工事成績評定とは?わかりやすく解説!高得点を目指すポイントも

工事成績評定とは

公共工事を受注する上で重要な工事成績評定。評価の基準などは詳しく公表されているものの、制度を正確に理解できていない人も多いのではないでしょうか。100点満点で評価されることはわかっていても、どの程度が高得点と言えるのか、たとえば現実的に90点以上取れるものなのかも気になるはず。

そこで、この記事では、平均点や具体的な評価方法も含めて、工事成績評定とはどんな制度なのかをわかりやすく解説します。その上で、高得点を目指すための4つのポイントを挙げ、その1つである新技術の活用について、事例を交えてさらに詳しくお伝えします。

工事成績評定とは?

工事成績評定とは、公共工事で一般的に取り入れられている制度で、竣工時に工事の発注者側が出来栄えや施工状況などを総合的に評価するものです。

国土交通省が公表している実施要領では、「請負工事の適正かつ効率的な施工を確保し工事に関する技術水準の向上に資するとともに、請負業者の適正な選定及び指導育成を図ること」が、工事成績評定の目的であると説明されています(国土交通省:地方整備局工事成績評定実施要領 第1)。

工事成績評定の対象となる工事は、原則として1件の請負金額が500万円を超える請負工事で、工事の分野としては、地方整備局が発注する河川工事、海岸工事、砂防工事、ダム工事、道路工事、公園緑地工事などが含まれます。

評価は、「技術検査官」、「総括監督員」、そして「主任監督員」と呼ばれる評定者らから成る3人体制で、7つの評価項目に沿って100点満点で行われます。

自社の格付けを維持・向上させるためにも重要

国や地方公共団体などが発注する公共工事を受注しようとする場合、入札に参加するための資格審査を受ける必要があります。この審査結果を点数化したものに基づき、建設業者としての格付けが行われますが、工事成績評定はこの格付けにも影響します。

この格付け審査は「客観的事項」と「発注者別評価(主観点)」に分けられています。

まず「客観的事項」では、「経営事項審査(経審)」との名の下で、経営規模(完成工事高、自己資本など)、経営状況、技術力、社会性などが総合的に評価されます。

そして、もう一方の「発注者別評価」は、発注者が管轄する地域での工事実績や地域貢献の度合いなどを、発注者ごとに審査するものです。

格付けは国土交通省の場合A~Dまでの4段階で行われ、このランクによって受注できる工事の規模が変わります。一般的な土木工事の場合、一番下のDランクの業者は6,000万円までの工事しか受注できず、次のCランクは3億円まで、Bランクは7億2000万円まで、そして一番上のAランクはそれ以上の予定価格の工事を受注することができます。

等級区分と受注可能な工事の規模
令和5・6年度関東地方整備局一般競争(指名競争)参加資格における等級区分別総合点数」 をもとに作成

今よりも大きな工事を受注したいと考えるなら、ランクを上げていく必要がありますし、すでに一定のランクにある企業なら、ランクを維持していくことも必要になってくるでしょう。

「発注者別評価」が格付け審査の中でどの程度のウェイトを占めるかは、発注者によって大きく異なりますが、都道府県では大部分が30%以下となっているようです(国土交通省:発注者別評価点の活用による資格審査マニュアル 7頁)。

とはいえ、「客観的事項」は企業全体の経営に関わるため、短期的に変えられない部分も多いと思われます。結果的に、「発注者別評価」の中心となる工事成績で、毎回着実に評価を得ることが重要と言えそうです。

平均点は70点?

工事成績評定では、100点満点のうち65点が基礎点とされており、評価に応じて65点から加点ないし減点され、最終的な点数が決まります。

江東区が開示した2022年度のデータでは、土木工事では平均70.8点(29件)でした(江東区:令和4年度工事成績評定結果(平均点)の公表について)。土木以外の区分であっても、平均点は70〜72点の間をとっており大きな差はありません。

また、古いデータではありますが、2003年度完成の国土交通省直轄土木工事を対象にしたデータでは、工事成績評定の平均点は73.6点でした(国土交通省:工事成績評定点の分布状況)。

このデータでは、落札率が低くなるほど、工事成績評定点も低くなる傾向が示されています。当初契約金額が調査基準価格を下回る「低入札工事」では、そうでない「標準工事」よりも5点ほど平均点が低いこともわかっています。

これらの結果より、工事成績評定の平均点は70点台前半が多いと言えそうです。

一般的に、工事成績評定で目指すべき点数は80点以上と言われています。たとえば、関東地方や中部地方、中国地方を含む多くの地方整備局が、工事成績評定の平均点が80点以上の企業を「工事成績優秀企業」として認定し、公表しています。

▼国土交通省 関東地方整備局:工事成績優秀企業 局長認定について
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000835267.pdf

▼国土交通省 中部地方整備局:令和5年度「工事成績優秀企業」
https://www.cbr.mlit.go.jp/kisya_manage/app/press/file/20230725_177d0ec9e07d088680b8f8470329deab/20230725_64bf2a76f2be0_upfile.pdf

▼国土交通省 中国地方整備局:令和5年度 「工事成績ランキング」及び「工事成績優秀企業
https://www.cgr.mlit.go.jp/kisya/pdf/230718-2top.pdf

このように、工事成績評定で高得点を取ることで、それ以降の入札で有利になる効果も得られるほか、顧客からの信頼も得やすくなると言えるでしょう。

評価方法を確認し、自社の課題を見つけよう

工事成績評定における採点は、「工事成績採点表」にもとづいて行われます。どのような項目があり、どのような配点となっているのかを、まずはざっと確認しておくとよいでしょう。例として、国土交通省が提供している評定点の構成と採点表は次のようになっています(国土交通省:改定細目別評定点採点表)。

項目別評定点
出典:国土交通省 改定細目別評定点採点表
細目別評定点採点表
出典:国土交通省 改定細目別評定点採点表

ただし、発注者となる自治体などがこれをカスタマイズする場合もあるため、公共工事に入札する際には、その工事の発注者となる自治体のものを都度確認するようにしましょう。

国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)の2015年の報告によると、国土交通省と同じ評価項目や配点で工事成績評定を行っていた自治体は約60%でした。残りの40%の自治体は、配点のみを変更している場合や改定前の国土交通省実施要領のものを使用している場合がほとんどでしたが、中には独自の評価項目や採点方法を採用している自治体もあるようです(国土技術政策総合研究所:国総研レポート 2015 地方公共団体における工事成績評定要領等に関する調査)。

評価項目は、施工体制、施工状況、出来形および出来栄え、工事特性、創意工夫、社会性、法令遵守の7項目から成り、それぞれの項目に対応した細かなチェックリストが用意されています。このうち、出来形および出来栄えについての評価対象項目は工種によって異なるため、自社が行う工種の部分を重点的に確認しましょう。

工事成績評定で高得点を狙うためには、細かな評価対象項目と判断基準が示されている「考査項目別運用表」と「『施行プロセス』のチェックリスト」をもとに、自社がどこまでできているかを把握し、改善すべきポイントを洗い出すとよさそうです。

たとえば、国土交通省が作成した施行プロセスのチェックリストは合計2ページで、その1ページ目は次のような内容になっています。

施工プロセスチェックリスト
出典:国土交通省 改定細目別評定点採点表

このチェックリストには以下のような項目が含まれており、契約締結より前の対応も評価対象であることがわかります。

  • 契約締結の14日前には、契約工程表を提出する
  • 契約締結後の10日以内には、登録機関への申請が必要

契約してから慌てることのないよう、事前に一通り確認しておくのが望ましいでしょう。なお、上の例は国土交通省が作成しているものですが、発注者によってチェックリストの内容は異なるため、必ず事前にもらっておく必要があります。

高得点を目指すためのポイント4つ

それでは、工事成績評定で高得点を目指すためにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、特に重要な4つのポイントを1つずつ解説していきます。

1. チェックリストを、事前にクライアント(自治体)から入手する

まずは、すでに触れたとおり、発注者となる自治体からチェックリストを入手することが重要です。チェックリストには、「考査項目別運用表」と「『施行プロセス』のチェックリスト」の2種類があります。どちらも国交省の雛形をベースに作成されますが、自治体によっては点数の配分などが変更されている場合があります。

各自治体のホームページからダウンロードできることが多いので、入札に参加したい工事が見つかったらすぐに探してみましょう。

2. 書類を正確に作成し、提出する

公共工事では、工事着手前から工事完成後まで、長期的に様々な書類を作成しなければなりません。その数は受注者側だけでおよそ70にものぼります。(国土交通省:[R2.3.25]請負工事成績評定要領の運用の一部改正について 別紙-6「工事関係書類一覧表」 )

具体的には、工事着手前には設計図書や契約関係書類のほか、施工計画や施工体制に関する書類を整備することが求められます。施工が始まった後は、工事打合せ簿など施工管理に関わる書類や、安全管理に関わる書類、品質管理に関わる書類などが必要となります。工事が完成した時点で、写真も含めた工事書類や工事完成図書を作成し、契約関係書類を整えて提出する流れとなります。

特に、工事に着手する前に提出する「施工体制台帳」は、安全に関わる書類であるため特に検査官が注目する書類だという声もあります。全ての下請業者を含めた関係図を作成し、契約書や資格証の写しなどの添付書類も用意した上で、必要な情報を正確に記載する必要があります。

このように、書類作成には緻密な作業が求められますが、工事成績評定への影響を意識して過剰な書類作成を行う例があることが、国土交通省から指摘されています。この流れで、地方整備局などに対して書類の簡素化が呼びかけられていることは把握しておきましょう。

簡素化の方法として、電子化によるペーパーレス化や、事前協議を行ったうえで評価対象書類や作成媒体を明確化することなどが挙げられています。 

3. 基礎的な項目で減点されないようにする

工事成績評定では基礎点である65点から加点と減点が行われて得点が決まります。したがって、高得点を狙うためには、施工体制や安全管理といった基礎的な項目で減点されないことが重要です。

加点や減点の有無や幅は5段階の評価で決まりますので、こうした基礎的な項目ではできるだけ最高の「a 適切である」の評価を得られるよう、具体的に何が評価されるのをチェックリストで確認し、対策をしておきましょう。

4. 新しい技術を取り入れ、追加点を狙う

減点を避けるのとは反対に、積極的に加点を取るのも重要な戦略です。個々の加点はそれほど大きくないかもしれませんが、高得点を目指すにはこれらの地道な積み重ねが重要です。

たとえば、公共工事においてNETIS(新技術情報提供システム)登録技術を活用すると、最大3点の加点が行われます。工事成績評定での実加点はこの40%なので、最大3点×0.4で1.2点の加点となります。

NETISについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

NETISの具体的な導入例としては、ウェアラブルカメラを使用した遠隔臨場の実施などが挙げられます。遠隔臨場を取り入れると、事務所から現場への移動時間を大幅に短縮することができ、労働時間の削減にもつながります。

また、新技術を取り入れることで働き方改革の推進も実現できれば、さらなる加点につながる可能性もあります。

国土交通省の通達によると、工事成績評定の「施工状況」の項目のうち「工程管理」の部分では、週休2 日の確保を行った場合に加点が行われることが明言されています(国土交通省:働き方改革及び週休2日に係る工事成績評定の取扱いについて)。

さらに、週休2日の確保に向けた取り組みや若手や女性技術者の登用など、他企業の模範となるような働き方改革に関する取り組みを行った場合には、「創意工夫」の項目において、最大2点の加点が得られます。

実際に移動時間を6割も軽減し、業務効率化を推進したNEXCO東日本さまの事例は、こちらの記事でお読みいただけます。

工事成績評定のためだけじゃない!新技術の活用意義

上で紹介したNETIS登録技術は、単に工事成績評定での加点のためだけに導入するものではありません。NETIS登録技術は、遠隔臨場の実現のほか、安全管理の質の向上などにも寄与します。

先に紹介したNEXCO東日本さまでは、NETIS登録技術であるウェアラブルカメラ「Safie Pocket シリーズ(セーフィーポケット シリーズ)」を導入したことで、従来の移動時間の6割を軽減できただけではなく、現場への移動に伴う早朝・夕方の時間外勤務も削減でき、現場を担当する社員のワークライフバランス向上が実現しています。このように新技術を活用して働きやすい環境を作ることで、従業員の定着率を高める効果も期待できるでしょう。

▼Safie Pocket シリーズのNETIS登録ページはこちら

・NETIS登録ページ:https://www.netis.mlit.go.jp/netis/pubsearch/details?regNo=KT-220006

・NETIS登録番号:KT-220006-VE

新技術を活用して現場のDXを進めている企業は他にもたくさんあります。建設業界では、超高層ビルから歴史的建造物まで幅広い建築物の建設を手がける総合建設会社「戸田建設」さまも、Safie Pocket シリーズを使った遠隔管理をされています。

導入の効果について、「動画を撮影することで、写真よりも確実に不安全行動をチェックすることができるようになりました。あとは不安全行動を見つけて共有するという作業を繰り返すことで、作業員の皆さんの安全に対する意識もさらに高まったと感じています」とのお言葉をいただいています。

以下の記事から、ぜひ詳細をご覧ください。

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