【レゾサミ2025】第4部業界別テーマ分科会「映像DXで実現する『攻め』と『守り』の両立」〜安心安全を守りながら創造する価値とは〜

レゾサミ2025(Safie Future Resolution Summit)

Writer:御代貴子

2026/03/31

【レゾサミ2025】第4部業界別テーマ分科会「映像DXで実現する『攻め』と『守り』の両立」〜安心安全を守りながら創造する価値とは〜

2025年10月15日(水)、ホテルニューオータニにて開催された「Safie Future Resolution Summit(レゾサミ)2025」。

本記事では、第4部 業界別テーマ分科会から、「小売店舗・サービス」の現場をリードする登壇者によるパネルセッションの様子をご紹介します。

「顧客と従業員の安心安全を守る店舗運営とデジタルツール利活用~個人情報・データガバナンス視点を踏まえて〜」と題した分科会。現場の最前線で起きている課題に、デジタルツールがどう寄与するのか。個人情報保護とデータ利活用の両立、店舗へのカメラ設置に対する現場の理解促進、各種クレーム対策において消費者と従業の双方の安心安全を守るためのDX推進についてディスカッションが行われました。

・パネラー 
芦田 光暁 個人情報保護委員会事務局 企画官
坂口 浩芳 キュービーネット株式会社 IT戦略部 部長
横尾 正和 イオン九州株式会社 人事総務本部 総務部 総務部長

・モデレーター
佐渡島 隆平 セーフィー株式会社 代表取締役社長CEO

※役職は登壇日時点のものです

「データ利活用」と「安心安全」を両立させる法整備

佐渡島:現場の安心安全を守ることと、個人情報保護をどう両立させるべきか、課題や不安を抱えている企業も多いかと思います。そこで、国の立場で個人情報保護法に関する各種法令やガイドラインの整備に携わっている芦田さんから、法律の概要と、今後のガイドラインのあり方をご説明いただけますか。

芦田:個人情報保護法は平成15年(2003年)にできた法律で、現在に至るまで何度かの大きな改正を重ねています。現在も、いわゆる「3年ごと見直し」として、その定期的な見直しのプロセスに入っているところです。今回の改正では、データ利活用の促進と、不適切な利用を防ぐ担保措置を加える提案をしています。 

個人情報保護法は難しい印象を抱くかもしれませんが、事業者に求められている内容は実はそこまで難しいものではありません。例えば、(センシティブなものでない)通常の個人情報を取得する際は、必ずしも本人の同意は必要なく、プライバシーポリシー等で利用目的を特定し、通知・公表していただければ済むことになっています。本人の同意が必要なのは、大きく3つの場面で、①利用目的を事後的に変更する場合、②要配慮個人情報(センシティブな情報)を取得する場合、③個人データを第三者に提供する場合です。

ところが、(法的な義務はないのに)本人の同意が必要と思ったり、本人同意取得の負担が大きいと捉えているケースが多いことがデータ利活用をためらわせる要因の一つになっているのではないでしょうか。今回の改正では、本人へのリスクが少ない利用については、本人同意の規制を緩和してもよいのではないかという提案をしているところです。

リスクが少ない利用の一例として、特定の個人との対応関係が排斥された統計情報等の作成があります。これには、AI開発で大量のデータを扱う場面も(統計作成等と整理できれば)含まれます。統計作成のプロセスで取り扱うデータに個人情報が含まれていても、開発されたAIが特定の個人との対応関係がなく、本人の権利利益へのリスクがなく、作成過程のガバナンスも担保されるのであれば、本人の同意は不要としてもよいのではないかと考えているところです。

佐渡島:重要なポイントだと思います。AIのモデルを作るために大量のデータを利用する際、本人に不利益がないのであれば積極的に使っていきましょう、ということですね。

芦田:その通りです。「データ利活用」と「安全安心(そして個人の権利利益の保護)」を両立させるための議論を進めたいと思っています。

映像DXは、現場の納得がなければ進まない

佐渡島:小売・サービス業では、店舗にカメラを設置するケースが多いと思います。その大前提となるのが、カメラで録画する目的について、お客様や従業員と合意形成することではないでしょうか。 たとえば、防犯カメラは「防犯」という目的を開示することが重要だと思います。

ヘアカット専門店であるQBハウスを運営する坂口さんから、現在のカメラの設置状況を教えていただけますか?

坂口:QBハウスは通常の美容室とは異なり、お客様に券売機であらかじめチケットを買っていただくビジネスモデルです。その券売機に「防犯カメラ録画中」のシールを貼ってお知らせしています。あまり強調しすぎず、お客様の目にさりげなく触れることで意識していただけるようにしています。

カメラを導入する当初は、現場スタッフから「常に監視されているのではないか」といった抵抗感があったのは事実です。そのため、「スタイリストをトラブルから守る」という目的を、現場マネージャーに丁寧に説明することから始めました。

佐渡島:QBハウスは国内に585店舗、パートタイマーも含めて約2,500人のスタイリストさんがいらっしゃいます。2,500人もの方々に、カメラ導入についてどのように納得を得たのですか。

坂口:導入当初は、カメラの映像へのアクセス権を厳しく絞り、限られた一部の社員しか見られない運用にしました。現場にも、「クレームやトラブルなど事故が起きたときにしか見ない」と約束したのです。そして、実際にそのように運用していることを全社に開示しながら浸透させていきました。

佐渡島:その後、抵抗感はなくなりましたか?

坂口:そうですね。導入後にあがった声で多かったのは、「お客様とのトラブルが発生した際に、カメラの映像を元に事実に基づいてフェアに判断できるようになった」ということでした。これまでは、マネージャーが主観で判断しがちだったところを、映像に基づいて公正に対処できるという効果が出ています。

佐渡島:トラブルとして多いケースには、どのようなものがありますか?

坂口:お客様が最も不満を持たれる瞬間は、カットが思った通りの仕上がりにならなかったときです。これは正当な主張なのですが、コミュニケーション齟齬によりヒートアップしてしまい、スタイリストに過剰な謝罪を求めたり、萎縮させる発言に発展したりすると、ハラスメントに該当する可能性があると考えています。

これまでは何も記録がなかったため、マネージャーもお客様の主張を大切にする前提に立った判断をすることが多く、スタイリストが事実と異なる事に対して納得できないケースもありました。

佐渡島:カスタマーハラスメントが疑われるような出来事があった際、映像記録が役立つのですね。

優秀なスタイリストが辞めてしまうと、店舗運営に致命的な影響が出ると思います。今の社会は働き手不足ですから、スタイリストが足りなくなれば、その地域の人がヘアカットができなくなる不便さも起こりえますよね。トラブルに対して適切に向き合うことが、従業員の安心安全を守る上で重要なことだと改めて感じました。

トラブル対策に欠かせない映像データ

佐渡島:次に、イオン九州におけるカメラ映像の利活用について教えてください。

横尾:イオン九州は総合スーパーなど約340店舗を展開しています。 セーフィーのカメラを導入したきっかけは、屋外のリサイクルボックス付近での発火事故など、店舗外の安全対策が必要になったことです。

店内の動線調査などをして営業に活用するためのAI搭載カメラも、一部の店舗に実験導入中です。生鮮食品を扱う小型店舗である「マックスバリュエクスプレス」では、店舗数が増えている一方、人材不足が課題で、店長が2〜3店舗を兼務しています。そのため、カメラ映像から欠品情報をリアルタイムで取得し、母店から子店へ商品を補充するような省人化システムを進めたいと考えています。

また、移動販売車の女性従業員からハラスメント被害の相談を受けたため、本社に通知されるビーコンボタンをセーフィーに開発していただき、移動販売車の全車両にセーフィーカメラを導入しました。近くに他の従業員がいない職場環境であるため、このビーコンボタンが役立っています。音声をカメラ越しに発する機能もあり、本社から現場に声をかけることも可能で、従業員の安心安全につながっているのです。

佐渡島:小売業は、お客様とのトラブルに悩まされることが多い業種だと思います。企業としての具体的なトラブル対策についてお聞かせいただけますか?

横尾:小売業は、厚生労働省による業界別「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が他業界に先駆けて策定されたほど、カスハラが多い業種です。

働き手不足が続く中、カスハラに遭っても助けを求める従業員が周囲にいないケースは今後増えていくと思います。また、省人化が進む中、店舗での接客中に上司を呼びづらい環境も少なくありません。移動販売店舗に導入したビーコンボタンのように、DXを活用した対策は必須になると思います。

ハラスメントが発生した際は、スピーディーに対応しないと状況が悪化しがちです。悪質と判断したハラスメント常習犯については、警察に相談したうえで、顔認証システムを導入し、再来店時に通知が来るようにして、迅速に対応しています。

ただ、当社に限らず現場判断が難しいのは、「通常のお申し出やクレーム」と「カスハラ」の線引きです。

佐渡島:確かにそうですね。現在は、どのように対応しているのでしょうか?

横尾:クレームをすぐにカスハラと決めつけるのではなく、まずは店長が聞き取りやカメラ映像から事実確認をしっかり行うようにしています。ここでカメラ映像が役立っているのです。そのうえで悪質だと判断した場合は、本社にいる警察OBの保安員や弁護士に相談し、会社として迅速に対応する体制をとっています。

ただ、クレームや通常のお申し出にあたる内容が、従業員の接客力不足によってカスハラに発展してしまうケースもあるので、体制の整備とともに従業員教育もしっかり行うべきだと考えています。クレームがあった際は、上司を含めた複数の従業員で対応することになりますが、従業員間でしっかり情報を引き継ぐことも重要です。

佐渡島:組織がまさに一枚岩になって対応することがポイントですね。芦田さん、現場の具体的な話を聞いて、どのように感じられましたか?

芦田:現場でトラブルが増え、従業員の負担が増加している状況を改めて認識しました。カメラの設置においては、防犯などの利用目的を、従業員やお客様に伝わるようにする透明性が欠かせません。アクセス権限も重要な観点で、必要な人だけが使える仕組みを担保することが大切ですね。

国の立場では、現場のニーズもふまえながら、データ利活用を妨げないルールづくりを考えている状況です。

DXの力で、安心安全を担保しながら新しいチャレンジに挑む

佐渡島:最後に、映像を活用したDXでどのような理想を追求していきたいか、現場をリードする坂口さんと横尾さんからお聞かせください。

坂口:ヘアカット専門店でお客様が不満を抱く原因は、お客様が伝えるヘアスタイルの要望と、スタイリストが認識する仕上がりにズレが生じることだと思います。このコミュニケーションギャップを解消するために、技術発展が著しい映像データが役立つと考えているところです。

横尾:お客様のプライバシーやご意見を尊重しつつ、店舗へのカメラ導入とAIの活用を進め、従業員のカスタマーハラスメント被害の防止につなげたいと考えています。

また、カメラに蓄積したデータは、従業員教育に活用していきたいとも考えています。通常のお申し出が、従業員の初動対応の不適切さからハラスメントに発展したタイミングや、その対応方法を学ぶための資料として、映像データは有効です。

佐渡島:セーフィーとしても、現場の皆さまの声を真摯に受け止めながら、生活者と店舗従業員双方の安心安全を守り、適切に映像プラットフォームを構築して社会に貢献していきたいと思います。芦田さん、こうした現場のチャレンジを聞いて、改めてどう思われますか。

芦田:多様なデータを適切に集め、活用していく重要性を感じました。データの蓄積によって、組織全体でハラスメントの基準に対する「相場観」が形成されていくと思います。何か事案が起きた際、それがハラスメントに該当するかを判断できる基盤があることは大切です。個人情報保護を前提にしながら、データを集め、ビジネスに活かしていただくことは好ましいと感じました。

佐渡島:ルールを守りながら、新しいことにどうチャレンジしていくかのアイデアを共有する貴重な時間になったと思います。今日はありがとうございました。

著者紹介 About Writer

御代貴子
フリーライター。IT業界、人材業界、料理家のコンテンツ制作を経験した後、独立。執筆分野はビジネス全般、社会人のスキルアップやリスキリング、人事・組織など。経営者へのインタビューも多い。書籍『60分でわかる! 1on1ミーティング実践 超入門』執筆協力。書籍『一流ビジネススクールで教える デジタル・シフト戦略』共訳。
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