「こだわりの商品やサービスを提供し、お客様から愛されるカフェにしたい」と考えていても、お店を支えるスタッフがなかなか育たない……。そんな悩みを抱えるオーナーや店長は少なくありません。
そこで今回は、スターバックスコーヒージャパンで組織・人材開発部マネージャーを務めていた目黒勝道さんに「人が育つカフェ」に必要なことは何か、お話を伺いました。
話者プロフィール

目黒勝道(めぐろ・かつみち)
トリプル・ウィン・パートナーズ代表。
1987年にドミノピザ事業部へ入社し、人材育成プログラムや人事評価制度の開発・導入に従事。2000年にスターバックスコーヒージャパン株式会社へ入社。店舗運営部地区責任者を経て、人事サービス部長として店舗スタッフの採用・育成体制を構築。ミッションマネジメントを支える「グリーンエプロンブック」の導入を手がける。2008年より組織・人材開発本部マネージャーとして、組織力向上のための人事制度再構築、新任マネージャー育成とOJT体系化を実践。
その後、アパレル、美容外科など幅広いサービス業の人事領域を経験。2014年より現職。人と企業の成長を支える人材マネジメント領域の研修・講演、人事コンサルテーションを行っている。日本人材マネジメント協会「人材マネジメント基礎講座」講師。
明確なミッションや行動指針の下でスタッフを育成
- 目黒さんはこれまで、どのような企業で人事に関する業務に携わってこられたのですか。
目黒(以下略):私は「ドミノピザ」「スターバックスコーヒー」といった飲食ブランドからアパレル、美容外科まで、幅広いサービス業の企業に関わってきました。担当してきた業務は、人材育成のプログラムを作ったり、スタッフの皆さんが関わる人事制度や評価制度そのものを構築したりと多岐にわたります。
現在はこうした経験や知見を生かし、人と企業の成長を支えるような研修や講演、コンサルティングなどを行っています。
- こうしたご経歴を踏まえ、今回はスターバックスコーヒーでの人材育成についてお伺いしたいです。当時、どのような方針に基づいて人材育成を進めてこられたのですか。
当時のスターバックスコーヒーでは、「人々の心を豊かで活力あるものにする」という「ミッションステートメント」が定められており、これが全員の行動の起点となっていました。この「人々」には、お店を利用されるお客様だけでなく、そこで働いてるスタッフ、地域社会の方々など、お店を取り巻く全ての人が含まれます。
また、スターバックスコーヒーでは働いているスタッフを「パートナー」と呼ぶのですが、このパートナーに対して「多様性を受け入れることで、一人ひとりが輝き、働きやすい環境を皆で作ろう」という考え方や、「お互いに尊敬と威厳を持って接する」という「行動指針」も定められていました。
こうしたミッションステートメントや行動指針を軸に人材育成を行っていましたね。
- お店の運営や人材育成の指針が明確だったのですね。こうした価値観や行動を定着させるために、どのような仕組みがあったのでしょうか。
当時、お店で働くパートナーに対しては大きく4つの「ステップ」が用意されていて、それぞれのステップで何を期待されているのかが明確になっていました。そして、そのステップをベースに、定期的な評価や昇給が行われていたのです。だからパートナー自身も、何を期待されているのか、その期待にどれくらい応えられているのかを振り返りやすかったのではないかと思います。
“人が育つカフェ”にするための3つのポイント

- どんなカフェでも“スタッフが育つ場”になれるような、人材育成の方法について教えていただけますか。
どんな規模のカフェでもまず取り組めるのは、次の3つだと思います。
・カフェの“在りたい姿”やミッションを明確にすること
・スタッフに期待する役割を整理すること
・スタッフの“振り返りの場”を定期的に設けること
まずは、今あるカフェをどんなお店にしたいのか、どのようなお店で在りたいのかを明確にし、スタッフに伝えることです。カフェを開いた際には「お客様に安らぎを与える」などの目的があったはずです。それをスタッフに広めていかないと、お店が「コーヒーを作る」「接客する」ための作業場になってしまうでしょう。
次に、新人、中堅、ベテランといった3つのステップを設け、それぞれにどのような業務や役回りを期待しているのか、何をどこまでやってほしいのか、を整理します。こうしたステップがないと、入ってきたばかりの新人にベテランの仕事を期待するなどのミスマッチが起こりかねません。
ステップの例としては、新人には「基本的な業務を覚える」、中堅には「基本的な業務を精度高く実施できる」、ベテランには「新人の教育や社員のサポートを行える」などが挙げられます。こうしたステップを設けることで、スタッフ自身が期待されている役割を理解できるでしょう。
そして、スタッフそれぞれと向き合う時間を作り、定期的な“振り返りの場”を設けます。こうした時間をとれば、日々の業務が“やらされ仕事”や作業ではなく、“自らを成長させる仕事”へと変わっていくからです。また、スタッフにとっては「自分の行いを誰かが見ていてくれている」という安心感につながると思いますよ。
- この3つなら少しずつ取り入れていけそうですね。加えて、働く際にスタッフ全員で意識したいことも教えていただけますか。
スタッフ皆さんで意識したほうがよいのは、お客様視点を身に付けること、スタッフ間で感謝の気持ちを持つことだと思います。
接客・サービス業においては、お客様からどう見えるのか、お客様がどう感じるのかということをキャッチするのが非常に重要です。こうした視点をスタッフ全員で意識できたら、よいお店作りにつながるのではないでしょうか。
また、スタッフは最初、何もできないところから一つひとつ業務を覚えていきます。そのため、スタッフ間で感謝の気持ちがないと、ベテランが新人に対して「なぜ仕事ができないんだろう」と思うなど、否定的な行動や考えに陥りかねません。そうではなくて、「ちゃんとやれていたね」と承認し、認め、褒める意識がとても重要です。
- 一度入ってきたスタッフには長く働いてもらいたいものです。スタッフの定着率が上がるための工夫には何がありますか。
当時のスターバックスコーヒーでは、パートナーに求められる3つの「スタースキル」として、以下が定められていました。
・自信を保ち、さらに高める
・相手の話を傾聴する
・困ったときには助けを求める
スタッフが長く働ける店舗ではこのスキルがよく活きていたと思います。参考にしてはいかがでしょうか。
セキュリティなどへの配慮が“安心感”や“満足度向上”につながる
- 男女問わず安心して働けるために、ルール作りやセキュリティ面で意識したいポイントを教えていただけますか。
さまざまなお客様やスタッフが出入りするカフェだからこそ、ルールの遵守とセキュリティは重要だと思います。
まず、オーナーや店長は「ヒト・モノ・カネ・情報」という4つを管理する責任を負っています。これを適切に管理するためのルールを定めているはずです。例えば、急に子どもや自分の体調不良で休むときにはどうすればよいか、などのルールをきちんと守るようスタッフに周知しましょう。
仮に、誰かがルールを破ったときにその行動を注意しないと、「ルールを破ってもいいんだ」という誤った認識や、人間関係の悪化につながるかもしれません。逆に、ルール通りにお店が運営されていれば、スタッフの心理的な安心感が生まれるでしょう。
また、男女問わずハラスメントが問題になることもあります。不測の事態が起きたときに備え、相談・通報窓口を複数用意し、それぞれの連絡先を明示しておくことも重要です。
- 近年は、クラウド録画サービスを使って、店舗の様子を遠隔からスマートフォンなどで確認したり、過去映像を簡単に検索したりできるようになっています。こうした技術の活用についてどのようにお考えでしょうか。
そうした技術の活用は、特に若手スタッフにとっては「きちんと見てくれている」という安心感に直結するのではないでしょうか。そして、状況が遠隔でも確認できて、先ほど挙げた相談・通報窓口にも連携できたら、なお良いと思います。
カフェ運営では、お客様の満足度を上げることがとても大切です。しかし、その満足度を高めるなら、先にスタッフの満足度を高める必要があります。スタッフに安心して働いてもらうことが、スタッフの満足度、ひいては愛されるカフェ作りにつながるのではないでしょうか。
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