これまで内部監査を対面で実施していた企業でも、リモートワークの普及にともない遠隔監査(リモート監査)が多く実施されています。遠隔監査は監査担当者が移動しなくても監査を実施できるというメリットがありますが、一方で課題もあります。
今回の記事では、遠隔監査についての概要やメリットや効果的に進めるための方法を解説します。
目次
遠隔監査とは?
遠隔監査(リモート監査)とは、遠隔から実施する内部監査のことです。現場のようすをカメラで撮影し、遠隔地からモニターなどを通してチェックし内部監査を行います。
内部監査は、企業内の監査組織が各業務や財務会計などを調査し評価をすることです。企業の不正防止や、業務効率向上などを目的としています。とくに大企業は内部監査の実施が会社法で義務づけられており、運用状況の報告もしなければなりません。
企業の経営に関わる重要な役割を担う内部監査ですが、近年遠隔から実施する遠隔監査を導入する企業が増えています。
遠隔監査の導入が進んだ背景
遠隔監査の導入が進んだ背景として、新型コロナウイルス感染防止が影響しています。コロナ禍により移動の制限やテレワーク推奨の動きがあるなか、Web会議システムを採用する企業が増加しました。
内部監査の方法も同じように、これまで監査担当者が現場に行き実施(往査)していたものをカメラやモニターを通じて遠隔から実施する、遠隔監査の方法にシフトしていきました。
日本内部監査協会が内部監査業務に従事している組織を対象に行ったアンケート調査によると、遠隔監査の増加が明らかになっています(※1)。コロナ禍以前から遠隔監査を行っていた企業は約14%であったのに対し、コロナ禍以降は感染拡大の影響を受けて実施を始めた企業が約38%でした。
結果的に遠隔監査を行っている企業は、コロナ禍後にトータル約52%と伸び、半数以上の企業が遠隔監査を導入していることになります。
※1 出典:“新型コロナウイルス感染症の内部監査への影響に関するアンケート調査 結果”.一般社団法人日本内部監査協会 日本内部監査研究所.2020-6-19(参照 2024-6-6)
遠隔監査のメリット
遠隔監査はさまざまな観点からメリットのある方法です。
監査部門の経費、労働時間の削減
遠隔監査を行う大きなメリットは、監査にかかるコストと労働時間の大幅な削減です。現場で内部監査を実施する場合は、監査員が現地までの往復に移動費がかかります。数日間実施するケースや長距離移動のケースは、宿泊費を伴うこともあります。
また、海外拠点がある企業では移動費も大きくかさむため、内部監査にかかる経費は膨れ上がるでしょう。しかし遠隔監査を実施することで、これらの移動費や宿泊費などの膨大なコストが削減できるのです。
移動や宿泊を伴う内部監査の場合は、監査員の労力や負担は軽くはありません。遠隔監査を導入することで心身共に負担軽減につながり、従業員の安全衛生の向上にもつながります。監査員はこれまで移動に費やしていた時間を、コア業務に割り当てられるというメリットもあるでしょう。
コストと労働時間の削減は企業経営にとってさまざまなメリットにつながるため、遠隔監査の効果は大きいと考えられます。
管理者がモニタリングしやすい
遠隔監査を導入すると、監査の管理者はすべての拠点に行かなくても監査に立ち会えます。往査の場合、管理者は結果報告で内部監査の内容を把握し、評価や助言などを行うために時間差が生じる場合があります。
一方、遠隔監査ができれば管理者が監査状況をモニターでチェックが可能です。リアルタイムに現場の監査員や関係者とコミュニケーションをとり、情報共有や助言、是正指示ができます。管理者がすべての現場をモニタリングできれば、監査水準を一定に保つことや監査品質の向上が期待できます。
遠隔監査によるモニタリングのしやすさは、監査対象となる関係者にも共有しやすいといったメリットもあるためシナジー効果も期待できるでしょう。
監査の実施頻度の向上
遠隔監査はこれまでの往査に比べると気軽に実施できるようになり、監査の実施回数や頻度も自由に決められます。
往査の場合は監査拠点の関係者とのスケジュール調整や準備などが必要で、実施に至るまでにさまざまな工数がかかります。監査の人員不足や監査に時間を割けないという理由から理想とする頻度で実施が行えず、最低限の頻度で実施しているケースや外部業者に委託しているケースもあるでしょう。
遠隔監査を実施すると準備や移動にかかる手間や工数を低減できるため、往査よりも気軽に実施しやすくなります。監査の日程調整がしやすくなり、是正指示後のチェックもスムーズに行えます。企業の不正防止や業務効率の向上といった目的達成にも寄与します。
感染リスクを回避
遠隔監査は移動や対面を避けられるため、感染リスクを回避できる点も大きなメリットです。とくに海外拠点へ渡航する場合は、陰性証明やワクチン接種証明などの提出、隔離など、国内よりもハードルが高く、監査を実施できないケースもありました。
新型コロナウイルスの感染者数は落ち着いているものの、今後も何らかの感染症による世界的なパンデミックが起こる可能性もあります。遠隔監査の体制を整えておくことで、感染症拡大のリスク防止につながります。
遠隔監査の課題
遠隔監査を実施するためには、以下のような課題もあります。
管理体制の変革
遠隔監査を実施するために、管理体制を整えなければならない点が課題です。これまで内部監査の関連資料を紙で用意していた場合は遠隔監査のために電子データに移行する必要があり、その労力は少なくありません。
たとえば、会計管理の場合は「精算書を印刷し領収書を貼付」、「上司のハンコを押印して提出」、「経理担当者がチェックしファイリング」といった一連の流れが必要な企業も多いことでしょう。
このような管理を行っている企業が遠隔監査を実施する場合はすべての書類をPDF化する方法もひとつですが、大量の書類を電子化するために大幅な工数がかかります。またPDF書類だけでは監査がスムーズに実施できない懸念もあります。
そのため、Web上での承認システムの導入やペーパーレス化といった企業内での変革が必要です。管理体制の変革はスムーズで正確な遠隔監査のためだけでなく、全体の業務効率化にもつながるでしょう。
情報漏洩のリスク
書類の電子化は遠隔監査や業務効率化を向上させますが、同時に情報漏洩リスクも伴います。電子化したデータをサーバーやクラウド上で管理・共有するため、情報漏洩の防止策が必要です。
情報の閲覧は監査員や関係者だけが閲覧できるように権限を制限でき、強固な情報セキュリティ機能が備わっているシステムを導入する必要があります。
コミュニケーション手段の限界
内部監査は、監査員と監査対象の拠点担当者とのコミュニケーション機会が非常に多く、スムーズなやりとりが求められます。
しかし、遠隔監査の場合はモニター越しでのコミュニケーションとなるため、相手の仕草やようす、空気感などを対面と同じように察知することは難しいといった側面があります。意志疎通に時間がかかったり、齟齬が生じたりする可能性もあるでしょう。
そのため、遠隔監査を導入する場合は往査のときよりも意識してコミュニケーションをとることが重要です。相手に伝わるよう相槌や返事を普段よりも大きくし、相手に理解されているか確認をとりながら進行するなど工夫が求められます。
当事者意識の欠如
内部監査で定期的に監査員が現地を訪れることで、監査対象の担当者の士気を向上させる効果もあります。また、監査関係者だけでなく、周囲の従業員にも監査が行われていることが認識されると、現場全体の意識向上にもつながります。
一方、現場に監査員が来ないと効果が発揮されず、当事者意識が欠如して目標に対する使命感や率先性が薄れてしまう可能性があります。また、監査員が現場を自由にチェックできないため、不正や誤りを発見する機会が低減する恐れもあります。
遠隔監査の課題を見直し、効果的に進める3つの方法
遠隔監査で浮き彫りになった課題を解決し、効果的に進めるための3つの方法を紹介します。
デジタル環境を構築する
遠隔監査を実現するために、デジタル環境の構築は必須です。遠隔監査に必要となる環境を整えずに進めてしまうと、適切に監査が行えずアナログな方法に逆戻りする可能性があります。
たとえば、契約業務や経理業務などのワークフローを紙媒体ではなくデジタル化することで、紙媒体にハンコを押印したりPDF化したりする必要がなくなりペーパーレスにつながります。サーバー導入やクラウド契約すれば、データを一括管理して共有も簡単に行えます。ファイルのアクセス情報や勤怠などのデータを集約することも可能です。
さまざまなデジタルツールを積極的に導入することで業務効率化につながり、監査のときにも必要なデータを収集しやすくなります。
セキュリティ対策を徹底する
デジタル環境を構築するうえで、セキュリティ対策は欠かせません。デジタル環境が整えられると、遠隔から書類を閲覧したりデータを収集したりと便利になります。ただしネットワークを介す以上、強固なセキュリティ対策が必要です。
端末やパスワードの管理方法やセキュリティ事故が発生した場合の業務フロー構築、従業員に対して情報セキュリティやITリテラシーに関する教育を実施するなどの対策が必要です。
コミュニケーションが円滑に進むツールを導入する
遠隔監査を効果的に進めるには、ビデオ会議システムの導入が有効です。モニターにお互いの顔や現場のようす、資料のデータなどを映し出しながら、説明や質問などのやりとりをスムーズに行えてコミュニケーションが円滑に進みます。
また、カメラシステムの導入もおすすめです。定点撮影できるカメラや持ち運びながら撮影できるカメラなどさまざまなモデルがあり、ネットワークを介すことで撮影しながらリアルタイムでモニター映像を確認できます。PCやモニターのカメラ機能だけでは、現場の全体を映し出すことは難しいです。カメラシステムを導入することで、監査員が自由に現場を歩き回りながら監査できるのと同じ間隔で進めやすくなるでしょう。
遠隔監査(リモート監査)にSafieのカメラが活躍
クラウド録画サービス「Safie(セーフィー)」を導入することで、遠隔監査を効果的に進められます。高画質な映像データは、強固なセキュリティで守られているクラウドに保管でき、リアルタイムでスマートフォンやPCなどのデバイスから確認できます。カメラの設置やシステム導入も簡単なうえ、監査に必要な機能が充実しています。
遠隔からズームできる機能や複数台のカメラを一つのモニターに映して同時に視聴できる機能があり、スムーズな操作と映像確認が可能です。広い範囲をチェックしたり細かくチェックしたりと、監査のときにも役立ちます。
また、ウェアラブルタイプのカメラは体に装着しながら撮影ができ、通話機能もあります。現場の担当者と遠隔地の監査員がカメラを通して映像と音声を共有できるため、スムーズに監査を進められます。コミュニケーションのやりとりが重要な監査の場で活用しやすいカメラです。
まとめ
遠隔監査を実施することで時間やコストの削減や、業務効率向上などさまざまなメリットがあります。一方で、遠隔監査をより効果的に進めるためにはデジタル環境やセキュリティ対策、コミュニケーションツールを整える必要があります。
セーフィーでは、さまざまな業界・シーンの遠隔監査に役立つクラウドカメラを多く提供しています。遠隔監査をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。
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