人手不足のさらなる加速が予想されている日本では、各業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進展中です。建設業においても遠隔臨場が本格的に始まったほか、施工会社が積極的に新技術情報提供システム(NETIS)を活用してDXを推し進めていくことが求められています。
そうは言っても、NETISをまだ十分に活用できていない施工会社が多い状況です。そこでこの記事では、まずNETISという制度の目的や概要、そしてこれを活用することで施工会社が得られるメリットを詳しくお伝えします。その上で、NETISウェブサイトでの登録商品の探し方や必要な手続きなどを解説し、具体的なNETIS登録商品の例とその活用事例もご紹介します。
目次
NETISとは?制度の目的や概要、遠隔臨場の本格化との関連
NETISとは、New Technology Information System の頭文字を取ったもので、日本語では「新技術情報提供システム」と呼ばれます。その名のとおり、新技術に関わる情報を共有しその活用を促進することを目的として、国土交通省が運用しているデータベースシステムです(※参考:NETIS マニュアル/FAQ)。
一般的には、このデータベースを活用して新技術活用の検討プロセスの効率化や新技術活用時のリスク軽減を図り、有用な新技術が積極的に活用されるようにするための仕組み「公共工事等における新技術活用システム」の全体を指して、NETISという言葉が使われます。
2006年に始まったこの制度は、新技術を実際の公共工事などで活用してその効果を検証し、さらなる改良や技術開発につなげることで、新技術の活用促進と技術のスパイラルアップを同時に図ることを目的としています(※参考:NETIS 公共工事等における新技術活用システム パンフレット)。
近年、労働時間の上限規制の猶予期間終了に伴う「2024年問題」や、団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」など、働き手の不足に関する話題が耳目を集めています。人手不足の深刻化に伴って、建設現場の働き方改革や生産性向上を図るためのDX推進も活発化してきました。例えば、国土交通省の方針により、2022年から建設現場の遠隔臨場が本格実施されるようになりました。
こうした流れの中、2020年度には、国土交通省直轄の土木工事において新技術の活用が原則義務化されました(※参考:国土交通省 直轄工事における新技術活用の推進について)。
なお、ここで言う「新技術」には、NETISに登録された技術も含まれます。今後、公共工事などに参加する施工会社は、NETIS登録技術など何らかの新技術を活用することが前提となりますので、積極的に新技術を導入し、現場作業のDXを進めていく必要があると言えるでしょう。
NETISを活用することで施工会社にどんなメリットがあるのか
ここまでで説明したように、NETISの活用は国土交通省が主導している動きではありますが、施工会社にとっても明確なメリットがあります。施工会社がNETIS登録技術の活用を提案し、実際に工事でその技術が活用された場合は、活用によって得られた効果に応じて、工事成績評定で加点が行われます。つまり、NETIS登録技術を活用すれば受注した工事の評価が上がり、それ以降に公共工事を受注しやすくなるのです。
実際にどのくらい加点されるかは、①活用する技術の事後評価が実施されているかどうか、②活用したことによる効果の程度、という2つの視点に基づいて決まります(※参考:NETIS パンフレット:公共工事等における新技術活用システム(開発者、施工者、コンサルタント向け)。
事後評価がまだ実施されていない技術を活用した場合は、活用の効果が従来技術と同等程度なら1点、一定程度(「従来技術と比較して効果が認められる技術であっても、活用した工事全体としては影響が小さいもの、例えば使用する材料のみの技術等」)なら2点、相当程度(「大幅な工期短縮や飛躍的な施工の効率化が図られた技術など、工事推進に対して大きな効果をもたらしたもの」)なら3点が加算されます。
事後評価を実施済みの技術を活用した場合は、活用の効果が従来技術と同等程度なら加点はなく、一定程度なら1点、相当程度なら2点が加算されます。これに加えて、活用した評価済みの技術が「有用な新技術」に分類されている場合は、活用の効果にかかわらず一律1点が加点されます。
このように、事後評価が実施されているかどうかにかかわらず、最大3点の加点が得られますが、実加点はその40%とされていますので、実加点は最大3点×04で1.2点となります。
また、工事成績の評定においてだけではなく、総合評価方式の入札においても、新技術の活用が評価対象となる場合もあります。ただし、入札における評価方法や配点などは発注者によって異なりますので、詳細は都度確認する必要があります。
このように公共工事の入札で有利になるというメリットの他に、NETIS登録技術の活用には、コスト削減や工期短縮といった効果もあります。
2021年度に九州地方整備局が発注した工事において、NETIS登録技術の活用によるコスト縮減効果は合計34億円にも上ったといいます。特に、発注者指定型の工事においては、1件平均1,500万円という大幅なコスト縮減が実現したとされています(注5 p. 9)。工期についても、NETIS登録技術の活用により、従来技術に比べて約42%の工期短縮が実現したといい、1技術当たりでは29日の工期短縮が図られたと報告されています(※参考:九州地方整備局・九州技術事務所 新技術活用システム(概要)令和4年度)。
こうした生産性の向上効果は、施工会社と発注者の両方にとってのメリットと言えるのではないでしょうか。
NETIS登録商品の探し方や商品の種別、施工会社に求められる手続き
それでは、実際にNETIS登録技術を活用するには何をすればいいのでしょうか。
まずは、以下のNETISのウェブサイトで、活用できそうなNETIS登録技術を探すことから始まります。
NETISのウェブサイトでは、キーワードや工種、あるいは新技術に期待する効果などから、新技術を検索することができます。さらに、工事成績評定で一律1点の加点を得られる「有用な新技術」に絞って検索する機能もあります。検索結果に表示される技術を選択すると、その技術の事後評価が済んでいるかどうかや、その技術の活用による効果などを確認することができます。
この時、NETISには「申請情報」と「評価情報」の2種類の情報が掲載されていることに注意が必要です。「申請情報」とは、NETISへの登録申請が受理された技術について、技術の開発者が登録申請書類に記載した技術的事項や経済性に関する情報です。これに対し、「評価情報」は、その技術について各地方整備局などの評価機関が行った、事前審査や事後評価結果に関する情報です。
また、NETIS登録技術には、「KT-000001-A」といったような登録番号が割り当てられますが、末尾のアルファベットは、その技術の種別を示しています。
末尾が「A」のものは、まだ評価情報が掲載されていない技術で、NETISには5年間掲載されます。これは登録申請から時間が経っていない技術であり、活用の効果の評価が行われれば、登録番号の末尾が下記の「VR」か「VE」のいずれかに変更されます。
末尾が「VE」の技術は、活用の効果の評価が実施され、継続調査の必要がないと判断された技術、すなわち評価の確定した技術です。この種の技術は、NETISに10年間掲載されます。
そして、末尾が「VR」のものは、活用の効果の評価が実施されて、継続調査の対象とされた技術であり、掲載期間は5年間となります。その間に再度評価を受け、再び継続調査の対象と評価された場合は、掲載期間が5年間延長されますが、複数回延長された場合でも、最大掲載期間は当初登録から10年間です。再評価で継続調査不要と評価された場合、掲載期間は当初登録から10年が経つ時点まで延長されます。結果的に、どの場合でも、NETIS掲載期間は最大10年ということになります。
実際に工事でNETIS登録技術を活用する場合には、NETISのウェブサイト上での手続きも発生します。具体的には、全てのケースで新技術活用計画書を作成して登録することが義務付けられているほか、種別がAないしVRの技術、つまり評価が確定していない技術を活用する場合には、実施報告書と活用効果調査票も作成して登録する必要があります。
これらの書類の実際の内容や作成手順については、九州地方整備局が公開している施工者用マニュアルなどをご活用ください。
NETIS登録商品の具体例と実際の活用事例
最後に、実際にNETISに登録されている商品2つを、それぞれの活用事例と共にご紹介します。
Safie Pocket シリーズ
- NETIS登録ページ:https://www.netis.mlit.go.jp/netis/pubsearch/details?regNo=KT-220006
- NETIS登録番号:KT-220006-VE
Safie Pocketシリーズは、撮影した映像を離れた場所からリアルタイムで確認でき、撮影側と視聴側で会話もできるクラウド録画型カメラです。国土交通省が通達した遠隔臨場ウェアラブルカメラ仕様に適合しており、人が身に着けて移動しながら使うことも、定点カメラとして現場に設置して使うこともできます。
SIMカードを内蔵しているため、回線契約や設定などの手続きなしで、LTE回線を使用して通信できます。バッテリーも内蔵されているので、電源も必要ありません。撮影した動画データは、30日分がクラウドに保存されるので、遠隔臨場だけではなく、後から振り返って報告用にダウンロードするといった活用方法も考えられます。
Safie Pocketシリーズをインフラ工事の現場に導入している株式会社ケー・エフ・シーでは、離れた場所にいるベテランスタッフに現場スタッフが映像を見せながら相談し、問題解決に役立てることで、作業効率が大幅に向上しています。Safie Pocketシリーズを使えば、離れた場所から現場の状況を適切かつタイムリーに把握できるため、現場へ赴いて臨場確認をする回数も減らせたといいます。
\株式会社ケー・エフ・シーさま活用事例はこちら/
Safie GOシリーズ
- NETIS登録ページ:https://www.netis.mlit.go.jp/netis/pubsearch/details?regNo=KT-180113
- NETIS登録番号:KT-180113-VE ※対象機種はSafie GO 180、Safie GO 360、Safie GO PTZ Plus、Safie GO PTZ AIの4機種です。
Safie GOは、工事現場の遠隔管理などに便利なルーター一体型の高画質カメラです。LTE通信により現場の高画質な画像をリアルタイムで確認できるため、離れた場所から現場を効率的に見守ることができます。
防水防塵・夜間撮影機能により24時間屋外での撮影が可能です。電源に接続するだけですぐに使用できるので、面倒な回線設定は必要ありません。
Safie GOシリーズのカメラを建設現場で活用している細田建設株式会社の現場監督は、このカメラがもたらした効果を「ほとんど魔法」と表現しています。現場監督は多数のプロジェクトを掛け持ちするため、以前は複数の現場への移動だけでかなりの時間を取られてしまっていたそうですが、Safie GOのおかげで、今は現場を効率よく管理することができているといいます。移動中の空き時間や自宅からでもスマホで現場の様子を確認できるため、現場に行かずに即座に判断を下すことができるのだそうです。
\細田建設株式会社さま活用事例はこちら/
終わりに
今後ますます人手不足が深刻化することを見越して、建設現場でも遠隔臨場などのDX推進が活発化しています。数年前からは、建設業者にも公共工事におけるNETIS登録技術などの新技術活用が義務付けられました。この記事で解説した制度概要や、施工会社にとってのメリット、そしてNETIS技術活用に向けた商品の探し方や手続きなどを踏まえて、ぜひNETISの積極的な活用を進めてください。
特に、最後に紹介したNETIS登録商品とその活用事例からは、公共工事の入札や施工という範疇にとどまらない、新技術導入による現場DXの利点を感じていただけたのではないでしょうか。
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