【後編】中堅中小企業の製造業DX〜動画活用による製造マネジメントの変革事例〜

特集

自動車部品製造業を営む三井屋工業さま(セレンディップ・ホールディングス連結子会社)でのスマートファクトリー構築事例をもとに、不良率や可動率(べきどうりつ)、離職率の改善に取り組まれた製造マネジメントの変革についてご紹介。

三井屋工業さまから実際のDX担当者が登壇し、現場で実際に取り組んだ内容を活用したソリューションとともに掘り下げます。

(※2023年2月8日のセレンディップ・ホールディングス株式会社さま、ウイングアーク1st株式会社さまおよびセーフィーで共催した【中堅中小企業の製造業DX】と題したセッションより、内容と資料を抜粋しています)

二部:パネルディスカッション

(ファシリテーター)
セレンディップ・ホールディングス株式会社 
梅下 翔太郎氏

(パネラー)
三井屋工業株式会社
近藤 啓二氏

ウイングアーク1st株式会社
佐野 弘氏

セーフィー株式会社
立石 晴久氏

【実録】アナログがデジタルになっただけじゃない。製造現場で起きた変化

近藤氏:第一部でも触れましたが、当時の製造現場では、作業者が手書きで日報を書いていました。品目、生産時間、生産数、不良数、異常の内容といった項目を手書きで記入し、それを管理者が次の日にパソコンに入力して、入力したデータを集計するという流れでです。

ただ、このフォーマットでは異常の内容をうまく集計できないので、異常の内容はあらためて別のエクセルに記入して、もう一度集計することになっていました。読み間違いや記入間違いなどで、正しい数字を把握しきれていなかったですね。

梅下氏:当時、紙の日報は月でいくとどれくらいあったんですか?

近藤氏:月で600枚ぐらいですね。これを「HiConnex」でデジタル化しました。

—ペーパーレスで世界が変わった

近藤氏:作業者はタブレットでボタンを1つ押すだけになり、集計も自動でされるので、転記のミスも一切起きなくなりました。しかも、デジタル化によって、リアルタイムでたくさんの人が同じデータを共有できるようになったんです。

梅下氏:これはアナログからデジタルになって便利、ということではなく、明らかに世界が変わったと言える変化ですよね。アナログの世界では、現場に立てば作業者が作業していることはわかりますが、今その作業者が何をやっていて、遅れているかどうかは聞かないとわからない。

でも、「HiConnex」の仕組みなら、今何がどの程度遅れているのか、あるいは進んでいるのかわかるので、これは紙の延長では不可能だったと思いますね。革命というか、ただデジタルに置き換わっただけじゃないんだなというのは痛感しました。

—既存ソリューションの組み合わせで成し遂げたDX

近藤氏:「HiConnex」を使って記録した生産実績を、ウイングアーク1st株式会社さまの「MotionBoard」上で生産の計画と合わせ、進捗管理ボードを作って運用しています。元々はアナログで、マグネットをホワイトボードに貼る形で管理していました。

進捗遅れが出た場合は異常として処理され、スマートウォッチにアラートが飛ぶようになっています。設備のデータ、センサーの情報、定点カメラの映像を確認できるようになり、何かあった時の開発スタッフによるトレーサビリティが完成しました。

0→1でシステムを作るのは大変。製造現場における既存ソリューションの利活用とは?

梅下氏: 我々が最初のころから使わせてもらってきた「MotionBoard」について、ウイングアークさんから軽くお話いただけますか?

佐野氏:ありがとうございます。「MotionBoard」は、データ活用・可視化をするための製品です。

佐野氏:そもそも、私がセレンディップさん、三井屋工業さんとお付き合いが始まったのが確か2019年だったと思うんですけども、三井屋工業さんの工場での実証実験に参加させていただいたときに、「HiConnex」で取られたデータを見てゾクゾクしたんですよね。

我々はデータを可視化するのが仕事なので、元のデータがないといけないのですが、「HiConnex」はとても綺麗なデータが取れていたんですね。

「MotionBoard」は、いわゆるBI(ビジネス・インテリジェンス)と呼ばれる領域の商品で、リアルタイム連携できる点が1つの特徴です。設備からの信号データやセンサーのデータをリアルタイムに画面に反映し、すぐにわかるというのがあります。

他社BIにはあまりない機能として、入力ができます。BIはデータを投入して可視化するものなので基本的に画面を見るものですが、「MotionBoard」では画面からデータを入力して、そのデータをデータベースに戻すことができるのが特徴かなと思います。

それから、カメラ連携ができるところも特徴だと思います。「MotionBoard」のダッシュボード上にカメラの映像を表示することができますが、ただ映像を流すだけではありません。「HiConnex」を通じて障害が発生した時間が登録されていると、その時間から録画された映像を再生することができるんです。

—「MotionBoard」と連携するカメラとは?

立石氏:カメラ連携の部分で利用されているのが、弊社のクラウドカメラになります。

映像ってずっと撮り続けていても実際に見たいのはごく一部だったりするのと、色々なシステムを使っているなかの動線を考えると別個のサービスに映像を見に行くのって不便ですよね、というところもあり、弊社では「Safie API」を提供しています。

クラウドカメラとして、クラウドに映像データがある強みを活かし、お客さまのシステムと連携しやすいインアウトの口を作っています。外部システムと連携しやすいので、カメラとしてただ撮影するだけでなく、撮った映像の利活用まで支援できるようになっています。

三井屋工業さまで成功した動画分析の取り組み

—三井屋工業さまで進む動画活用

近藤氏:「HiConnex」で取った生産実績のデータを「MotionBoard」で可視化すると、品番ごとのロスの分析画面を見ることができます。そこでロスに関する異常報告履歴を選択すると、ワンクリックでその時の動画が再生されます。

梅下氏:「HiConnex」で取った生産のデータでは、何時何分にどんな異常があったか記録されるので、これを「MotionBoard」が可視化して表示。そして、この「MotionBoard」上の画面から見たい時間のカメラ映像に即座にアクセスできるということですね。

近藤氏:これはかなり画期的で、現場に見せたときには「これです!」と。「これが欲しかった」と言われました。

異常報告から動画にアクセスできるのですが、生産が合わなかったところの動画に直接アクセスすることも可能です。

梅下氏:実際に生産性が悪かった動画を見て、生産性が良かった動画とを比較して、なぜこんなに遅かったのかを分析することもできますね。

佐野氏:こういった分析ができるのも、「HiConnex」が異常があった時間を、時・分・秒の単位で取ることができるからというのも大きいですよね。

—今は手入力でAI技術の発展を待つ

立石氏:撮った映像から異常があったものをAIで検知できるようにしたいという相談もよく受けるのですが、異常として検知させるための学習データを作り、AIの検知の精度を上げる必要があるので、システムが出来上がってスタートするまでの時点でかなりの費用がかかるんですよね。その点、そこを半分手入力で代替することで、大量の映像データの中から見たい場所を指定できている現場の仕組みは目からウロコでした。

梅下氏:実は、当初はAIの話も出ていました。でもまだ技術的に時間がかかりそうだということで、人が入力する形でしのごうとしたんですよね。数年後には素晴らしいAI技術が月額1000円ぐらいで出るだろうと思ってはいるのですが。

立石氏:異常などの綺麗なログが溜まっていって、そこに紐づく映像や画像のデータも溜まっていくことで、今度はそれを教師データとしてAIの学習に活用するという世界が生まれてくるのかもしれませんね。

—動画からチョコ停の原因を特定

近藤氏:チョコ停の多い工程にカメラを設置することもあります。安全のために手を挟まないようにするセンターがついている箇所が、数日おきに停止の原因になっていたんですね。原因が掴めなかったので、カメラを設置しました。

近藤氏:角度と場所を変えて設置したカメラの映像を見てみると、原因は作業者が無意識にセンサーエリアに触れていたことでした。

梅下氏:作業者も無意識なので、これまでであれば真の原因がわからずセンサーを変えるという話になったり、時間やお金をかけていた可能性があるということですね。

ディスカッションを通して

梅下氏:DXは既存のソリューションを活用することで、簡単にさらにあまりお金をかけずに実行できる時代になったということが本当にすごいなと思います。さらに、とにかく変化が多い時代、日々めまぐるしく変化する現場に追従するためにも、自分達で柔軟に変えていけるというのが、本日ディスカッションしてきたソリューションの良いところだと改めて思いますね。


(製品情報)

・人の行動を変革する「HiConnex

・データを集約・可視化、アクションにつなげる「MotionBoard

・クラウド録画サービス「Safie

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