小売業が生産性向上・効率化を行うポイントとは?原因から対策まで解説

小売業の効率化 ポイントや手法

生産性は、かけたコストに対してどれだけの成果を得られたかを示す指標です。生産性が高ければ同じコストでもより多くの成果を得られるため、生産性の向上は企業にとって大きな意味を持ちます。しかし、日本の小売業は生産性が低いといわれており、生産性を向上させるには小売業が抱えている課題を解決しなければなりません。

この記事では、小売業の生産性の状況や生産性が低い・上がらない原因について解説します。生産性を向上させるための対策も紹介するので、小売業の生産性向上をめざす際の参考にしてください。

日本の小売業における生産性の状況

生産性とは、労働投入量1単位あたりの産出量・産出額を表すものです。従業員1人あたり、または1時間あたりにどれだけの成果を生み出せたかを示します。企業にとっては、できる限り少ない投入量で効率的に産出することが重要です。そのため、多くの企業が生産性の向上に取り組んでいます。

生産性には「労働生産性」と「人時生産性」の2種類があり、小売業はどちらの生産性もほかの業種と比べて低めです。中小企業庁の「中小小売業・サービス業の生産性分析(※1)」によると、労働生産性・人時生産性ともに製造業や宿泊業を下回る結果となっています。

これらの生産性はそれぞれどのような指標なのか、詳しく見ていきましょう。

※1 出典:“中小小売業・サービス業の生産性分析”.中小企業庁.2021−6(参照 2024-7-30)

労働生産性

労働生産性とは、従業員1人あたりまたは1時間あたりの労働量に対する成果の指標です。農林水産省の「卸売業・小売業における働き方の現状と課題について(※2)」によると、飲食料品小売業の労働生産性は、全産業、食料・飲料卸売業と比べ低い傾向にあります。具体的には、全産業が1人あたり約870万円、食料・飲料卸売業が1人あたり約800万円なのに対し、飲食料品小売業は1人あたり約350万円です

ほかの業種と比べて明確な差があるため、従業員の業務・作業負担の改善や、労働時間の効率化などの対策を講じる必要があるでしょう。

※2 出典:“卸売業・小売業における働き方の現状と課題について”.農林水産省 食料産業局,p-5.2018−2-21(参照 2024-7-30)

人時生産性

人時生産性とは、1人の従業員が1時間働くことで生み出す利益(時間あたりの労働生産性)を表す指標です。「中小小売業・サービス業の生産性分析(※3)」によると、製造業と比べて、小売業を含む非製造業の人時生産性は低い傾向にあります。具体的には、製造業が1時間あたり2,837円なのに対し、小売業は1時間あたり2,444円です

労働生産性ほどの差は生まれていないものの、改善が必要であることに変わりはありません。人時生産性を上げるには、作業にかかる時間を減らす、もしくは1時間で生み出せる粗利を増やす必要があります。

※3 出典:“中小小売業・サービス業の生産性分析”.中小企業庁,p-2.2021−6(参照 2024-7-30)

日本の小売業の生産性が低い・上がらない原因

日本の小売業の生産性が低い・上がらない原因としては、以下の4つが考えられます。

  • 慢性的な人手不足が起きている
  • 中小企業の割合が高い
  • 業務の属人化を防げていない
  • 経営者や店長がコストを把握していないことがある

それぞれの原因について、詳しく見ていきましょう。

慢性的な人手不足が起きている

少子高齢化によって生産年齢人口が減少傾向にあることで、小売業における人手不足が問題視されています。長時間労働や休日の取りづらさ、低賃金なども相まって、改善される見通しは立っていないのが現状です

人手不足によってスタッフ一人あたりの負担が増えてしまい、離職者が増加したことが、生産性が低い・上がらない原因といえるでしょう。このような人手不足を少しでも補うために、パートタイム労働者や外国人労働者を積極的に雇用している企業も見られます。

中小企業の割合が高い

中小企業の割合が高い点も、小売業の生産性が低い原因のひとつといえます。小売業に限らず日本は中小企業の割合が非常に高く、日本の全企業のうち99.7%が中小企業です。

中小企業は大企業と違い、大量に商品を仕入れて安く販売することが難しく、投資の予算も不足しています。そのため、従業員の賃金をなかなか上げられず、生産性の向上に難航しています。

業務の属人化を防げていない

属人化とは、特定の個人しか業務の実態や進捗状況を把握できていない状態のことです。属人化している業務が多いと、担当者不在の場合は作業の進め方や対応方法がわからず、企業の経営全体に影響が及ぶ場合があります。担当者によって業務の質に差が生じやすくなるため、業務の再現性を損なってしまう点も無視できません。

属人化は、「業務が忙しい」「情報共有の仕組みが不十分」などの要因によって、従業員同士のコミュニケーションが不足している場合に発生する傾向にあります。詳しくは後述しますが、属人化を解消するには、業務の標準化が効果的です。業務の質に差が出ないよう業務の標準化を進めていけば、生産性の低下をある程度おさえられるでしょう。

経営者や店長がコストを把握していないことがある

小売業では、経営者や店長が店舗にかかるコストを把握していない場合があります。売上や原価、粗利はしっかり意識していても、コストをあまり意識していない経営者や店長は思いのほか多いようです

売上総利益を算出する際の売上原価には、商品・サービスを提供するためにかかったコストも含まれます。そのため、コストを把握していない状態では正確な売上を算出できません。

たとえばアルバイトと正社員が同じ業務を行う場合、基本的には給与が低いアルバイトに任せるほうが生産性は向上するでしょう。経営者や店長はコスト意識を高め、生産性が向上するような業務の割り振りを行うことが大切です。

小売業が生産性を向上させるための対策方法

小売業の生産性の状況は、あまりよいとはいえません。生産性の向上をめざすには、以下のような対策を実施するとよいでしょう。

  • 現在の業務内容・コスト・所要時間を確認する
  • DX化・IT化・AIの導入を進める
  • 商慣習の見直し・改善を行う
  • 業務の標準化を進める

それぞれの対策方法について、詳しく解説します。

現在の業務内容・コスト・所要時間を確認する

業務内容とそこに費やしているコスト・所要時間は、きちんと把握するようにしましょう。これらをしっかりと把握し、フローや手段の改善を行うことで、生産性向上を見込める部分が見つかる場合があります。

とくに、業務内容の把握・見直しは大切です。日本企業は世界的に見ても労働時間が長い傾向にあるため、業務内容を見直し、無駄な作業を削減できれば、労働時間の改善につながる可能性があります。業務が一部の従業員に偏っていないかも確認し、偏りが判明した場合は業務の再分配も検討するとよいでしょう。

DX化・IT化・AIの導入を進める

DX化・IT化・AIの導入推進も、生産性の向上に効果的です。キャッシュレス決済や電子レシートなどを導入して業務の効率化・自動化を行えば、従業員の負担が軽減され、生産性の向上を図れます。業務の効率化によって労働環境が改善されれば、労働時間の改善も期待できるため、従業員同士の情報共有もしやすくなるでしょう。

また、AIの導入もおすすめです。AIを活用して売上や需要を予測すれば、過不足のない最適な在庫管理を実現できます。近年では、AIを搭載したクラウドカメラも登場しており、これらの映像を業務効率化に活用することも可能です。

商慣習の見直し・改善を行う

3分の1ルールの緩和のように、非効率な商慣習の見直しを行えば、業務の効率化につながる可能性があります。3分の1ルールとは、商品を賞味期限の3分の1以内に小売店に納入しなければならないという商慣習です。消費者にとってはメリットですが、小売側としては食品ロス問題の原因になるため、ルールを緩和するべく多くの企業が取り組んでいます。

このような動きに合わせて、中小企業も商慣習の見直し・改善を行っていけば、業務の効率化につながるでしょう。

業務の標準化を進める

業務の標準化を進めれば、属人化を防げます。誰もが安定して同じ作業をこなせるようになり、品質を一定に保つことが可能です。

業務の標準化を進める際は、既存のマニュアルを整備したり、新たなマニュアルを作成したりするとよいでしょう。業務の手順が詳細に記されているマニュアルの確認を徹底すれば、従業員間で業務の質を統一しやすくなります。内容がわかりやすいマニュアルを作成すれば、新入社員でも短期間で戦力として計算できるようになるでしょう。

できることから始めて小売業の生産性向上をめざそう

日本の小売業は、慢性的な人手不足や業務の属人化などによる生産性の低下が問題視されています。生産性を向上させるための手段としてはさまざまな方法が考えられます。業務の内容の見直しやDX化・AIの導入、業務の標準化などを進めていくとよいでしょう

AIを推進する際は、AIを搭載したカメラの導入がおすすめです。AIを搭載したカメラは分析機能が備わっているため、撮影した映像を解析すれば業務の効率化が期待できます。今回紹介した対策方法を実践して、小売業の生産性向上をめざしてみてください。

AIカメラSafie One
かしこくなるAIカメラ「Safie One」
エッジAIを搭載し、計測・検知を行うことで映像解析をより便利にします。

※ セーフィーは「セーフィー データ憲章」に基づき、カメラの利用目的別通知の必要性から、設置事業者への依頼や運用整備を逐次行っております。
※当社は、本ウェブサイトの正確性、完全性、的確性、信頼性等につきまして細心の注意を払っておりますが、いかなる保証をするものではありません。そのため、当社は本ウェブサイトまたは本ウェブサイト掲載の情報の利用によって利用者等に何らかの損害が発生したとしても、かかる損害については一切の責任を負いません。