アナログ規制緩和(見直し)とは、デジタル化を妨げる社会制度・ルールの総称である「アナログ規制」を見直すことです。さまざまなアナログ規制がデジタル化されることで、コスト削減や業務効率化などのメリットが期待されています。
本記事では、アナログ規制緩和(見直し)の概要を解説するとともに、アナログ規制緩和(見直し)によるメリット・懸念点、各業界に与える影響なども紹介します。
目次
アナログ規制緩和(見直し)の概要
まずは、アナログ規制緩和(見直し)の概要から解説します。
アナログ規制とは
アナログ規制とは、デジタル化を妨げる社会制度・ルールのことを総称して呼びます。たとえば、紙ベースの文書であったり対面による手続きであったり、デジタル技術を活用しない形式で行われてきた業務プロセスのことです。
近年、デジタル技術の発展とともにデジタル技術の社会への浸透が進み、人々の生活だけでなく働き方も大きく変化してきています。しかし、デジタル化によってもたらされるコスト削減や業務効率化などのメリットが期待されている一方で、法律や条例などの規制で従来の手順を変えられないという問題も表面化しているのも事実です。
アナログ規制緩和(見直し)とは
アナログ規制緩和(見直し)とは、文字通りアナログ規制を見直すことです。政府は、外国と比較して日本のデジタル技術の推進・活用が遅れている原因に「アナログ規制」を挙げています。デジタル庁が発表した資料によると、次のような点がデジタル化の遅れによる影響だとされています。
- 日本の実質GDPが2000年を100とした場合に2020年実質GDPが欧米諸国と比べ停滞しており、所得も伸びていない
- 少子高齢化の中、人口減少が今後進みあらゆる産業・現場で人手不足が進む恐れがある
法令などの規制により、アナログ的な構造が維持されたままであるため、こうした構造を見直してデジタル化の力を最大限発揮し経済成長を実現することを目的としたものが、アナログ規制緩和(見直し)です。
そこで、デジタル庁は2021年に「デジタル臨時行政調査会」を設置し、デジタル社会の実現を目指した構造改革に取り組んできました。具体的には、「これまでにない3つの特徴」を持つ規制改革の実施を掲げています。(※1)
- 「点の改革」だけでなく「面の改革」も:個々の規制を見直すだけでなく、横断的な見直しを実施する
- 「要望ベースの改革」だけでなく「テクノロジーベースの改革」も:個別の要望への対応以外にも、「技術力の向上」も念頭に置いた見直しを実施する
- 「現在の改革」だけでなく「将来の改革」も:現在の法令の見直しだけでなく、将来の法令がその時代の技術に適合できるような仕組みを構築する
その後も、デジタル臨時行政調査会が2022年6月に「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」(※1)を策定して、具体的にアナログ規制の見直しを進める方針を発表しました。さらに、2022年12月には、デジタル庁がさまざまなアナログ規制の該当する法令9669条項を2024年6月までに見直す方針と工程表を取り決めるなど、多くの取り組みが行われています。
現在の進捗は以下で解説するので、ぜひ参考にしてください。
※1 出典:”デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン”.デジタル庁 デジタル臨時行政調査会.2022-6(参照 2024-8-27)
アナログ規制緩和(見直し)によるコスト削減効果
デジタル化によって、コスト削減や業務効率化などのメリットが期待されています。では、アナログ規制緩和(見直し)によるコスト削減効果はどれほどの影響をもたらすのでしょうか。
デジタル庁の発表によると、アナログ規制の見直しにより約2.9兆円のコスト削減効果、約9,000億円の市場拡大効果、結果的に日本のGDPは約3.6兆円のプラスになると推計されています。(※2)
※2 出典:“アナログ規制の見直しによる経済効果(中間報告)”.デジタル庁,p-11.2023-8(参照 2024-8-27)
アナログ規制緩和(見直し)の進捗状況
デジタル庁は、アナログ規制の該当する法令9669条項を2024年6月までに見直す方針と工程表を取り決めていますが、現在の進捗状況はどうなのでしょうか。
公表されている最新の情報(2024年6月14日時点)によると、次のような取組状況です。(※3)
- 見直しが必要な規制:6405件
- 2024年6月14日時点で見直し完了:4365件
- 今後見直しを行う規制:2042件
※3 出典:“アナログ規制見直しの取組状況(2024年6月14日時点)”.デジタル庁.2024-6-14(参照 2024-8-27)
アナログ規制緩和(見直し)が行われる7項目
規制緩和(見直し)が行われるのは、次の7項目です。(※1)
目視規制 | 人が現地で施設や設備、状況が法令等の定める基準に適合しているかどうかを、目視で判定することや、動向・実態などを目視で明確化すること、人・機関の行為が遵守すべき義務に違反していないか、設備・施設の状態等について一定期間、常時注目することを求めている規制 |
実地監査規制 | 人が現場で施設や設備、状況等が法令等が定める一定の基準に適合しているかどうかを、書類・建物等を確認することで判定することを求めている規制 |
定期検査・点検規制 | 施設や設備、状況等が法令等が定める一定の基準に適合しているかどうかを、一定の期間に一定の頻度で判定することや、実態動向・量等を一定の期間に一定の頻度で明確化することを求めている規制 |
常駐・専任規制 | 事業所や現場に常に留まる(物理的に)ことや職務の従事や事業所への所属等について、兼任せず、専らその任にあたることを求めている規制 |
対面講習規制 | 国家資格等の講習をオンラインではなく対面で行うことを求めている規制 |
書面掲示規制 | 国家資格等、公的な証明書等を対面確認や紙発行で、特定の場所に掲示することを求めている規制 |
往訪閲覧縦覧規制 | 申請に応じて、またはは申請によらず公的情報を閲覧・縦覧させるもののうち、公的機関等への訪問が必要とされている規制 |
アナログ規制緩和にともない、既存のアナログ規制の類型において、次のようなデジタル技術を活用することで代替できると考えられています。
目視規制 | ドローンやモバイルカメラ、ロボットなどで代替AI(人工知能)や画像解析の活用 |
実地監査規制 | センサーなどで常時観察、異常時には自動通知する |
定期検査・点検規制 | 定点カメラやセンサーでのリモートチェック |
常駐・専任規制 | テレワークを利用可能にする |
対面講習規制 | インターネットなどで代替する |
書面掲示規制 | オンライン講習も利用可能にする |
往訪閲覧縦覧規制 | 許可申請や書類閲覧のオンライン化 |
※1 出典:”デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン”.デジタル庁 デジタル臨時行政調査会.2022-6(参照 2024-8-27)
アナログ規制緩和(見直し)によるメリット・懸念点
アナログ規制緩和(見直し)によるメリットや懸念点を解説します。
メリット
アナログ規制緩和(見直し)によるメリットとしては、次のようなことが挙げられます。
- 業務効率化や利便性の向上
- コスト削減
- 人手不足解消
- アクセス領域の拡大
- 安全性向上
アナログ規制緩和(見直し)により、これまでは人力でしか行えなかった作業をIT技術やドローンなどを使って行えるようになります。結果として、省人化が進んで業務効率化や利便性が向上するとともに、アクセスの難しかった場所へアクセスできるようになったり、作業の安全性が向上したりするでしょう。
懸念点
アナログ規制緩和(見直し)における懸念される点は、次のとおりです。
- デジタル格差の拡大
- データ漏洩リスク
- 雇用と労働市場の変化
デジタル技術を使わなければメリットを享受できないため、高齢の方などデジタル文化に馴染みのないひとは緩和による恩恵を受けられない可能性があります。さらに、個人・企業データが多くの場所で保管・共有されるようになるため、情報漏洩リスクも増加する恐れがあるでしょう。
また、職種によっては雇用が減る可能性が考えられるほか、新たな技術の習得が必要になるケースもあります。
アナログ規制緩和(見直し)による各業界に与える影響
アナログ規制緩和(見直し)による各業界における影響を解説します。
建設業
建設業界には、次のような課題があります。
- 労働環境の過酷さ
- 長時間労働であるにもかかわらず賃金が上がりにくい
- 高齢化の進行
- 人手不足
- 新たな制度への対応
アナログ規制緩和(見直し)には、そうした課題である人手不足や現場の効率化につながる規制緩和も盛り込まれています。なかでも建設業に影響がある項目が、「目視規制・実地監査」「常駐専任」です。
目視規制・実地監査には、「検査・点検・監査」「調査」「巡視・見張」の3つの業務が含まれており、これらは原則、人が現地で現場の状況を目視することが求められていました。それがアナログ規制緩和(見直し)で、カメラやドローン、スマートフォンによる確認が認められるようになります。
ほかにも、次のような業務で遠隔からの現場確認が行えるようになるでしょう。
- 公共事業における材料確認・段階確認・立会などの業務
- 橋梁・トンネルなどの道路構成施設の点検
- 太陽光発電所の月次点検を遠隔チェック・遠隔測定 など
また、現場を監督する立場にある人の常駐・専任義務についても影響があるかもしれません。公共工事では、適正な施工の観点から、主任技術者や監理技術者を現場に専任で配置する必要があります。さらに、現場全体の管理を行う現場代理人を常駐させることも必要です。
今回のアナログ規制緩和(見直し)では、遠隔からカメラを利用して現場を管理することが認められ、常駐・専任義務が緩和されます。そのため、これまでのように現場に常にいなくても管理できるようになるほか、1人の監督者が複数の現場を管理することも可能になるでしょう。
ただし、遠隔から現場管理するには、現場の人々がデジタルツールを使いこなすことが求められます。デジタルツールを導入する場合には、現場の人間が使いやすいものを選定することが重要です。
製造業
製造業におけるアナログ規制緩和(見直し)で該当するのは、「目視規制」「実地監査規制」「定期検査・点検規制」「常駐・専任規制」の4項目です。
それらにより多くの業務プロセスが遠隔で可能になり、コスト削減・作業効率向上・品質向上が期待されます。デジタル技術の活用で得られる主な効果は、次の3点です。
■メンテナンスと修理
これまでは、機械や設備が故障した際に現地に技術者が行って修理を行う必要がありました。IoT技術を活用すれば、リアルタイムに機器からデータを収集・分析し、遠隔地からでも状態を把握して対処が可能です。また、常に状況を把握しておけるため、故障の防止にもつながります。
■品質検査
従来、製品の品質検査においても直接検査員が製品を目視や手作業で検査していました。デジタル化で画像認識技術を用いた自動検査システムが導入されれば、リモートで高速かつ高精度な検査が可能になるでしょう。同時に、人的ミスの削減や作業効率の向上が見込まれます。
■研修とトレーニング
新入社員教育や技術研修なども対面形式での実施で、場所や時間の制約が常にありました。オンライン研修が導入されれば、ビデオコンテンツの視聴やVR教材を使用した実践的トレーニングをどこからでも受講可能です。時間や場所にかかわらず受けられるため、効率的かつ柔軟な人材育成も実現できるでしょう。
遠隔巡視にはクラウドカメラの導入が効果的
アナログ規制緩和(見直し)において、ITツールを用いた遠隔巡視は業務効率化、人手不足解消へ役立ちます。そこでおすすめなのが、「Safie(セーフィー)」のクラウドカメラです。
「Safie」とは、カメラで撮影した映像をクラウド上に録画・視聴できるサービスで、高画質で鮮明な映像をパソコンやスマートフォンなどデバイスを問わず、いつでも視聴できます。さらに、建設現場や工場内などに設置した複数のカメラ映像を一括管理することも可能です。
また、最新の暗号化技術が用いられているため、情報漏洩や不正アクセス、データ破損といった心配もありません。アナログ規制緩和(見直し)にともなう遠隔巡視には、クラウド録画サービス「Safie」の導入をぜひご検討ください。
クラウドカメラを活用してアナログ規制緩和(見直し)に対応しよう
アナログ規制とは、デジタル化を妨げる社会制度・ルールのことです。そうしたアナログ規制を緩和(見直す)ことをアナログ規制緩和(見直し)といいます。業務効率化や利便性の向上、コスト削減、人手不足解消などが、アナログ規制緩和(見直し)のメリットです。
また、アナログ規制緩和では既存のアナログ規制の類型において、ドローン・モバイルカメラ・ロボット・定点カメラ・センサーなどのデジタル技術を活用することで代替できると考えられています。
なかでも、アナログ規制緩和(見直し)にともなう遠隔巡視では、クラウドカメラの導入が有効です。高画質な映像をいつでもどこからでも視聴でき、複数のカメラ映像の一括管理もできます。アナログ規制緩和(見直し)への対応を検討中であれば、Safieを導入してみてはいかがでしょうか。
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