近年の測量業界では、ドローンを活用した測量方法の注目が高まってきています。ドローンによる測量は、従来の人力測量にはない多くのメリットがあり、測量の効率化を実現できます。
この記事では、ドローンによる測量とはどのようなものか、写真測量とレーザー測量の違いや導入費用を交えながら解説します。測量の手順も紹介するので、ぜひ最後までご覧いただき、ドローンによる測量を導入する際の参考にしてください。
目次
ドローンによる測量の種類
ドローンによる測量は、「写真測量」と「レーザー測量」の2種類です。これらはどのような測量方法なのか、詳しく見ていきましょう。
写真測量
写真測量は、光学カメラを利用した測量方法です。あらかじめ測量機を用いて測定した地上の基準となる点「グラウンドコントロールポイント(GCP)」と光学カメラで撮影した写真をつなぎ合わせて測量を行います。基本的に光学カメラはドローンに搭載されているため、ドローン以外の機材を用意する必要はありません。そのため、後述するレーザー測量よりも測量にかかる費用をおさえられますが、正確性ではレーザー測量に分があります。特に樹木が多い現場では、木々や草が障害物になってしまうので正確な測量は困難です。
また、撮影した写真は複数の画像を組み合わせることで、歪みやズレを補正した「オルソ画像」に加工できます。オルソ画像は現地の地形を正確に把握できるため、測量作業の効率化を図れるでしょう。
レーザー測量
レーザー測量は、ドローンからレーザーを照射して地形情報を取得する測量方法です。ドローンにレーザー測距装置を搭載し、地表から反射されたレーザーとGCPから得られる位置情報をもとに測量を行います。レーザーは写真よりも多くの情報を取得できるため、精密な測量が可能です。起伏が多かったり、樹木が多かったりする土地でも、レーザー測量なら高精度な測量を実現できます。ただし、レーザー測距装置が必要な分、写真測量よりも必要な費用は高額です。
また、レーザー測量にはグリーンレーザー測量と呼ばれる測量方法も存在します。グリーンレーザーは水の影響を受けづらく、水底まで到達する特殊なレーザーなので、水陸両用のデータを同時に取得可能です。
ドローンによる測量に向いている現場
ドローンによる測量は、以下のような現場で真価を発揮します。
- 飛行機を使わない程度の広さのある現場
- 立ち入りが危険な災害現場
なぜこれらの現場に向いているのか、詳しく解説します。
飛行機を使わない程度の広さのある現場
ドローンによる測量は、飛行機を使わない程度の広さの現場が向いています。ドローンは飛行時間が短いため広範囲の現場では何度もバッテリーを交換しなくてはならず、逆に狭い現場では地上測量のほうが効率的な場合が多いためです。ドローンによる測量のよさを最大限発揮するためにも、現場の広さによって測量方法を適宜使い分けることをおすすめします。
立ち入りが危険な災害現場
人間が容易に立ち入れないような危険な災害現場は、ドローンによる測量が適しています。遠隔操作で安全に測量できるのはもちろんのこと、ドローンのサイズであればヘリコプターが着陸できない現場でも問題なく離着陸できるためです。立ち入りが危険な災害現場で、被害状況の把握や土地の安全性を評価する必要がある場合は、ドローンを使用して安全かつ迅速な測量を行いましょう。
ドローンによる測量のメリット・デメリット
ドローンによる測量には、さまざまなメリット・デメリットがあります。それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで、ドローンによる測量を導入するようにしましょう。
ドローンによる測量のメリット
ドローンによる測量は以下のようなメリットがあります。
- 作業時間やコストをおさえられる
- さまざまな現場を測量できる
- 3Dモデルを容易に作成できる
ドローンによる測量は、人力での測量よりも大幅に作業時間を短縮できます。ドローンの導入には初期費用が必要なものの、測量が難しい現場の場合は結果的にコストをおさえられるケースも多いです。立ち入りが難しい危険な現場でも、問題なく測量できる点もメリットでしょう。
また、ドローンで取得したデータは解析することで3Dモデルを容易に作成できます。そのため、高精度な測量を行ううえでドローンは心強い存在といえるでしょう。
ドローンによる測量のデメリット
ドローンによる測量には、以下のようなデメリットがあります。
- 飛行時間が短い
- 費用が割高になる場合がある
ドローンはバッテリーで稼働するため、飛行時間があまり長くありません。バッテリーの容量次第ですが、基本的に数十分ごとにバッテリーを交換する必要があります。また、条件次第では費用が割高になる場合があり、特にレーザー測量は高額な費用が必要になる場合が多いです。現場が狭い場合は、人力での測量も検討しましょう。
ドローンによる測量の手順
ドローンによる測量は以下の手順で実施されます。
- 現地調査(踏査)の実施
- ドローンの飛行ルートの作成
- グラウンドコントロールポイント(GCP)の設置
- ドローンによるデータ収集の実施
- 収集したデータを専用ソフトで解析
それぞれの手順で具体的にどのようなことを行っているのか、詳しく見ていきましょう。
1.現地調査(踏査)の実施
まずは現地調査を実施して、ドローンによる測量が可能な現場かどうかを確認します。障害物の有無も同時に確認して、写真測量とレーザー測量のどちらの方法を実施するのかも決めておきましょう。
2.ドローンの飛行ルートの作成
現地調査の結果をもとに、ドローンの飛行ルートを作成します。地図や専用のソフトウェアを活用して、現場に適した高度や飛行ルートを決めましょう。飛行ルートは測定方法やドローンの性能に左右されるため、正確な測量には正確なルート作成が必要です。ルート作成に不安がある場合は、経験者の助けを借りながら飛行ルートを作成するとよいでしょう。
3.グラウンドコントロールポイント(GCP)の設置
グラウンドコントロールポイント(GCP)とは、測量機を用いて測定した地上の基準となる点です。ドローンの正確な三次元位置を確認するために必要なため、高精度な測量を実現するためには設置が必須といえます。GCPの設置位置や寸法は「公共測量マニュアル」(※1)で定められているため、必ず確認するようにしてください。
ここまでの手順をすべて行えば、ドローンを飛ばすための条件が整います。
※1 参考:“UAVを用いた公共測量マニュアル(案)”.国土交通省 国土地理院.2017-3改正(参照 2024-7-12)
4.ドローンによるデータ収集の実施
作成した飛行ルートどおりにドローンを飛ばして、現場のデータを収集しましょう。ドローンは基本的に自動操縦ですが、現場の状況次第では手動操縦が必要になるケースもあります。そのため、自動操縦だからといって油断せず、ドローンの状況はモニターで随時確認するべきです。
ドローンによる測量が終わったら、必要なデータを収集できているかどうかをしっかり確認しましょう。データに問題があった場合は、再度ドローンを飛ばしてデータを再収集してください。
5.収集したデータを専用ソフトで解析
収集したデータは歪みやズレが生じている場合があるため、専用ソフトで解析する必要があります。データを解析することで、オルソ画像や点群データ、3Dデータなどを作成可能です。
なお、作成したデータが必ずしも正確とは限らないため、ドローン撮影時の座標値と作成したデータは必ず比較検討するようにしてください。
ドローンによる測量を導入するための費用の目安
ドローンによる測量は、自社で行う場合と外注する場合とで導入費用に差が生じます。具体的にどの程度の費用が必要なのか、詳しく見ていきましょう。
自社で行う場合
自社で行う場合、最低限必要なのはドローン本体とデータ解析用のソフトウェアの費用です。ドローン本体の費用は性能によりさまざまですが、最低でも20万円程度を目安にするとよいでしょう。ただし、レーザー測量を行う場合はドローンにレーザー測距装置を搭載しなければならないため、1,000万円以上の費用が必要な場合もあります。
データ解析用のソフトウェアは、永続(一括)ライセンスなら60万円程度、サブスクリプション型なら年間40万円程度が目安です。
外注する場合
外注する場合の費用目安は、写真測量なら100万円程度、レーザー測量なら300万円程度です。実際の費用は依頼先や現場の広さなどによって異なりますが、測量範囲が広いほど面積あたりの単価が安くなる傾向にあります。自社で行う場合とは違い、導入費用や維持費用は一切かかりませんが、外注するごとに費用が発生するため、依頼回数が増えればトータルの費用は高くなってしまいます。ドローン測量の頻度や内容を踏まえたうえで、外注するかどうかを判断するとよいでしょう。
ドローンを活用して測量できる現場の幅を広げよう
これまで人力で行っていた測量作業は、ドローンを活用すれば効率よく行えるようになります。写真測量とレーザー測量の2種類があるため、両者の特徴をしっかりと把握したうえで現場に適した測量方法を選択するとよいでしょう。ただし、ドローンには少なからずデメリットも存在します。測量現場がドローンによる測量に適しているかどうか、確認することが大切です。
また、測量にかかる費用は自社で行うか外注するかで大きく異なります。さまざまな要素を踏まえたうえで、どちらを選択するかを決めましょう。
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