【レゾサミ2025】第4部業界別テーマ分科会「デジタルで現場の安全をどう守り、価値を創出するか──最先端事例から学ぶ具体策」:後編

レゾサミ2025(Safie Future Resolution Summit)

Writer:御代貴子

2026/03/31

【レゾサミ2025】第4部業界別テーマ分科会「デジタルで現場の安全をどう守り、価値を創出するか──最先端事例から学ぶ具体策」:後編

2025年10月15日(水)、ホテルニューオータニにて開催された「Safie Future Resolution Summit(レゾサミ)2025」。

本記事では、第4部 業界別テーマ分科会から、「製造・建設」の現場をリードする登壇者によるパネルセッションの内容を、前編・後編の2回にわたってダイジェストでご紹介します。

テーマは「企業価値を向上させる現場の安全対策」。後編では、映像データの活用を現場に浸透させるための施策や人材育成の取り組みを各社からご紹介いただくとともに、今後に向けた展望も語られました。

<前編記事はこちら>

・パネラー 
大脇 庸市 AGC株式会社 建築ガラス アジアカンパニー 技術・製造統括部 企画グループ
栗田 泰司 日本製鉄株式会社 九州製鉄所副所長 [大分地区代表] 執行役員
松谷 裕治 積水ハウス株式会社 施工本部 施工イノベーション推進部長

・モデレーター
桜田 忠弥 セーフィー株式会社 執行役員 営業本部本部長 兼 CRO

※役職は登壇日時点のものです

デジタルによる「小さな成功事例」を現場に体験してもらう

桜田:安全を守るためにデジタルを導入するにあたっては、現場に納得してもらうためのコミュニケーションも欠かせません。この点で課題を抱えた経験があれば、ご紹介いただけますか?

松谷:当社では、『Safie Pocket2(セーフィー ポケット ツー)』を建設現場の屋内に設置して常時確認できるようにしたところ、職人さんからは、カメラ設置に対して抵抗感のあるご意見をいただきました。そのため、現在は職人さん自らの意思で撮影できる360度カメラを屋内で使っています。さらに屋外と屋内の映像を一元管理できる施工管理ダッシュボードを開発し、現場の状況が常にわかる環境を整えました。

現場の状況を映像や画像で確認することができるとその効果に気づく方は多いのですが、そこに至るまでが難しいと感じています。過去の映像から労働災害の原因分析ができたり、現場に行く前に現場状況を確認して効果的な現場の巡回ができたり、現場に行かずともカメラ映像を見て問い合わせに対応できたりするなど、「映像があって良かった」と実感することがあると、徐々に使われていくものです。現場の理解を得るために、事業所ごとの好事例を積極的に社内共有することを意識しています。こうして徐々にカメラ台数を増やし、現在では全国で約1,200台が稼働中です。

施工管理ダッシュボードも、カメラ映像の活用を促進する役割があります。現場監督が自分の担当現場の状況をいつでも一覧で見られるようにし、「映像を使うことが当たり前」にすることが重要だと考えています。

栗田:最終的には現場の職人たちに腹落ちしてもらわないと、品質の高い製品は作れません。そのため、当社ではカメラ映像を活用することを私がリードしつつ、現場が自らトラブルを解決したり、仕事を効率化させたりする使い方を促していきました。現場は、カメラ映像を使うことを「面白い」と感じたら、自然と行動するのだと実感しています。

大脇:デジタル活用において、最大のハードルは導入初期だと思います。私は現場をサポートする立場として、カメラをどう使うと課題が解決するか、現場に寄り添ってコミュニケーションし続けました。こうした地道な活動によって、現場からも活用方法の相談が来るようになり、カメラ映像の活用が浸透していきました。

松谷:当社は事業所が多くエリアごとに向き合う課題も異なるため、全社一律で同じルールのもと施策を展開するのは難しく、新しい取り組みに積極的な方もいれば、そうでない方もいます。そのようななかで、カメラを活用した業務改革の取り組みが事業所から提案されてくることがあり、その事例を社内で水平展開すると、他の事業所でも腹落ちして浸透が進むことがありました。現場の取り組みを事例共有する大切さを実感しました。

映像データの活用には人材育成も必須

桜田:映像という非構造データは、分析が難しい側面があります。データ活用の取り組みをご紹介ください。

大脇:AGCでは、「データサイエンス二刀流人財」の育成を推進しています。二刀流とは、製造プロセスの理解と、データサイエンスの知識です。この二刀流人財によって、現場の肌感覚をもちながらデータ解析ができ、現場の課題とデータから導かれる解決策が紐づきやすくなると考えています。

周囲のメンバーも二刀流人材が近くにいると「こういう分析ができるのではないか」という肌感覚が動き、課題と解決策が紐づいていきます。現場からもデータサイエンスを学ぶようになるのです。

「データサイエンス二刀流人財」育成の仕組みとしては、入門、基礎、応用、社内留学とステップが設けられており、建築ガラスの事業部は、現場の方も含めて全員が入門編を学ぶことになっています。

栗田:日本製鉄では、スタッフ系はDX人材育成を目的としたデータサイエンス教育を実施しています。また、九州製鉄所の現場では、ノーコード開発プラットフォームであるMicrosoft Power Platformを使えるようにするために、スタッフが現場と一緒にアプリケーションを開発する取り組みを行っているところです。

松谷:積水ハウスは、施工管理ダッシュボードで現場監督がいつでも状況確認できる環境を整えていますが、「常に見ている」わけではなく、問題が起こった際に個々で振り返るような使い方をしていることが多いです。

今後、さらに映像データを活用していくためには、システム側で自動検知したものをプッシュ通知する機能も取り入れることで、「気づき」を与えるような仕組みが必要があると考えています。そうなると、映像の価値がさらに高まり、データを活用する場面が増えていくでしょう。これが、当社が次に目指すステップです。

桜田:ありがとうございます。我々も、カメラで多くの情報を検知していても、それを通知する手段がモバイルアプリのポップアップやメールに限定されていることに課題意識がありました。そこで、他社サービスを組み合わせて通知先を拡充する取り組みを行っているところです。

皆でデジタルを活用し、安全と品質を高めていきたい

桜田:最後に、デジタルやAIの観点で、どのように現場の安全性を高めながら生産性を上げていくか、将来展望をお聞かせください。

大脇:短期的な未来像として目指したいのは、現場の経験則や暗黙知に依存しすぎず、データドリブンな意思決定をすることです。セーフィーのカメラ・センサーの設置や「データサイエンス二刀流人財」をはじめとする人財育成を進めるとともに、データを簡単に解析できるプラットフォームも活用したいですね。プラットフォームを糸口に改善が進むと、データサイエンス力が全社で底上げされ、データに基づいた意思決定ができるようになると考えています。

栗田:経営と現場、組織間、お客様と当社をつなげるために、DX化をさらに進化させていきます。現在、セーフィーのカメラによってロケーションフリーが実現しており、データドリブンな判断も推進中です。ただ、現在は無線センサーを増やしているものの、しきい値の設定が難しく、誤報がまだ多い状況です。これを改善するためにAIでしきい値の精度を上げ、現場のデジタルへの信頼を向上させたいと考えています。

エンパワーメントも進めていきます。人は時間に余裕がないと、よいアイデアが浮かばないものです。DXによって業務負荷を現状の7〜8割に減らし、知恵を出すための時間を作っていきたいと思います。

「物魂電才」という言葉があります。日本の資源は、やはり人だと思うのです。デジタルによって人の価値を活かす仕組みを作り、日本をグローバルで存在感のある国にしていきたいですね。

松谷:当社は、「『わが家』を世界一幸せな場所にする」というグローバルミッションを掲げており、施工現場としては「世界一幸せな施工現場を実現する」ことを目指しています。

ミッション実現に向けては、今後の指針となる「施工イノベーションマップ」を作り、施工現場のDXをさらに推進する考えです。2028年までに、現場管理ダッシュボードによって遠隔で効率的に現場管理を行えるようにし、2035年にはデジタルツインやAIエージェント、ロボットなどによってデータを利活用する未来を描いています。

現場管理においては、映像データの活用を進捗確認だけにとどめず、品質・安全の担保を判断できるようにすることが最重要です。発達し続けるテクノロジーを当社でも積極的に採用して効率的に働き、より良い仕事ができるようにいきたいと思います。

ただ、個社でできることには限界があります。枠組みや仲間を作り、一緒に取り組んでいくことが業界全体の発展につながると今日改めて実感しました。

桜田:本日はありがとうございました。

著者紹介 About Writer

御代貴子
フリーライター。IT業界、人材業界、料理家のコンテンツ制作を経験した後、独立。執筆分野はビジネス全般、社会人のスキルアップやリスキリング、人事・組織など。経営者へのインタビューも多い。書籍『60分でわかる! 1on1ミーティング実践 超入門』執筆協力。書籍『一流ビジネススクールで教える デジタル・シフト戦略』共訳。
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