店舗のデジタル化が急速に進んでいます。ECサイトの台頭や新型コロナウイルスの影響により、実店舗のあり方が大きく変わりつつある今、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に注目しています。
この記事では、店舗のデジタル化について、その意味や必要性、具体的な施策、さらには導入事例まで幅広く紹介します。小売業や飲食店など、実店舗の運営に携わる方は、デジタル化のメリットと課題、そして将来性について正しく理解しましょう。
目次
店舗運営のデジタル化とは?
店舗運営のデジタル化とは、小売業や飲食店などの実店舗営業において、デジタル技術を活用して業務プロセスを改善し、顧客体験を向上させる取り組みのことです。近年、ECサイトの台頭や新型コロナウイルスの影響により、実店舗のあり方が問われるなか、多くの企業が店舗のDX(デジタルトランスフォーメーション)に注目しています。
デジタル化が求められる理由
店舗のデジタル化が求められる背景には、主に3つの理由があります。
- 「人手不足の解消」少子高齢化による労働力不足
- 「非接触・非対面ニーズの高まり」人との接触を抑えた衛生面の配慮
- 「購買行動の変化」スマホの普及による、デジタル購買の進化
たとえば、経済産業省の調査(※)によると、2022年のBtoCのEC化率は9.13%に達し、前年から0.35ポイント増加しました。また、BtoBのEC化は37.5%に達しており、販売チャネルのデジタル化は急速に進んでいます。
※ 出典:“電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました”.経済産業省,1-(1).2023-8-31(参照:2024-7-16)
デジタル化とDX化の違い
デジタル化とDX化はよく似たビジネス用語です。「デジタル化」が既存の業務をデジタルツールに置き換えることを意味するのに対して、「DX化」はデジタル技術を用いてビジネスモデル自体を変革することを意味します。
たとえば、紙の伝票をタブレットに置き換えるのがデジタル化であり、AIを活用した販売管理システムを導入し、店舗の在庫管理や発注プロセス全体を最適化するのがDX化と言えます。DX化の過程の一つにデジタル化が含まれている場合もあります。
店舗運営のデジタル化でできること
実際に店舗運営のデジタル化によって実現できることを知ることで、システム導入の目的も具体的になります。店舗運営のデジタル化にどのようなメリットがあるか把握しましょう。
レジの自動化と会計の効率化
セルフレジやキャッシュレス決済の導入により、レジ待ち時間の短縮、人件費削減など、会計プロセスを大幅に効率化できます。
たとえば、コンビニチェーンのセブン-イレブンでは、2025年までに全店舗にセルフレジを導入する計画を発表しています。レジ打ちはコンビニ業務の3割を占めると言われており、これにより業務改善と人手不足解消を目指しています。
在庫管理と商品補充の最適化
AIやRFIDを活用した在庫管理システムを導入することで、リアルタイムで在庫状況を把握し、適切な発注や商品補充が可能になります。これにより、販売機会の損失や廃棄ロスを最小限に抑えることが可能です。
たとえば、ユニクロを展開するファーストリテイリングは、AIを活用した需要予測システムを導入し、在庫の最適化に成功しています。
AIカメラを使ったマーケティング分析
AIカメラを活用することで、来店客数や滞在時間、動線などのデータを収集・分析し、効果的なマーケティング施策につなげることができます。混雑状況に応じたスタッフ配置や売場レイアウトの最適化などが可能になります。
たとえば、大手小売チェーン「イオン」や「イオンスタイル」を運営するイオンリテールでは、AIカメラを活用した来店客分析システムを導入し、効果的な店舗運営を実現しています。
ヒューマンエラーの削減
デジタル化により注文や会計などの業務を自動化することで、人為的なミスを大幅に削減できます。タブレット端末を使ったオーダーシステムでは、注文内容の聞き間違いや入力ミスを防ぐことができます。
飲食チェーンのスターバックスコーヒージャパンでは、モバイルオーダーシステムを導入し、注文ミスの削減と顧客満足度の向上を実現しています。
顧客体験の没入感アップ
アプリやVR(仮想現実)、AR(拡張現実)技術を活用することで、新しい顧客体験を提供できます。たとえば、スマートフォンアプリを通じたクーポン配布やARを使った商品試着サービスなどが挙げられます。
アパレルブランドのZARAでは、ARアプリを導入し、店頭のディスプレイにスマートフォンをかざすとモデルが動き出すような体験を提供しています。
店舗のデジタル化の「課題」と「解決策」
実際に店舗のデジタル化を実現するには、いくつかの課題もあります。解決策もあわせて紹介するので、検討時の参考にしてください。
投資コストの発生
デジタル化には専用システムが必要になり、初期投資が必要なケースがほとんどです。特に、中小企業にとっては大きな負担となる可能性があります。ただし、クラウド化などによってシステム利用料の負担だけで導入できるシステムも増えてきています。
クラウドサービスでは、外部のデータセンターにシステムが構築されるため、店舗自体に専用サーバーを用いる必要がなく、初期費用を抑えて導入することが可能です。また、経済産業省のIT導入補助金を活用できるケースであるか確認することも重要です。
課題点:導入コストがかかる
解決策:クラウドサービスで初期費用を抑える
デジタル人材の雇用と育成
デジタル技術を正しく活用するには、専門知識を持った人材の確保が不可欠です。しかし、デジタル人材の採用は競争が激しく、特に中小企業では難しいケースは少なくありません。
この課題に対して、既存社員の教育と育成に力を入れることが重要です。たとえば、オンライン学習プラットフォームを活用した社内研修や、外部の専門家を招いたワークショップの開催などが挙げられます。
課題点:デジタル人材の確保
解決策:既存社員のリスキリング
個人情報保護とセキュリティ管理
デジタル化に伴い、顧客情報や販売データなどの機密情報を扱う必要があるため、店舗のデジタル化には適切なセキュリティ対策が不可欠です。情報漏えいのリスクを最小限に抑えるために、データ暗号化やアクセス制限、定期的なセキュリティ監査などを実施することが重要です。
また、従業員に対する情報セキュリティ教育も忘れてはいけません。日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)が提供する情報セキュリティ教育など、既存社員のスキルアップもあわせて必要でしょう。
課題点:セキュリティ対策が必要
解決策:セキュリティ教育の充実
「誰一人取り残さない」デジタル化の実現
デジタル化を進めるには、高齢者やデジタルリテラシーの低い顧客にも配慮する必要があります。たとえば、従来の対面サービスも併用しながら段階的にデジタル化を進めることが大切です。
また、UI(ユーザーインターフェース)のデザインを工夫し、誰にでも使いやすいシステムを目指すことも重要になります。
課題点:ツールを利用できない顧客・従業員
解決策:従来のサービスを併用しながら取り組む
店舗デジタル化の事例
実際に店舗のデジタル化に成功した企業の事例を知ることで、自社の店舗運営にも導入しやすくなります。ここでは、特に代表的な事例について紹介します。
次世代POSシステムの導入
ホームセンター「コーナン」を運営するコーナン商事は、次世代POSシステムを導入し、レジ業務の効率化と顧客満足度の向上を実現しています。
システム導入後、レジ待ち時間の短縮やスタッフの業務負担軽減につながっています。また、クラウド上のデータ連携により、売上金精算業務の大幅な効率化も実現しています。
AIカメラでマーケティング分析
ノートブック、手帳、バッグなどを展開するモレスキン・ジャパンでは、セーフィーのAIカメラによる人数カウント機能を活用して、見込み客の興味や動向などを具体的な数値としてマーケティングにいかしています。
計測したデータを販売注力商品の設置場所や店舗レイアウトの最適化に活用することで、実際に商品を手に取る確率が1.5倍ほど増加する効果を得ています。
デジタルサイネージの活用
メガネブランドのZoffでは、店頭のポスター類をデジタルサイネージに置き換えることで、販促活動の効率化を実現しています。本社からインターネット経由でコンテンツを送信し、各店舗のディスプレイに表示する仕組みを採用しています。
この取り組みにより、店舗でのポスター張り替え作業がなくなり、店舗ごとに柔軟に表示内容を変更できるようになりました。スタッフの業務負担軽減とタイムリーな情報発信が可能になっています。
店舗デジタル化の将来性
店舗のデジタル化は、今後さらに進化していくことが予想されます。AIやIoT、5Gなどの技術が発展することにより、各店舗でのより高度な顧客体験の提供や業務効率化などが進むからです。
たとえば、AIカメラを用いた完全無人店舗、ロボットによる接客サービス、ARやVRを組み合わせた没入型ショッピング体験など、革新的な店舗形態が産まれる可能性があります。
また、オムニチャネル戦略がより重要視され、実店舗とECサイトの垣根が今後は曖昧になっていくはずです。顧客はオンラインとオフラインを自由に行き来しながら、シームレスな購買体験を求めるようになるでしょう。
店舗のデジタル化で店舗運営の効率化と顧客満足度の向上を
店舗のデジタル化は、顧客満足度の向上と店舗運営の効率化を同時に実現する重要な取り組みです。レジの自動化や在庫管理の最適化、AIカメラを活用したマーケティング分析など、さまざまなシーンでデジタル技術の活用が可能です。
一方で、投資コストやデジタル人材の確保、セキュリティ管理など、課題も存在します。段階的な導入や従業員教育、適切なセキュリティ対策などで対応することが重要です。
競争力を維持・向上させるためにも、各企業は自社の状況に合わせたデジタル化戦略を立て、積極的に推進していくことが求められます。デジタル化の波は今後さらに加速すると予想されます。
ただし、デジタル化はあくまでも店舗運営の効率化や販売促進活動の手段の一つであり、目的になってはいけません。顧客にとって価値のある体験を提供するにはどうしたらいいか考えることで、適切なデジタル化につなげるようにしましょう。
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