建設業界では少子高齢化の問題を抱えています。就業者の高齢化が進み若手への技術継承が難しくなっており、このままでは事業継続が難しくなる可能性もあります。これらの課題は、作業員の負担軽減や生産性向上を目指せるICT化が解決の鍵を握っています。
この記事では、建設業のICT化についての必要性やメリット、ICT化するべき業務内容とおすすめのICTツールについて解説します。
目次
建設業のICT化とは?
建設業のICT化とは、顧客との打ち合わせや事務作業、設計から施工、点検・管理など建設業に関わる業務にICTを取り入れることをいいます。
ICT(Information and Communication Technology)は日本語で「情報通信技術」と訳され、ネットワーク通信を活用して情報処理や共有を図るサービスなどの総称です。人や物を情報によりつなぎ、業務の効率化や生産性の向上を目指すことが「ICT化」です。
i-Constructionとの違い
i-Construction(アイコンストラクション)とは、建設現場の生産性向上や労働環境の改善などを目指した国土交通省のプロジェクトの一つです。建設業に関わるすべてのプロセスにICTを取り入れ、2025年度までに建設現場の生産性を20%向上させることを目標にしています。
\i-Constructionの詳しい解説はこちら/
国土交通省はi-Constructionを推進するため、3つの施策を打ち出しています。
ICT技術の全面的な活用
測量や設計、施工などさまざまな業務プロセスでICT技術を取り入れる
全体最適の導入(規格の標準化など)
現場ごとの規格や工法などのバラツキをなくし、施工管理などのプロセスを最適化する
施工時期の平準化
繁忙期や閑散期の偏りをなくし計画的に施工を進める
「建設業のICT化」との違いについては、「i-Construction」は国土交通省が推進するプロジェクトの名称であり、プロジェクトを進めるためにICTの活用が含まれているという関係性にあります(※1)。
※1 出典:“i-Constructionの推進”. 国土交通省.2023-5-23(参照 2024-6-11)
建設業でICT化が必要とされる背景
国土交通省が掲げているプロジェクトでも、とくに重要視されているのがICT化です。建設業のICT化が必要とされる背景について解説します。
高齢化による人手不足が加速
建設業では高齢化による人手不足が加速しており、ICT化が急務となっています。国土交通省によると令和3年度の建設業就業者数の平均は485万人であり、ピーク時の平成9年度の平均685万人と比べると約29.2%の減少となります(※2)。この数字は人手不足を明確に表しています。
※2 出典:“最近の建設業を巡る状況について”. 国土交通省.2023-5-31(参照 2024-6-11)
さらに高齢化が進むにつれて、建設業を支えるベテラン技術者の高齢化と退職も進み、若手に技術を継承できないといった課題もあります。とくに建設業界は災害からの復興や老朽化したインフラなどの需要が拡大していることから、対応できるように人材不足の問題を解消しなければなりません。
働き方改革の実現が必要
建設業界はほかの業界よりも労働時間が長いことが多く、長時間労働が問題視されています。建設業に「きつい」、「汚い」、「危険」の3Kのイメージが定着してしまい、建設業界への就職希望者が減る要因にもなっています。
働き方改革を推進するための「働き方改革関連法」は、2019年から順次施行されています。建設業では、5年間猶予されていた「時間外労働の上限規制」の適用が2024年4月から開始されます。
人材不足の深刻化や長時間労働の常態化が問題視されている建設業界では、短期間で労働環境を変えて問題を解決することは難しいと判断され猶予されました。しかし、その期間も終了し労働環境が大きく変わります。
法定労働時間(1日8時間/1週40時間)を超える時間外労働は、36協定を締結することで可能となります。しかし、2024年4月〜原則「月45時間・年間360時間」までの上限が設けられました(※3)。
特別な事情がなければ、この上限時間は超過できません。特別な事情がある場合で労使が合意した場合であっても、「特別条項」の年間720時間(月平均60時間)といった制限を守らなければなりません。こういった理由から建築業においてICT化を進め、業務効率化と生産性の向上の実現を急ぐ必要があるのです。
※3 出典:“建設業 時間外労働規制 わかりやすい解説”.厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署.2023-6-1(参照 2024-6-11)
建設業がICT化で得られるメリット
建設業でICT化が進むと、どのようなメリットがあるのかを解説します。
作業の効率化、生産性の向上
ICT化により作業効率がよくなれば、ひとつのプロジェクトの施工期間が従来の工期よりも短くすみます。そのため、より多くのプロジェクトに取り組めるようになります。また、これまで時間を割いていた業務も工数を削減でき、ほかの作業に当てられるため少ない人員でより多くの業務をこなすことも可能です。
建設業でのICT化は、作業の難易度が平準化できることもメリットです。熟練者しかできなかった作業をだれでも行えるようになり、スムーズに作業を進められます。人材採用のときにも募集要項のスキルを緩和できるため、人材の幅を広げて募集をかけられるようになります。
ICT化は「人員不足」、「技術やノウハウが継承できない」といった問題の解消にもつながるでしょう。
従業員の負担軽減
ICT化により作業効率が向上すれば、従業員の負担も軽減できます。建設業は労働時間が長い傾向であることから、働き方改革に積極的に取り組まなければなりません。
残業時間や休日出勤を低減し従業員のプライベートの時間を確保できれば、従業員満足度の向上やモチベーションにもつながります。また、ICT技術によって危険が伴う作業を軽減させれば、従業員の安全性も高められます。
ICT化により職場環境の改善ができれば、建設業界の3Kイメージを払拭し、働き方改革にも対応できるといったメリットにつながるでしょう。
人件費の削減
ICT化により作業効率が向上すると、多くの作業員に支払う必要があった人件費を減らすことが可能です。
企業は、働き方改革関連法のひとつである「同一労働同一賃金」にも対応しなければなりません。正規社員・非正規社員の雇用形態に関係なく、同じ労働をしている従業員に同額の賃金を支払う必要があります。そのため、非正規雇用者を多く抱えている企業にとっては人件費の増加が懸念点です。
しかし、ICTの活用により人員に頼らずに生産性を上げられれば、人件費の削減にもつながるといったメリットを得られるでしょう。
建設業のICT化をするべき業務内容
建設業では現場作業や事務処理、点検など業務の幅が広く、危険作業や重労働なども発生します。数ある業務のなかでもICT化を進めるべき業務を紹介します。
データ編集、情報管理
測量・設計・施工・維持のすべてのプロセスで、データ収集や情報管理などの事務作業を伴う作業はICT化がおすすめです。
以下のような業務は、ICT化によって飛躍的に効率化できます。
- 現場で写真を撮影し事務所に帰ってから写真データを整理
- 図面や作成資料は紙で出力し、メールを送信して関係者と共有する
- 情報共有や作成資料の報告は、対面会議の開催を行っている
現場の写真や設計図面、工程表などの資料はデジタル化し、クラウド上で管理すれば関係者が必要なときにどこからでも確認できます。
資料を作成する側もどの場所からでもクラウド上に保管できるため、わざわざ事務所に戻って作業をする必要はありません。修正点をすぐに反映でき、リアルタイムに情報を閲覧できるため、関係者どうしでスムーズにデータ共有と情報管理が行えるでしょう。
従業員の安全・健康管理
従業員の安全・健康管理にも、ICT技術を取り入れられます。建設業では、高所作業や重機の取り扱いなど危険を伴う作業があります。
そのため、安全に作業が進められているか、現場に危険なものや場所がないかを常に注視する必要があります。しかし、広大な敷地をすべてチェックするのは膨大な労力を伴うほか、複数の建設現場の確認が必要なケースもあるでしょう。
たとえば、各現場にカメラを設置してすべての現場を遠隔で1箇所から確認できれば、広大な敷地を巡回したり現場間を移動したりする必要はありません。作業のようすや現場の危険箇所をリアルタイムで見守ることで、危険にいち早く気づくことができます。
危険箇所への立ち入りなどをアラートで知らせてくれるカメラシステムもあるため、現場や離れた場所にいる管理者も異常を察知できます。現場にすぐに指示を出して事故を未然に防ぐことにもつながり、従業員の安全性が高まるでしょう。
作業監査、点検
現場の監査や点検作業は、ICT化によって業務効率化が可能です。監査や点検のために担当者や上長などが現場まで移動しなければならず、頻繁にある場合はこれらの移動コストと時間はかさむため改善すべき課題といえます。
カメラやモニターなどのツールやWeb会議システムなどのICT技術を活用することで、現場まで行かずに遠隔から監査や点検が可能です。出張に伴う移動費や宿泊費などのコストを抑えられ、移動に費やしていた時間は別の業務に使えるため残業の削減にもつながるでしょう。
とくにカメラシステムなどを活用することで、リアルタイムに是正指示や点検指示などを出せるため、監査・点検の品質の向上も期待できます。
建設業のICT化を実現させるためのツール
ICT化するべき業務内容を紹介しましたが、ここでは建設業のICT化で欠かせないツールを改めて詳しく紹介します。
クラウドカメラシステム
ICT技術が活用されたクラウドカメラシステムを設置することで、現場管理と従業員の安全確保につながります。建設現場は高所での作業や重機の使用など、注意しなければ大きな事故が発生する危険もあるため、現場の状況や従業員のようすを把握することが重要です。
カメラの動体検知機能により、「危険エリアの立ち入り」や「人や重機を識別する」ことが可能になり、アラートで知らせてくれるため従業員の安全を確保できます。また、クラウドカメラであれば、複数のカメラ映像をひとつの拠点でリアルタイムで確認できるため業務効率も上がるでしょう。
タブレット端末
タブレット端末を活用すれば、図面や工程表などの資料を確認したり現場の写真を撮ったりすることも可能です。スマートフォンと同じ感覚で使用できるうえ、画面が大きいため資料やデータ確認がしやすいのが特徴です。
タッチペンでメモやタイピングをするなど幅広く使用でき、建設業のICTツールとしておすすめです。年配の方も大きな画面を確認しながら、直感的に操作ができるでしょう。
テレビ会議システム
テレビ会議システムは、これまで打ち合わせや会議などを対面で行っていた場合はぜひ導入したいICTツールです。
社内や取引先と会議をする必要があるときは、テレビ会議システムを活用すれば会議の場に移動する必要もありません。建設現場からカメラの映像をつないで会議を進められるため、工事の進捗や課題の報告がスムーズに行えます。
建設業のICT化にはSafieのクラウドカメラが活躍
クラウド録画サービス「Safie(セーフィー)」のカメラが、建設業のICT化をサポートします。Safieのカメラは、定点撮影・ウェアラブル撮影など幅広く多用途に使えるのが特長です。
Safie GO(セーフィー ゴー)シリーズのカメラは、360°広角撮影できるモデルやGPSを搭載しているモデルなどさまざまな機能が備わっています。
また、Safie Pocket(セーフィー ポケット)シリーズのカメラは、ウェアラブルタイプで持ち運びにも便利で、カメラを装着できるためハンズフリーで撮影しながら作業が行えます。
モデル | 画像 | 特長 | 防水防塵 |
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Safie GO 180 | 180度の広角レンズ | IP66 | |
Safie GO 360 | 360度全方位を撮影 | IP66 | |
Safie GO PTZ | PTZ操作が可能 | IP66 | |
Safie GO PTZ Plus | GPS搭載で設置位置を確認 | IP66 | |
Safie GO PTZ AI | エッジAI搭載で人物検出可能 | IP66 | |
Safie Pocket2 | 遠隔業務に必要な機能搭載 | IP67 | |
Safie Pocket2 Plus | シンプルな機能構成 | IP67 |
Safieで撮影した映像はクラウドで管理できるため、どこからでも視聴できます。スマホやタブレットなどで現場をいつでもチェックでき、移動時間やコストは大幅な削減が可能です。
遠隔から新人社員をベテラン社員が指導を行ったり、施工手順を記録して社員教育にも活用したりと活用シーンは多岐にわたります。
建設業が抱える「遠隔地の現場管理の効率化」、「ベテランから若手への技術伝承」の問題解決につながるでしょう。
まとめ
建設業界では高齢化による人手不足、働き方改革の実現などの問題があり、これらの問題を解決するためにはICT化を進める必要があります。まずはICT化の実現に向けて、今回紹介したクラウドカメラの設置から検討してみてはいかがでしょうか。
セーフィーはさまざまな業界の課題解決に役立つクラウドカメラを提供しており、建設業界の企業様への提供実績も多数ございます。ICT化をご検討の際は、ぜひセーフィーまでお問い合わせください。
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