「荷待ち時間を正確に記録できていない」―—そう感じている現場は少なくありません。
入退場時刻は残しているものの、到着後の待機時間や就業時間外の待機を把握できていなかったり、記録が点在していて荷待ち時間として整理できていなかったりするケースもあるのが実情です。記録できていないのは、現場の怠慢ではなく、業界全体に共通する構造的な課題です。
本記事では、荷待ち時間の記録が現場で進まない理由を整理したうえで、2時間ルールに対応するための3つの手順を解説します。紙やパソコン入力、システムによる自動化など、具体的な記録方法も紹介するため、自社の課題を把握することからはじめてみましょう。
目次
2026年4月より「荷待ち・荷役作業時間合計2時間以内ルール」が施行

荷待ち時間の記録が今、注目されている背景には、2026年4月から施行される「荷待ち・荷役作業時間合計2時間以内ルール(以下、荷待ち2時間ルールと記載)」があります。
2026年4月に向けて、物流効率化に関する制度対応が進み、荷待ち・荷役時間の削減が重要になっています(※1)。物流効率化法の改正により、荷主や物流事業者には、ドライバーの荷待ち・荷役時間を減らすための対応が求められることになりました。
現在、全国平均で約3時間かかっている荷待ち・荷役時間を、合計で2時間以内に抑えることが目標です。実現すれば、ドライバー1人あたり年間125時間の作業時間短縮となる見込みです。
荷主側には、1回の受け渡しを原則1時間以内とし、やむを得ない場合を除き2時間を超えないよう短縮することが示されています。
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荷待ち時間を正確に記録できている現場は少ない
「記録しているつもりでも、実態が見えていない」といった状況は、自社だけの問題ではありません。
荷待ち時間を正確に記録できている現場は少なく、発荷主・着荷主ともに把握できている事業者は全体の1~2割程度にとどまっています。
※2 出典:“荷主事業者の物流情報の把握状況等に関する実態調査結果”.経済産業省・国土交通省・農林水産省.2023-04-27(参照 2026-02-13)
発荷主側では、荷待ち時間を把握している事業者は16.7%、荷役時間の把握率は16.0%にとどまっています。着荷主側でも状況は大きく変わらず、荷待ち時間は12.7%、荷役時間は11.5%と、把握率はさらに低い水準です。
大半の事業者は、荷待ち時間を「把握していない」と回答しており、発荷主・着荷主ともに約8割が実態を把握できていません。このことから、荷待ち時間や荷役時間は、物流現場において体系的に管理されていないと考えられるでしょう。
荷待ち時間の記録が進まない背景にある構造的な問題
荷待ち時間の記録が進まない背景には、物流現場に共通する構造的な課題があります。「荷主事業者の物流情報の把握状況等に関する実態調査結果」では、把握が困難な理由として以下3点が考えられます。
- 就業時間外の待機が把握対象から漏れている
- 入退場時刻は記録していても荷待ち時間として整理できていない
- 到着時刻や待機の発生を仕組みとして記録できていない
就業時間外の待機が把握対象から漏れている
現場によっては、始業時刻以降の動きのみを記録対象としており、始業前に車両が到着して待機している時間は管理の範囲外になっている場合があります。長時間待機していても、記録上は待機が発生していないように見えてしまいます。時間の切り捨てが積み重なり、荷待ち時間が過小に把握されている状況もあると考えられます。
入退場時刻は記録していても荷待ち時間として整理できていない
入退場時刻は記録していても、荷待ち時間とされていないケースがあります。到着時刻と退場時刻のデータは残っていても、その間に発生した待機と荷役の内訳が区別されていないためです。どこからが待ち時間で、どこまでが作業時間なのかを後から判断できません。記録は存在していても、荷待ち時間の把握につながらない状態になっています。
到着時刻や待機の発生を仕組みとして記録できていない
到着時刻や待機の発生を仕組みとして記録できていないことも、荷待ち時間の把握を困難にしています。多くの現場では自動記録の仕組みがなく、手作業や申告に頼っています。バース予約システムにより入場や荷役の順番を管理できれば荷待ち時間が可視化されるものの、多くの現場に導入されていないのが実情です。
同調査によると、バース予約システム導入済みの荷主事業者は約7%にとどまり、全拠点で導入しているのは約1%にとどまっています。93%の事業者ではバース予約システムが導入されておらず、到着時刻や待機開始時刻を自動で記録する仕組みがない状況です。
※2 出典:“荷主事業者の物流情報の把握状況等に関する実態調査結果”.経済産業省・国土交通省・農林水産省.2023-04-27(参照 2026-02-13)
荷待ち時間の記録がないと改善の判断ができない
荷待ち時間が数値で見えなければ、課題の深刻さを正しく捉えられません。記録がないことで、以下のような弊害が生じます。
- 問題の大きさがわからない
- 優先順位をつけられない
- 上司や本社に説明できない
客観的な数値がなければ、改善の必要性を共有できません。
問題の大きさがわからない
荷待ち時間が記録されていなければ、問題の大きさを把握できません。何分、何時間待っているのかがわからなければ、現状が深刻なのか、一部の例外なのか判断できず、課題そのものが曖昧になります。
数値がない状態では、問題は感覚でしかわからず、対応の必要性も見えにくくなります。対策を進めるには、まず荷待ち時間や荷役作業などにかかる時間を正確に把握する必要があります。
優先順位をつけられない
荷待ち時間を改善する施策の優先順位をつけられないことも問題です。荷待ち時間が記録されていなければ、どの拠点や時間帯で待機が長いのかを比較できません。早急に改善しなければならない場所とそうでない場所を見分けられず、対策の順番を決められなくなります。
負担の小さい対応から手をつけてしまい、本来優先すべき課題が後回しになるケースもあります。優先順位を判断するためにも、拠点や時間帯ごとの荷待ち時間を記録し、比較できる状態にしておくことが重要です。
上司や本社に説明できない
上司や本社に説明できない状況も、改善を止めてしまう要因です。荷待ち時間が数値として記録されていなければ、現場で起きている問題を客観的に伝えられません。感覚的な説明では、深刻さや緊急性が共有されにくく、改善の必要性が伝わらないためです。
設備投資や体制見直しの判断が先送りされ、現場の課題が放置されやすくなります。現場の課題を伝えるためには、感覚ではなく数値で説明できる状態を整えることが重要です。
荷待ち2時間ルールに対応する3つの手順

荷待ち2時間ルールに対応するためには、いきなり施策を打つのではなく、段階を踏んで進めるのが重要です。場当たり的な対応では、一時的に改善しても継続せず、現場の負担だけが増えてしまいます。
具体的な手順は以下のとおりです。
- 荷待ち時間の把握
- 数値目標の設定
- 荷待ち時間改善策の検討
現状を正しく把握し、目標を定め、具体策を検討する流れをつくると、根本的な対策ができるでしょう。
1.荷待ち時間の把握
荷待ち2時間ルール対策の第一歩は、荷待ち時間を正しく把握することです。目的は単に記録を残すことではありません。必要なときに、根拠となる数値をもって社内に報告できる状態をつくることです。
現状が見えていなければ、改善の方向性も判断できません。重要なのは感覚や申告に頼るのではなく、到着・待機開始・荷役開始・荷役終了・退場といった時刻をそろえて記録し、待機と作業を区別して把握することです。
待機と作業を区別して数値化すれば、どの拠点で、どの時間帯に荷待ちが発生しているのかを説明できるようになります。
2.数値目標の設定
荷待ち時間を把握したら、次に行うのは数値目標の設定です。ここでの目的は、改善の方向性を曖昧にせず、社内で共有できる共通の基準をもつことにあります。
国の基本方針では、令和10年度までに、1運行あたりの荷待ち・荷役時間を現状の約3時間から2時間以内に短縮することが目標とされています。これが実現すれば、運転者1人あたり年間125時間の短縮につながる見込みです(※1)。
自社の実態と照らし合わせ、まずは荷待ち・荷役時間の合計を2時間以内に収めることを目標に設定しましょう。達成後は1時間以内を次の目標とするなど、段階的に数値を見直すのがおすすめです。数値目標を明確にすることで、改善の進捗を説明しやすくなり、次の判断につなげやすくなります。
3.荷待ち時間の改善策の検討
数値目標を設定した後は、達成に向けて荷待ち時間の改善策を検討します。重要なのは、国が示している判断基準や取組例を踏まえて施策を選ぶことです(※3)。
たとえば、バラ積み・バラ下ろしは荷待ちや荷役時間が長くなる要因です。パレットの導入や標準化を進めることで、荷役時間を短縮できます。また、適切な受取・引渡日時の指示や予約システムの導入は、荷待ち時間そのものを減らす有効な手段です。入出庫の効率化につながる機材や人員の配置、荷積み・荷下ろし施設の改善も改善策となります。
改善策は一度決めて終わりではありません。実施後に再度荷待ち時間を計測し、目標との差を確認したうえで、次の対策につなげていく必要があります。数値にもとづいて施策を選び、効果を検証する積み重ねが、荷待ち2時間ルールへの効果的な対策につながります。
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荷待ち時間を記録する方法

荷待ち時間を記録する方法はいくつかありますが、重要なのは自社の体制や目的に合ったやり方を選ぶことです。記録の精度や手間、継続のしやすさは方法によって異なります。
ここでは、現場でよく使われている代表的な3つの方法を整理します。
- 紙に記録してパソコンで管理する
- 直接パソコンやタブレットに入力して管理する
- システムで荷待ち時間の記録を自動化する
それぞれの特徴を理解したうえで、無理なく続けられる手段を検討することが大切です。
紙に記録してパソコンで管理する
紙に記録してパソコンで管理する方法は、荷待ち時間の把握をはじめる際に取り組みやすい手段です。特別な機器やシステムを導入する必要がなく、現場の運用を大きく変えずにはじめられます。
一方で、人が作業して記録するため、記入漏れや記載のばらつきが起こりやすくなります。紙からパソコンへの転記も必要になり、手間が増える点は避けられません。
精度や即時性には限界がありますが、コストを抑えつつ、まずは荷待ち時間を可視化したい段階では有効な方法です。
直接パソコンやタブレットに入力して管理する
直接パソコンやタブレットに入力して管理する方法は、記録作業を効率化しやすい手段です。
現場で到着時刻や荷役開始・終了時刻をそのまま入力するため、後から転記する手間がかかりません。エクセルや簡易的な入力フォームを使えば、集計や一覧化もしやすくなります。
一方で、人が入力する点は変わらないため、入力忘れや操作ミスが起こりがちです。端末の準備や操作ルールの統一が必要になるため、現場によっては定着までに時間がかかる場合もあります。
紙よりも精度と即時性を高めたいが、本格的なシステム導入までは考えていない場合に検討してみましょう。
システムで荷待ち時間の記録を自動化する
システムで荷待ち時間の記録を自動化する方法は、精度と継続性を重視する場合に有効です。
車両の入退場をカメラやセンサーで自動検知し、到着時刻や退場時刻を人の操作なしで記録します。システムの導入によって手入力が不要になるため、記録漏れや入力ミスが起きにくいのが特徴です。
たとえば、セーフィーの「AI-App(アイアップ)ナンバープレート認識」は、ナンバープレートを自動認識し、車両が入退場する時間を正確に把握できます。荷待ち時間を手軽にチェックできるため、2時間ルールへの対応や、定期的な社内報告への活用もおすすめです。
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荷待ち時間の記録についてよくある質問(FAQ)

荷待ち時間の記録を進めようとすると、制度や義務の範囲がわかりにくく、疑問を感じる場面も少なくありません。ここでは荷待ち時間の記録に関して特に多い疑問を4点ご紹介します。
- 荷待ち時間の報告義務はありますか?
- 荷待ち時間・荷役作業などの記録義務の対象となる車両は?
- トラックの待機時間の削減は努力義務ですか?
- 荷待ち時間が長くなっている原因は?
荷待ち時間の報告義務はありますか?
一定規模以上の事業者(特定事業者)については、中長期計画の作成や定期的な報告が義務付けられています。特定事業者の指定基準は、以下の表のとおりです(※4)。
| 区分 | 指定基準 |
| 特定第一種荷主 | 年度の取扱貨物重量が9万トン以上 |
| 特定第二種荷主 | |
| 特定連鎖化事業者 | |
| 特定倉庫事業者 | 年度の貨物の保管量が70万トン以上 |
| 特定貨物自動車運送事業者等 | 保有車両台数が150台以上 |
荷待ち時間・荷役作業などの記録義務の対象となる車両は?
荷待ち時間・荷役作業などの記録義務の対象となる車両は、事業用トラックの全車両です(※5)。
国土交通省は令和7年4月1日から、業務記録における荷待ち時間・荷役作業・附帯業務の記録義務を全車両に拡大しました。
従来は「車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上」の車両に限定されていましたが、改正後は車両規模に関係なくすべての事業用トラックが対象です。
トラックの待機時間の削減は努力義務ですか?
トラックの待機時間の削減は努力義務です。「物資の流通の効率化に関する法律」の改正により、荷主および物流事業者に、物流効率化の努力義務が課されます(※6)。
その中核に位置づけられているのが、トラックの荷待ち時間・荷役時間の削減です。ただし、一定規模以上の特定事業者については、中長期計画の作成や定期報告が義務化されます。
荷待ち時間が長くなっている原因は?
荷待ち時間が長くなる背景には、確実に作業に入るため30分以上早く到着して待機する慣行があります(※7)。また、予約制がなく到着が集中する拠点ではバース待ちが発生しがちです。
まとめ:荷待ち時間の記録を始める前に課題や改善点を整理しよう
荷待ち時間の記録は、いきなり記録方法を決めるのではなく、現状を把握することから進める必要があります。
まずは、なぜ荷待ちが発生しているのか、どこで時間が伸びているのかといった課題を整理することが重要です。現状を把握せずに記録をはじめても、数値が活用されず形だけの対応になりがちです。
荷待ち時間を記録する目的は、2時間ルールへの対応や改善判断、社内説明に使える数値をもつことにあります。記録の精度だけでなく、誰が・何のために・どう使うのかを事前に整理しておくとよいでしょう。
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※1 出典:“貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化の推進に関する基本的な方針”.農林水産省・経済産業省・国土交通省.(参照 2026-02-13)
※2 出典:“荷主事業者の物流情報の把握状況等に関する実態調査結果”.経済産業省・国土交通省・農林水産省.2023-04-27(参照 2026-02-13)
※3 出典:“流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律”.国土交通省.(参照 2026-02-13)
※4 出典:“物流効率化法について”.経済産業省.(参照 2026-02-13)
※5 出典:“荷待時間や荷役作業・附帯業務の「業務記録」への記録義務の対象が、全車両に拡大”.国土交通省.(参照 2026-02-13)
※6 出典:“物資の流通の効率化に関する法律(第三十七条)”.e-Gov法令検索.1962-06-01(参照 2026-02-13)
※7 出典:“荷待ち時間が特に長い輸送分野等における取組について”.国土交通省.2018-05-30(参照 2026-02-13)
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