小売業やサービス業などでもDX(デジタルトランスフォーメーション)の動きは活発になっています。多店舗運営にデジタルを活用する事例も次々に生まれている流れのなか、DXをスムーズに進めていくために具体的なノウハウを知りたいと思っている人も多いでしょう。
本記事で紹介するノウハウは、株式会社スタディストさまが提供するマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」を使った多店舗運営にデジタルを活用する業務改善方法です。
【登壇者】
株式会社スタディスト
取締役COO
コンサルティング部長
庄司 啓太郎 氏
東京工業大学卒。国内シンクタンクにて、都市計画等の調査業務に従事。その後、株式会社インクスにて、設計支援システム導入や、製品開発プロセス改革や、業務分析のプロジェクトリーダーを歴任。同社マネージャー職を経て、2011年1月インクスを退社。同年2月に株式会社スタディストに参画。
労働生産性を向上するための王道は業務のマニュアル化
そもそも労働生産性の定義とは?
まずは、企業が高めなければいけない「労働における生産性とは何か」というところから掘り下げていきましょう。
図を参考にしていただくと分かるように、「労働生産性」とは、労働の投入量に対して生み出される付加価値の割合で表すことができます。
つまり、
- 1.労働の投入量をいかに少なくするか
- 2.労働によって生み出される付加価値をいかに大きくするか
というこの2点を改善していくことが、労働生産性を高める大きな柱になるということです。
具体的にいうと、減らすべき労働の投入量とは、業務のボリュームや人員リソースの投入量。そして、増やすべき付加価値とは、商品や製品の魅力向上や、人が提供するサービスの価値向上などです。
何百社もの企業課題から導き出した、共通して存在する「課題」のメカニズム
労働生産性を高めるために、現場の課題をつきとめ、図に挙げたような改善施策に着手されている企業さまも多いと思います。
しかし、これまでに何百社もの企業さまから課題や取り組みについて聞くなかで分かったことは、課題は企業ごとにそれぞれ違うものの、その課題の仕組みやメカニズムはさほど変わりがないということでした。
そして、その課題を解決するプロセスには王道しかなく、近道がないと分かったのです。
その王道とは、まず業務そのものを可視化し、手順を定めて標準化し、マニュアルを作り、現場に定着させた上で、さらに現場の改善を繰り返すというプロセスです。以下の図のように、IT化や自動化を行う上でも、それらのプロセスを経ていることが前提となります。
可視化の部分ではSafieカメラを設置することでわかるところも多いです。では、可視化することで得られた知見をどうやって標準化し、定着させていくのか。この部分でマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」が活躍します。
マニュアルの存在意義は現場での再現性を担保すること
集めた知見をいかに共有していくか、現場に定着させていくか、その手段となるのがマニュアル化です。
そして、マニュアル化にあたって最も重要なのが、再現性を担保することです。
会社の指示が現場に伝わる過程は伝言ゲームに似ていて、最初の人が言った内容と最後の人に伝わった内容がかけ離れたものになることも珍しくありません。だからこそ、いかに正しく伝え、再現性を担保するかが重要になります。
もう一つのマニュアル化の意義は、属人化をなくすことです。
業務プロセスや手順の再現性を担保するためにいちばん厄介なのは、あの人しかできない、という「人」への依存です。この制約を解消するためにマニュアルが必要になってくるのです。
マニュアルは作るだけでは意味がない
ただし、残念ながら時に必要だという話になっても「たしか誰かが作ったマニュアルがあるはずだけど、使っていない…」という声も多いのがマニュアルの現状です。
ではマニュアルを作って終わりにせず、業務で活用し、成果につなげるにはどうしたら良いのでしょうか?そのポイントは、人材育成にしっかりと活用することにあります。
ホームセンター「カインズ」さまでのマニュアル活用事例
実際に「Teachme Biz」を利用いただいているホームセンターのカインズさまでは、アルバイトやパートも含めると約2万人の従業員が働いています。
従業員教育では、伝わらないという一番の問題に加えて、パートやアルバイトの方々がやる気はあるのに学習するツールが揃っていなかったという課題があり、教育がうまく回っていなかったそうです。そこで、簡単にわかりやすいマニュアルが作成できることを決め手に、「Teachme Biz」を導入いただきました。
1度教わったことは2度、3度と聞き直しづらいものですが、「Teachme Biz」では何度でもおさらいができるため、非常に有効というお声をいただいています。
また、コロナ禍で新入社員研修もウェブ研修中心に変わったそうです。新入社員が何をどういう順番で学んでいけばいいか、トレーニング機能を使って学習を進めることで、誰がどこまで学習できているのかが遠隔でも非常に分かりやすくなったといいます。
・(導入事例)株式会社カインズ様 – Teachme Biz
「Teachme Biz」の特徴
「Teachme Biz」というサービスは、ビジュアルベースで標準の作業手順書(SOP)を作り、かつ共有できるソリューションです。
「Teachme Biz」はステップバイステップで動画と静止画を組み合わせる方式を採用し、紙芝居のように、大事なところは画面を1枚1枚見せながら、枠で囲うなどして視覚的に示すことができます。このようなマニュアルをスマホやタブレット、PCで簡単に作成できるため、現場の写真をたくさん撮っておけば、それを使ってすぐにマニュアルにまとめることができます。
【マニュアル画面のサンプル】
インクカートリッジ交換手順のサンプル画面はこちらからご覧いただけます。
動画だけのマニュアルはおすすめしない理由
動画でマニュアルを作る企業さまも増えていますが、マニュアルという観点では動画だけで作ることは決しておすすめしていません。
もちろん、動画ならではのわかりやすさもあります。
しかし、動画マニュアルの問題点として、作業の再現性が乏しいということと、マニュアルの更新性が乏しいということが挙げられます。例えば、料理番組をイメージしてみましょう。料理番組を見ながら料理しようと思うと、手元の作業のペースと動画の映像のペースが合わないため、映像を見て一旦止めて作業するという繰り返しになってしまい不便です。
私たちが普段見ている10分程度の動画でも、その裏では長い時間をかけて撮影され、テロップを入れるなどさまざまな編集がされています。そういったリッチな動画を作るのはとても難しいのが現実です。
更新性に関しても、動画の一部を差し替えるとなると編集能力を求められるため、できる人が限られたり、外部に依頼したりと大変になります。
動画の他にもワードやパワーポイントなどのオフィス系ソフトでマニュアルを作る場合や、eラーニング方式で研修を行う場合もありますが、それぞれ一長一短です。
マニュアルを使うタイミング
業務改善や人材育成のコアになるマニュアルは、使うタイミングや使い方がとても重要です。
製造業などでは業務のミスが起きやすいシーンである「はじめて・へんこう・ひさしぶり」の頭文字を取って3Hという考え方が普及しています。この3Hのタイミングでマニュアルを使えることが必要です。
仕組み化できる業務の範囲と手段の選択
ただし、マニュアルは決して万能ではありません。業務には、性質によって仕組み化すべきものとそうでないものがあります。弁護士や熟練工のように「A:感覚型」の業務を身に着けるには経験機会を増やすしかありません。
ある程度パターンが決まる「B:選択型」と呼ばれる業務、そして手順が明確に決まる「C:単純型」と呼ばれる業務を合わせると、おおよそどの企業でも8割から9割を占めると言えそうです。
そこで、この「B:選択型」と「C:単純型」の業務を優先的に共有化していくのが、望ましいあり方です。ベテランのノウハウが必要になる部分ももちろんマニュアル化してよいのですが、それはあくまで1割から2割だという風に、きちんと線引きをしていくことが重要です。
また、共有する段階では、伝えたい内容や目的に合わせて適切な手段を選択し、組み合わせることにも気をつけましょう。特に昨今のようにリモートワークを併用する環境では、リモートで教える部分もありながら、直接対話をしながら教える部分もうまく組み合わせていく必要があります。
狙いを定めたマニュアル整備を
マニュアルの整備と活用を実際に進めていく上では、様々な壁が立ちはだかるでしょう。1つ超えたらまた次の壁というように、次々に障害が出てくるため、それをいかに超えていくかという点で、「Teachme Biz」では導入サポートも実施しています。
想定しうる課題を1つ1つクリアしていくような支援のほかに、コンサルティング部ではお客さまの個々のご要望に応じて、マニュアルの作成代行なども含めたトータルでの支援も実施しています。
ナレッジを共有化することの目的に立ち返ると、マニュアルを作るだけでなく、マニュアルにきちんと再現性を持たせることこそがゴールとなります。
どの業務範囲を、誰に、どうやって伝えるかを見極めた上で手順を定めてマニュアルを作り、現場に定着させ、現場での改善を繰り返すことで、労働生産性を向上させていきましょう。
※本記事は、株式会社スタディストさまとセーフィーが2022年8月2日に共催した【デジタルを活用した多店舗運営の新手法】と題したセッションより、内容と資料を抜粋したものとなります。
(製品情報)
・マニュアル作成・共有システム「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」