安全パトロールとは?目的やチェックするべきポイント、効率的な方法を紹介

安全パトロールとは? ポイントを解説

建設業における安全パトロールは、重大な事故を防止し作業員を守るために欠かせない安全活動のひとつです。今回の記事では、安全パトロールの重要性や留意点について解説し、効率的に実施できる方法を紹介します。

安全パトロールとは?

安全パトロールとは、現場での労働災害や事故発生を未然に防ぐことを目的とした安全活動のひとつです。現場の責任者や担当者などが定期的に現場を巡視し、「事故につながるような危険な箇所の発見」、「安全ルールや作業手順が守られているかの確認」といった観点で現場をチェックします。

危険につながるような事象や箇所があれば、その場での是正や対策を講じるとともに、再発防止に向けて関係者に報告と共有をおこないます。また、安全パトロールを実施することで作業員の安全に対する意識向上という狙いもあります

建設業での安全活動は、ほかにも危険予知の訓練やヒヤリハットの周知、リスクアセスメントの実施などさまざまあり、どれも労働災害を防止する効果のあるものです。しかし、少しの気のゆるみから事故は起こり得るため、安全パトロールによる安全に対する意識向上と現場確認が欠かせません。

安全パトロールの重要性

建設現場での安全パトロールの重要性について、以下3つの理由を解説します。

重大な事故につながる可能性が高い

1点目は、建設現場で事故が発生した場合は、重大な事故につながる可能性が高いことが理由に挙げられます。厚生労働省が公表している労働災害発生状況のデータ(※1)によると、全産業の死亡者数は755人に対しそのうち建設業は223人、全体の3割近くを建設業が占めるという結果です。死傷者数(休業4日以上)でみると、全産業は約13.5万人、そのうち建設業は約1.4万人超となっており、建設業は全体の1割ほどに留まります。

建設業は高所での作業や大型機器の使用、重い資材や機材の運搬など、危険な作業を伴うことも多く、重大な事故につながる可能性が高いといえます。建設業の死亡事故は過去5年間でみると15%ほど減少していますが、労働災害防止に向けた安全パトロールの役割は重要となっています。

【令和5年度 業種別労働災害発生状況】

建設業全産業
死亡者数223人755人
死傷者数(休業4日以上)14,414人135,371人

※1 出典:“令和5年 労働災害発生状況” .厚生労働省 労働基準局 安全衛生部安全課.2024-5-27(参照 2024-6-17)

指揮命令系統の異なる労働者が混在するため

2点目は、同じ建設現場に指揮命令系統の異なる労働者が混在して働くことが多いという理由です。工事の規模が大きければ、同じ建設現場に複数の下請企業の労働者が混在しているケースも多数あるため、さまざまな事業者と作業員との連絡や調整が難しく、継続的な教育や訓練もできないといった特徴があります

そのため、元方事業者は事業場の規模に応じて、統括安全衛生責任者をおくことが労働安全衛生法により義務化されています。また、統括安全衛生責任者は現場の管理を統括するさまざま職務が定められていますが、作業場のパトロール実施もそのなかに含まれています。

危険要因が現場ごとに変動するため

3点目は、建設現場での危険要因が現場ごとに変動しやすいという点です。十分に安全対策を講じて高い安全意識で作業にあたっていても、現場ごとに作業工程や工法が変わることが多いため、危険要因が変動しやすいといった面があります。現場に応じた安全対策や点検などをおこなうことが求められるため、建設業における安全パトロールは非常に重要なものです

安全パトロールの目的

安全パトロールの目的は大きく3つあります。

現場に災害の危険がないかを確認する

現場をパトロールし現場状況や作業内容、設備や機器などさまざまな観点から、災害につながる危険がないかを確認します。少しでも危険な状態や不安全な行為を発見した場合は、その場ですぐに是正します。対策案の策定が必要でありすぐに是正できない場合は、作業を中止する判断も求められます。

安全衛生会議の指示が実施されているかの確認

定期的に実施される安全衛生会議や日々の朝礼などの指示内容が、適切に現場で実施されているかの確認をします。建設現場では労働災害を防止するため機器の点検や工法の確認、高所作業や天候に応じた対策などについて基準やルールを設けて、あらかじめ計画書を作成しておく必要があります。

また、作業工程が進むにつれて日常の業務も変化します。そのため、安全対策のために定期的な安全衛生会議や毎日の朝礼をおこない、作業員への指示を出す必要もあります。

しかし指示した内容を作業員が守っていなければ、計画の策定や安全対策を施しても意味がありません。現場ごとで作業工程や工法が異なることから指示内容は非常に重要であるため安全パトロールでチェックします

現場の適度な緊張感と作業員の安全意識を高める

現場をパトロールすることにより、作業員に適度な緊張感を持たせ安全に対する意識を向上させることもひとつの目的です。責任者や担当者が現場を安全パトロールしながら、作業員に安全対策の普及や定着を働きかけます。

また、よい取り組みが実施されていた場合は、その場で褒めることも大切です。危険要因がないか、ルールや手順が守られているかという厳しい視点を持ちます。一方、よい取り組みを褒めることで現場や作業員のモチベーションにもつながり、安全意識の高揚を図ることにつながります。

安全パトロールでチェックするべきポイント

安全パトロールでは、チェックリストの作成が効果的です。国土交通省が公開しているチェックリスト(※2)を利用する方法もありますが、現場の状況に応じて手直しすることも大切です。安全パトロールでチェックするべきポイントは、以下の内容が挙げられます。

  • 危険状態と危険行為の指摘と改善
  • 設備・機械などの保安状況
  • 各職種間の連絡調整状況
  • 作業現場の4S(整理・整頓・清掃・清潔)状況
  • 第三者に対する設備・防災対策状況
  • 搬入する資材・機器材の状況
  • 作業者に対する監督状況

※2 出典:“【安全衛生管理】安全衛生パトロールの留意点”.一般社団法人東京技能者協会.2019-2-28(参照 2024-6-17)

安全パトロールを実施する頻度

厚生労働省や建築業労働災害防止協会では建設現場における安全管理として、「元方事業者は、統括安全衛生責任者、および元方安全衛生管理者、またはこれらに準ずる者に、毎作業日につき1回以上の作業場所を巡視させること」としています。(※3)

また、安全パトロールは日常的におこなうパトロールをはじめ、元方事業者と下請事業者が合同で実施するパトロールや「全国安全週間」といった決まった期間におこなうケース、大雨などにより臨時的にパトロールをおこなうこともあります。

※3 出典:“元方事業者による建設現場 安全管理指針のポイント”.厚生労働省・都道府県労働局 労働基準監督署.2008-7(参照 2024-6-17)

安全パトロールで留意するべきこと

安全パトロールはチェックリストなどをもとに進めますが、形式的なものではなく以下の点を意識して実施することが大切です。

現場作業員とのコミュニケーション

安全パトロールをおこなう管理者は、作業員とのコミュニケーションに留意しなければなりません。危険要因となる行動や状態を発見した場合、作業員を頭ごなしに指摘するのではなく、その原因に焦点をあてることが大切です。

危険要因を察知するためには危険予知のスキルも大切であり、スキルを身につけるための教育も必要です。みんなの安全を守るという意識を持ち、作業員を導いていくことが求められます。

管理者は作業員とコミュニケーションを図り信頼関係を築いていくことを心がけ、現場と一体となって安全性を向上していくことが大切です。

整理整頓の習慣

建設現場では必要なものはすぐに取り出せるように位置や置き方を決めておき、不要なものは廃棄するといった整理整頓が基本です。「少しくらいここに置いても平気だろう」というような小さな違反を繰り返すことで、現場の安全に対する意識が大きく低下していきます。

そして整理整頓ができていない状態は「物にぶつかったりつまずいたりする」、「資材が崩れてしまう」といった危険性が高くなります

日常から整理整頓を習慣づけておくことで、小さな違反も見逃さないという意識につながり、安全性への意識向上と危険リスクの低減につながります。そのため、安全パトロールでは現場が整理整頓されているかといった点にも留意することが大切です。

実効性のあるルールの掲示

安全パトロールの際は、作業の手順やルールといった掲示内容についても注意しておく必要があります。安全対策のために設けたルールが形だけのものになり守られていなければ、労働災害を起こす危険性が増してしまいます

目的や効果が明確であるルールを掲示し、ルールが守られているかといった観点でパトロールすることが大切です。実効性のあるルールを掲示することで、ルールを守るという意識向上にもつながります。

パトロールの法規制、指針

安全パロトールは、「法規制」や「安全衛生管理のための指針」の観点からも重要である点に留意する必要があります。

建設現場は上述したように、元方事業者と複数の下請事業者が同じ現場で作業をおこなう「混在」のケースが少なくありません。この場合、元方事業者は計画の実施や作業者間の連絡調整、作業場の巡視などによる総合的な安全衛生管理が定められています

元方事業者が請負人の労働者に対して、直接的に指導や指示をすることは労働者派遣法に抵触することになりますが、労働安全衛生法第29条に基づき、元方事業者は請負人やその労働者が法令や命令の規定に違反しないように指導することが定められています。

また、製造業元方指針(製造業における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針)においても、混在作業による労働災害の防止として元方事業者が実施するべき事項に作業場の巡視が挙げられています

安全パトロール実施結果報告書の作成

安全パトロールの実施後は、結果報告書を作成することも大切です。危険行動や危険状態などを発見した場合は是正するとともに、関係者に共有したり現場に掲示したりして再発防止に努めます。

報告書の作成にあたっては、写真や映像を用いた報告が有効です。事象のようすをわかりやすくかつ迅速に共有するために、ネットワーク上で情報共有が可能なカメラやアプリなどのツールも検討しましょう。

安全パトロールを効率的におこなう方法

安全パトロールを効率的に進めるうえで、以下の2点が課題になります。

  • 安全パトロールで発見した危険要因の撮影
  • 危険要因や対策などの報告書作成

問題があった場合は報告や共有をするために、デジカメや防犯カメラからデータをダウンロードするなどして、映像や画像を収集する必要があります。また、それらのデータをパソコンで読み取り、報告書を作成するという手間が生じるため非効率的です。

これらの課題を解決できる方法として、ウェアラブルカメラの導入が有効です。ウェアラブルカメラは、身体に装着して映像を記録できるカメラです。記録したデータはネットワークを通じてクラウド上に保管されるため、離れた場所からパソコンやスマホでリアルタイム映像や過去の映像を確認できます。ウェアラブルカメラを安全パトロールに導入すると、以下のような活用が実現します。

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遠隔からの安全パトロール

作業員が現場のようすを撮影しながら、事務所など離れた場所にいる安全パトロールの監査者が現場のようすをチェックするといった活用が可能です。機種によっては撮影中に写真撮影ができるものや、通話機能が備わっているものもあります。

関係者への報告・共有の時間を削減

ウェアラブルカメラの映像は、複数のデバイスから映像確認が可能です。そのため、関係者への報告や共有も正確かつスムーズにおこなえるようになり、報告や共有のためにかかる時間を大きく削減できます。

いつでも迅速に対応・作業員の安全性が向上

ウェアラブルカメラを導入することで遠隔からいつでも迅速に確認できるようになるため、安全パトロールのときだけでなく、いつでも活用できます。遠隔から作業員を見守り、危険と判断すれば声かけやアドバイスがしやすくなり、安全性の向上が期待できます。

まとめ

建設現場の安全パトロールは、作業員の安全を守るために非常に重要なものです。そのため、効率的に実施できれば、作業員と綿密にコミュニケーションを図りながら進めることや、より注意深く確認できるようになるため、安全パトロールの品質を高めることにつながります

セーフィーでは、ウェアラブルカメラをはじめとしたクラウドカメラを多数取り扱っています。大手ゼネコン様への提供も多数実績があるため、カメラの導入を検討される際はぜひご相談ください。

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