日本全体で人手不足が問題となっていますが、そのなかでも小売業界は人手不足が深刻な業界の一つです。人材を確保しないまま営業を続けると接客の質が低下し、顧客離れが起こるかもしれません。また、既存の従業員への負担が増して離職が増え、さらに人手不足が深刻化するという悪循環が起こる恐れもあります。
本記事では、小売業界が人手不足に陥る原因と対策をまとめました。AIカメラを活用した人手不足対策の事例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
小売業界が人手不足に陥る原因
小売業界では人手不足が深刻です。人手が不足する原因として、大きく次の4つに分けられます。
- 給与水準が比較的低めである
- 土日祝日も勤務を求められる
- 勤務が不定期になりやすい
- 長時間営業の店舗が増えている
それぞれの原因について解説します。
給与水準が比較的低めである
給与水準の低さは、小売業界が人手不足になる原因の一つに挙げられます。「令和5年 賃金構造基本統計調査(※1)」による主な業界別の年収は、以下をご覧ください。
小売業界がもっとも低年収というわけではありませんが、平均年収を下回っていることからも、決して高い水準ではないことがわかります。給与が低いと求人に応募する人が減り、人手不足に陥りやすくなります。
【産業別の平均年収】
業界 | 平均年収 |
---|---|
産業計 | 506.94万円 |
金融業、保険業 | 659.18万円 |
鉱業、採石業、砂利採取業 | 614.98万円 |
情報通信業 | 605.36万円 |
建設業 | 566.95万円 |
不動産業、物品賃貸業 | 564.11万円 |
製造業 | 513.55万円 |
卸売業、小売業 | 495.23万円 |
運輸業、郵便業 | 479.83万円 |
医療、福祉 | 455.36万円 |
宿泊業、飲食サービス業 | 375.21万円 |
※平均年収は「きまって支給する現金給与額」×12+「年間賞与その他特別給与額」で算出。また、10人以上の民間営業所に勤務する人が対象。
土日祝日も勤務を求められる
スーパーやデパートなどの小売店舗は、土日祝日も営業していることが基本です。土日祝日は仕事が休みの人が多いため、小売店舗にとっては売上を大きく伸ばせる日となり、従業員には土日祝日の出勤が求められます。そのため、「友人との予定を立てづらい」「家族と休日が合わず、一緒に過ごせない」などの不満が生じ、土日祝日休みの仕事を希望するようになるケースがあります。
勤務が不定期になりやすい
土日祝日も営業している店舗では、不公平感の緩和のために勤務曜日を固定しないシフト制を採用することが一般的です。そのため、勤務曜日・時間が不定期になり、生活リズムが整いにくくなってしまう点はデメリットといえるでしょう。また、店舗によっては勤務時間が一定ではなく、出勤時間や退勤時間が日によって変わることがあり、家族の生活にも影響を及ぼすことがあります。
長時間営業の店舗が増えている
競争力強化のために、24時間営業や長時間営業の店舗が増えています。しかし、小売店で働く人にとっては、24時間営業や長時間営業は負担です。夜勤が増えたり、勤務時間が不定期になったりするだけでなく、人手不足で労働時間が増える可能性も高いです。ワークライフバランスを保つため、小売業界で働くことを敬遠するケースがあります。
小売業界の人手不足を軽減するための6つの対策
給料水準を改善し、土日祝日は休日として営業時間を減らせば、求人に応募する人が増えて人手不足は解消されるかもしれません。しかし、現実的とはいえないでしょう。
平日の日中のみの営業なら買い物できる顧客は一部に限定されるので、売上は下がることが予想されます。売上が減れば人件費に回せる部分も減ってしまうため、そのような状態で給料を増やせば店舗自体の存続が危うくなってしまうでしょう。
人手不足を軽減する実現可能な方法としては、次の6つが挙げられます。
- シフトを見直す
- コミュニケーションを増やす
- 無駄な業務・非効率な作業手順がないか調べる
- 雇用の幅を広げる
- 無人レジを導入する
- 売り場のレイアウトを見直す
それぞれの方法について解説します。
シフトを見直す
シフトを見直したときに、労働が特定の従業員に偏っていないでしょうか。それに加え、各従業員の労働時間を確認し、長すぎる従業員がいないかも確認してください。
労働時間において不公平感や負担があると、従業員の離職を招くことがあります。シフトを作成するときは、従業員一人ひとりの希望を取り入れ、できる限り公平に組むようにしましょう。
コミュニケーションを増やす
すべての従業員にとって居心地が良く、働きやすい職場ならば、定着率の向上も期待できます。従業員が居心地の良さを感じながら働けるように、コミュニケーションを増やすのもおすすめです。
挨拶を心がけるのはもちろんのこと、会話を楽しめるような雰囲気づくりも大切なことです。また、従業員が居心地の良さを感じると売り場全体が温かい雰囲気となりやすく、顧客にとっても居心地の良い売り場になる可能性があります。
無駄な業務・非効率な作業手順がないか調べる
業務内容や作業手順をすべて洗い出し、無駄な業務や非効率な作業手順がないかチェックしたうえで業務効率化を図りましょう。結果として従業員の労働負担が減るだけでなく、開店業務・閉店業務が減り、労働時間を短縮できることもあります。
雇用の幅を広げる
「1日8時間勤務」「長く働ける方」などと雇用条件を限定してしまうと、短時間だけ働きたい人や高齢者、学生などを雇用のターゲットから除くことになります。
求人応募者が多い職場なら問題はありませんが、人手不足で悩んでいる場合は雇用条件を細かく定めず、ターゲットの幅を広げてみましょう。
無人レジを導入する
無人レジの導入も、業務効率化を実現する方法の一つです。レジ従業員を減らせるため、人手不足を解消しやすくなります。
防犯面で無人レジの導入が不安な場合は、レジ前に防犯カメラを設置するのも良いかもしれません。トラブルが起こらないか遠隔で見回りできるようになるだけでなく、レジ周辺の混雑もカメラ映像から確認できます。
混雑しているときは早めに従業員を増やしたり、空いているレジに誘導したりすることで、従業員数が少なくても来店客の待ち時間を減らせ、顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
売り場のレイアウトを見直す
来店客がスムーズに買い物できる売り場なら、顧客対応に費やす時間が減り、従業員の業務負担の軽減を図れる可能性が期待できます。売り場のレイアウトの見直しや、来店客の動きに沿った棚の配置になっているかを確認してみましょう。入口から出口まで一筆書きでたどれるような配置なら、来店客は短時間で必要なものをすべて買い物かごに入れられるようになります。
AIカメラを活用した人手不足対策の事例
人手不足対策としてAIカメラも活用できます。導入時には初期費用がかかりますが、人件費の削減や業務効率化につながることがあり、長期的に見ればコスト減・売上増が期待できるでしょう。実際にAIカメラ導入で人手不足解消や業務効率化を実現した事例を2つ紹介します。
売り場見直しによるフードロス・業務負担の削減
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スーパーマーケットチェーン「ベルク」では、店舗における業務向上を目的とし、来店客の動線が変わるポイントにAIカメラを設置しました。どの位置にPOPを置けば訴求力が高まるか、どの場所に当日中に消費する食品(弁当や惣菜など)を置けば買いやすいかなどを分析し、売り場環境の見直しに役立てています。
AIカメラを通して得られたデータを活用することで、弁当・惣菜などの値下げタイミングの適正化を図ってフードロスの大幅な削減を実現しただけでなく、レジ開放や従業員のシフト配置を効率化できたことで業務負担の軽減にも成功しています。
来店客数の正確な把握による適切な従業員配置
ノートブック、手帳、バッグなどのプロダクトに多くのファンを持つ「モレスキン」では、来店客数を正確に把握することを目的として、AIカメラを導入しました。AIカメラと人数カウントアプリを活用して、ポイントごとの人数を正確にカウントしています。
曜日ごとの来店客を正確に把握すれば、必要な従業員数を割り出せ、シフトの適正化も可能です。実際に無駄な配置を削減したことで、現状の従業員数でも無理なく運営できるようになっています。
無人レジ設置やレイアウト見直しに役立つAIカメラとアプリケーション
無人レジとの併用で防犯カメラやAIカメラの活用を検討しているケースや、人流解析による売り場レイアウトの最適化を図りたいケースでは、AIカメラの「Safie One(セーフィーワン)」がおすすめです。
売り場の混雑や顧客行動をパソコンやスマートフォンから24時間いつでも・どこからでも確認でき、映像データをもとに必要な場所に必要な従業員を配置することが可能です。
Safie Oneにオプション追加できるアプリケーションの「AI-App(アイアップ)人数カウント」を組み合わせれば、特定エリアへの人の滞留などを検知して通知してくれるだけでなく、通過人数の集計を自動で行う機能もあるため、店前交通量・入店者数・購入者数などの顧客データ取得を簡単に行えます。
業務効率化を図ることで労働量が減り、人手不足を解消しやすくなるだけでなく、既存の従業員の働きやすさ・居心地の良さの向上にもつながるでしょう。「Ai-App 人数カウント」の3つの機能の違いについては、こちらのページをご覧ください。
業務効率を見直して人手不足対策をしよう
人手不足を解消するためには、労働条件の見直しが必要です。近隣の相場や労働内容に見合った給与に設定すること、労働時間が長くなりすぎないように調整することでも、求人応募者を増やせるかもしれません。
また、業務効率を見直すことも重要なポイントです。本記事で紹介したAIカメラや、人数カウントなどに役立つアプリケーションを活用し、売り場のレイアウトや作業手順などの見直してシフトの適正化を図ることで、従業員数を増やさなくても無理なく運営できるようになる可能性が期待できるでしょう。
- 小売業界編 Safie クラウドカメラ活用ガイド
- オンラインでいつでもどこでも映像が見られるクラウドカメラを提供しています。課題に合った活用方法についてお気軽にご相談ください。
※1 出典:“賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類”.e-Stat 政府統計の総合窓口(参照 2024-07-25)
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