レゾサミ2025(Safie Future Resolution Summit)
Writer:御代貴子
2026/03/31
【レゾサミ2025】第4部業界別テーマ分科会「デジタルで現場の安全をどう守り、価値を創出するか──最先端事例から学ぶ具体策」:前編
2025年10月15日(水)、ホテルニューオータニにて開催された「Safie Future Resolution Summit(レゾサミ)2025」。
本記事では、第4部 業界別テーマ分科会から、「製造・建設」の現場をリードする登壇者によるパネルセッションの内容を、前編・後編の2回にわたってダイジェストでご紹介します。
テーマは「企業価値を向上させる現場の安全対策」。労働力人口が減る中、デジタルの力で現場の安全を守りながら、価値を最大化するための課題や実践例が議論されました。カメラをはじめとしてデジタルツールを積極的に活用しながら現場を守り事業を継続していく具体的な取り組み、示唆に富んだ意見が交わされるパネルセッションの様子をご覧ください。
・パネラー
大脇 庸市 AGC株式会社 建築ガラス アジアカンパニー 技術・製造統括部 企画グループ
栗田 泰司 日本製鉄株式会社 九州製鉄所副所長 [大分地区代表] 執行役員
松谷 裕治 積水ハウス株式会社 施工本部 施工イノベーション推進部長
・モデレーター
桜田 忠弥 セーフィー株式会社 執行役員 営業本部本部長 兼 CRO
※役職は登壇日時点のものです

桜田:はじめに、皆さまの自己紹介をお願いいたします。
大脇:建築ガラスや電子部材事業などを手がけるAGCで、建築ガラス事業部にて、スマートファクトリー(デジタル技術を活用した製造プロセス自動化・最適化)の推進をしています。経歴としては、新日鐵住金(現・日本製鉄)で製造現場のエンジニアとして生産性改善や設備投資を行った後、2022年にAGCへ転職しました。現在、データサイエンティストとして生産性の改善に取り組んでいるところです。
栗田:「ご安全に」。当社、日本製鉄での挨拶です。私は旧新日鐵時代に日本製鉄に入社し、32年が経ちました。今は全国に10か所ある大規模事業所のうち、7〜8か所の現場に携わっています。DX推進はサイバーの施策であるものの、リアルな情報を元に現場での働き方や考え方を変化させるものです。本日はぜひ、現場のリアルを議論させていただければと思います。
松谷:積水ハウスに2002年に入社し、23年になります。入社以来、住宅の基礎や地盤の技術開発に長らく従事してきましたが、2022年より施工DX推進を担当しています。多くの方と出会い、さまざまな取り組みがようやく形になってきた実感もあるので、この場でお話できればと思います。
桜田:モデレーターの桜田です。セーフィーに2020年3月に入社し、6年目を迎えました。入社以来ビジネスサイドに所属し、今回登壇いただいているような会社様と一緒に、業界の課題解決に取り組んでいます。
さて、本日みなさまにお話しいただく視点をご案内します。
栗田様には、生産と現場をどう繋いでいくか、企業としてどのような未来を描いていくかを、ぜひ経営視点で語っていただきたいと考えています。松谷様と大脇様は、現場のリアルな部分をぜひお話しください。現場で起きていることや課題意識をもとに、どのようなな変化をもたらしたいかの未来を語ることで、経営と現場をクロスしながら議論を展開していきましょう。

社員の安全を守りながら価値を創出するデジタル活用
桜田:はじめに、今回のテーマである安全管理や生産性向上の観点で、現場で起きている事象や課題意識について、セーフィーの利用用途を含めてご紹介ください。
大脇:AGCが手がけるガラス製造、特に建築ガラスやシート状ガラスは、1500℃の窯に原料を入れ、溶かして流し、成形し、最後に徐冷ラインで冷やすプロセスで製造されます。
最大の課題は、高品質な製品を作るために、現場で直接確認しなければならない作業が依然として存在することです。熱源や設備に接近する作業を最小化して安全を守りながら、安定的に生産することが我々のミッションです。
そこで、製造現場にはセーフィーのウェアラブルカメラ『Safie Pocket2(セーフィー ポケット ツー)』を導入しています。製品の品質が決まる重要な工程の一つである徐冷ラインに設置することで、今までは人が現場に出て確認していた「何か音がする」「振動している気がする」といった定性情報を、画像・音・振動といった定量データとして取得し、プロセスのデータと組み合わせて仮説を立て、課題解決や品質向上につなげています。
1500℃の窯に近く、人やカメラが近づけない箇所はセンサーでデータを収集するセンシング技術を活用して現場管理をしています。
桜田:ありがとうございます。次に、積水ハウスでの課題意識や取り組みについてご紹介ください。
松谷:当社の戸建住宅や集合住宅は、大型化・複雑化・高額化する傾向にあり、現場監督が管理する項目も複雑化・高度化しています。
また、当社では全国で約4,000棟の現場が毎日並行して動いており、それを約500名の現場監督が管理しています。現場監督一人あたり常に複数の物件を担当しているため、効率的な現場管理が必要になります。地方になると、現場間の移動に1時間半以上かかることもあり、1日に1棟しか現場の確認ができない場合も少なからずあります。
現場監督が現場を巡回する時間が限られるなかで、伝言ゲームのように関係者が1対1で情報伝達をしていては効率が悪くなります。そのため、ツールを活用してフラットでオープンなコミュニケーションができる環境を整え、限られた人員でも安全に現場管理できるようにすべきだと考えました。そこで、お客様、現場監督、協力工事店、職人などの関係者が同じ映像を見てコミュニケーションができるよう、屋外には定点カメラを設置、屋内では職人さん等に360度カメラを撮影していただくことで、現場の工事進捗がいつでも確認できる体制を整えています。

屋外の定点カメラは、外装工事や基礎工事の工事進捗等の確認だけでなく、現場周辺の安全確認にも活用しています。360度カメラも定期的な工事進捗の確認のほか、内装下地が図面通りに施工されているかといった隠蔽部の確認にも使っています。
大脇:AGCの製造現場でも、伝言ゲームに頼らない仕組みは必須です。たとえば夜勤時にトラブルが起き、日中勤務するエンジニアがそのデータ解析をする際、申し送りをしても事象を完全に理解するのは難しいものがあります。その際、起きていたことがデータとして蓄積されていると、夜中に発生したことを翌日の日中に正しく把握できるのです。
桜田:ありがとうございます。日本製鉄では、どのような課題意識のもとで安全管理をしていますか?
栗田:我々もAGCと同様、高温の窯で製鉄をします。窯は最高で2200℃に達し、時速120kmで鉄板が移動するため、基本的には遠隔操作です。また、積水ハウスと同じく、本社、現場、協力会社といった多層構造の体制でもあります。さらに現場の人員が減り、ベラランから若手への世代交代も進む中で、一次情報に近い情報を管理者がすぐ確認できる環境が必要だと考えています。
当社では、管理者の多くは複数の現場を管理しており、一次情報に直接触れられない場面が多くなっています。時代ととともに仕事の進め方が変わるにつれ、現場から感じ取る力が昔に比べて落ちてしまっているのです。
そのため、仕組みによって現場感を落とさない工夫をしています。その一環としてセーフィーのカメラを導入して現場を見える化し、同じ映像を皆で確認しています。人は、目の前で起きている事象を見ているつもりでも、ほとんど見ていないことが往々にしてあります。だからこそ「見せる」仕組みが必要ですし、多層構造の体制においてフラットにお互いの頭の中を共有することも重要です。
さらに、カメラの目的は「見える化」だけでなく「見守る」意味合いもあります。3年目以下の若手社員は『Safie Pocket2』を携帯して仕事をしていますが、はじめはカメラを持つことに納得していませんでした。
ところが、カメラ映像によってトラブルを解決できた経験を何回もすると、自発的に携帯するようになるのです。トラブル解決の一例としては、設備が異常音を出していたことをカメラ映像で発見し、実際に設備点検したところ異常な振動をしていたことを確認。そこで急遽ラインを止め、復旧までに数十時間かかるかもしれないトラブルを回避できたケースがありました。
桜田:それぞれ、現場の事情に合わせたデジタル活用方法をご紹介いただき、ありがとうございました。ここからは、映像データを用いたDXを現場に浸透させるための具体的な施策や人材育成、そして今後の展望についてお聞きしていきたいと思います。
<後編記事はこちら>
著者紹介 About Writer
- 御代貴子
- フリーライター。IT業界、人材業界、料理家のコンテンツ制作を経験した後、独立。執筆分野はビジネス全般、社会人のスキルアップやリスキリング、人事・組織など。経営者へのインタビューも多い。書籍『60分でわかる! 1on1ミーティング実践 超入門』執筆協力。書籍『一流ビジネススクールで教える デジタル・シフト戦略』共訳。
この連載について About Serial
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