建設現場での「見える化」とは?重要性や実現方法を解説

建設現場の見える化 重要性や実現方法

建設現場の「見える化」は、安全対策の強化や業務効率の向上に必要不可欠です。DXの推進により、情報共有のリアルタイム化や効率的な業務プロセスが求められています。

本記事では、建設業界の「見える化」について事例を交えながら、その必要性や導入方法について解説します。

建設業界の「見える化」とは

建設業界や工事現場における「見える化」とは、目に見えない情報や進捗を数値や図などを使用して可視化することで、全員が同じ認識を持ち、業務の効率化や安全性の向上を目指す取り組みのことです。

情報を見える形にすることで課題の把握や改善、トラブルの防止、安全性の向上などが期待できます。「見える化」を進める対象として代表的なのは「工事の進捗状況」と「安全性」です。

工事の進捗状況の見える化

工事の進捗状況を見える化することは、正確な進捗管理に不可欠です。

見える化できないと、工事が予定通り進んでいるか判断がつかず、適切な指示ができなくなるだけでなく、工事の遅延やトラブルの発生、施工ミスへの対応ができないなどの問題を引き起こす原因となります。

一方、工事の進捗状況を見える化することで、関係者間での情報共有がスムーズに行われ、これらの問題を未然に防ぐと同時に、問題が発生した際でも、施工順序の変更など迅速に対応策を講じることができるでしょう。

安全性の見える化

建設現場では、重機を使用する、高所作業を行うなど危険な作業が多く、作業時の安全性を目に見える形で示すことが重要です。

例えば、危険な場所に警告表示を行ったり、安全通路や段差を色分けしたり、暑さ指数を示す機器を設置することなどが挙げられます。これらの措置は、トラブルを未然に防ぎ作業員の安全を確保するために必要不可欠です。

建設現場の「見える化」の必要性

年間の死傷災害件数は、年々減少しているものの令和4年度の建設業における死傷者数は14,539人死亡者数は281人と報告されています(※1)。労働災害をできるだけ減らしていくためにも、建設現場での見える化の推進は欠かせません。

厚生労働省も建設工事現場での安全の見える化を推奨しており、この取り組みを行っていくことで働く人々の労働災害防止への関心を高め、安全な作業環境の実現へとつながる(※2)としています。

※1 出典:”令和4年 労働災害発生状況” .厚生労働省 労働基準局 安全衛生部安全課.2023-5-23(参照 2024-4-23)
※2 出典:”建設工事現場で「安全の見える化運動」の取組を!!”.厚生労働省 大分労働局 各労働基準監督署(参照 2024-4-23)

業務量を把握し負担を削減

2024年4月から建設業にも適用された「時間外労働の上限規制」により、一人ひとりの業務負担量を調整・削減していくことが求められます。

見える化に取り組むことで、チームまたは1人あたりが現在どれくらいの業務を受け持っているのかを把握できます。それにより、あるチームや1人に業務が偏ってしまっている場合にも特定することができ、業務の分散や人員増加を行い負担を軽減することが可能です。

業務効率を上げてムダを削減

見える化は、業務量を把握することだけでなく、業務のムダを削減し効率を上げることにも貢献しています。それぞれの業務や作業にどのくらいの時間を費やしているかを記録することで、ムダが発生している箇所を特定できるためです。

見える化を実施し対策を講じていくことで、納期内に作業を終えられるようになる、一人ひとりの労働時間を管理し、調整できるなどのメリットも生まれます。

見える化で業務効率を挙げてムダを削減する取り組みとして、国土交通省が推進する遠隔臨場があります。これは、ウェアラブルカメラや建設現場内に設置したネットワークカメラを活用し、「材料確認」「段階確認」「立会」を遠隔で行うものです。

遠隔臨場を導入することにより、移動のコストや時間を削減すると同時に、建設現場の見える化を実現し業務効率を向上させることができます。

\遠隔臨場の導入方法はこちらの記事で詳しく解説/

ノウハウを共有し事故を防止

業務が見える化されていることで、ノウハウが自然と共有され、よりスムーズに業務を進めることができます。例えば、業務が見える化されていなかった場合、作業を行うごとに担当者に質問をする手間がかかってしまったり、機械操作の方法が人によって少し異なっていることから事故につながるといった懸念があります。

業務が見える化されていれば、経験が浅くても円滑に業務を行うことができ、機械操作の方法が人によって異なるといった問題も起こらず、結果として事故の抑制に繋がるでしょう。

「見える化」による安全対策の事例

建設現場の「見える化」による安全対策の事例を以下に5つ紹介します。

危険区画の見える化

立ち入り禁止エリア、安全通路、資材置き場を見分けやすくするため、これらの区域を異なる色で区別します。

作業内容の見える化

危険な作業を行っている際は、周囲の人々が容易に視認できるように、見やすい場所に掲示を設置して注意を喚起します。

熱中症危険レベルの見える化

暑さ指数(WBGT値)とその危険度を色で表したものを表示し、注意を促します。

階段・段差の見える化

階段付近に「段差注意」の掲示とカラーコーンの配置を行い、段差に対する認識を高めます。

重機使用方法の見える化

建設現場で使用される重機の使用方法を表示し、適切に使用できるよう注意を促します。

建設現場における「見える化」の導入方法

建設現場で見える化を導入するには、IoT(Internet of Things)デバイスやITツールの活用が欠かせません。これらで見える化する大きなメリットは、スマートフォンやタブレット・PCなどで必要なときに確認できることです。

IoTデバイスやITツールによる見える化の導入方法について、4つ紹介します。

工程管理システムを活用する

工程表、施工写真、関連資料をクラウド上で一元管理し、関係者がいつでもアクセスできるようにすることで、工程の進捗状況をリアルタイムで把握できます。これにより、プロジェクトの遅延や情報伝達の不足を未然に防ぎ、効率的な意思決定を促進することが可能です。

また、進捗状況をリアルタイムで共有することで、問題の早期発見と迅速な対応が可能となります。管理ツールには、プロジェクト管理ソフトウェアやクラウドストレージサービスなどがあります。これらを活用することで、現場との情報のギャップを解消し、スムーズな情報共有を実現することができるでしょう。

見積書や資料などをデータで共有する

見積書や資料をデジタル化し、クラウド上でそのデータを共有することで、関係者間の情報共有が簡単かつ迅速に行えます。これにより、紙ベースでの資料の配布や保管にかかる手間とコストを削減し、いつでもどこでも必要な情報にアクセスできる環境を整えることができます。

チャットツールでコミュニケーションを取る

業務の進行には円滑なコミュニケーションが不可欠です。チャットツールを活用することで、作業員や責任者、その他関係者間での迅速な情報交換が可能になります。

電話やメールで必要となるメモや提携文を省略することができ、円滑にコミュニケーションを図ることができるでしょう。ただし、重要事項を共有する際は、日々発生するチャットに流れてしまうため、頻繁に確認したい重要事項は他のシステムを使いましょう。

クラウドカメラやAIカメラで現場の状況を確認する

クラウドカメラを現場に設置することで、作業の進捗状況や安全性を大幅に向上させることができます。現場の状況をリアルタイムで撮影し録画することで、万が一トラブルが発生した際も映像ですぐに状況確認ができます。

さらに、AIによる画像解析が可能なAIカメラを導入すれば、検知機能により、不審な動きや安全基準に反する行動を自動で検出することなどが可能になり、通知機能があればアラートを出すことも可能でしょう。

災害や緊急事態が発生した場合も、現場に足を運ばずに状況を把握できるため、素早い判断と対応が可能になり、作業員の安全を守る上で大きな役割を果たします。その他にも、録画映像をもとに事故発生時の原因分析をすることで、将来的なリスクの予測にもつなげることができるでしょう。

「見える化」を失敗しないように気をつけるポイント

建設現場に見える化を取り入れても、業務効率化や安全性の向上にうまくつながらないことがあります。見える化に取り組む際、どのような場合に失敗が起こりうるのか、気をつけるべきポイントについて紹介します。

従業員が周知・理解できているか

見える化の取り組みは、関係者全員が理解し、活用できる必要があります。情報が見える化されても、それが何を意味するのか分からなければ、徐々にそのIoTデバイスやITツールは使われなくなる恐れがあります。また、関係者が正しく使用できるように、データの共有方法や閲覧方法の周知を行うことも必要です。

見える化の取り組みが失敗に終わらないために、社内で研修や説明会を行い、導入後も定期的なフォローアップを行うことが効果的です。

導入コストが適切であるか

IoTデバイスやITツールの導入にあたり、初期費用と維持費用の両面からコストパフォーマンスを検討する必要があります。機能が豊富なツールを導入しても、実際に活用するのがその一部だけである場合、費用対効果が悪くなります。

見える化の取り組みにおいては、IoTデバイスやITツールの導入は必要ですが、その選定には継続的なコストを考慮し、企業の財務負担とならないように配慮することが大切です。

使いやすいツールであるか

IoTデバイスやITツールは、現場の作業員から管理職まで、関係者全員が簡単に使えるものである必要があります。特に現場監督のように、日々の施工管理業務で忙しい人もストレスなく使えることが重要です。そのためには簡単で直感的に操作できるツールやシステムを導入することが大切です。

常に最新の情報にアップデートできているか

見える化された情報は、常に最新の情報に保つ必要があります。自動更新機能や現場からのリアルタイムな情報入力がスムーズに行えるシステムの導入が重要です。進捗状況がリアルタイムで正確に反映され、意思決定を迅速かつ効果的に行うことができるでしょう。

まとめ

効率よく業務を進める事ができ、安全性の向上が図れる「見える化」。厚生労働省も建設現場の見える化に取り組むことを推奨しています。

建設現場の見える化にはさまざまな方法がありますが、簡単で効果的なのは、クラウドカメラやAIカメラによる見える化です。作業員にウェアラブルカメラを持たせたり、固定式のクラウドカメラを設置し映像を活用することで、ムダを削減し効率向上につなげることができます。

セーフィーは、映像ソリューションを提供している会社です。クラウドカメラやAIカメラを使用して見える化に成功した実績も多数あります。建設現場の見える化の取り組みとしてカメラの導入を検討している方は、ぜひセーフィーまでご相談ください。

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