スーパーマーケットは人々の生活に欠かせない存在のため、スーパーマーケット業界は高い需要が期待できる産業です。しかし、ネットショッピングが普及したことで、店舗に直接足を運ばなくても気軽にさまざまな商品を購入できるようになり、スーパーマーケット業界の将来に不安を感じるという声も聞かれます。
この記事では、スーパーマーケット業界の概要や近年の動向、業界が抱える課題について解説します。
目次
スーパーマーケット業界の概要
スーパーマーケットとは、食料品・日用品・家庭用品などを中心に取り扱う小売りの業態です。時代の変化にともない消費者のニーズが多様化したことで、近年はさまざまな形態の店舗が増えてきています。
スーパーマーケット業界を構成しているのは、「製造業者・生産者」「卸売業」「スーパーマーケット」です。製造業者・生産者から卸売業へ商品が出荷され、卸売業からスーパーマーケットに商品が卸されることで、消費者にさまざまな商品が届けられる仕組みになっています。
まずはスーパーマーケットの種類や取扱商品など、スーパーマーケット業界に関する基礎的な情報について見ていきましょう。
スーパーマーケットの定義
そもそもスーパーマーケットはどのように定義づけされているのでしょうか。厚生労働省は、スーパーマーケット業を「食料品を中心に、一部の家庭雑貨も品揃えし、低価格・低マージンで部門別管理を行い、セルフサービスで販売する業態」と定義(※1)しています。
また、2024年に「日本標準産業分類」が改定され、「5811 食料品スーパーマーケット」が新設されています。総務省の「日本標準産業分類 第14回改定の概要(※2)」において、「食料品スーパーマーケットは消費者の利用頻度が高いため、非常時には国民へ必要不可欠な食品の安定供給を担う重要な産業」とされていることからも、新設される運びになったのでしょう。
※1 出典:“スーパーマーケット業”. 厚生労働省. (参照 2024-07-25)
※2 出典:“日本標準産業分類 第14回改定の概要”. 総務省. (参照 2024-07-25)
スーパーマーケット業界の市場規模
スーパーマーケットの市場規模についても詳しく見ていきましょう。「2024年版 スーパーマーケット白書(※3)」によると、全国のスーパーマーケット数は約23,000店舗です。前年から50店舗増加しており、そのうち中型店舗は約16,000店舗と、全体の約7割を占めています。
2023年の販売総額は約25.5兆円で、3年ぶりに既存店ベースで前年販売額を上回りました。特に伸び率が高かったのは「日配カテゴリ」と「惣菜カテゴリ」です。また、企業数890社のうち、売り上げ規模50億までの企業が全体の約4割を占めています。
店舗数は年々増加傾向にあり、食料品や日用品の需要がなくなることは考えにくいため、今後も市場規模の維持・拡大が期待できるでしょう。
※3 出典:“2024年版スーパーマーケット白書”. 一般社団法人 日本スーパーマーケット協会. 2024-02-07(参照 2024-07-30)
スーパーマーケットの主な種類
スーパーマーケットは以下のようにさまざまな形態があり、それぞれ特徴が異なります。
店舗 | 特徴 |
---|---|
スーパーマーケット(SM) | 食料品や日用品を中心に取り扱っている |
総合スーパーマーケット(GMS) | 食料品や日用品だけでなく、衣料品や家電なども取り扱っている |
業務用スーパー | 業務用食品を取り扱っている |
高級スーパー | 高級な商品を取り扱っている |
ディスカウントストア | 商品を低価格で販売している |
ネットスーパー | インターネット上で商品を注文できる |
近年、注目が高まってきているのがネットスーパーです。インターネットの普及や大規模感染症の影響によって、オンラインショッピングの需要が増加したことを背景に、ネットスーパーを展開する企業が増えてきています。
スーパーマーケットの取扱商品と利益構造
スーパーマーケットの取扱品目は、青果をはじめとする9つに分類されています。なかでも「青果・水産(鮮魚)・畜産(精肉)」で構成されている「生鮮3部門」は、スーパーマーケットの中心品目です。「2024年版 スーパーマーケット白書(※3)」によると、生鮮3部門の売り上げは全体の約4割を占めていることがわかります。ただし、販売額の伸び率はあまり高くはなく、相場高騰の影響によって全体的に伸び悩んでいるのが現状です。
スーパーマーケットは、商品の仕入れ値を原価とし、原価と売価の差額で利益を得ています。商品を販売することで見込まれる利益は「利益率」と呼ばれており、利益率は品目によってさまざまです。
スーパーマーケットの場合、惣菜や水産などの品目の利益率は、比較的高く設定されています。これらの品目は加工するための人件費が多く必要となり、利益率を高めに設定しなければ十分な利益を確保できないためです。店舗の収益を上げるには、適切な原価管理や人件費管理が求められるでしょう。
※3 出典:“2024年版スーパーマーケット白書”. 一般社団法人 日本スーパーマーケット協会. 2024-02-07(参照 2024-07-30)
スーパーマーケット業界をめぐる近年の動向
「日本標準産業分類」の改定により、スーパーマーケット業界は重要な産業として位置づけられました。このほかにも、スーパーマーケット業界を取り巻く環境にはさまざまな動きがあるため、業界自体の将来性は高いと考えられるでしょう。
ここからは、スーパーマーケット業界をめぐって具体的にどのような動きがあるのか解説していきます。
総売上高は増加傾向にある
「2024年版 スーパーマーケット白書(※3)」によると、スーパーマーケットの2023年の年間総売上高の前年比は、全店ベースで103.7%となっています。2021年は大規模感染症の感染拡大の影響を受けた前年の反動に加え、自粛生活の緩和などにより、小幅なマイナスを記録したものの、ここ数年は増加傾向にあります。なかでも日配カテゴリは前年比106.5%と高い伸び率を示しています。
日配カテゴリが高い伸び率を示した理由としては、相次ぐ値上げによる客単価の上昇が考えられます。値上げがあったにもかかわらず買上点数の減少幅が小さかったことが、売上高が増加した要因だと考えられるでしょう。
※3 出典:“2024年版スーパーマーケット白書”. 一般社団法人 日本スーパーマーケット協会. 2024-02-07(参照 2024-07-30)
業界全体の約8割がプライベートブランドを販売
近年のスーパーマーケット業界はプライベートブランドに注力している企業が多く、プライベートブランドを扱う割合は全体の約8割を占めています。プライベートブランドとは、企業が独自に企画・販売する商品のことです。自社開発のためコストを低く抑えることができ、ほかのスーパーマーケットにはない商品のため、他社との差別化を図ることが可能です。
さまざまな商品がプライベートブランドとして販売されていますが、「2024年版 スーパーマーケット白書(※3)」によると、調味料と冷凍食品は特に購入される割合が高くなっていることが見て取れます。相次ぐ値上げによって、比較的低価格なプライベートブランドを手に取る消費者が増えたといえます。
なお、プライベートブランドを購入する理由として、「多少品質が低下しても、安いほうがよい」と答えた割合はもっとも低い結果となりました。このことから、消費者はプライベートブランドに安さだけでなく品質のよさも求めており、高品質なプライベートブランドへのニーズも上昇しているといえるでしょう。
※3 出典:“2024年版スーパーマーケット白書”. 一般社団法人 日本スーパーマーケット協会. 2024-02-07(参照 2024-07-30)
キャッシュレス決済の比率が上昇
2019年10月に実施されたキャッシュレス・ポイント還元事業や、その後の大規模感染症の拡大などにより、キャッシュレス決済の比率は上昇しています。
「2023年版 スーパーマーケット白書(※3)」によると、全国スーパーマーケット協会が2022年に実施した調査において、「前年に比べクレジットカードによる決済が増加した」と回答したスーパーは56%を占めました。また、「電子マネー・QRコード決済が増加した」と回答したスーパーは75%と、キャッシュレス決済は大幅な拡大を見せていることがわかります。
※3 出典:“2024年版スーパーマーケット白書”. 一般社団法人 日本スーパーマーケット協会. 2024-02-07(参照 2024-07-30)
物価上昇によりスーパーマーケットの利用率が増加
「2024年版 スーパーマーケット白書(※3)」によると、以前より利用が増えた買い物先は、すべてのカテゴリにおいて「スーパーマーケット」がもっとも多くなっています。ドラッグストアやコンビニなどと比較して、品ぞろえの豊富さにおいて優っている点が、利用率が増加した要因といえそうです。
また、内食化による食品の家庭内需要の高まりなどにいち早く対応して消費者の支持を集められたことも、利用率の増加に影響していると考えられるでしょう。
※3 出典:“2024年版スーパーマーケット白書”. 一般社団法人 日本スーパーマーケット協会. 2024-02-07(参照 2024-07-30)
セルフレジの利用率は全体の約3割
近年ではセルフレジを導入する店舗が増えてきていますが、それでもまだ普及率が高いとはいえません。「2024年版 スーパーマーケット白書(※3)」によると、セルフレジの設置率は全体の31.1%、セルフ精算レジの割合は78.2%となっています。性年代別では、30代~50代の女性の利用率と評価が高いです。
約6割の消費者がセルフレジやセルフ精算レジを評価しているため、今後もセルフレジの普及率は高まっていくことが予想されます。
※3 出典:“2024年版スーパーマーケット白書”. 一般社団法人 日本スーパーマーケット協会. 2024-02-07(参照 2024-07-30)
スーパーマーケット業界が抱える4つの課題
売上高が増加しており、好調に見えるスーパーマーケット業界ですが、以下のような課題も抱えています。
- 原価高騰によるコスト上昇
- 環境問題への取り組み
- 物流の2024年問題
- 人手不足の慢性化
それぞれの課題について、詳しく見ていきましょう。
原価高騰によるコスト上昇
昨今の世界情勢の影響を受け、小麦価格や運輸コストなどは年々上昇しています。これらのコストが上昇すれば商品の値上げは避けられず、さまざまな商品を比較的低価格で提供しているスーパーマーケットとしては大きな痛手です。
消費者は価格上昇に敏感で、なるべく安い店舗で購入したいという意識が強いといえるため、必然的に価格競争も激化してしまいます。だからといって他店舗よりも価格を下げてしまえば粗利益率が悪化することから、どちらにせよスーパーマーケットとしては厳しい状況といえるでしょう。
さらにスーパーマーケットを悩ませているのが、水道光熱費の高騰です。スーパーマーケットは温度管理が必要な商品を多く取り扱っているため、水道光熱費の高騰は収益に大きな影響を及ぼします。これらの環境変化は、規模が小さく利益率が低めな中・小規模店舗ほど大きな影響となるでしょう。
環境問題への取り組み
環境問題への取り組みはスーパーマーケットにも求められています。「2024年版 スーパーマーケット白書(※3)」によると、食品トレーの店舗改修を行うスーパーマーケットは全体の約8割強を占めていることがわかります。スーパーマーケットが行う取り組みはこれだけではなく、包装の簡素化やマイバック運動によるレジ袋の削減なども推進しています。
値引きによる売り切り推進や販売期限の見直しなど、食品ロス削減の取り組みも実施されており、スーパーマーケット業界は環境問題への意識が非常に高いといえるでしょう。
※3 出典:“2024年版スーパーマーケット白書”. 一般社団法人 日本スーパーマーケット協会. 2024-02-07(参照 2024-07-30)
物流の2024年問題
2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限が規制されたことにより、輸送能力が不足し、モノが運べなくなる可能性が懸念されています。これがいわゆる「物流の2024年問題」です。卸売業者からさまざまな商品を卸しているスーパーマーケットにとって、物流の2024年問題により受ける影響は非常に大きいです。「2024年版 スーパーマーケット白書(※3)」でも、約8割のスーパーマーケットが「影響を受ける」と回答しています。
業界大手を中心に、加工食品の配送の負担軽減が進められているものの、物流の2024年問題によって大きな影響を受けることは避けられないでしょう。
※3 出典:“2024年版スーパーマーケット白書”. 一般社団法人 日本スーパーマーケット協会. 2024-02-07(参照 2024-07-30)
人手不足の慢性化
現在のスーパーマーケット業界は、少子高齢化による人手不足が問題視されています。正社員・アルバイトともに不足傾向にあり、業務効率化を図るために人員を減少させる「省人化」を進めている店舗も少なくありません。
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スーパーマーケットの課題解決に向けた取り組みを図ろう
スーパーマーケット業界は需要が安定しており、総売上高も増加傾向にあります。しかし、原価高騰によるコスト上昇や人手不足の慢性化など、無視できない課題もいくつか抱えているのが現状です。
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