防犯カメラとプライバシーの関係。事業者が注意すべき設置のポイント

本記事では、防犯カメラの設置・運用を適切に行いたい事業者さまに向けて、防犯カメラ画像の取り扱いに注意が必要な背景や、導入の際に絶対に押さえておきたい注意ポイントをお伝えします。

防犯カメラの設置・運用には、個人情報保護法をはじめとする個人情報に関する諸法令やガイドラインなどの遵守に加え、プライバシーの観点からみた配慮事項が求められます。設置箇所周辺の生活者と丁寧なコミュニケーションを図り、生活者が安心安全に暮らせる環境づくりを目指しましょう。

セーフィーでは、クラウドカメラを設置する際のチェックリスト・掲示例を公開中です。ぜひご活用ください。
参考:クラウドカメラの設置におけるチェックリスト・掲示例

※本記事は2024年9月9日に公開されたものになります。最新の情報は官公庁の公式ホームページ等でご確認ください。
※本記事ではカメラを設置される方々を指して「事業者」と表記しております。また、セーフィーのクラウド録画サービスをご利用の場合、特定のオプション機能のご利用に応じて「個人情報保護法」において定義されている「個人情報取扱事業者」に該当する場合があります。

防犯カメラとプライバシー侵害の関係

人が写り込む画角での防犯カメラの設置・運用開始には、個人情報保護法等の関係法令の遵守に加え、写り込む人々、写り込む可能性のある人々のプライバシーへの配慮が必要不可欠です。このような配慮を必要とする理由は、映像が持つプライバシー性や常時映像を取得しているという防犯カメラの特徴のためです。

個人情報保護法等の関係法令との関係

そもそも個人情報とは?

個人情報とは、「生存する個人に関する情報で、次のどちらかに当てはまるもの」をいいます。

  • 氏名、生年月日、顔写真など、その人が誰かを特定できる情報
    他の情報と簡単に結びつけることができ、それによりその人が誰かを特定できる情報も含みます。
  • パスポート番号やマイナンバーをはじめとする、その情報単体からその人が誰かを特定できる情報
    マイナンバーなどの他には、DNAや声紋、指紋などの生体情報や、住民票コードなども個人情報に該当します。

人が写り込み個人を特定できる映像は個人情報になる

個人情報保護委員会が公表する「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」によると、「防犯カメラに記録された情報等本人が判別できる映像情報」は個人情報に該当するとされています。

そのため、防犯カメラでその人が誰か特定できる映像を撮影する場合は、個人情報を取り扱うことになります。

防犯カメラの設置・運用における個人情報保護法の遵守事項とは?

防犯カメラの運用において個人情報を取り扱う際には、個人情報保護法をはじめとする個人情報に関する諸法令やガイドラインに基づき、以下の点への対応が必要です。

利用目的の特定

事業者は、防犯カメラで撮影した映像を利用する目的をあらかじめ特定しなければなりません。

個人情報保護法では「個人情報を取り扱うに当たって、利用目的をできる限り具体的に特定しなければならない」(法第17条1項)とされており、顔などが写り込むことによってその人が誰か特定できる映像を撮影する場合、利用目的の特定が必要です。

防犯カメラで撮影した映像の利用目的としては、特定箇所での犯罪行為の抑止及び、犯罪行為発生時の状況確認のため、等が挙げられます。

取得に際しての利用目的の通知・公表

事業者が、防犯カメラでその人が誰か特定できる映像を撮影する場合は、個人情報保護法に基づき、特定した利用目的をあらかじめ公表しておくか、個人情報を取得する際に、速やかに本人に通知または公表する必要があります(法第21条)。

例:店舗に設置された防犯カメラ周辺に「万引き等の防止のため」というステッカーを貼るなど

ただし、防犯カメラの場合、設置等の状況から「防犯目的であることが明らか」であれば、利用目的の通知又は公表は不要とされています。

不正の手段による取得の禁止、不適正な利用の禁止

個人情報の不適正な利用や不正な手段による情報の取得は禁止されており、隠し撮りと受け取られるような状況は避けなければなりません。

例えば、写り込む可能性のある人々にとって防犯カメラで撮影されていることがわかりづらい場合には、「防犯カメラ作動中」の掲示をするなどして情報を適正に取得する必要があります。

前述の通り利用目的の通知又は公表が不要されている場合であっても、隠し撮りと受け取られるような防犯カメラの設置状況であれば、「防犯カメラ作動中」などの掲示を実施しましょう。これは、防犯目的のカメラであっても、写り込む人々にとって撮影されていることが理解できる状況を作ることが大切だからです。

(出典)個人情報保護委員会.“個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)”.個人情報保護委員会.2016-11.(参照2024-6-25)

防犯カメラの設置・運用はプライバシーへの配慮が必要

防犯カメラは防犯のために設置されるものであり、その効果も十分に認められています。同時に、防犯カメラには映像のプライバシー性や常に映像を取得するという特徴があるため、必然的にプライバシーへの配慮が求められます。事業者はこれを踏まえ、写り込む人々や写り込む可能性のある人々のプライバシーに配慮することが必要不可欠です。

防犯カメラの撮影に関する裁判での考慮要素

防犯カメラによる撮影がプライバシーや肖像権の侵害に当たるか否かは、撮影の場所・範囲、写り込む人々の社会的地位や撮影された活動内容、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性、撮影された画像の管理方法など諸般の事情を総合的に考慮し、その制約が社会生活上の受忍限度を超えるものか否かによって判断されます。

防犯カメラの撮影に関するものではありませんが、肖像権やプライバシーが争点となった過去の裁判例として、以下の判例が挙げられます。

人はみだりに自己の容ぼう,姿態を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有し,ある者の容ぼう,姿態をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍すべき限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。

裁判年月日平成17年11月10日民集 第59巻9号2428頁

(出典)最高裁判所判例集.“民集 第59巻9号2428頁”.最高裁判所.2017-11.10(参照2024-6-25)

防犯カメラで撮影を行う際には、以下の点について配慮が必要です。詳細は次章で解説します。

①写り込む人々の社会的地位、②撮影された活動内容、③撮影の場所・範囲、④撮影の目的、⑤撮影の態様、⑥撮影の必要性、⑦撮影された画像の管理方法などを考慮し、事業者は設置の際に生活者への配慮を怠らないようにしましょう。

(出典)個人情報保護委員会.“民間事業者向け カメラと個人情報保護法”.個人情報保護委員会.2023-12(参照2024-6-25)

事業者が努力すべき取り組み

防犯カメラは外から見ただけでは何が撮られているのか分かりにくいため、カメラ設置箇所周辺の生活者が安心して暮らせる環境づくりのために、事業者が主体となって透明性を高める取り組みをし、信頼を構築していきましょう。

防犯カメラの設置・運用に際して事業者が特に行いたいプライバシーの具体的な配慮事項とは?

以下では、防犯カメラの設置・運用に際して、事業者が特に行いたいプライバシーへの配慮事項をまとめています。

カメラ画像を利用する目的が正当であり、撮影の必要があるか確認する

前述の通り、まずは防犯カメラで撮影した映像を利用する目的をあらかじめ特定しましょう。すでに防犯カメラの利用目的を決定済みの場合には、その見直しを行いましょう。

防犯カメラとして設置をする場合、利用目的は「犯罪防止」であることが想定されます。利用目的に「特定の者の行動を監視すること」が含まれている場合、カメラに写り込む方のプライバシーを侵害しないような利用目的への更新を検討しましょう。

また、防犯カメラによる撮影が必要かどうかに関わる「撮影の必然性」があることを確かめるため、「防犯カメラ設置場所での犯罪行為の発生状況」を確認したり、「防犯カメラ設置以外の代替手段」を検討しましょう。

そして、防犯カメラに写り込む人々・写り込む可能性のある人々に対して、作動中であることがわかるような周知ができているか確認しましょう。防犯カメラの設置場所等によっては、写り込む人々が防犯カメラで撮影されていることがわかりづらい場合があります。そのような場合には、防犯カメラをわかりやすい位置に移設したり、防犯カメラが作動中であることをステッカーや文書を掲示したりして、写り込む人々が防犯カメラで撮影されていることがわかりやすい状態を作りましょう。

撮影の手段や利用の方法が相当であるか確認する

・プライバシーへの影響が過大であると判断される撮影はしない
・必要のない撮影範囲でのデータ取得はしない
・必要な期間外でのデータ保管はしない
・隠し撮りなどの撮影されていると認識できないような撮影方法を取らない
・生活者の情報を目的以外に容易に利用できてしまう状態で保管しない

生活者の同意を得ることなく長期間かつ広範囲にわたって追跡するといった撮影はプライバシーへの影響が大きすぎると判断されます。不要な範囲でのデータ取得や不要な期間でのデータ保管も行わないように気をつけましょう。

また、生活者がカメラで撮影されていることを、あえて認識できないような方法で撮影した場合(隠し撮り等)や、撮影した生活者の映像情報を目的以外に容易に利用できてしまう状態で保存する行為も行ってはいけません。

そのため、撮影の場所・範囲、写り込む人々の社会的地位や撮影された活動内容、撮影の目的、撮影の必要性、撮影の態様、撮影された画像の管理方法等をしっかりと確認して設置・運用しなければなりません。防犯カメラに写り込みたくない人が不利益を被ることの無いよう可能な限り配慮しましょう。

カメラに写り込みたくない方が不利益を被らないためにできる限り配慮すること

事業者が防犯カメラの設置・運用に際し、適切な運用を行い、生活者にとって安心・安全が得られる環境づくりをしていくためには、利用者や生活者との丁寧なコミュニケーションが重要になります。

防犯目的で設置・運用される防犯カメラの映像の取扱いについては対象として取り上げられておりませんが、「カメラ画像利活用ガイドブック」において、生活者への配慮については下記のようにまとめられています。

なお、法的に違法とされなくても、生活者のプライバシーリスクに適切に対応がされていないと生活者が判断すれば、いわゆる「炎上」を含め、技術やサービスは社会的に受容されない事態となり、企業自身の損失にもなり、技術や業界全体の信頼を毀損する可能性もある。プライバシーは個人の受け止め方の相違や、社会的な受容性が時間の経過やコンテキストによって変化し得るため、関係法令・規制の動向、国内外の判例・報道、新技術の動向や普及度合い、それに伴う社会的な受容(プライバシーに対する生活者の受け止め方)などの分析をしつつ、生活者の基本的な人格的な権利を損なうことのないよう、真剣に考えを尽くし、丁寧にコミュニケーションをとり、信頼関係を構築していくことが求められる。

(出典)IoT推進コンソーシアム・総務省・経済産業省.“カメラ画像利活用ガイドブック”.経済産業省.2022-3.30(参照2024-6-25)

生活者との丁寧なコミュニケーションについての具体例は下記をご参考ください。

・設置箇所周辺の生活者とのコミュニケーションを図る
・理解しやすい表現で説明や案内を行う
・連絡先を設け、問合せ・苦情を申し出ることができるようにしておく
・設置場所周辺の従業員も説明できるよう教育しておく
・時間をかけて丁寧にコミュニケーションを図る

(出典)IoT推進コンソーシアム・総務省・経済産業省.“カメラ画像利活用ガイドブック”.経済産業省.2022-3.30(参照2024-6-25)

最後に

本記事では、防犯カメラを設置・運用する事業者が注意すべきポイントについて、個人情報保護法や個人情報に関する諸法令やガイドラインなどの遵守に加え、プライバシーの観点からみた配慮事項をまとめました。

※本記事でご紹介してきた防犯カメラの利用に関する詳細は、個人情報保護委員会の発行する「カメラに関するQ&A 」をご参照ください。

セーフィーでは、犯罪や不正行為の防止、抑止にお役立ていただけるよう、クラウド録画サービスを提供しております。また、適切な利用目的の設定、通知公表の上、お客様満足度向上のための人員配置最適化等を目的に、セーフィーのクラウド録画サービスをご利用いただいている事例もございます。

セーフィーのデータガバナンスに関するこれまでの取り組みや、IoT推進コンソーシアム・総務省・経済産業省作成の「カメラ画像利活用ガイドブック」をもとに、セーフィーのクラウドカメラ利活用時において特に注意いただきたいポイントをまとめたページをご紹介します。以下のリンクからご確認ください。

>> カメラ画像の取り扱いについて – セーフィー株式会社


監修者
荒井慶介
セーフィー株式会社 ESG推進室 所属
上級個人情報保護士

2023年セーフィー入社。入社後はカスタマーサポート業務に従事。上級個人情報保護士の知見を用いて、カメラの利用目的別の配慮事項など、プライバシーガバナンス関連のお問い合わせ対応等の業務を担当しています。

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※ セーフィーは「セーフィー データ憲章」に基づき、カメラの利用目的別通知の必要性から、設置事業者への依頼や運用整備を逐次行っております。
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