ウエアラブルカメラで“現場DX”を推進!遠隔臨場を成果につなげるNEXCO東日本

特集

2022年度から建設現場で本実施がスタートした「遠隔臨場」。映像と通信を用いることで、移動のコストと時間を圧縮し、人手不足解消につなげる取り組みとして期待されている。そうした中、多くの現場で活用されているのが映像の撮影とクラウド保存、通信機能をオールインワン型で備えたウエアラブルカメラ「Safie Pocket2(セーフィー ポケット ツー)」だ。複数のプロジェクトでその効果を実感しているNEXCO東日本に話を聞いた。

※こちらの記事は「日経コンストラクション 2022年12月号」に掲載されたインタビュー記事を転載したものです。

NEXCO東
日本北海道支社 札幌管理事務所 改良Ⅲ担当
神田 皓城

離れた現場の立会業務だけで1日が終わってしまうことも

2022年度から本実施が始まった遠隔臨場は、コロナ禍で広がったリモートワークの「建設現場版」ともいえる取り組みだ。カメラで撮影した映像をベースに、離れた場所から臨場(現場の立会などにのぞむ)する。国土交通省の定義では材料確認、段階確認、立会が遠隔臨場の対象となっている。

高速道路の建設、管理などを中核事業とする東日本高速道路(NEXCO東日本)は、プロジェクトの発注者側として遠隔臨場の効果を実感している企業の1社だ。同社の神田 皓城氏は次のように語る。

「私が担当する現場の中には、事務所から50km以上離れた場所もあります。現場での立会が1時間で終わっても、往復を含めると半日作業になります。遠隔臨場の実施前は立会業務で1日が終わってしまうことも珍しくありませんでした」

一言で現場での立会、確認作業といっても、その内容は様々だ。資材が発注した通りに届いているか、工程表通りに作業は進んでいるか、作業員の安全性は確保されているか――。様々なポイントに注意しながら、現場内を歩いて見て回る。

「現在は、これらのうち遠隔臨場できるものと、現地を訪れる必要があるものを仕分け、見極めています。例えば打音確認などは現地を訪れる必要がありますが、コンクリートの圧縮強度の確認は、数値を見るだけなので遠隔でも行えます。現場に入る各受注者とも連携しながら、適用できる領域を探っています」と神田氏は言う。

遠隔臨場の実効性を左右するのがカメラデバイスだ。多くの現場で使われているのが、セーフィーのクラウド型ウエアラブルカメラ「Safie Pocket2」だという。

画質と通信機能、ポケットに装着できるコンパクトさを評価

Safie Pocket2は、画素数、フレームレート、転送レートなど、国土交通省が策定した遠隔臨場のICTツールの仕様を満たす製品。NETIS(新技術情報提供システム)にも登録されている。

NEXCO東日本が評価したのはまず画質と通信機能だ。部分をクローズアップした際や、光量が不足している環境でもクリアに見える画質が遠隔臨場には必須。その点Safie Pocket2であれば、仕様書に記載された資材のサイズや型番もしっかり視認できるという。安定した通信性能も、業務要件を満たすものと評価している。

「コンパクトで持ち運びやすいところも良いですね。ポケットに付けても、現場で働く方の邪魔をしないのではないでしょうか。撮影した映像がクラウドに保存されるため、必要なときいつでも過去の映像を確認できるのも、発注者側としてありがたい点です」と神田氏は話す。

遠隔臨場を推進し移動時間を6割軽減

NEXCO東日本
北海道支社 札幌管理事務所 工務担当課長
佐藤 旬


現在、同社の札幌管理事務所では遠隔立会が可能な出来形検測や材料検収などをメインに、遠隔臨場を実施している。また、様々な現場の状況や作業の様子を確認する中で、現場との効率的な遠隔コミュニケーションの方法や、画面越しに指示を出す際のコツなどを徐々に習得しているところだという。

「遠隔臨場の試行による全社的な効果としては、やはり事務所と現場の間の移動時間の軽減が大きいですね。試算値ですが当事務所では、従来の6割程度の移動時間を軽減できています」と話すのは遠隔臨場で使用するウエアラブルカメラの選定にも携わった同社の佐藤 旬氏だ。

移動によって生じていた立会者の早朝や夕方の時間外勤務も削減できており、現場を担当する社員のワークライフバランス向上にも寄与しているという。

業務自体の効率化にもつながっている。従来、現場から作業手順の変更などの提案・要望があった際は、実際に現場を訪れて確認し、ときには一度事務所に持ち帰って検討していた。現在は、Safie Pocket2を利用する現場であれば、リアルタイムに現場と事務所をつなぎ、リモートで複数の関係者が参加して意見を交わすことができる。これにより、的確な意思決定や判断を速やかに行えるようになっているという。

「Safie Pocket2などを利用して分かったのは、遠隔臨場は我々発注者側と現場の受注者側、双方に大きなメリットがあるということです。現場で小さな確認事項が発生した場合も、すぐ映像を使って質問・確認ができ、両者の間のコミュニケーションが密になります。また、我々の移動に時間がかかるということは、その分現場の作業をストップさせてしまうということでもあります。現場を止める時間をできるだけ減らし、スムーズな進捗が実現できることも、遠隔臨場のメリットですね」と佐藤氏は強調する。

現場作業者が試験の様子をSafie Pocket2で撮影し、遠隔にいるNEXCO東日本担当者に共有している。高画質カメラと通信機能を内蔵しつつ、小型でかさばらない点がSafie Pocket2の特徴だ

「路面すべり抵抗試験」における遠隔臨場の様子

現場立会と映像を組み合わせて業務の効率と品質を高めていく

今後もNEXCO東日本では、各支社の遠隔臨場の実施状況を共有しながら、さらなる改善と効果の最大化につなげる狙いだ。

「将来的には撮影した映像を人材育成などに活用できるとありがたいですね。今まで若手に立会作業を教える際は、実際に現場に同行してもらう必要がありました。遠隔臨場目的で撮影した映像を保存しておき、それを使えるようになれば、必要なときにいつでも立会作業を教えられます」と神田氏。

Safie Pocket2なら、撮影した動画が自動的にクラウド上にアーカイブされる。これを活用することは重要な選択肢の1つになるだろう。

「もちろん、現場を訪れて五感で感じなければ分からないことは多くあるため、現場立会はなくなりません。ただ、これからの時代は、映像をうまく活用すべき時代だと思います。深刻化する人材不足や、新型コロナウイルスの影響を最小化するには、映像を活用し、業務の効率と品質を高めることが不可欠です。これからも様々な可能性を探っていきたいですね」と佐藤氏は言う。

建設現場のDXを力強く推進するNEXCO東日本。Safie Pocket2への期待は、映像活用の広がりと比例しながら、ますます高まっていくはずだ。

※こちらの記事は「日経コンストラクション 2022年12月号」に掲載されたインタビュー記事を転載したものです。

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