小売吸引力指数とは?商圏分析に使う「ハフモデル」も紹介

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顧客吸引力指数とは? 具体的な算出方法やモデル紹介

小売吸引力指数とは、出店している地域で顧客の購買がどれだけ見込めるかを示す指標のことです。小売吸引力指数は商圏分析で用いられ、分析手法として、店舗の売場面積と店舗までの時間・距離で計測するハフモデルが主に用いられています。

本記事では、小売吸引力指数の意味や3つの分析モデルなどを解説しますので、参考にしてください。

小売吸引力指数とは?

小売吸引力指数とは、店舗のある場所で顧客をどれだけ集客できるかを表す指標のことです。

ここでは、小売吸引力指数について詳しく解説します。

小売吸引力を測る指標のこと

小売吸引力指数は、小売吸引力がどれだけあるかを測る指標のことです。小売吸引力とは、店舗が地域の購買力を自店舗にどれだけ吸引できるかを示すものです。この指数を活用することで、店舗の集客力や売上のポテンシャルを定量的に把握できます

小売吸引力指数が大きければ大きいほど、他の地域から顧客を引き付け、 地域の購買力以上の売上を獲得していることを示しています。小さい場合は、顧客が他の地域へ流出しているということです。

商圏分析で用いられる

小売吸引力指数は、商圏分析で用いられます。商圏分析とは、市場規模や競合他社の状況、居住者・顧客の属性などさまざまなデータを収集し、分析することです。新規出店を予定する地域で、収益がどの程度見込めるのかを把握するために行われます。

小売吸引力と商圏は密接に関連し、小売吸引力の地理的な範囲が商圏に該当するといえるでしょう。小売吸引力指数を知ることで、効果的な商圏分析が可能です。

小売吸引力に関する3つのモデル

小売吸引力の地理的な範囲である商圏は、立地や規模、取扱商品などで変化し、店舗ごとに異なります。そのため流動的であり、分析の精度を高めるために活用されているのが分析モデルです。

ここでは、小売吸引力に関連する3つのモデルを紹介します。

ライリーの小売吸引の法則

ライリーの小売吸引の法則とは、米国のマーケティング学者ライリーによって提起されたモデルです。2つの商業施設の中間にある都市の購買力について、それぞれの商業施設が吸引する比率を計算します。

「A区とB区にある店舗は、各区の中間にあるC町から、どれだけ顧客を獲得できるのか」を考える際に使うモデルです。A区とB区では人口の多い方が顧客を獲得できる割合は多く、C町から距離が遠い方が獲得の割合は少ない傾向にあるとしています。

ただし、小売吸引の法則は、高級自動車やブランド品など、単価が高めで購入頻度が低い買い回り品(購入するためにいくつかの店舗を回って比較検討するような商品)に限定される点に注意が必要です。

商圏分岐点公式

商圏分岐点公式とは、小売引力の法則を発展させた分析モデルです。2都市間の商圏分岐点を出すための公式で、2都市間の商圏が分岐する位置を明確にすることができます。商圏分岐点は小売引力の法則において、A区とB区がC町から吸収する購買額の割合が等しくなる地点です。

商圏分岐点公式では、顧客を吸引する要因について、都市の規模より距離の方が大きいと考えます。たとえば、自店舗がA区にある場合、A区と商圏分岐点の間で生活する顧客は自店舗で購買し、商圏分岐点とB区の間で生活する顧客(自店舗より遠い)は、B区の競合店で購買するというものです。

ハフモデル

ハフモデルは、小売引力の法則をもとに生み出された手法です。特定地域の店舗における購入率について、店舗の売場面積と店舗までの時間・距離で割り出します。

新規に店舗を出店する際の需要を予測したり、競合店舗の出店による影響を把握したりするのに効果的な分析方法です。

ハフモデルは、主に修正ハフモデルとアドバンスハフモデルの2種類があります。次項で詳しく確認しましょう。

商圏分析で一般的に使われるハフモデルの種類

ハフモデルは、より詳細な分析を行うために「修正ハフモデル」と「アドバンスハフモデル」の2種類が開発されています。それぞれの内容を確認しましょう。

修正ハフモデル

修正ハフモデルは、ハフモデルのように距離と面積だけで分析するのは正確性が低いとして採用された手法です。1980年代に通産省(現・経済産業省)が取り入れ、大規模小売店舗法に基づく出店審査基準として設定されています。

修正ハフモデルは、従来のハフモデルで用いる店舗面積と居住地からの距離のほか、営業時間やブランド力といった要素も取り入れている手法です。多角的な視点で小売吸引力を計測できる方法として、一般的に活用されています。

新規店舗出店を検討する際の分析に活用されるほか、大型店舗が自店舗のエリアに出店した際、自店舗に与える影響を計算する際にも利用されている手法です。

アドバンスハフモデル

アドバンスハフモデルは、修正ハフモデルをさらに発展させた手法です。小売吸引力を測る際、売場面積・駐車場台数・場所の利便性・地域のブランド力・店舗のブランド力・交通ネットワークなど、複数の項目で店舗の魅力度を計測します。距離は直線距離でなく、道路距離や道路時間を使います。

アドバンスハフモデルは修正ハフモデルよりも分析に使用する要素の範囲が詳細で、基本的な要素を追加した修正ハフモデルに比べると、アドバンスハフモデルではより多くの要素が考慮されるため、複雑な商圏分析で効果を発揮します

ハフモデルによる小売吸引力の分析

ハフモデルによる吸引率の算定は、「店舗面積」と「居住地からの距離」で計算します。

計算式は、次のとおりです。

吸引率=店舗の魅力度/距離α÷Σ(他の全店舗の魅力度/距離α)×100

魅力度は店舗面積、αは距離抵抗係数、Σ(他の全店舗)は居住地周辺の他店舗すべての集客力の合計です。このうち「距離抵抗係数」とは、遠くの店舗まで買い物に行くことが面倒だと感じる指数のことです。通常は 1.5 〜 2.0 の値が指定され、値が大きいほど遠距離への抵抗があるとみなされます。

分析したい店舗と、周囲にある他の店舗との相関関係により、店舗の小売吸引力を割り出します。

たとえば、以下の条件で吸引率を計算してみましょう。

・A店:店舗面積2,000㎡、居住地からの距離5km

・B店:店舗面積1,500㎡、居住地からの距離3km

・距離抵抗係数:2.0

①まずは各店舗の店舗の魅力度/距離αを計算します。

A店|2,000÷5の2乗=2,000÷25=80

B店|1,500÷3の2乗=1,500÷9=166.67

②続いて、全店舗の合計(他の全店舗の魅力度/距離α)を算出します。

→80+166.67=246.67

③最後に、A店とB店の吸引率を出します。

A店の吸引率|246.67÷80×100=32.43%

B店の吸引率|246.67÷166.67×100=67.57%

この結果を踏まえると、居住地の顧客がA店を選ぶ確率は約32%、B店を選ぶ確率は約67%であると予想されます。

商圏分析の高度化にはクラウドカメラも有効

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ハフモデルによる分析に加えて、ITツールを活用することで、より精緻な商圏分析を行える可能性があります。

その一例として、クラウドカメラの活用が挙げられます。クラウドカメラとは、インターネットを通じて映像データをクラウド上に保存し、スマートフォンやパソコンから24時間いつでもどこでも映像を確認できるカメラのことです。たとえば小売業界でクラウドカメラとAIアプリを活用すると、以下を始めとするデータの測定・分析が可能です。

  • 来店客数の正確な把握:AIを活用した人数カウント機能により、時間帯別の来店客数を測定する
  • 顧客の動線分析:店舗内での顧客の動きを可視化し、商品配置や店舗レイアウトの最適化に役立てる

クラウドカメラとAIアプリを導入することで、ハフモデルでは捉えきれない実際の顧客行動データを収集し、より精度の高い商圏分析と店舗運営の最適化ができます。

クラウドカメラを提供するサービスは数多くありますが、中でもおすすめは、Safie(セーフィー)のエッジAI搭載クラウドカメラ「Safie One(セーフィーワン)」と、Safie Oneにオプション追加できるAIアプリ「Ai-App 人数カウント」です。ぜひチェックしてみてください。

▼Safie Oneの特徴はこちら

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ハフモデルで分析を行うときの注意点

高精度な商圏分析・小売吸引力指数の計測を行うために、いくつか注意すべきポイントがあります。

距離抵抗係数は柔軟に設定する

ハフモデルで用いる距離抵抗係数(遠くの店舗に行くことが面倒に思う指数)は、柔軟に設定することが大切です。一般的に、食料品などの最寄り品では距離抵抗係数が高くなり、家具や大型家電などの買い回り品は低くなります。

店舗からの距離は同じでも、購入する商品によって距離抵抗係数は異なる点に注意が必要です。

シーズンやニーズ、目的ごとに、自社の商品がどのような立ち位置にあるのかを把握するようにしてください。距離抵抗係数を柔軟に考え、正確に設定することで、より分析の精度が高まるでしょう。

小規模な分析から始める

ハフモデルによる小売吸引力の分析は、小規模から始めることをおすすめします。計算式に数値をあてはめれば簡単に分析できますが、当初から大規模な分析をしても精度は安定せず、正確な分析はできません。

いきなり大規模な分析をするのではなく、さまざまな角度から小規模な分析をしてみてください。

まずは既存店舗について、小規模な分析・検証を行うとよいでしょう。計算の精度を確認し、少しずつ規模を広げていくことが精度の高い分析につながります。

商圏分析で小売吸引力を確認しよう

小売吸引力指数は顧客の吸引率を測る指標であり、商圏分析によって求めることが可能です。商圏分析の手法は、3つのモデルがあります。一般的に用いられているのは、店舗面積と距離に加えて、営業時間やブランド力などさまざまな要素を取り入れた修正ハフモデルの手法です。

新規店舗を出店する際は、地域の小売吸引力を分析し、集客に向けた施策に活かしましょう。

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