ホテルや旅館の人手不足を解消するためには、人材確保と業務効率化が必要です。本記事では、ホテル・旅館における人手不足の現状と原因を解説し、具体的な対策方法を紹介します。「スタッフの負担が大きく、人材を募集してもなかなか採用に至らない」とお悩みのホテル・旅館の関係者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ホテル・旅館業界は慢性的な人手不足
ホテル・旅館業界は慢性的な人手不足です。厚生労働省の「令和6年版 労働経済の分析ー人手不足への対応ー(※1)」によると、2010年代以降はいくつかの業界で「労働力需給ギャップ(労働需要に対して労働供給が不足している状態)」がみられており、その中に「宿泊業、飲食サービス業」も含まれています。
中でも、ホテル・旅館業界で人手不足を感じている割合は高い傾向にあります。帝国データバンクの調査「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)(※2)」によると、ホテル・旅館業のうち、正社員の人手不足を感じている企業の割合は60.2%、非正規社員では50.0%でした。半数以上の企業が人手不足の課題を抱えていることがわかります。
2023年1月からは減少傾向にあるものの、人手不足を感じている業界のうち、ホテル・旅館業界は上位10位に入る割合です。
離職率が高いことも、ホテル・旅館業界の特徴です。厚生労働省の調査「令和5年 雇用動向調査結果(※3)」によると、宿泊業・飲食サービス業への入職者は173万9,000人と全業界で最多であるものの、離職者数も142万2,700人と最多となりました。宿泊業・飲食サービス業の離職率は、全業界のうち2番目に高い26.6%となっています。
宿泊業界で人手不足が起こる3つの原因
人手不足に対処する前に、原因を知っておきましょう。以下では、宿泊業界における人手不足の主な原因を3つ紹介します。
1.待遇・労働条件が十分でない
宿泊業界における人手不足の原因の1つに、待遇や労働条件が十分でないことが挙げられます。定休日がなく24時間稼働する宿泊施設も多いため、休日自体が少なく、連休・有給休暇を取りにくいこともあります。土・日・祝日、昼夜関係のないシフト制の労働時間から生活リズムが乱れるケースもみられます。
それに加え、産業別にみても給与は低めの水準です。厚生労働省の調査(※4)によれば、2023年度の産業別にみた賃金の中でもっとも低いのが、宿泊業・飲食サービス業の259万円です。こういった理由から、応募を見送る人や入職しても早期に離職してしまう人が少なくないため、人手不足を引き起こす原因になっていると考えられます。
2.ホテルの開業が増えている
厚生労働省の「令和5年度衛生行政報告例(※5)」によると、宿泊施設数は以下のように年々増えています。
2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
旅館業全体 | 88,983 | 89,159 | 89,715 | 90,705 | 93,475 |
旅館・ホテル | 51,004 | 50,703 | 50,523 | 50,321 | 51,038 |
簡易宿泊施設 | 37,308 | 37,847 | 38,593 | 39,811 | 41,909 |
新型コロナウイルスの感染収束やインバウンド需要の高まりによって、新たに開業する宿泊施設が増え続けていることがうかがえます。人材の受け皿が増えたことで、限られた人材を各宿泊施設が取り合う形となり、人手不足を解消できない宿泊施設も多いと考えられます。
3.外国語対応できる人材が少ない
インバウンドは増加しているものの、外国語で対応できるスタッフをすぐに揃えられる宿泊施設ばかりではありません。外国語対応できる人材の獲得競争が激しくなっているため、欲しい人材を確保できないことに悩む宿泊施設も多いです。
ホテル・旅館業界の人手不足を解消するには?
ホテル・旅館業界の人手不足を解消する方法は、おおまかに以下の2つに分けられます。
- 人材を確保する
- 業務を効率化する
それぞれの方法について、以下で具体的に見ていきましょう。
人材を確保する
ホテル・旅館が人材確保のためにできることとして、次の2つがあります。
- 働きやすい職場環境の整備
- 多様な雇用形態を活かした運営
それぞれ詳しく紹介します。
1.働きやすい職場環境の整備
待遇や労働条件を改善することで、人材の定着率向上と新たな採用につながります。宿泊業界の魅力を高めるため、以下のような改善を検討してみてください。
- 適正な給与体系を構築する
- 年間休日数を増やす・休みを取りやすくする
- 透明性のある評価制度に基づくインセンティブを導入する
- 固定シフト制を導入する
- 労働時間を短縮する
こういった改善を進めながら、「キャリアを築き、長く活躍できる職場」としてのアピールを強化しましょう。
2.多様な雇用形態を活かした運営
ホテルや旅館では、季節変動や時間帯によって繁閑の差があるため、多様な雇用形態による人員配置が効果的です。繁忙期や特定の時間帯には、柔軟な勤務が可能なアルバイトや派遣社員の方と協力することで、サービス品質を維持しながら効率的な運営が可能になります。
なお、人材を確保する方法の1つではないですが、外国語対応できる人材が少ない対処法として、短期的には翻訳アプリの活用や、最低限の接客フレーズ集の整備があります。長期的には既存スタッフへの語学研修・資格取得支援などが挙げられます。
業務を効率化する
各業務が本当に必要か見直し、不要な業務や工程はカットして簡素化しましょう。マニュアルを作成することで、属人化を解消して業務の標準化が図れます。1人のスタッフがいろいろな仕事に対応できるようになれば、さらに効率化が望めます。
業務の簡素化によって、部門や部署をスリム化することも業務の効率化に有効です。
そのうえで、ホテル・旅館業界の業務効率化には、ITツールの活用も役立ちます。主なITツールは次の通りです。
オンライン予約システム | 顧客がインターネット上で宿泊予約できるシステム |
チャットボット | 顧客からの質問にチャットボットが自動で回答するシステム |
セルフチェックインシステム | スタッフを介することなく、顧客自身でチェックインができるシステム |
注文用タブレット | 宿泊施設のレストランやルームサービスの注文ができるタブレット |
コンシェルジュサービス | 顧客自身で周辺情報の収集や交通手段の手配ができるサービス |
客室・設備・在庫管理システム | 客室の清掃状況や在庫などの情報を一元化し、スタッフ間で共有できるシステム |
日報システム | スタッフの日報をデジタル化し、確認や情報共有を円滑にするシステム |
タスク管理ツール | タスクの管理や業務タイミングの通知ができるツール |
レベニューマネジメントシステム | 需給のバランスをもとに宿泊価格を自動で調整するシステム |
清掃ロボット | 客室の清掃を自動化できるロボット |
遠隔接客サービス | フロントにディスプレイを設置することで、来客を感知してスタッフが遠隔で接客できるサービス |
さまざまなITツールがあるため、課題に合わせて採り入れるとよいでしょう。
ITツールによって事務作業や単調な仕事を効率化することは、DX化の推進にもつながります。従来の業務をITツールに任せられれば、スタッフの負担が軽減され、サービス面に注力できるでしょう。顧客の満足度向上も期待できます。
ITツール活用なら遠隔接客サービスがおすすめ
ITツールの活用を検討しているなら、遠隔接客サービスの導入をおすすめします。ほかのITツールに比べてどのような点でメリットがあるのか、詳しくみていきましょう。
「おもてなし」と「業務効率化」を両立できる
セルフチェックインシステムやチャットボットでは、顧客の細かい要望や、相手の意図を汲み取ったやりとりまでは難しいことがあります。遠隔接客サービスがあれば、こういった細かなゲスト要望もリアルタイム、かつ対面接客のように解決することが可能です。
また、多くのITツールは効率化を目的として導入しますが、遠隔接客サービスは人とのリアルなコミュニケーションを保ちながら業務を効率化できるのも大きな特長です。
顧客は「無機質さ」や「セルフサービス」に不安や物足りなさを感じることもありますが、遠隔接客なら「顔が見える接客」を通して安心感や満足度の向上につながるでしょう。
人的リソースを柔軟に配置できる
遠隔接客サービスは、1人のスタッフや、少人数のスタッフが複数拠点をカバーできます。
たとえば、3つのホテルがそれぞれフロントに常駐のスタッフを置く代わりに、1人の遠隔スタッフが同時に3施設の対応を行うことが可能です。とくに深夜帯など、顧客対応が少ない時間帯では、このように人的リソースを柔軟に配置できるのもメリットです。
コストパフォーマンスが高い
複数のITツールを導入するのに比べると、トータルのコストが抑えられる可能性があります。遠隔接客ツールの中には翻訳機能を搭載しているものもあり、外国語対応ができる人材の採用を行わなくてもインバウンド対応が可能です。
継続的な人材採用・教育コストと比較すると、長期的な運用コストを削減できる可能性がある点もメリットでしょう。
遠隔接客サービス「RURA(SF)」でできること

ホテル・旅館業界における業務効率化を実現するITツールに、遠隔接客サービス「RURA(SF)」があります。「RURA(SF)」とは、フロントにディスプレイを設置してスタッフの姿を映し出し、リモートで接客ができるサービスです。
以下では、RURA(SF)の導入により得られるメリットについて紹介します。
人件費の削減ができる

RURA(SF)の導入によって、人件費の削減が期待できます。スタッフはRURA(SF)を通して遠隔で接客できるため、1店舗だけでなく複数店舗の接客が可能になります。少ない人数で効率よくフロント業務を回せるため、人件費の削減が期待できます。
翻訳機能で外国語対応ができる

RURA(SF)にはオプションで翻訳機能が搭載されているため、インバウンドへの対応が可能です。RURA(SF)を介した会話は、日本語から外国語、外国語から日本語に自動翻訳され、文字起こしされます。
外国語対応ができる人材を確保できなくても、スムーズに外国人を接客できます。
Safieのカメラと連携して見守りができる

RURA(SF)は、クラウドカメラ「Safie(セーフィー)」と連携することで、よりきめ細やかな接客を実現できます。
クラウドカメラとは、インターネットに接続されたカメラのことで、映像データはクラウド上に保存されます。カメラ映像はスマートフォンやパソコンを通してリアルタイムに確認できるため、離れた場所の様子をチェックするのに役立つでしょう。
Safieのカメラと連携することで、RURA(SF)のディスプレイから顧客が離れても、映像を通して顧客の様子をリアルタイムで見守れます。より細やかな接客や店舗管理が可能になります。
▼RURA(SF)のページはこちらをご参照ください。
▼ホテルに防犯カメラを設置する効果については、こちらの記事をご覧ください。
ホテル・旅館の人手不足解消にITツールを活用しよう
ホテルや旅館の人手不足の解消には、人材確保と業務効率化のどちらも重要なポイントです。待遇改善や採用の間口を広げて働き手を増やすほか、ITツールを有効活用して業務効率化を進めることで、限られた人材でもスムーズな運営ができるようになるでしょう。
ITツールにはさまざまなものがあるため、まずは業務の見直しを行い簡素化することで、どのようなITツールを導入すれば効果的なのかを明確にすることが大切です。状況に合わせたITツールを導入し、人手不足の解消に向けて取り組んでみてください。
RURA(SF)であれば、複数のホテルや旅館の接客業務を少人数でまかなえるため、スタッフの負担を減らせるだけでなく、管理コストも抑えることができます。また、オプションの翻訳機能やクラウドカメラのSafieとの連携機能により、外国人への接客を始めとする、きめ細やかな接客を提供できるでしょう。
RURA(SF)やSafieに関するご質問は、以下のボタンからお気軽にお問い合わせください。
- いつでもどこでも映像が見られるクラウドカメラ
- スマホやパソコンから店舗・現場を見える化
※1 出典: “令和6年版 労働経済の分析ー人手不足への対応ー”.厚生労働省.2024-9(参照 2025-4-30)
※2 出典: “人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)”.帝国データバンク.2025-2-21(参照 2025-4-30)
※3 出典: “令和5年 雇用動向調査結果”.厚生労働省.(参照 2025-4-30)
※4 出典: “令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況”.厚生労働省.(参照 2025-4-30)
※5 出典:”令和5年度衛生行政報告例”.厚生労働省.(参照 2025-4-30)
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