全国に「現場」を抱え、その「現場」の安全管理をラクにするために真摯にDXと向き合っている株式会社エクシオテックさま。建設業界で一気に進んだ遠隔臨場実施の流れのなかで、ツールの選定には「迷走期があった」といいます。
試行錯誤のツール選定、現場の反発を受けながらの普及活動、改善を続けながら作り上げられた運用フローは、まさに建設現場のDXを実現しています。
本記事では、セーフィーのユーザー企業であり販売代理店でもある株式会社エクシオテックさまと、建設現場におけるカメラ活用で業務改善を叶える秘訣を解説していきます。
ウェアラブルカメラが建設現場にもたらすDX効果とは?
国土交通省は2020年度から、生産性向上や非接触・リモート化に向けて、Web通信を活用した「遠隔臨場」を試行してきました。
遠隔臨場とは、「カメラ(ウエアラブルカメラ等)によって取得した映像及び音声を利用し、遠隔地からWeb会議システム等を介して臨場を行うこと」。
ウェアラブルカメラを活用することで、主には移動時間の削減など、建設現場での監督・検査作業の効率化が実現できています。
>関連記事:「遠隔臨場とは?—ウェアラブルカメラで建設現場の働き方改革を」
業務改善だけでなくワークライフバランスにまで効果があったWEB施工管理
カメラ導入後の効果
エクシオテックさまでは、タフな現場に耐えられるカメラとして、セーフィーのウェアラブルカメラ「Safie Pocket2(セーフィー ポケットツー)」を導入。
これまでの現場では、安全担当による現場立ち会いは、移動時間の制約のため1日2現場が実情でした。カメラ導入後は、1人で1日40現場の確認ができるほどに変化しています。
すべてオンラインで確認できるわけではありませんが、新規の班や若手の現場責任者の班を優先することで、経験値の低い作業班も安心できる環境になりました。
カメラを使った遠隔臨場(WEB施工管理)は、移動時間をかけずにテレワークでも現場の管理が可能になり、社員のワークライフバランスにも貢献しています。
WEB施工管理が運用に乗るまでのリアルな道のり
WEB施工管理が現場に定着するかどうかは運用にかかっています。その点では、作業班にとってのメリットをしっかりと伝えた上で、積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。
- 1.最初は拒絶反応
導入当初は、やはり反発が多いです。現場にカメラを渡して「後はよろしく」というやり方では、拒否されて当然かもしれません。
- 2.作業班のメリット、意義、使い方を繰り返し説明
作業班にとってのメリットとは、既存の報告物が免除されるという点です。これをしっかりと伝えた上で、撮影ポイントなどの運用ルールを策定し、説明会を開催して使い方を周知しました。
- 3.導入後の2ヶ月が勝負
定着の分かれ目は、導入から2ヶ月だという実感を得られました。カメラ導入後、管理者側から何もアクションがないと、現場側は撮影しても見ていないという不信感を抱いてしまいます。
- 4.対策と運用例
現場への定着のため、管理者側に専任担当を配置して、現場との日々のコミュニケーションを実施。管理者側と現場の信頼関係を築き、カメラをきちんと運用できる状態を実現しました。
WEB施工管理のやり方
WEB施工管理のやり方:管理者側の映像活用
管理者側での映像の活用方法をいくつかご紹介します。
リアルタイムで全国の現場を確認
- ・ダッシュボード画面により、全国にある複数の現場をオンラインで確認
・災害時の状況確認
災害の発生時もこの画面から即時に確認。閲覧権限を付与すれば、管理者だけでなく発注者側にも現場の様子をリアルタイムに共有、通話機能で現場作業員と発注者のやりとりも可能です。
現場や倉庫の盗難対策
・資材の防犯
・警察への証拠映像の提出
移動の合間に確認
・現場の進捗確認
・工程確認
パソコンに限らず、携帯やタブレットでも映像を見ることができるので、移動の合間で現場の様子を確認します。
安衛協での動画教育
・優良調整
・作業手順
・事故事例研究
カメラで撮影した映像は、動画教育にも役立ちます。定期的に実施する安全衛生協議会の場を活用して、優良班の紹介をしたり、事故の原因を話し合ったりと、事故撲滅に向けた取り組みをしています。
管理者側が見ているポイントを実際の路上工事現場で解説
こちらのスライドは、実際にカメラの映像からスナップショットで画像を切り出したものです。
車両の輪止めのように当たり前の作業でこそ、事故は起きやすいもの。そのため、そういった作業も映像で残したり、季節や現場状況によってもルール化をして、映像で証跡を残すようにしています。
スライドは一部の例として取り上げていますが、カメラを効果的に利用してもらうためには、お使いになる現場の環境によって必要な情報をルール化してもらい、カメラを身につける撮影者に対して撮影すべきポイントを指導することがいちばん大切なことと言えるでしょう。
WEB施工管理で現場の安全管理をラクにするカメラの使い方
つづいて、現場作業者・工事責任者・安全担当の負担を三方ヨシで削減しつつ、現場の安全管理を行うWEB施工管理についてくわしく解説します。
現場作業のうち「どの場面でカメラの映像を確認するべき」なのか、4つのポイントで見ていきましょう。
1.作業ミーティング
・体調や作業内容、KY、安全装備などの確認
・タイムマシン機能(録画映像の確認)で、朝礼や夕礼が集中する時間帯の管理者の負担を軽くする。優先順位として、朝は事故のリスクの高い新規班に重きをおいて、優良班はあとで録画映像を確認
2.遠隔での危険工程への立ち会い
・スキルの高いベテラン社員は、事務所から遠隔で現場作業の危険工程の手順を確認
・誤切断、誤接続の確認
電力ケーブルなどの誤接断や誤接続が起きないようにお互いに確認。
・重量物の搬入搬出など作業エリアの区画を行っているか、養生など搬入経路の確認
3.WEBパトロール
・安全パトロールを100%実施
実際に現場に行って安全パトロールをしていた頃の確認割合は40%程度だったが、WEB施工管理を取り入れてからは100%と、すべての現場を確認できるように。
4.災害時のリアルタイム把握
・災害時の作業者の報告手間をゼロに
災害が発生すると、現場の担当者が現場に行き、必要だと思うところの写真撮影を行い、それを事務所に持ち帰って、発注者さま向けに報告書を作成。いまではカメラを介して発注者さまがオンラインで映像確認できるため、報告の手間が不要に。
「施工品質」を担保するカメラの使い方
1.リアルタイム出来形の確認
・作業前後の確認や、図面との照合に役立つ
2.保守
・保守対応件数の拡大や手戻りの防止
障害確認には高スキルが要求されるため、これまでは同時対応できる数に限りがあった。WEB施工管理を取り入れてからは、ベテラン社員が事務所から各現場の作業者に指示が出せるようになり、対応件数の拡大につながった。
3.現場調査
・現地調査時にオンラインで積算見積もりの作成部門が確認ができるため、見損ねて再検証となるような二度手間を解消
・現場調査時に発注者側の音声も記録しているので、振り返って確認も
4.社内検査
・現場最終日に即検査、書類レス、早期検収
5.教育技術継承
・紙から映像にマニュアルが変化
これまで書面で確認、もしくは作業風景を見ながら勉強していたところを映像に切り替え。作業スキルを撮影・映像化することによって、指導側の手間も省け、学ぶ側も繰り返し映像確認ができるため技術を身につけやすくなった。
知っておきたい!建設現場でのカメラ活用Q&A
ウェアラブルカメラの装着方法は?
現場でのカメラの使い方(装着方法)には以下の5つがあります。
- 1.作業員の胸ポケット
- 2.ヘルメット
- 3.三脚
- 4.ハーネス
- 5.ネックマウント
そのほか、カラーコーンのトップに設置可能な雲台もあります。
なお、2.で紹介したウェアラブルカメラ専用一体型ヘルメットはエクシオテックさまが特許を申請中の商品となります。
>お問い合わせ先:smahel@exeo-tech.co.jp
撮影NGな現場ではどのように使う?
特に屋内の現場の場合など、カメラ持ち込み禁止のケースは多いかと思います。そういった現場では、作業前のKYミーティングを撮影可能な場所で実施して撮影し、そのミーティング内容を安全担当がモニターで確認するようにしています。
また、施錠の確認にも使います。シャッターや点検口などの締め忘れが問題となることがあるため、作業員に負担をかけることなく、日時と施錠状況の証跡を残すようにしました。
搬出入時も「物をぶつけたのではないか」などトラブルになることがあるため、証跡を負担なく残せるようにしておくことで、自分たちの身を守ることにもつながっています。
受注者側と発注者側で削減できる書類は?
材料確認や現地立会いなどの業務は、すべてカメラを介しての遠隔実施に置き換えることができます。遠隔の立ち会いは、コメントなども含めて音声が映像として残るため、ペーパーレスにもつながります。
ゆくゆくは、映像や写真を証跡とし、竣工図書に代わるものとして安全と品質を担保する役割を担えるのではないかと思います。竣工図書は受注者側でも発注者側でも手間のかかるものなので、置き換えられれば双方にとってメリットが大きいです。
協力会社への定着方法とは?
管理者側が使い方を説明した上で、カメラの設置は協力会社が実施することになります。協力会社には現状、いろいろな報告ごとが課されていると思われます。それを一手にカメラが引き受けて、協力会社の負担を軽減することができるので、そこにメリットを感じていただいて運用をしていくことになります。
協力会社にカメラだけを渡して、現場に付けるのがルール、と言ってもまず定着させることはできません。管理者側もそれなりの体制を整えて、しっかりと取り組まなければ定着しないという点をご留意ください。
個人情報保護法などへの対応は?
現場では、「現場状況撮影中」といった看板を出すようにしています。農村部の現場が多いため、あまりクレームなどはないものの、クレームが来た場合には動画を削除する形で対応しています。
閲覧画面上では、「プライバシーマスク」という機能があり、一部を少しグレイアウトして見えないようにすることが可能です。例えば、一般道などで通行人が映るようなケースでは、画角を意識的に調整したり、プライバシーマスクをかけて映らない工夫をすることができます。
ドローンへの対応はしている?
カメラはGoProのマウントに対応しているため、GoProのドローン用マウントでドローンに装着して飛ばすことは十分可能です。ただ、カメラの重量に耐えうるドローンを用意する必要があります。
労基署の承認は?
労働安全衛生法による元方巡視は現場立ち会いが必須であるため、カメラによる巡視について労基署が承認しているのかどうかは管轄する労基署の判断による部分です。
実際に労基署に確認した事例では、動画で証跡を残せる点などを評価されて承認していただけた労基署が3カ所あり、現場に行っていないから駄目と言われたことは今のところありません。
今までは現場を重視した証跡を紙で残していたのに対し、実際に遠隔で立ち会いをして具体的な指示まで含めて証跡として残せる、というところを評価していただける例が多いですが、実際の判断は労基署の担当官次第となります。
※2022年11月18日の共催ウェビナー【エクシオテックが語るカメラを使った安全DX】では、実際の現場映像のLIVE中継などを視聴いただくことができます。フル視聴をご希望の方は、ぜひこちらからご視聴ください。
(製品情報)
・「ウェアラブルカメラ専用一体型ヘルメット」
お問い合わせ先:smahel@exeo-tech.co.jp
・クラウド録画サービス「Safie」