報酬として付与する制度。

佐渡島
さらに、企業の持株会への優遇措置もアップできるといいと思います。これまで以上に、自社株を購入する社員が増えるのではないでしょうか。日本はロイヤリティの高い国民性があるので、ロイヤリティのあるコミュニティである自社に投資し、コミュニティの皆で成長を目指せるといいですね。ストックオプションと同等の効果がありますし、自分の意思で行動する人を増やせるとも思います。

官民が団結できる「企業城下町構想」のあり方

——今回の鼎談テーマでは、東京一極集中にとどまらず、地方創生の好循環をいかに生み出すべきか?もあります。日本の経済成長に向けた政策の一つに掲げる「企業城下町構想」について、小林先生からお話いただけますか。

小林
地方創生を促進する打開策を模索している中で気づいたのが、「日本の地方はそもそも企業城下町として発展した」ことでした。私の地元・広島県福山市はJFEのお膝元ですし、豊田市や日立市も企業によって発展した地域です。近年は、令和の企業城下町も誕生していて、前橋市はアイウエアブランドJINSを手がけるジンズホールディングス、長崎市はジャパネットたかたが地域経済をけん引しています。
こういう城下町を、日本各地にもっと増やしたい。そこで企業が特定地域に大規模な投資をする際に優遇措置を設け、地方を活性化したいと考えたのが、企業城下町構想の発端です。

高市政権では、地域内の企業や大学が連携して新産業を内発的に生み出す「産業クラスター政策」を推進しています。産業をつくるには各種インフラや人材も必要なので、全省庁が総動員で動いているところです。
スタートアップ企業は、東京に偏っているのが現状です。お二人の地元である関西をはじめ、日本各地で産業クラスターによるスタートアップのコミュニティができるといいのではないかと思っています。


企業城下町構想に大賛成です。一過性の補助金などではなく、経済人が関与してサステナブルな仕組みを作り、そこに税金を投入すべきだと思うからです。ジンズの田中社長やジャパネットたかたの髙田社長の動きを見ていると、価値を生み出せる人とお金、パブリックの応援が一体になると、地方創生が一気に加速すると感じます。

ところが実際は、パブリックの応援がなかったり、地元で長年尽力されてきた企業や関係者の方々が慎重になられたりすることが起こりがちです。日本は、スタートアップ育成5か年計画のように、国が「これをやる」と決めたら皆が一致団結します。地方創生においても、政府が大きな流れを作ることを期待したいですね。

佐渡島
私もこの構想に賛同します。企業だけでなく生活者も参加する意味合いで、自分の地元や、ゆかりのある地域を応援できるような、例えば「企業版ふるさと納税」のようなフランクな仕組みができるといいのではないでしょうか?

官民一体となり、次の世代に繋がる社会をつくる

——最後に、日本の成長に向けてどのようなことに向き合っていきたいか、それぞれのご意見をお聞かせください。


政府による規制緩和をチャンスと捉えて、僕ら民間人はリスクを取って成果を出し、社会に価値を還元していきたいと思います。圧倒的に良いサービスを生み出せれば多くの人が利用し、国の生産性が上がり、給与もアップするという好循環が実現します。マネーフォワードを、このモデルとなるような企業にしていきたいですね。
グローバルでビジネスを成長させる日本企業を増やすことも重要です。その当事者として、官民一体となり、さらには他国とも協力しながら取り組んでいきたいと思います。

小林
世界の政治動向を見ていると、近年は国民の「なんとなく違うのではないか」という直感に基づいた世論が大きくなっていると感じます。政府として、「日本は成長が鈍っているけれど大丈夫なのか」といった国民の違和感に向き合い、成長にむけた答えを出せる政策を進めたいと考えています。
日本はチャレンジに向けた環境が整い、高市政権で重点分野に投資するフェーズを迎えました。ただし、政府に対する信頼がなければ官民一体で動くことはできません。官民がお互いを信じてともに前に進んでいきたいと思います。

佐渡島
国にスタートアップ支援策を打ってもらっている一方、既存の大企業を追い抜くスタートアップが生まれていないのも現実です。我々は、社会にインパクトを与えるサービスを生み出し、官民双方で後押ししながら海外でも収益を上げていけるような存在を目指したいですね。それが社会課題の解決に繋がれば嬉しいです。
近頃の政府は、力強く日本を変えていこうとする機運が高まっていると感じます。失われた30年を僕たちの世代が取り戻し、将来に繋げることが求められています。その使命を果たすために頑張っていきたいと思います。

今回は、グローバル化から地方創生まで、政府とスタートアップ、大企業の連携の仕方を縦横無尽に議論することができました。ありがとうございました。

著者紹介 About Writer

御代貴子
フリーライター。IT業界、人材業界、料理家のコンテンツ制作を経験した後、独立。執筆分野はビジネス全般、社会人のスキルアップやリスキリング、人事・組織など。経営者へのインタビューも多い。書籍『60分でわかる! 1on1ミーティング実践 超入門』執筆協力。書籍『一流ビジネススクールで教える デジタル・シフト戦略』共訳。
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