遠隔巡視とは、カメラやWeb会議システムなどを用いて、作業現場の安全状況などを遠隔から確認することです。2024年6月、厚生労働省によって、建設現場や土木現場など特定元方事業者による作業場所の遠隔巡視が認められました。
本記事では、遠隔巡視に使用できるカメラなどの機器の要件や使用できるカメラの種類、おすすめのカメラ「Safie GO 360(セーフィー ゴー サンビャクロクジュウ)」と「Safie Pocket(セーフィー ポケット)シリーズ」、さらにその活用事例を解説します。
目次
遠隔巡視とは
遠隔巡視とは、人が実際に作業現場に足を運ばずに、定点カメラやウェアラブルカメラなどの映像や音声を用いて、現場の状況確認や進捗の把握、作業行動の是正・指導などを行うことです。
建設現場や土木現場などの作業現場では、労働災害を防止するため、毎作業日に少なくとも1回の巡視が義務付けられています。従来は現場に出向いての巡視が必要でしたが、2024年6月に、「労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第30条第1項第3号の規定に基づく特定元方事業者による作業場所の巡視」をデジタル技術を活用して遠隔で実施することが認められました。(※1)
遠隔巡視により、以下のようなメリットが期待されます。
- 人手不足の解消
- 移動時間の削減
- 複数現場の同時巡視による業務効率化
一方で、遠隔巡視は視覚情報の域を出ず、嗅覚や触覚などは現在のデジタル技術では把握困難です。そのため、厚生労働省の通達(※1)では、リスクの高い現場などでは目視による巡視が適当とされています。また、遠隔巡視を実施する場合でも、週1回は目視による巡視を行うことが適当とされている点にも注意が必要です。
※1 出典: “特定元方事業者による作業場所の巡視に係るデジタル技術の活用について“.厚生労働省 労働基準局.2024-6-28(参照 2024-9-10)
遠隔巡視や遠隔臨場に使用できる機器の要件
建設業労働災害防止協会が取りまとめた「令和5年度 ICT を活用した労働災害防止対策のあり方に関する検討委員会 報告書」では、遠隔巡視で使用する機器の要件について、遠隔臨場で示される参考値の性能が必要であるとしています。
遠隔臨場は、建設現場や土木現場で材料確認や立ち合いを遠隔で行うもので、遠隔巡視に先立ってデジタル技術の活用が進められている分野です。遠隔臨場で使用する機器の要件は、国土交通省が公表した「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」に定められています。
続いて、遠隔巡視に使用できる機器の要件を見ていきましょう。
システムの要件
遠隔巡視に使用するシステムの要件は、「令和5年度 ICTを活用した労働災害防止対策のあり方に関する検討委員会 報告書」によると以下のとおりです。
ア 遠隔巡視を行うための機器の要件
(ア)遠隔巡視では、鮮明な画像がリアルタイムで把握できること、双方向のコミュニケーションが円滑に実施可能であること、遅延等の発生リスクが小さいこと等、一定の映像、音声、通信速度等の要件を満たすことが必要であること。
(ウ)遠隔巡視を実施する現場においては、当該巡視に係る映像等のデータを一定期間保存すること。
※2 出典:“令和5年度 ICTを活用した労働災害防止対策のあり方に関する検討委員会 報告書”.建設業労働災害防止協会.2024-6(参照 2024−9−10)
カメラの要件
遠隔巡視に使用するカメラについては、前述のシステムの要件に加え、以下の内容を満たす必要があります。
ア 遠隔巡視を行うための機器の要件
(イ)モバイルカメラの使用を基本としつつ、作業場所の巡視を的確に行うため、広く現場を見て連続した記録や確認が必要な場合は定点カメラを併用すること。なお、作業現場で死角が発生しない工程で、かつ、双方向のコミュニケーションが円滑に実施可能である場合は、定点カメラのみの巡視を認めても差し支えないこと。
※2 出典:“令和5年度 ICTを活用した労働災害防止対策のあり方に関する検討委員会 報告書”.建設業労働災害防止協会.2024-6(参照 2024−9−10)
また、カメラの性能は、遠隔臨場で定められている以下の参考数値以上が求められます。(※3)
項目 | 仕様 | 備考 |
映像 | 画素数:640×480以上フレームレート:15fps以上 | カラー |
音声 | マイク:モノラル(1チャンネル)以上スピーカー:モノラル(1チャンネル)以上 |
※3 出典:“建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)”.国土交通省 大臣官房技術調査課.2022−03(参照 2024−9−10)
スマートフォンの要件
遠隔巡視に使用するスマートフォンについては、前述のシステムの要件に加え、以下の内容を満たす必要があります。
ア 遠隔巡視を行うための機器の要件
(エ)スマートフォン等新たな機器を使用する場合は、よそ見によるふらつきで転倒や衝突の危険があるため、これに伴うリスクを洗い出し、適切に対応できる事業者が利用すべきであるが、少なくともスマートフォンを手に持った状態で移動することは禁止すべきであること。
※2 出典:“令和5年度 ICTを活用した労働災害防止対策のあり方に関する検討委員会 報告書”.建設業労働災害防止協会.2024-6(参照 2024−9−10)
Web会議システムの要件
遠隔巡視では、現場の映像や音声を確認するためにWeb会議システムなども利用します。Web会議システムについては、前述のシステムの要件に加え、遠隔臨場で定められている以下の参考数値以上の性能が求められます。(※3)
項目 | 仕様 |
通信回線速度 | 下り最大50Mbps、上り最大5Mbps以上 |
映像・音声 | 転送レート(VBR):平均1Mbps以上 |
また、画質・画素数と通信速度は、以下の参考数値以上が必要です。(※3)
画質 | 画素数 | 最低限必要な通信速度 |
360p | 640×480 | 530kbps |
480p | 720×480 | 800kbps |
720p | 1280×720 | 1.8Mbps |
1080p | 1920×1080 | 3.0Mbps |
2160p | 4096×2160 | 20.0Mbps |
※3 出典:“建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)”.国土交通省 大臣官房技術調査課.2022−03(参照 2024−9−10)
遠隔巡視や遠隔臨場におすすめのカメラの種類
遠隔巡視や遠隔臨場に適したカメラには、以下のような種類があります。
- ウェアラブルカメラ
- スマートグラス
- スマートフォン・タブレットのカメラ
- 360度カメラ
それぞれの特徴を見ていきましょう。
ウェアラブルカメラ
ウェアラブルカメラとは、作業者の身体に装着して使用する小型カメラのことです。ヘルメットや胸部に取り付けることで、作業者の視点から現場の状況をリアルタイムで撮影・配信できます。
ウェアラブルカメラは両手を自由に使えるため、作業中でも遠隔地の監督者が現場の状況を把握できる点が大きな特徴です。狭小空間や高所など、作業者の安全確保が特に求められる場面での活用も期待できます。
スマートグラス
スマートグラスは、カメラやディスプレイ、通信機能などを内蔵したメガネ型のウェアラブルデバイスです。作業者の視界を妨げることなく、両手を自由に使えます。
AR(拡張現実)機能を搭載したモデルなら、作業手順や安全情報を視界に重ねて表示することも可能です。作業者に必要な情報やガイドラインを視覚的に伝えることで、遠隔巡視の効率や精度の向上が期待できます。
スマートフォン・タブレットのカメラ
機器の要件を満たせば、スマートフォンやタブレットのカメラも遠隔巡視に利用可能です。近年のスマートフォンやタブレットは、高性能なカメラを搭載しているため、大半が対応しています。
新たに専用機器を揃える必要がなく、多くの作業員が操作に慣れているため、他の機器に比べて導入のハードルは低いですが、手に持って撮影する必要がある点は注意が必要です。前述のとおり、手に持った状態で移動することは禁止されているので、ウェアラブルカメラやスマートグラスに比べて利用できる場面は限定されます。
360度カメラ
360度カメラとは、全方位を同時に撮影できる特殊なカメラのことです。1台で現場全体の状況を把握できるため、遠隔巡視・臨場に適しています。
魚眼レンズ特有の歪みを補正するデワープ機能が搭載されたモデルなら、平面的な画像やパノラマ画像に変換して、より自然な映像で現場を確認可能です。360度カメラで現場の状況を立体的に記録することで、現場全体の状況把握や危険源の特定、進捗状況の把握、事故調査など幅広く活用できます。
遠隔巡視や遠隔臨場におすすめのカメラ
セーフィーには遠隔巡視や遠隔臨場に使用できる要件を満たしたカメラを多数揃えています。なかでもおすすめの機種は以下の2つになります。
- Safie GO 360
- Safie Pocketシリーズ
以下で詳しく紹介します。
Safie Pocketシリーズ
「Safie Pocket(セーフィー ポケット )シリーズ」は、移動しながらの撮影はもちろん、定点カメラとして設置もできるウェアラブルクラウドカメラです。
Safie Pocketシリーズは、国土交通省の遠隔巡視に使用するカメラの推奨条件を満たしています。また、国交省のNETIS(新技術情報提供システム)にも登録されています。
Safie Pocketシリーズの主な機能と遠隔巡視・遠隔臨場での活用事例を紹介します。
Safie Pocketの主な機能
遠隔業務に必要な業務機能をフルパッケージした「Safie Pocket2 Plus(セーフィー ポケット ツー プラス)」の主な機能は、以下のとおりです。
- 小型&軽量で手のひらにおさまるコンパクト設計
- バッテリーと通信モジュールを筐体内に納めたオールインワン仕様
- 大容量バッテリー内蔵で最大8時間の連続稼働
- LTE内蔵でいつでもどこでもクラウド録画
- IP67の堅牢な筐体で屋外利用も安心
- フルHDのスナップショット5000枚撮影可能(GPS情報あり)
- クラウド録画データを72時間分ダウンロード可能
- 専用ビューアーで撮影データと位置情報の一元管理が可能
- 手振れ補正機能で長時間モニタリングが可能
- 動体撮影時でもノイズが入りにくい高画質設定
- 撮影対象物から離れた場所からの撮影に便利なズーム機能
- モバイルバッテリーから本体への充電が可能
Safie Pocketの活用事例「大和ハウス工業」
建設現場の施工管理に、Safie Pocketシリーズを導入している事例を見ていきましょう。
幅広い事業領域で建物を供給している「大和ハウス工業」では、全国12か所に設置したスマートコントロールセンター(SSC)で、定点カメラやウェアラブルカメラで撮影した映像データや、センサーなどから得たデータを管理する取り組みを行っています。
内装工事では、建物の内部をウェアラブルカメラ「Safie Pocket2」で撮影し、施工状況の確認や品質管理を遠隔で実施。映像を確認しながら指示を出すことで、現場監督が現地入りするまで作業が止まることがなくなりました。現場の状況をカメラで撮影することは、不安全行動を未然に防ぐなど安全面でも好影響があったとのことです。
360°カメラ「Safie GO 360」
「Safie GO 360(セーフィー ゴー サンビャクロクジュウ)」は、LTE搭載の360度カメラです。撮影された映像はクラウド上に高画質で保存され、スマートフォン・パソコンから、いつでもどこでも確認できます。
Safie GO 360は、国土交通省の遠隔巡視に使用するカメラの推奨条件を満たした360度カメラです。また、国交省のNETIS(新技術情報提供システム)にも登録されています。
Safie GO 360の主な機能を見ていきましょう。
Safie GO 360の主な機能
Safie GO 360の主な機能は、以下のとおりです。
- 水平視野角182°+垂直視野角182°の魚眼レンズでカメラ前面を広範囲で撮影可能
- デワープ機能により魚眼カメラ映像を歪みが少ない映像に補正
- コンパクトで軽量、現場間の持ち運びや郵送も簡単
- 現場で電源をさすだけですぐに撮影・視聴が可能
- 狭小地や高所の作業も確認可能
- LTE内蔵でいつでもどこでもクラウド録画
- IP66防水防塵で屋外利用も安心
- 暗所や明暗差のある環境下でも利用可能
適切なカメラを選んで遠隔巡視に活かそう
2024年6月、厚生労働省により建設現場などでのデジタル技術を活用した遠隔巡視が認められました。遠隔巡視は、深刻な人手不足や移動時間の削減、業務効率化の効果が期待され、今後導入が広がっていくものと見られます。
セーフィーでは建設現場での利用に耐えうる防水防塵性能を備えたカメラを多数揃えています。カメラ選びにお悩みなら、クラウド録画サービスシェアNo.1(※)の「Safie(セーフィー)」をぜひご検討ください。
※テクノ・システム・リサーチ社調べ「ネットワークカメラのクラウド録画サービス市場調査(2023)」より
- レンタルサービス「Safie Pocketシリーズ」「Safie GO」のご紹介
- 「Safie Pocketシリーズ」「Safie GO」の活用方法を事例を交えながらご紹介をしています。
※ セーフィーは「セーフィー データ憲章」に基づき、カメラの利用目的別通知の必要性から、設置事業者への依頼や運用整備を逐次行っております。
※当社は、本ウェブサイトの正確性、完全性、的確性、信頼性等につきまして細心の注意を払っておりますが、いかなる保証をするものではありません。そのため、当社は本ウェブサイトまたは本ウェブサイト掲載の情報の利用によって利用者等に何らかの損害が発生したとしても、かかる損害については一切の責任を負いません。