建設業に多いヒューマンエラーは、主にKY活動(危険予知活動)や指差呼称、ヒヤリハットの報告などで防止することが可能です。
本記事では、建設業でヒューマンエラーが起こる原因や対策、建設業におすすめの防犯カメラなどを紹介します。
目次
ヒューマンエラーとは
ヒューマンエラーとは、一般的には「人間が行うミスや間違い」を意味する言葉です。辞書には、“人間に起因する、機械や装置・システムなどの誤作動”と記載されています。(※1)
建設業の工事現場などで事故が起きた場合、とくに死亡事故では原因探求が難しいのが実情です。後知恵バイアスが働き、当事者のヒューマンエラーが原因とされることが少なくありません。
後知恵バイアスとは、事故が起きた後に「最初からそうなると分かっていた」と錯覚する心理現象で、認知バイアスの一種です。「事故が起きた」という最終的な結果に影響されて物事を判断し、プロセスや戦略そのものを軽視してしまう弊害があります。
しかし、事故の原因をヒューマンエラーと結論づけてしまうと、それ以上の原因追及を行うことは難しいでしょう。結果的に本当の原因がわからないままとなり、同じような事故が繰り返されるリスクが高まります。そのため、ヒューマンエラーは原因ではなく結果であると考える必要があるでしょう。
建設業でヒューマンエラーが起こる原因
建設業でヒューマンエラーが起こる原因は状況によって異なりますが、原因を分類わけすることで対策が立てやすくなります。独立行政法人 労働安全衛生総合研究所の研究結果によると、大きくは「ヒューマンエラーの12分類」と呼ばれる12の項目に大別することが可能です。それぞれの内容を確認しましょう。
1.無知・未経験・不慣れ
作業に不慣れな作業員は、作業の危険がどこに潜んでいるかわからない
熟練作業員でも、はじめて行う作業や赴任まもない現場では、適切な危険予測ができない
引用元:“ヒューマンエラーはなぜ起きる?”一般社団法人中小建設業特別教育協会(参照 2025-2-24)
無知・未経験・不慣れが原因のヒューマンエラーです。経験の浅い作業員は、作業に潜むリスクや危険箇所を正確に把握することが難しく、熟練作業員でも経験のない作業やはじめての現場で、危険を予測することは困難とされます。
【具体的な事故事例】
- 教育を受けないまま雇用された日に棟上げ作業に参加した作業員が、固定されていなかった足場板から墜落して死亡
2.危険軽視・慣れ
危険とわかっているのに不安全な行動をとり、エラーを起こす
引用元:“ヒューマンエラーはなぜ起きる?”一般社団法人中小建設業特別教育協会(参照 2025-2-24)
危険を軽視したことや、慣れが引き起こすヒューマンエラーです。危険であることがわかっているにもかかわらず、「慣れているから大丈夫」などと、安全対策を行わずに行動することで発生します。
【具体的な事故事例】
- 慣れているからと高所の危険性を軽視し、高所での作業であるにもかかわらず安全帯を装着せずに作業し、落下
3.不注意
作業に集中していたために、その他のことに不注意になる
作業内容が日々変わるため、作業に集中できず注意が散漫になる
引用元:“ヒューマンエラーはなぜ起きる?”一般社団法人中小建設業特別教育協会(参照 2025-2-24)
不注意によるヒューマンエラーです。ボーッとしていたというよりは、作業に没頭しすぎてしまい、周囲のほかの重要な要素に気が回らなくなる状況をあらわします。また、作業内容が毎日変わるために、その日にやるべき作業に集中できないケースも「不注意」に分類されるようです。
【具体的な事故事例】
- 電気工事の作業を集中して行っていた作業員の、保護部でカバーできていなかった臀部が機械に触れてしまい、感電
4.連絡不足
安全指示が正しく伝わらず、エラーが発生する
「必要な安全指示を出さない」「指示の内容があいまい」「的を射た指示でない」「作業員が指示を聞かない」「作業員が指示の内容を理解できない」など
引用元:“ヒューマンエラーはなぜ起きる?”一般社団法人中小建設業特別教育協会(参照 2025-2-24)
安全に関する重要な情報伝達が不十分なことによって発生する、ヒューマンエラーです。
事故を回避するためには、情報伝達がしっかりとなされている必要があります。しかし、必要な安全指示がなかったり、指示は出ていたものの内容があいまいで作業員が理解できていなかった、もしくは聞いていなかったりした場合は事故が起こりやすくなるでしょう。
【具体的な事故事例】
- 修理中につき使用禁止となっているクレーンがあるのに、その情報が共有されていなかった。クレーンの旋回範囲内に入って作業をしていた作業員に、クレーンのカウンタウエイトが当たり、反動で飛ばされ約10メートル下に落下し負傷
5.集団欠陥
工期が厳しい場合などに、現場全体が「工期第一、安全第二」という雰囲気になり、エラーが発生する
引用元:“ヒューマンエラーはなぜ起きる?”一般社団法人中小建設業特別教育協会(参照 2025-2-24)
集団欠陥が原因で起きるヒューマンエラーは、安全面よりも工期を優先した組織の風土に流され、安全への配慮に欠けた行動をとることで起きてしまうヒューマンエラーです。
【具体的な事故事例】
- 工期の後れをとり戻すため、「多少の無理は仕方ない」という意識が現場全体に広がった結果、ヘルメットや安全帯の着用が徹底されていなかった。それにより、転落や転倒事故による負傷が相次ぐ
6.近道・省略行動本能
面倒な手順を省略して効率的に行動することを優先した結果、不安全な行動をとってしまう
引用元:“ヒューマンエラーはなぜ起きる?”一般社団法人中小建設業特別教育協会(参照 2025-2-24)
「近道・省略行動本能」とは効率性を重視し、手間のかかる手順を省くことで起こるヒューマンエラーです。効率性は重要ですが、時間や労力と引き換えに安全性を失ってしまうことは避けなければなりません。
【具体的な事故事例】
- 足場を組むのは時間がかかるという理由で、足場を組まずにはしごを使用して作業を行った結果、転落
7.場面行動本能
瞬間的に注意が一点に集中し、まわりを見ずに行動してしまう本能
引用元:“ヒューマンエラーはなぜ起きる?”一般社団法人中小建設業特別教育協会(参照 2025-2-24)
場面行動本能によるヒューマンエラーは、過度に1点に集中することにより、周囲の状況に関係なく反射的に行動をとってしまうことで発生します。高所や道路上など、本来は危険に注意しなければならない状況でも、本能的に行動してしまうことで発生する事故などです。
【具体的な事故事例】
- 反対車線は車が行き交う路上での作業中に、手に持っていたものが風に吹き飛ばされ、とりに行こうと反射的に道路に飛び出して負傷
8.パニック
非常に驚いたときや慌てたとき、脳は正常な働きをせず、冷静に適切な安全行動をとれなくなる
引用元:“ヒューマンエラーはなぜ起きる?”一般社団法人中小建設業特別教育協会(参照 2025-2-24)
パニックによるヒューマンエラーとは、想定外のことに慌ててしまい、脳が判断ミスをすることで起きるエラーを指します。冷静な状態であれば問題なく正しい判断ができる場面でも、非常に驚いたり慌てたときはパニックに陥り、安全な行動をとれなくなることは珍しくありません。
【具体的な事故事例】
- クレーンの操作中に、故障によりクレーンが突然予想外の動きをしたためパニック状態になり、操作を誤り大事故に発展する
9.錯覚
合図や指示の見間違い・聞き間違い、思い込み
引用元:“ヒューマンエラーはなぜ起きる?”一般社団法人中小建設業特別教育協会(参照 2025-2-24)
錯覚によるヒューマンエラーです。そもそも錯覚とは、人が見たり聞いたりした情報を、実際とは異なって感じとる現象を指します。指示や標識を見間違えたり、聞き間違えたりすることで起きるエラーのことです。そのほか、その作業に慣れており、「今まではこうだったから」という思い込みなどによって起こるエラーも、錯覚によるヒューマンエラーの1つといえます。
【具体的な事故事例】
- 機械が停止したと思い込み点検作業を始めたところ、実際には停止しておらず作動し事故が起きた
10.中高年の機能低下
身体能力の低下を自覚せずに作業し、エラーを起こす
引用元:“ヒューマンエラーはなぜ起きる?”一般社団法人中小建設業特別教育協会(参照 2025-2-24)
中高年の、加齢による能力の低下や平衡感覚、視力などの衰えなどにともなうヒューマンエラーです。自分の機能の低下を認識しないまま、あるいは認識はしていても「まだ大丈夫だろう」と無理をすることでエラーが起きてしまいます。
【具体的な事故事例】
- 聴力の衰えにより、背後から近づいてきたフォークリフトの音に気づかず、衝突
11.疲労など
人間は疲れるとエラーを起こしやすくなる
長時間労働、夏の炎天下での作業など、過酷な条件下での作業では、作業員が疲労しやすい
引用元:“ヒューマンエラーはなぜ起きる?”一般社団法人中小建設業特別教育協会(参照 2025-2-24)
疲労も、ヒューマンエラーの原因の1つです。疲労が蓄積されると頭がボーッとし、注意力が散漫になったり思うように身体が動かなかったりします。長時間労働が常態化している現場や夏の炎天下での作業などでは、ミスが発生しやすくなるでしょう。
【具体的な事故事例】
- 連日の炎天下での作業により疲労していた作業員の足元がふらつき、足場から踏み外して転落
12.単調作業などによる意識低下
人間は単調な反復作業を続けると意識が低下し、エラーを起こしやすくなる
引用元:“ヒューマンエラーはなぜ起きる?”一般社団法人中小建設業特別教育協会(参照 2025-2-24)
単調作業を長時間続けていると、意識や集中力が低下し、ミスを起こしやすくなります。単調な作業だからといってミスが起きにくいわけではない点に、注意が必要です。
【具体的な事故事例】
- 長時間の資材運搬作業により意識が低下し、足元の段差や障害物に気づかず、つまづいて転倒
建設業におけるヒューマンエラーの対策
建設業におけるヒューマンエラーの対策として、以下の5点が挙げられます。
- KY活動
- 指差呼称
- ヒヤリハットの報告
- 現場の環境整備
- 現場の状況確認
それぞれの内容を確認しましょう。
KY活動
「KY活動」とは、危険を予知するトレーニングのことです。「危険(K)」と「予知(Y)」の頭文字をとった言葉で、建設業の現場で起こり得る事故や発生確率の高い事故を予測して、災害を未然に防ぐための対策を行います。定期的な危険予知トレーニング(KYT)などが有効です。
指差呼称
指差呼称とは作業対象や計器類、標識などを指差ししながら、名称や状態を口頭で確認することです。一般的に、KY活動の1つとして行われています。視覚と聴覚を同時に使うため、ヒューマンエラーの発生率の軽減に効果的です。
もともとは、蒸気機関車の運転士が、信号を確認するために行っていた動作でした。現在では、鉄道業界にとどまらず、航空業や運輸業、建設業などさまざまな業界で行われています。(※3)
ヒヤリハットの報告
ヒヤリハットの報告も、建設業のヒューマンエラーの防止策として有効です。「ヒヤリハット」とは、「ヒヤリあるいはハッとしたこと」です。重大な事故には至らなかったものの危険な事象を経験した従業員が、状況や原因、対策などを周囲と共有します。報告書があると、再発を防止するための分析をより客観的に行えるでしょう。
現場の環境整備
ヒューマンエラーを防ぐには、現場の環境整備も欠かせません。たとえば、安全性の低い建設機材に注意喚起を行うためのシールを貼ったり、使用する資材や工具などを決められた場所に保管し、つまづきによる転倒を防止したりすることなどが当てはまります。
現場の状況確認
建設業におけるヒューマンエラー防止策としては、建設現場内にカメラ(現場カメラ)を設置したり、パトロールを行って現場の状況を確認することも挙げられるでしょう。現場カメラに録画した映像を確認すれば、ヒューマンエラーの原因分析や改善策の検討も行いやすくなります。
建設業のヒューマンエラーを防ぐSafieの現場カメラ
建設業のヒューマンエラーを未然に防ぐためには、クラウド録画サービス「Safie(セーフィー)」の現場カメラが役立ちます。撮影された映像はをクラウド上に録画されるため、PCやスマートフォンから必要なときにいつでも確認できます。
ここからは、現場カメラとしておすすめの「Safie GO(セーフィー ゴー)シリーズ」と「Safie Pocket(セーフィー ポケット)シリーズ」についてご紹介します。
Safie GOシリーズ
Safie GO シリーズは、屋外で利用できるLTE搭載のカメラです。モバイルルーターが内蔵されており、電源にさすだけで撮影や視聴が可能であるため、建設業の現場でもすぐに利用できます。
「Safie GO 360(セーフィー ゴー サンビャクロクジュウ)」は、360度広角レンズを搭載したLTE搭載・屋外向けカメラです。360度全方位から現場を確認できるため、ヒューマンエラーにつながりそうな状況も細かくチェックできるでしょう。

また、「Safie GO PTZ Plus(セーフィー ゴー ピーティーゼット プラス)」は、PTZ(パンチルトズーム)操作可能の屋外向けGPS搭載PTZカメラです。アプリから遠隔でのPTZ操作ができ、確認したい場所をピンポイントで撮影でき、周囲のささいな変化も見逃しません。GPSを搭載しているため、カメラの設置位置を確認することも可能です。

Safie Pocketシリーズ
Safie Pocketシリーズは、身体に装着して撮影できる小型で軽量なカメラのシリーズで、現場との会話もでき、建設業の現場での仕事に適しています。
そのなかでも「Safie Pocket2 Plus(セーフィー ポケットツー プラス)」は、遠隔業務に必要な機能をフルパッケージしたスタンダードモデルです。たとえば手ぶれ補正機能は、映像の振れを抑えられるため、安全確認を目的とした、時間のモニタリングに適しています。また、最大倍率8倍までのズームが可能であり、対象物に近づけない場合であっても、遠隔から撮影できる点も強みです。

建設業のヒューマンエラー発生を防ごう
ヒューマンエラーとは、人間が行うミスや間違いを意味する言葉です。業務災害の多い建設業では、ヒューマンエラーが起こる原因を「ヒューマンエラーの12分類」と呼ばれる12の項目に大別しています。
建設業におけるヒューマンエラーの対策としては、KY活動や指差呼称、ヒヤリハットの報告などが欠かせません。くわえて、現場の環境整備や状況確認も重要です。
たとえば、建設現場内に設置した防犯カメラの録画映像を確認すれば、ヒューマンエラーの原因分析や改善策の検討も行いやすくなります。今回ご紹介したような対策によって、建設業におけるヒューマンエラーの発生を防ぎましょう。
- マンガでわかる!現場カメラでできる安全管理のススメ
- 現場カメラを使った遠隔からの安全管理の方法やメリット、活用シーンをマンガでわかりやすく解説します。
※1 出典:“ヒューマンエラー”.Weblio 辞書(参照 2025-2-24)
※2 出典:“ヒューマンエラーはなぜ起きる?”一般社団法人中小建設業特別教育協会(参照 2025-2-24)
※3 出典:“職場のあんぜんサイト:安全衛生キーワード「指差呼称」”.厚生労働省(参照 2025-2-24)
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